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「後ろに道ができる」~2026.3.1 プレミアリーグ 第28節 アーセナル×チェルシー レビュー

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目次

レビュー

不調時の向き合い方

 アーセナルはリーグタイトル、チェルシーはCL出場権争いに向けて重要なシーズン終盤のロンドンダービー。順位を争う.ライバルとの関係性を考えると、共に勝利が欲しいところだ。

 まず、立ち上がりはアーセナルの保持が中心となりスタート左右に動かしながら前進のルートを探っていく。チェルシーは4-2-3-1をベースに守備を組む。中盤はマンツーでカイセド、サントス、エンソの3枚でエゼ、ライス、スビメンディをマークする。

 アーセナルの保持の際の中盤の動きは広範囲に渡る。そのため、マンツーを基準にするチェルシーの守備は陣形をコンパクトに維持しにくい。その分、人は捕まっているので誰かしら浮いている選手を作る必要があるアーセナル。普段であればウーデゴールがやるであろう大きく動いてフリーになるアクションをこの日行っていたのはトロサール。左サイドから降りるアクションをすることで中盤でボールを受ける。

 トロサールの降りるアクションに対してもジェームズがきっちりとついていく選択をするチェルシー。降りて捌くことができていなくもなかったが、ここだけを頼りにするのは辛いところ。よって、降りるトロサールの背後に立つギョケレシュへのロングボールを敢行。ライン間のトロサール、背後のギョケレシュの二段構えでアーセナルはチェルシーのマンツーの打開を図る。

 左サイドから押し込むところまで行ったアーセナルは横断しつつ右サイドから打開を図る。もちろん中心となるのはサカ。しかし、この日は対面のハトが見事な粘りを見せてなかなか簡単に進ませず。サカのドリブルからの仕掛けはハトによって阻まれてしまう。

 2回連続でサカのドリブルを防いだチェルシー。しかしながら、サカの持ち味は不調の時の自らとの向き合い方。1on1で違いを作れないのであれば、迷わずに他の選択肢を使う潔さがある。続くシーンではティンバーのオーバーラップを活用。このプレーからもぎ取ったCKからはキッカーを務めて見事にゴールのアシストのアシストをお膳立て。ガブリエウの空中戦の強さを生かした折り返しを最後はサリバが決めてアーセナルがリードを奪う。

リスクと見合わないチャレンジ

 チェルシーのボール保持は、あまり可変の要素は多くなかった。SBは基本的に大外を上下動し、インサイドに入ってくるアクションは控えめ。可変で変化をつけるのはセンターラインの役割だ。2列目はSHも含めて降りてボールを受ける動きを見せる。

 最終ラインは3枚構成。2CBにもう1枚が加わる。サンチェス、もしくはカイセドが3枚目を構成することが多かった。特にサンチェスが3枚目になる場合は、アーセナルのプレスを引き込みながら前進を模索する。

 アーセナルはハイプレス。特にギョケレシュがサンチェスに右足側から詰める形を狙っていく。ギョケレシュがプレスをかけたタイミングで、右サイドのユニットが一気に縦のパスルートを閉鎖する。

 サンチェスはかなりギリギリまでギョケレシュを引きつけていたし、実際に引っかけてしまう場面もあった。ビルドアップとしてはかなりリスクのある形だが、メリットがあるとすれば右サイドからボールを運べる点だろう。ギョケレシュが背中で消しているサイドの選手にボールを通せばフリーになる。アーセナルもスビメンディが降りる形からよく行うプレーである。

 少し気になったのは、この形をやることにチェルシー側のメリットがあるのか、という点。ややバタバタしつつもチャロバーがギョケレシュに管理されない状態でボールを受けるシーンはあったが、チャロバーは特にボールを運ぶ素振りを見せない。

 もし右のCBがチャロバーではなくキャリーができるフォファナであればやる意味はわかる。だが、運べないCBをフリーにするために自陣で何度も相手に捕まるリスクのあるパスワークを敢行していたのは、リスクとリターンが釣り合っていないように思える。どちらかといえば、キャッチからトランジションで直接ネトに届ける形の方がスマートに見えた。

 ただ、アーセナルのプレスを揺さぶることができれば、チェルシーもビルドアップからチャンスを作ることは可能。左サイドでアーセナルのプレス隊を引きつけたところから逆サイドのジェームズに揺さぶり、パーマーに斜めのパスを通したシーンはかなり手応えがあった。アーセナルのCHをどかし、ミドルやラストパスを打てる場面を作ることが、アーセナルを倒すうえでは重要だ。

 パーマーのミドルで終わったこのシーンは悪くなかったが、それ以外の多くの場面ではアーセナルは基本的に危なくない場所からしか運ばれていないように見えた。サンチェスからのビルドアップは、ギョケレシュの背後を使うルートだけでなく、左サイドに蹴るパターンからパーマーやハトがキャリーする場面もあった。だが、外側のレーン過ぎてゴールに直接向かえなかったりと、外に追いやられているがゆえの辛さも感じられた。

 時間の経過とともにアーセナルはチェルシーから見て左サイド側へのロングボールにも順応。落ち着いた迎撃で押し返す。失点はちょうどこの時間帯でチェルシーにはややバタバタ感があった。

 アーセナルはギョケレシュのポストやトロサールの緩急をつけたサイドアタックから敵陣に進んでいくが、一手遅れるとチェルシーの中央封鎖は間に合う。ここでのカイセドの存在感はさすがだった。

 敵陣まで運ぶことができれば問題ないアーセナルだが、トロサール、ギョケレシュ、スビメンディなどが自陣に近いエリアでパスミスを散見。攻め切ることができず、チェルシーの反撃を受ける。

 ギョケレシュの左サイドからの1on1の仕掛け自体は価値のあるものだったが、チェルシーはこの攻撃を食い止めて押し返し、セットプレーでやり返す。ジェームズのキックがインカピエのオウンゴールを誘発し、ハーフタイム前に追いつくことに成功した。

終盤のカオスの要因は?

 後半、両チームは直線的な攻め筋からスタート。長いボールを当てながら、ややカジュアルに前進の方策を探っていく。どちらかといえば効果的だったのはチェルシーの方だろう。エンソをネトの背後である右奥へ走らせながらロングボールを当てていく設計は、なかなか面白かった。

 アーセナルは左サイドで、珍しくライスがやや戻り遅れる場面が発生。その影響もあり、チェルシーは右サイドからの前進を機能させる。手当もあってかアーセナルは早めにマルティネッリを投入。しかし、ネトへのダブルチームを優先した結果、浮いたジェームズからのクロスで決定機を許すなど、やや守備が整理できていない後半の立ち上がりとなった。

 アーセナルのロングボールはサカをターゲットにするケースが散見。対面のハトに苦しみながらも、サカは強引なカットインなど、この日はそれなりに気概を見せていた。

 しかしながら、チーム全体としてやや雑になってしまっている感は否めないアーセナル。全体で押し込む形を作れない。

 一見するとチェルシーが有利な流れで入った後半だったが、セットプレーが再び明暗を分ける。アーセナルはCKからティンバーがゴールを決め、勝ち越しに成功。見事に空いたスペースへ飛び込んでおり、サンチェスがファウルを主張するのはさすがに無理筋だろう。

 チェルシーは降りるペドロを起点に前進に成功。こちらもCKを獲得するが、このボールはニアで跳ね返される。さらにネトがチャンスを阻止するファウルで退場。自分がカードを持っていることを忘れているかのようなプレーで、チェルシーを数的不利に追い込んだ。

 アーセナルはハイプレスで試合の制圧に動く。リードしていることもあり、さすがにCBをある程度浮かせる形からではあったが、中盤を厳しくマークし、相手に前進を許さない。

 保持に回ればねっとりとゆったり相手の逆を取りつつ、ファウルを奪いながら時計の針を進めるアーセナル。確実にチェルシーが嫌がる時間の使い方ができていた。

 そのアーセナルの試合運びにヒビが入った感があったのは速攻対応後のボールをつなげなくなってから。不用意なパスでボールが相手のスローインやCKに回る場面も散見され、相手の攻撃の流れを切ることができなかった。

 ライスの負傷に伴い起用されたノアゴールもやや迷子気味。久しぶりの出場という事情はあるにせよ、中盤でどこのフィルターになればいいかを終始探している様子だった。ガルナチョの際どいシュートにつながった一連のシーンからも、彼が迷っていることは見て取れる。ミドルブロックでのプレスにこだわる姿勢を見せていたことで、CHに広いカバー範囲を求める流れが継続してしまった点は、やや難しかったか。

 チェルシーのパワープレー要員であるアダラバイオとの空中戦にも苦戦したノアゴール。彼とちょこまかと動き回るグストは、終盤のジョーカーとして面白い存在だった。

 だが、このピンチをラヤとともに凌ぎ切ったアーセナル。ダービーをギリギリで制し、シティとの勝ち点差を再び5に戻した。

あとがき

 結果的に自陣に押し込まれる展開となったが、好きで引いて受けたというよりは、通常パッケージのままライスがいない状態ではこうしたエラーが起きるのだとよくわかる試合だった。アダラバイオのような長身を生かしたパワープレーを仕掛けてくるチームも限定的だろうし、ノアゴールを入れてクローズする際のスタイルはもう少し整理してもいいだろう。

 モスケラを入れて受ける前提にする選択肢もあったが、そうなるとジョアン・ペドロのオフサイド対応でラインが乱れるリスクもある。難しいところだ。

 苦しい内容をなんとか拾っていると、こういう試合ぶりでは優勝は厳しいという声も出てくる。「こういう道筋で優勝できるのか?」という意見もこの試合後にTLで見かけた。

 自分の結論はシンプルだ。優勝してその道筋を正解にすればいいだけのこと。試合をすれば後ろに道ができる。その道筋は王者になれば王道として肯定される。そうでなければ邪道と切り捨てられるのかもしれないが、どの道を通っても本質は同じ。あとから結果によって名前がつくだけだ。

 今は自分たちの後ろに生まれる道を王道にするためにもがき苦しむフェーズ。この苦しみが報われるエンディングを、今年こそ迎えたいところだ。

試合結果

2026.3.1
プレミアリーグ
第28節
アーセナル 2-1 チェルシー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:21′ サリバ, 66′ ティンバー
CHE:45+2′ インカピエ(OG)
主審:ダレン・イングランド

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