■入れ替わった両WGが隣国に引導を渡す
ヘネシーの退場で10人に追い込まれた結果、イランに敗れてしまったウェールズ。ノックアウトラウンド進出に向けてあとがない状況で、目の前に立ちはだかるのは何の因果かイングランドである。W杯史上初の激突が突破の運命を決める一戦となる。
ウェールズのフォーメーションは4-2-3-1。ここまでは3バック主体の彼らとしては、アタッカーを多めに配置する得点を意識した陣形を採用したと言えるだろう。
それであるならば高い位置まででていくトライをしたいウェールズ。2トップでアンカーを管理しながらイングランドのボール保持を阻害する。中盤から3枚目が出てこないため、イングランドからすると比較的CBが時間を得る状態になる。
あまり、イメージじゃないかもしれないが、プレッシングで枚数を割いてこない相手に対しては割とマグワイアは自信満々にキャリーする。自分の前が空いている時にドリブルでボールを運んでの攻撃参加はプレミアリーグにおいてもかなり見られる場面だ。
よって、ウェールズの高い位置から守っていこうぜ!というスタンスはマグワイアから崩されることになる。相手を引き出すことに成功したら、サイドに配球。マグワイアの保持における役割はイングランドが押し上げながらプレーをする手助けになっていたと言えるだろう。
ただ、ウェールズも気合が感じられる内容だった。4-4-2のリトリートは非常に素早くPA陣内を埋め尽くす。外を回った時の崩しのアイデアが乏しいイングランドの4-3-3はハイクロスに頼りがちだったが、ウェールズはこれをひたすら跳ね返し続ける。
しかしながら、攻勢に出た時の出来は物足りない。ムーアへのロングボールを起点に何とか陣地回復を行いたいところだが、前を向いた際のクオリティが足りずにイングランド陣内に侵攻することができない。
マグワイアが前に出るということはカウンターの際は彼が苦手な広い範囲の守備を行う必要が出てくるはず。だが、そうしたイングランドの弱みをウェールズはボール保持で揺さぶることができなかった。
イングランドが攻め立てるが、ウェールズが跳ね返す。前半45分はざっくりとこの言葉一つに集約できなくもない内容だった。
迎えた後半、両チームとも布陣をいじって残りの45分に挑む。大勝負に出たのはウェールズ。ここまで大一番でことごとく結果を出してきたベイルを下げて、運動量を計算できるジョンソンを起用。ゲームのテンポを上げて自分たちの方にペースを引き寄せるために大エースを外すという荒療治を仕掛けてきた。
一方のイングランドの修正は小規模。左右のWGを入れ替えてフォーデンとラッシュフォードをそれぞれ順足サイドに配置してみせた。
結果を出したのはイングランドの方だった。左サイドでフォーデンが受けたファウルで得たFKを決めたのはラッシュフォード。GKのウォードは逆を取られてしまい、一歩反応が遅れてしまった。
先制点のゴールをきっかけにイングランドは一気に畳み掛けていく。高い位置からのラッシュフォードのチェイシングからボールを引っ掛けると右サイドからケインが鋭いグラウンダーのパスを入れる。グループステージのイングランドにおいてはお馴染みになりつつある右に流れたケインの鋭いクロスを左サイドからフォーデンが叩き込んでみせた。配置変更がどこまで効いていたかは微妙なところだが、後半はサイドを入れ替えた両WGが活躍したことは間違いない。
3点目を決めたのもラッシュフォード。ここまでスターターだったメンバーと入れ替わった選手が結果を出すというのはビックトーナメントにおいては非常に重要な要素と言えるだろう。
高い位置からプレスに行く勝負に出たウェールズだが、この賭けはイングランドに返り討ちに合うことになる。追い込まれての英雄外しも奏功せずウェールズのW杯はここで終了。順当な首位通過を祝うイングランドとくっきりと明暗が分かれる形となってしまった。
試合結果
2022.11.29
FIFA World Cup QATAR 2022
Group B 第3節
ウェールズ 0-3 イングランド
アフメド・ビン=アリー・スタジアム
【得点者】
ENG:50′ 68′ ラッシュフォード, 51′ フォーデン
主審:スラヴコ・ビンチッチ