MENU
アーカイブ
カテゴリー

「1枚では足りない」~2026.3.14 J1百年構想リーグ 第6節 鹿島アントラーズ×川崎フロンターレ レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

鹿島の仕掛けに優先度を決めて対応

 開幕節以降3ポイントを獲得できていない川崎。今節挑むのは鹿島。ここまでまだ敗北どころか失点がないメルカリスタジアムで難しいミッションにチャレンジする。

 まず鹿島のボール回しはロングボールからスタート。左サイドに流れる鈴木をターゲットに縦に早く進んでいくところから様子を見る。

 それでも川崎はハイプレスに出ていく形に躊躇はなし。2試合連続先発となったロマニッチが相棒の脇坂とともにバックラインまでプレスをかける。その効果は早々に出て、川崎はハイプレスからのボール奪取からチャンスメイク。細かいタッチのフィーリングは悪くなく、サイド攻撃の動き出しも良好。もう少し前を向いてシュートにいく意識があればよかったが、入りとしてはいい流れだった。

 ただ川崎は万事がうまくいったかというと決してそういうことではない。プレビューに書いた通り、GKまでプレスに来る鹿島のハイプレスに川崎は苦戦。ブローダーセンが蹴らされてしまうパターンになると、ロマニッチが競り勝てるかどうか以前にキックが届かない。つまり鹿島からすれば蹴らせることができれば勝ち。いいタッチができそうな序盤の流れを生かすフィールドがそもそも存在しなかった。

 そんな川崎をよそに鹿島は徐々に保持を増やしていく。後方は基本的には3枚。樋口、三竿のサポートや溝口が最終ラインに残るパターンなど、3人目となる選手を入れ替えながら川崎のプレスを揺さぶっていく。

 狙いを推察するのであれば、3人目が最終ラインのビルドアップに加わることで川崎のSHを3人目のプレス隊として引き出してスペースを作ることを狙っていたのだろう。

 しかし川崎はこれまでの試合のように簡単にSHがプレス役の3枚目として出ていかなかった。出るとしても中盤中央の選手を受け渡しながら。出ていくことが自分たちの不利益につながらないようにしていく。インサイドを抑えることと前に出ていくことの両立は間違いなくこの日が一番うまくいっていた。負傷明けの大島も見事に試合の流れに入った。

 というわけで鹿島は後方の3バック変形があまりうまく機能しなかった。もう1つ狙いとして感じられたのは降りる鈴木をポスト役として活用するパターン。左右にボールを動かす過程で川崎の横の陣形を間延びさせたところで鈴木が間に顔を出すために降りてくるというイメージであった。

 だがこの鈴木に対しては橘田がきっちりと潰すことで起点として活用させない。この日の橘田の危機管理は非常に冴えていた。川崎のCBを背負う形でもセアラや鈴木に簡単に起点となることを許さなかった川崎。鹿島はなかなか手前のフェーズでギャップを作ることができない。

 そのためシンプルに背後を使っていく比率を増やしていく鹿島。一番前のCF2人を軸に攻撃を完結させるイメージで背後にボールを蹴っていく。しかしこの形も川崎は対応。丸山の読みによって先回りしたり、あるいは逆サイドから谷口が飛んできてカットするシーンもあった。丸山は復帰明けでこのパフォーマンスであれば非常に今後が期待できるし、谷口は横の行動範囲の少なさというここまでの課題を潰すような動きを見せた。

 鹿島はビルドアップで枚数調整からスペースを作る狙いを見せていたが、川崎は簡単に釣り出されることなく中央を優先して管理。鈴木のポストや背後へのボールにもCBと橘田、大島が安定して対応し、鹿島は決定的な前進のルートを見つけることができなかった。総じて鹿島の攻撃を川崎はうまく制御することができた立ち上がりだったと言えるだろう。

信頼できる唯一のルート

 プレスを回避して前にどう進んでいくかというところは川崎側が保持に回った場合も悩ましいところ。中盤で鹿島が強引に取りに来たところを先に突いて交わすことができれば抜けることができる。この点でも大島のコントロールは冷静で、パスを収めて逃がすというところは安定感が出ていた。

 ただ川崎のビルドアップはより手前でサイドに追い込まれた時の苦しさがあった。右サイドは谷口と山原のところで詰まらされるとハード。チャヴリッチはエウベルよりもきっちりとマークを噛み合わせつつ選択肢を奪うプレスで川崎の右サイドを窮屈にしていた。

 川崎の左サイドはボールを持っていない選手の動きが悪く、全く連携が合わない状況。三浦のパスの精度と伊藤のオフザボールの動きの少なさが足枷となり、たとえ数的優位そうな状況であってもなかなか前に進むことができない。家長が出張気味に顔を出すのもやむを得ないという感じであった。

 ということで定点攻撃でなかなかうまくボールを前に進むことができない両チーム。そういう展開の場合は中盤でミスが出てトランジッションの場面が増えていくのだが、両チームとも奪った後のスピードアップがうまくいかない。

 正直に言えば川崎の噛み合わなさは今季を通じてこんなものかなという感じなのだが、鹿島は今季の基準で言えばこの日は明確に足りないものがあったように見えた。特にパスワークに3人目が絡むと精度が一気に落ちて、パスが簡単にズレるシーンが多く見られた。かといって2人だけでのワンツーだと川崎のCB陣に先読みをされてしまう。奪えた状況の割にあまりいい結果を生み出せていないように見受けられた。

 そうした中でも鹿島にとって信頼できるのはセットプレー。高さを生かす形から簡単にクリアを許さず、混戦からゴールに近づく。今季の得点の多くを占める形だなという安定感でブローダーセンを脅かす。ブローダーセンも素晴らしいセーブで鹿島に先制点を許さない素晴らしいパフォーマンスを見せた。

 なかなかクリティカルに敵陣に入ることができなかった鹿島だが、31分の樋口のフリーランは川崎のCHの背中を取る形になっている。ようやくクリティカルな侵入ができた場面だった。

 相手の逆をつくことができる場面は川崎にもあったのだが、ここでも左サイドの連携が足枷。数的優位でスペースがある状態でもプレービジョンが合わず、伊藤と三浦はことごとくチャンスを活かすことができず、サイドからゴールにつながる動線を生み出すことができない。

 それでも非保持で粘り強く対応することでスコアレスの時間を伸ばしていく川崎。今季の彼らの基準で言えば簡単に溝口や濃野に振り切られているはずの場面でも粘り強くついていき、高い献身性を見せて前半の守備の崩壊を防ぐ一端を担っていた。

先制点で決定的な働きをしたのは?

 後半になって気になったのは鹿島の繋ぎの精度の怪しさ。川崎のシャープな縦方向のスライドを前に起点を作ることができず。後半も引き続き谷口と丸山は前方向に矢印を向けるパフォーマンスを見せていた。

 奪った後は右サイドから勝負をかける川崎。枚数をかけた攻撃のフィーリングはいい感じ。山原の攻め上がり、家長のキープ、大島のサポートなどを組み合わせることで今季はあまり見られなかったポケットを綺麗に取ることができるシーンが見えるように。

 左サイドに関しても問題は前半よりは軽減。伊藤と三浦は後半も特につながるようになったわけではないのだが、他の選手が入ることで少しずつ機能性を高めていた。

 押し込むことができる状況なので川崎はなんとかこの状況をキープしたいところ。だが谷口のバックパスミスから鹿島にボールを献上。後半も引き続き「正常」に機能するセットプレーから鹿島にチャンスを与えることに。簡単に自分たちでリズムをキープできないチームだけに、自分たちのミスから相手に時間を与えるのは避けたいところだった。

 交代で先に動いたのは川崎。マルシーニョの投入で左サイドの組み合わせを変更。投入早々フリーランとドリブルで存在感を見せたマルシーニョは、この日はインサイドで受けるアクションも際立っており、ロマニッチや脇坂との連携から中央のナロースペースをこじ開けにいく。

 もちろん幅をとった攻撃も。SBの攻撃参加に関しては今季の川崎基準で言えば後半はかなりできていた方である。

 60分過ぎの時間帯は鹿島にとっては耐える時間帯となっていたのだが、そうした中で平気な顔でバイタルを埋める働きができる鈴木はさすが。相手の左サイドからのファストブレイクを止めることができる植田とともに高い守備の貢献を見せていた。

 同じく鹿島は選手交代で前線の配置を変更。鈴木を左サイドに移動し、山原とのミスマッチなマッチアップを常態化するように仕掛けていく。鈴木を左に寄せることでファーのクロスという狙いを明確化した。

 70分周辺の時間帯は両チームともパスミスの応酬。相手のミスを拾ってはミスを生み出し、また拾った方がミスを生み出すという形の、悪い意味でのバタバタが見える時間帯だった。

 そうした中で川崎が光明を見つけたのはハイプレス。GKの早川を追い込みミドルキックを蹴らせることで回収し、カウンターに出ていくことができるという状況をこの時間帯に再び作り出すことに成功。2回続けて高い位置からボールを詰まらせることに成功する。

 だが鹿島は3回目をひっくり返すことで先制。秀逸だったのは内側に絞る林。CFの田川と縦方向に並びレシーブ役となり浮くことに成功。対面となるべき丸山は田川に背後を取られることを気にしてか、これまでのようにロングボールのレシーブ役である林に強く当たることができなかった。ここからは常に川崎の守備に対して一手先をいくことで鹿島はレオ・セアラのゴールを生み出す。

 柴崎からのクロスが決め手にはなったし、これももちろん重要な働きなのだけども、鈴木が左サイドで起用されている時点で「鈴木−山原のマッチアップを使う」ということは共通認識としてあったはずで、おそらくは誰がここでレシーブしてもあの位置は狙えたように思う。

 この場面で守備を攻略するのに個人的に重要と考えるのは「早川のパスのレシーブ役となり同数の状況で川崎の守備を攻略する下地を作ること」と「ファーサイドを使った揺さぶりに伴うマークのズレを生み出すこと」の2つ。この2つに関しては林の活躍が光った。前者は言わずもがな、後者に関しても前線に飛び出す位置を取ることで丸山が最後にセアラにマークにいくことができない決め手になった。

 もちろん柴崎自身の働きも試合全体において重要度が高く、ターンから相手を外す冷静さは交代選手が多くバタバタしていた両チームの中盤の中では一つ次元が上のプレーだったことは間違いないだろう。

 鹿島の先制点の崩しは率直にこの試合一番のプレーだった。川崎はより手前の時間にあったファーに飛び込んだ脇坂が左足でシュートを捉えたシーンが個人的にはゴールに最も近かったが、最後のシュートの難易度の低さという点でも鹿島の崩しが最も機能的だったのは明らかだった。

 川崎にとっては捉え方が難しいところでその手前で2つハイプレスでの回収に成功しているからこそハマった罠のようにも見えた。ゴールに迫るシーンを簡単に作り出せていない分、成功例があるハイプレスという手段自体は否定しにくい。

 この日一番のプレーで川崎をこじ開けることに成功した鹿島。そのまま逃げ切りに成功し、ホームでの無失点と連勝記録を伸ばすこととなった。

あとがき

 これまでの内容に比べれば特に4-4-2守備は機能的ではあったが、この試合では決勝点以外のシーンではそれなりに鹿島の甘さが見られたことも確か。王者相手に対する手応えが、そのまま他のチームに通用するとは限らない。いろんな相手に継続的に通用するという手形を集めて質を証明する必要がある。今日だけの1枚の手形だけでは不十分だ。

 奪ったところからゴールに向かうというところに関してはなかなか接続がうまくいかないというのは正直なところ。SBの攻め上がりを相手に先手を取って活用することができる場面が増えればもう少し得点は増えるはず。組み合わせや左右のサイドなどかなりの数のパターンは今のスカッドであれば作れるので、この点はもう少し試行錯誤を繰り返してもいいかもしれない。

試合結果

2026.3.14
J1百年構想リーグ
第6節
鹿島アントラーズ 1-0 川崎フロンターレ
メルカリスタジアム
【得点者】
鹿島:79′ レオ・セアラ
主審:上村篤史

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次