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「茨の中の閃光」~2026.3.14 プレミアリーグ 第30節 アーセナル×エバートン レビュー

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レビュー

ブロック崩しのアクセントとなるハヴァーツ

 イングランド勢が軒並み苦戦したCLノックアウトラウンド開幕週。アーセナルもドイツ遠征で勝ちきれず、翌週のロンドン決戦に持ち込みということとなる。CLの間に挟まれた難しいリーグ戦において、アーセナルはエバートンをホームに迎えての試合に挑む。

 エバートンの非保持は中盤マンツーでスタート。敵陣で相手を捕まえる形からアーセナルの前進を阻害しにいく。

 アーセナルはまずはショートパスを中心としたパス回しで交わしていく形で対応。ティンバー、カラフィオーリの自由なポジショニングやGKを絡めた保持で相手のプレスを外しながら前進していく。

 そんなアーセナルを見て、エバートンは早めにハイプレスを諦めて6-2-2を基本線に移行。ローブロックでSHをPAボックス付近の位置まで下げることで撤退戦を受け入れる構えを見せる。

 ということでアーセナルは撤退守備の攻略に移行。サイドからのクロスから仕掛けをしていく。左サイド、大外に起点を作ったところからマイナス方向に角度をつけて、ペナ角周辺からゴールに向かうクロスを放つことでチャンスを作っていく。数がいる場合は縦方向のギャップを作ることで面ごと壊しにいくのはベタなパターンだ。

 この左サイドからのクロスでチャンスを作ったアーセナル。オフサイドながらサカが惜しいシーンを作っていく。そしてこのシーンではピックフォードが素晴らしいセーブ。こちらもオフサイドながらファインプレーを見せた。

 苦戦しそうな流れの中でアクセントになっていたのはこの日CFに入っていたハヴァーツ。右サイドに流れる形からのサカのフォローなど、クロスのターゲット以外の働きも果たしていく。

 中でもエゼからの裏へのパスへの抜け出しは非常にクリティカル。ハヴァーツ自身も含めてPKと退場を要求したくなるくらいには惜しいシーン。結局、要求は通らなかったもののハヴァーツらしい滑らかな形からのチャンスメイクが見られた。

 ただ、アーセナルの保持のアプローチが完璧だったかというとそういうわけでもない。ざっくりと気になった点は2つ。1つは左サイドに起用されたマドゥエケの縦突破の少なさだ。

 先にも述べたように撤退した守備を壊すためには縦方向への揺さぶりが必要。大外からペナ角→ファーへのクロスという流れは相手のラインをマイナス→プラス方向に揺さぶっていくイメージである。もちろんこれも有効なのだが、一辺倒であれば対策は簡単になってしまう。縦に突破し、エンドラインからえぐってクロスを折り返すというプラス→マイナス方向の揺さぶりも欲しいところ。マドゥエケは逆サイドであれば普通にできていることが左サイドではなかなかできなかった。

 もう1つはサリバが右の後方のフォロー役だったこと。スビメンディなどといった司令塔と異なり、味方との息が合わなかったりクロスの精度が足りなかったりすることがあった。

 もっとも、こちらに関しては構造を直すというよりもサリバ自身が実戦を通してスキルアップすることを願ってもいいと思う。この日のエバートンのようにボックス内に人数を置いてくる相手に対してはどうしても自分たちも人数を置く必要がある。そうした際にボックス内に飛び込む感覚に鋭いスビメンディは高い位置を取ってほしい。CBが攻撃に参加するリスクもこの日のエバートンくらい重心が低ければ特に気にする必要もない。今後も見据えて伸ばしたいスキルとしてサリバの後方支援は継続してもいいように思う。

我慢比べ一直線にならない理由

 本来であれば失点のリスクが少ない状況なのでエバートンがこれだけはっきりと撤退した時点で時間をかけながら90分を見据えて壊していく方向性でもOK。しかしながら、この日のアーセナルにはほんのりと違う事情があった。

 その事情はエバートンの攻撃に対する脆さ。中でも15分すぎに発生した2つの決定機はアーセナルにとってはとても肝を冷やすものだった。1つ目の決定機はクロス対応でラヤが触れてしまったからこそ起きたシーン。ややアクシデンタルとはいえボックス内でドフリーの場面を作られてしまった。

 もう1つは枠を叩いたマクニールのミドル。この場面でらしくない対応をしてしまったのはライス。簡単に逆を取られてしまい、CBが寄せられない位置でマクニールをフリーにしてしまった。

 この場面ほどはっきりとライス個人が拙い対応を見せるシーンはなかったが、CHのギャップを使われながらボックス付近でミドルシュートを振られるシーンは少しずつ見られるように。アーセナルが失点を喫する時のお決まりパターンが顔を覗かせていたのがこの日のアーセナルの守備だった。

 エバートン側もさすがに簡単な陣地回復は不可。サリバがベトを完璧に抑えてしまっていたので、一発のロングボールでボックス付近のチャンスを作る場面は少なかった。

 けど運べてしまえばチャンスがある状態なのがこの日のエバートン。きっかけとなる前進の機会さえあればアーセナル相手に得点を望める場面ではあった。

 ということでアーセナルは一刻も早くチャンスが欲しい状態。そうした中で目立ったのは右サイド。サカの強引なチャンスメイクは目についた。内外にレーンを変えながらボールを受け、大外では2枚に囲まれる形でもリリース。エンジアイやゲイェをかわしてもボールを逃がすことができる。レバークーゼン戦に比べれば余裕がある対応ができたのは間違いないだろう。

 ティンバーの後を引き継いだモスケラの攻撃参加もあり、通常基準のボックス崩し程度のチャンスメイクは見せることができた。ただ、セットプレーに対する守備対応に関しては堅さを見せるエバートン。ターコウスキやブランスウェイトがいなくても、ゾーン守備でアーセナルに危険なシーンを作らせない。さすがセットプレー最少失点のチームだ。

 アーセナルはブロックを切り崩す作業、エバートンはサイドから地道に進めればボックス付近でミドルの隙を作ることができる。この文章だけでも想像できるように前半は互いにチャンスが少ない状態でハーフタイムを迎える。

土壇場で勝利に導く新星

 後半、アーセナルはまず左サイドから攻めていくスタート。だが前半と課題は同じ。マドゥエケは縦に突破して一つ奥に行くことができない。

 さらに後半の立ち上がりのアーセナルはビルドアップにおける後方のタッチが不安定。少しでも攻めのきっかけが欲しいエバートンとしてはハイプレスからリズムを作っていくことも視野に入っていく形となった。

 そうした中でチームを助けたのはエゼ。縦パスのレシーブからの打開で敵陣までのキャリーに成功し、エバートンに押し込まれる時間を回避する。

 この脱出がきっかけでアーセナルはテンポを戻すことに成功。再び腰を据えてボックス攻略に挑むことができたアーセナルは右サイドから枚数をかける形で攻略を狙う。前半よりも枚数をかけた攻撃の手応えはある状況だった。

 左サイドもガブリエウの後方支援が加速。背後へのパスでマドゥエケを裏に走らせることでプラス方向の奥行きを生み出していく。

 インサイドではエゼが躍動。ミドルシュートやスルーパスなどゴールに向かう直線的なプレーの意識が高い。当然こうしたプレーは跳ね返されるケースも伴うが、ネガトラに安定感がありボールの回収にも貢献。ボックス付近からゴールに向かう意識は撤退守備を壊すことにおける重要な要素。この日のエゼがフルタイムで戦うことに異論があるアーセナルファンは少なかったのではないだろうか。

 後半のエバートンの攻撃はセットプレーが軸。アーセナルのプレスは時間の経過とともに弱くなっていたので、後半の中盤は相手のプレスを交わしてサイドからキャリーする形を作り、敵陣でのセットプレーからチャンスメイク。だがこのチャンスはラヤが見事にシャットアウト。危うい場面を救ってみせた。

 危うい場面を作られたアーセナルはダウマンを投入。得点を取りにいく終盤はかなりスクランブルな形。サカとエゼがIHでコンビを組む形からゴールを狙う。

 ボックス内やサイドでの粘り強い守備を見せていたエバートンだったが、アーセナルが打開に成功したのは89分。対角パスを運んだモスケラが右サイドの奥からスローインを放ち、ファーサイドでダウマンがクロスを送る。この折り返しがピックフォードの飛び出しを誘うことに成功。インカピエの折り返しをギョケレシュが無人のゴールに押し込む。

 スクランブルで攻撃的な布陣を組んでのゴールだっただけに終盤のクローズはかなりシビア。それでもなんとかシンプルなクロスの跳ね返しを行っていくと、最後にはカウンターからの独走劇でダウマンが嬉しいプレミア初ゴール。終盤までもつれた熱戦は新星が2つのゴールを導き、アーセナルが3ポイントを手にした。

あとがき

 若い才能がスパークする瞬間を目撃するというのはサッカーファンが感じることができるカタルシスの中でもかなり上位に置くことができるものであると思う。マックス・ダウマンという若きスターがタイトル争いが続くアーセナルを劇的な勝利に導くというシナリオはまさにそのカタルシスを感じることができるものだった。

 もっとも、シーズンがまだ続いている以上はダウマンが放った光が覆い隠している部分にも目を向けなければいけない。とてもタフな相手にかなりの時間帯で苦労し、なんとか生み出した日替わりヒーローによって勝利をした。

 CLの勝ち上がり次第ではあるが、順調に進めば進むほど今後のリーグ戦はタフになる。多くの試合がCLの直後に置かれることになり、ひょっとするとその受難からシティは逃れてアーセナルだけが苦しむ可能性もある。もちろん、そうした不利益を被る可能性があってなおCLは勝ち上がるべきコンペティションであることは言うまでもないが。

 ということは1つ1つが今日のような大きな山になり、その日に好調な誰かにチームを救ってもらう必要のある展開になるかもしれない。アーセナルの残りのシーズンを待ち受けるのはそうした茨の道。それでも今は次の試合まで茨の中に光った若い閃光の輝きを堪能したいところだ。

試合結果

2026.3.14
プレミアリーグ
第30節
アーセナル 2-0 エバートン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:89′ ギョケレシュ, 90+7′ ダウマン
主審:アンディ・マドレー

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