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「0-0であり0-0ではない」~2026.2.3 カラバオカップ 準決勝 2nd leg アーセナル×チェルシー レビュー

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レビュー

数的優位をエサにロングボールの効果を上げる

 1st legはアーセナルが3-2で勝利。追いかける立場のチェルシーなのだが、この試合では多くの主力が欠場。ベンチに入れなかったネト、ジェームズはもちろんのこと、パーマーやエステヴァンなど万全なら頭から出てきそうな選手もベンチから。ビハインドの状態ながらロシニアはかなり制限をかけられた状態でメンバー選考をした様子が窺える。アーセナル側も長期離脱がリリースされたメリーノに加えて、サカとウーデゴールが不在となるが、影響は相対的には小さいと言えるだろう。

 0-0でのスタートだが、0-0の状況ではないのが2nd leg。まずは追いかけるチェルシーのプランが重要になってくる。3-5-2というべきか3-4-3というようなフォーメーションがチェルシーの守備。序盤はベタ引きの引きこもり守備ではなく、隙があれば前からのプレスを仕掛けていく。

 左サイドはエンソ、右サイドはデラップがアーセナルのCBにプレスをかければ、そのタイミングでWBが前方にスライド。ククレジャとグストがSBを潰しに行く。6分のシーンのように縦にスライドをする過程でアーセナルのパスを引っ掛けることができれば理想である。

 ただし、この試合はアーセナルがトータルスコアでリードしている状況。無理にリスクが出るようなパスワークをする必要がない。中央での細かいパスワークでこのプレスを外すトライをしてもいいが、より安全な策であるロングボールを中心にボールを前につけていく。

 ポイントになるのは簡単にボールを蹴らないこと。ボールを蹴る手前の過程でチェルシーの中盤を引き付ける必要がある。ライス、スビメンディに関してはサントスとカイセドがそれぞれマンツーでついてくるので、引いて受ければそれだけで自陣側に引っ張ることができる。

 キーになるのはもう1人の中盤であるエゼ。エンソは先に述べたようにこの試合ではアーセナルのCBにプレスを入れるスイッチ役なので、中盤のマンツーには加わっていない。エゼが降りるアクションをすればフリーで受けられる可能性は高まる。7:45の縦パスのシーンなどは中盤での数的優位を生かした典型例と言えるだろう。

 チェルシーからすれば難しいところ。降りるエゼは放っておいてもいいが、できれば高い位置でボールを奪うことは捨てたくないのが彼らのスタンス。ということで徐々にフォファナやグストが最終ラインからエゼを迎撃しにいく。

 こうなると、チェルシーの右サイドのユニットはマルティネッリを1人で見る必要がある。ここでようやくロングボール。チェルシーのバックスからエゼをマンツーで捕まえさせた上でロングボールを背後に放る。この下準備ができれば、長いボールの効果はとても高まる。アーセナルは安全かつ効果的に敵陣にボールを運ぶことができていた。

 特に後方にグストが残っている状況においてはシュートまで持って行けそうなシーンも。逆にフォファナがカバー役に戻ってしまうと、きっちり跳ね返されるシーンがあった。だが、安全圏でのトライなのでアーセナルからすればそこまで気にする必要はない。

 このプランを実装する上では後方のショートパスの匙加減が重要。蹴るのは前方の状況が整ってからの必要があるため、後方が「しんどい!蹴る!」というタイミングで勝手に前に蹴り出していたら成立しない。ケパはこの点で澱みなく試合に入れたと評価することができる。

前進の仕方がハマらないチェルシー

 前からのプレスは難しいとなったチェルシーは少しずつ下がって受ける時間も増えるように。後方サイドで同数で受ける形はチェルシーは上々。アーセナルは右サイドを軸にギャップを作っていきたいが、なかなかボックスに入るきっかけを作れず。

 ちなみにプレビューでは下の図を使いながら「ククレジャを釣り出して背後を狙うのもあり」というコメントをしたがなかなかその状況は作れず。チェルシーはサイドの縦方向へのスライドはかなりうまくいっていたと思う。言い換えれば、アーセナルはマルティネッリへのロングボール以外できっかけをなかなかなかった。

 それでも高い位置に出てきにくいと思わせる時点でアーセナルにとっては効果があった。チェルシーはなんとかしてゴールに迫る手段を探りたいところだが、アーセナルの4-2-4気味の守備を揺さぶることができず。高い位置を取るSHの背後をつくようなポゼッションができれば面白いのだが、あまりそういうアプローチは見られず。デラップやジョアン・ペドロへの長いボールが軸となる。

 ジョアン・ペドロはボールを収めることはできていたが、アーセナルの帰陣が早い分、繋ぐことができず。右のデラップは受けられたところでそこから何をして良いのか分からず、ロストからカウンターを受けるシーンも。基本的に縛りプレーの中でのロシニアのこの試合のプランニングは理解できる(アーセナル側が嫌だったかは別の話だ)だけども、デラップを攻撃時に右の大外に張らせる理由は少し気になったところだった。

 定点攻撃であればもう少し中央の段差を使いながらの前進をしたかったところ。エゼがいる分、中央のチャレンジアンドカバーの機能性はいつもよりもアーセナルは低い状態だったので、もう少し丁寧に前を向く選手を作っても良かった。

 流れの中で可能性をより感じさせる攻撃は相手のパスをカットしてからのトランジッション。最近ビルドアップミスが多いサリバ周辺でのパスカットから左サイドのファストブレイクという前半終了間際に見せた形は悪くなかった。

 だが、シュートを綺麗に打てるところまではいけず。エンソのミドルを除けばケパを慌てさせる場面を作れないまま試合はハーフタイムを迎える。

見逃してもらった懸念

 後半、チェルシーはククレジャが前に出るような4-4-2にシフトしたかに思えたが、腹のくくり方が微妙なところ。前に出ていくようなシーンもあれば、前がプレスのスイッチを入れた時に普通にククレジャがマドゥエケを最終ラインで監視していた場面もあったので、アーセナルにこちらのサイドからプレスを脱出することで運ばれるシーンも。

 後半のアーセナルはマルティネッリへのロングボールと、右サイドからのプレス回避からのキャリーを使い分けながら。相手の守備をいなすことに重点を置いたまま何も起こさせないまま時計の針を進めていく。

 60分のエステヴァン、パーマーの投入と布陣変更はこの試合のロシニアにとっての勝負だったはず。だが、やはり時間を限定しなければいけないほど彼らのコンディションは良くないということだろう。特にエステヴァンは爆発的なスピードから対面を引きちぎるような場面が皆無。もしかすると、ネトの欠場で急遽状態が整わないままベンチに入ったということなのかもしれない。個人的な事情が彼の心を乱していたのだとしたら、一刻も早く穏やかな気持ちでフットボールに打ち込めるようになることを祈りたいところである。

 チェルシーはアーセナルの中央のブロックを動かしながらエンソのミドルを打てるシーンを作るなど、得点の種になるところまでは辿り着くことができていた。アーセナルとしてはやはりここは年末くらいから続く課題。FW-MFの接続がなかなかうまくいかない。彼だけのせいではないがエゼはどうしても味方にマークを渡した後に何も管理できていない時間があるのが気になるところ。試合をこなしながら慣れていきたい。

 ただ、こうした懸念はアーセナルからすれば大きな問題にはならなかった。1つはエンソのミドルが精度が高くなかったこと、もう1つは中央のブロックこじ開けにチェルシーが執心しなかったこと。サイドからのクロスであればアーセナルは問題なくブロック守備の強度を出せる。

 かつ、ハヴァーツの投入以降は保持でゆったりと呼吸をする時間を作れたこと。チェルシーのプレス強度低下により降りるハヴァーツを管理することができないチェルシーに対して、アーセナルは幅を使いながらボールを逃し、ポゼッションで時間を使っていく。

 後半にポゼッションでリズムを掴む手助けをしたハヴァーツは終了間際にご褒美のゴール。カウンターからの数的優位局面を落ち着いて流し込み、勝利を決定づける先制点を決めた。

 2試合通じてAGGは4-2。アーセナルが2試合とも勝利し、文句なしでウェンブリーの切符を勝ち取った。

あとがき

 基本的にはトータルスコアでリードしている状況をアーセナルがうまく使ったなという感じだった。プレッシングに関してもエゼを深追いするリスクなどはチェルシーは取る必要があった一方、アーセナルのプレスはそうしたリスクを取る必要がなかった。ジリジリとした展開に関しても時計の針が進んでいること自体がアーセナルにとって有益なので、何も起こらなくてもそれはそれでOKという意味で特に焦りはなかったはずだろう。

 リードはもちろん自分たちで勝ち取ったものなので特にせこい話でもないのだが、リーグ戦での再戦はまた話が別。スカッドの整い方や本当の意味での0-0でのシチュエーションなど、今月のリマッチでは状況は大きく異なってくる。返り討ちにするべく、チームとしての練度を研ぎ澄ましていきたい。

試合結果

2026.2.3
カラバオカップ
準決勝 2nd leg
アーセナル 1-0(AGG:4-2) チェルシー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:90+7′ ハヴァーツ
主審:ピーター・バンクス

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