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「Catch up Premier League」~リバプール編~ 2022-23 season

リバプール、22-23シーズンの歩み。

目次

第1節 フラム戦(A)

流れを変えた両ストライカー

 チャンピオンシップ新記録という圧倒的な得点力で2部を荒らしまくったミトロビッチを軸に見事にプレミア帰還を果たしたフラム。開幕戦の相手はいきなりのリバプール。1試合目からラスボスの登場である。

 しかしながら、試合はリバプールが苦しむ意外なスタートとなる。フラムの2トップはファビーニョを受け渡すことをサボらずにマークを受け渡す。まずは中央で大きく展開することを塞ぐのが目的だ。ボールが進む方向の規定に成功したら、そこからは中盤4枚が大きくボールサイドにスライドする。

 イメージとしてはフラムは中盤4枚より手前で攻撃を止められれば成功!という感じだろう。中盤のスライドが間に合わない場合はSBが飛び出しながらとめにいくが、裏を取られるリスクがあるこの選択肢はなるべくであれば取りたくないはずだ。

 序盤はこのスライドしながらの守備がうまくいっていた。リバプールはフラムの中盤のフィルターを突破することができず、前に進むことができない。トップに当てるべくロングボールを蹴ってもフラムのバックラインに跳ね返されてしまう。ミドルカウンターからチャンスを得たフラムが試合のペースを握ったと言っていいだろう。

 そういう状況を動かすのはいつだってチアゴである。降りる動きを使いながら、自分のマーカーであるハリソン・リードやスライドした時のマーカーであるケパノに対してファジーなポジションをとる。

 曖昧になったマーク相手からフリーになったチアゴは対角パスから右サイドに展開。サラー&アレクサンダー=アーノルドのコンビからクロスを行い、逆サイドのロバートソンが折り返すというCSで見られたおなじみの流れをこの日も見せることになった。

 一方のフラムはミトロビッチへのロングボール一辺倒。ここで落としてサイドに展開しながらなんとか前進するスタイルでリバプールに押し込まれた陣地を回復していく。

 だが、先制したのは苦しいはずのフラム。右サイドで噛み合わないパスを交換しているH・リードとケパノを追い越したティティのクロスをファーで待ち構えていたミトロビッチが叩き込み先制。下馬評を覆すようにホームチームが先制する。

 リバプールは上にあげたおなじみのパターンから反撃を試みるが、フラムのゴールネットをなかなか揺らすところまで辿り着かず。1点のビハインドでハーフタイムを迎える。

 後半早々にリバプールはチアゴが負傷交代。これによりエリオットとヌニェスがピッチに入ったあたりから試合の流れは変わるように。良くも悪くも上の定点攻撃にこだわっていたリバプールだが、この交代以降は縦に早く進むように。

 特に右サイドから縦に進んでいくやり方をメインに据えて、同サイドのロビンソンを狙い撃ちにしていた。同点ゴールもまさにこの形から。マティプの縦パスから右サイドに展開し、サラーからヌニェスにクロスを上げて同点に追いつく。

 だがフラムも反撃に。後半しばしば見られていたロングカウンターからミトロビッチがファン・ダイクを出し抜きPKを獲得。再びリードを奪う。ダイクにしては軽率なアプローチになってしまった感があったシーン。ミトロビッチがこの日2得点目となるPKを決めて見せた。

 しかし、リバプール側のストライカーも負けていない。ヌニェスが右サイドからの長いレンジのボールを粘って収めると、これをサラーが押し込んで同点に追いつく。

 終盤はオープンな対決になった一戦。流石にこうなるとリバプールが有利ではあったが、なんとか凌ぎ切ったフラム。ホームでのラスボス決戦で勝ち点を得ることに成功した。

試合結果
2022.8.6
プレミアリーグ 第1節
フラム 2-2 リバプール
クレイヴン・コテージ
【得点者】
FUL:32′ 72′(PK) ミトロビッチ
LIV:64′ ヌニェス, 80′ サラー
主審:アンディ・マドレー

第2節 クリスタル・パレス戦(H)

想定外の失点で浮き足立った代償

 開幕節はフラム相手にまさかの引き分けスタートになってしまったリバプール。必勝を期すアンフィールド開幕戦はアーセナルに続きビック6との連戦スタートとなったクリスタル・パレスとの試合だ。

 パレスは開幕戦に比べれば撤退型の5-4-1でアンフィールドに見参。アーセナル戦よりもかなり後ろの重心を意識した並びとなった。当然リバプールにボールを持たせる方針になる。

 リバプールはボールを持ちながら崩すやり方を模索する。この試合はトップにヌニェスが入った分、前節よりもアバウトな長いボールが増えた印象。パレスの最終ラインとの駆け引きをしながら、体を張りながら抜け出す形は確かにこれまでのリバプールにはあまり見られなかった武器である。

 リバプールはチアゴがいなくとも右サイドへの対角のパスもうまく使えており、パレスの5-4-1攻略は順調に進んでいた。右サイドからの奥行きをとった横パスからPA内でのシュートで十分なチャンスを迎えることができている。CBのフィリップスも持ち上がりながら中央に隙を見てボールを刺すことができたし、ザハは時にファビーニョを自由にしてしまっていた。

 危ういシュートを喰らったことは計算外だっただろうが、パレスとしては押し下げられること自体は想定内。ロングカウンターからエゼとザハの2枚でチャンスメイクをする。

 そして、先に得点をもぎ取ったのはクリスタル・パレス。ロングカウンターからエゼがファビーニョを交わしてザハにラストパス。これを決め切って先制点を奪い取る。

 この先制点がリバプールをやや焦らせたように思う。序盤に見られたような5-4-1ブロックに対する慎重なアプローチは鳴りを潜め、強引で急ぎすぎてしまうプレーが増えていく。守備においても強引に捕まえにいくせいで自陣側に穴を開けるシーンがちらほら。ヘルプのないファビーニョが困っている様子が印象的だった。

 後半も同じ展開に。リバプールは2列目からの飛び出しを増やしながらパレスの最終ラインの裏を取るアプローチを増やして得点を狙う。ここから巻き返したいリバプールだったが、ヌニェスがアンデルセンの挑発にやり返してしまい一発退場。ここからリバプールは10人で相手を追いかけることになる。

 10人になりこれまで今季のリバプールが構築してきた形はほとんど見られなくなる。ヌニェスを使った強引な裏へのパスや、右サイドでの人数をかけたパスワークからのフリーマンを使ってのクロスは効果が半減する。

 そんな中で魅せたのはディアス。正直、システマティックなリバプールの中ではあまりハマっている感は受けないのだが、このようにスクランブルな事態における個人技は絶品。独力で同点ゴールを叩き出して見せる。

 10人になってなお3ポイントを狙うリバプールに、パレスも攻撃的な選手の投入で応戦。しかし、交代選手たちはエネルギッシュではあるが、前からのプレスの規律には欠けている印象。その分、終盤は間伸びした陣形での戦いになった。

 互いにチャンスを作りことができた終盤ではあったが、なかなか生かすことができず。どちらのチームが勝ち越すこともなく試合は終了。リバプールは開幕戦に続き勝ち点3を取り切ることができなかった。

試合結果
2022.8.15
プレミアリーグ 第2節
リバプール 1-1 クリスタル・パレス
アンフィールド
【得点者】
LIV:61′ ディアス
CRY:32′ ザハ
主審:ポール・ティアニー

第3節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)

異なる顔を見せて主導権を握ったユナイテッド

 第3節で迎えたナショナルダービーはよもやよもやの未勝利対決。開幕時の予想とは違った意味での負けられない一戦になった。思い切った戦い方をしてきたのはテン・ハーグ就任後の初めてのポイントが欲しいユナイテッド。高い位置からのプレッシングでリバプールを追い立てる。

 直近の負け方ゆえにビルドアップにばかり議論が行きがちだったが、アヤックス時代のテン・ハーグのもう一つの特徴といえば極端なマンマーク。割とここまでの試合ではその部分は鳴りを潜めていたが、リバプール相手には立ち上がりからこちらの特徴を全開にした。

 ユナイテッドはゴメスにはやや持たせるのを許容した印象もあったが、後はマンマーク。特に縦パスを受ける選手には厳しくチェックすることで咎めていた。サラーに対しては深追いせずに後ろを気にする対応もちらほら。このあたりもユナイテッドは人によっての対応を変えている感じがあって面白かった。

 チアゴがいないこともあり、ボールを落ち着けることができないリバプール。割と我慢できずに蹴ってしまうが、フリーランに物を言わせるような前線の構成でもないので、長いボールも収めきれないというジレンマに陥ることになる。

 一方のユナイテッドは前節と異なるCB+2CHでのボックス型のビルドアップ。その分、左に流れられるマルティネスはのびのびとフィードを蹴ることができていたし、マラシアは1つ前でプレーする機会が多かった。

 ユナイテッドは前線のオフザボールの動きも良好。ブルーノ・フェルナンデスとラッシュフォードの2人は縦に相手を引き伸ばすフリーランでリバプールのDFラインを攻略していた。左サイドのエランガも同様。ワンツーからの抜け出しでアレクサンダー=アーノルドを出し抜いて見せた。

 ユナイテッドの先制点はその左サイドから。抜け出した左サイドから折り返しを受けたサンチョが切り返しながら逆足でゲット。

 リバプール視点で言うと、まずエリア内で悠々とサンチョに持たせる余裕を見せたのがまずい。失点の元は確実にここである。その上でミルナーとダイクの対応である。

 失点直後にダイクに即座に文句を言っていたミルナーの言い分は「右を切ったのだからダイクが左足に寄せるべき!」と言うものだろう。この失点の責任どうこうというよりはああいう寄せるべきタイミングを作ってあげれば、いい時のダイクは迷いなく潰せていたので、開幕からあまり調子が上がらないのかもしれない。

 先制点もあり、徐々にユナイテッドのプレスもマイルドになり、敵陣に攻め込めるようになるリバプール。だが、ヌニェスがいない時の右サイド偏重は相変わらずで、ユナイテッドは閉めるところの狙いは定めやすかったように思う。それでもクオリティを見せる場面はあったが、連携面も含めて右サイド一本槍では少し苦しい部分はあった。

 後半も同点ゴールを狙うリバプールだが、ユナイテッドがカウンターから返り討ちに。ハーフタイムに投入されたマルシャルからのポストで抜け出したラッシュフォードが追加点を奪う。

 2点のビハインドを背負ったリバプールは右サイドから猛攻。両IHも同サイドに集結し、とにかく右に狙いを定めた格好だ。マラシアを中心にユナイテッドはボールを閉じ込めるべく抵抗する。

 エリア内に入ってくるシーンが増えたリバプールだが、ここは前節失態を犯したデ・ヘアが奮闘。なかなか反撃のきっかけを許さない。それだけに81分のサラーのゴールは彼にとって悔しかったはず。直前のスーパーセーブもそうだし、この場面でも一度は弾いただけになんとかクリーンシートでリバプールを食い止めたかったはずだ。

 それでもリバプールの追撃はここまで。ハイプレスというテン・ハーグユナイテッドの異なる一面を見せた前半の優位がこの試合の大きな分かれ目だったと言えるだろう。連敗中のユナイテッドがリバプールを下し、本拠地で今季初勝利を飾った。

試合結果
2022.8.22
プレミアリーグ 第3節
マンチェスター・ユナイテッド 2-1 リバプール
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:16′ サンチョ, 53′ ラッシュフォード
LIV:81′ サラー
主審:マイケル・オリバー

第4節 ボーンマス戦(H)

鬱憤の全てをぶつけられたボーンマス

 まさかの開幕から3試合未勝利、期待のヌニェスは粗末な一発退場で早く不在、前節は絶不調のマンチェスター・ユナイテッドに初勝利を献上。そんなこれまでのリーグ戦の鬱憤を全てボーンマスにぶつけた。そんな一戦だったと言えるだろう。

 立ち上がりからボールの即時奪回と奪ったらすぐに縦に進んでいくスタンスでボーンマスのゴールに襲いかかり続ける。先制点は3分。サラーからディアスへのボールであっという間にゴールまで辿り着く。

 先制点後もリバプールは手を緩めない。この日のリバプールは精度よりも強度重視。多少、パスが乱れてしまったとしても別にOK。取り返してまた攻撃すればいい。この辺りはちょっとクロップ原理主義っぽい。プレスの手綱を握るのはヘンダーソンであることが多いのだが、前半は隙あらば彼がガンガンプレスに行くのが前半の特徴だった。勢いを殺さないまま、エリオットが追加点を奪い取る。

 20分くらいには試合は一段落。序盤はリバプールのSBは高い位置を取る暇もなく攻撃が完結してしまっていたのだが、試合が落ち着きオーバーラップする隙を見出すことができたならすぐさまミドルを打ち込むアレクサンダー=アーノルドは流石である。

 4点目を決めたのはフィルミーノ。少しラッキーな形ではあったが、ここまでのゴールは全てフィルミーノのアシストだったため、そのご褒美が回っていたと言う感じだろうか。

 前半のトドメはファン・ダイク。ロバートソンからのCKを叩き込み、ゴールショー(前編)を締め括って見せた。

 ボーンマスはなかなか時間を作ることができない。本来であればロングボールを蹴る前にポゼッションをしながら全体を押し上げたいのだが、リバプールの高い位置からのプレッシングがそれを許してくれない。

 4-4-2で挑んだ意図も不明瞭。まぁ、後ろを重くすればいいと言うものではないと言うのは後半も見れば自明ではあるが、それでも2トップが起点にもなれずプレッシングの制限もかけられないと言うのは厳しい。ボーンマスのバックラインは加速したリバプールの攻撃をモロに受けてしまっていた。失点を重ねてしまうのは当然だ。

 後半は5-4-1にシステムを変更し、心機一転したいボーンマスだったが、開始1分でオウンゴールにより失点という考えられる中で最悪の立ち上がりを披露。後半もペースを巻き返すことができず、リバプールのペースで試合は進んでいく。

 バイチェティッチのデビューやカルバーリョの初ゴールなど、後半はちょっといつもとは違う風情の展開になったアンフィールド。終わってみれば合計9得点での大勝。鬱憤を晴らす対象になったボーンマスにとっては気の毒だが、リバプールにとってはもやもやを吹き飛ばす今季初勝利となった。

試合結果
2022.8.27
プレミアリーグ 第4節
リバプール 9-0 ボーンマス
アンフィールド
【得点者】
LIV:3′ 85′ ディアス, 6′ エリオット, 28′ アレクサンダー=アーノルド, 31′ 62′ フィルミーノ, 45′ ファン・ダイク, 46′ メファム(OG), 80′ カルバーリョ
主審:スチュアート・アットウェル

第5節 ニューカッスル戦(H)

イサクのデビューを上塗りしたカルバーリョ

 前節、ボーンマス相手に大量9得点を挙げて得失点差のジャンプアップと引き換えにプレミア解任第一号を誘発したリバプール。一体何点差までならパーカーは助かったのかは永遠の謎である。

 ここまで無敗で来ているニューカッスルは無敗と堅調。サン=マクシマンがいないものの、イサクがこの試合ではデビュー戦を飾ることとなった。

 立ち上がりからボールを持ったのはリバプールの方だった。今季ここまでの流れでは攻撃の方向が右に大幅に偏っている感のあるリバプールだが、この試合では左サイドもバランスよく使っている感があった。アンカーに鎮座するファビーニョを起点に左右に振りながら勝負をかけていく。

    左サイドではディアスが存在感を見せる。カットインと追い越してくるロバートソンのコンボを積極的に活用しPAに迫っていく。ディアス絡みの話でいうと、フィルミーノとの連携がこの試合では増えた印象。レーンを入れ替えたり重なったりなどちょっぴりマネとジョッタのような関係性を見せることがあった。

 ニューカッスルはバックラインのプレスまでは追い立てずにボールをある程度もたせる格好。カウンターから手早く刺す方針を徹底する格好だ。新加入のイサクはこのスタンスに難なくフィットしたといえるだろう。スピードは十分だし、ボールを収めることが出来る。アンフィールドでこれだけできれば上々の内容である。

   だが、内容だけでなく結果が伴ったのがこの日のイサク。デビュー戦の評価を確固たるものにしたのは先制点を挙げたことである。右サイドに釣りだされたファン・ダイクの居ぬ間にスペースから抜け出して一気にゴールを陥れる。後半にもわずかにオフサイドとは言えネットを揺らすシーンを作り、この日不在のサン=マクシマンに代わってリバプールのファンを震え上がらせた。

 リバプールは失点を受けて即座に反撃。ハーフタイムを越えてもリバプールが徹底的に攻める形を作り続ける。アンカーのファビーニョだけでなく、深く構えるヘンダーソンから相手を背走させる方で左右にボールをちらしていく。

    アクセントになっていたのはエリオット。ライン間で受けてボールを運び敵陣に侵入する動きが非常にスムーズで攻撃の変化を付ける存在になっていた。野戦病院化が進むリバプールの中盤における希望の星といってよさそうな存在である。

 そのエリオットが絡む形でリバプールは同点ゴールをゲット。手早くカウンター気味になったボールをエリオットが受けて、サラーにパスを出すとこれをフィルミーノに。右サイドからの手早い攻撃で試合を振り出しに戻す。

 後半はほとんどニューカッスルが自陣から出てこれない状況が続く。特にロングカウンターの旗手であるイサクが下がってからはその傾向は顕著になることになった。ロングカウンターの起点を失ったニューカッスルはなかなかしんどいことに。カウンターを繰り出せる余力は限定的なもの。最終的にリバプールが得点を取り切れるかがポイントになりそうだった

 それでもニューカッスルはPA内での守備は譲らず。最後までリバプールの反撃をしのぎつつ、カウンターの機会をチャンスをひたすらに伺う。そんな試合の幕を下ろしたのはファビオ・カルバーリョ。CKからなんとか押し込みこの試合のヒーローになって見せた。

   ビハインドのニューカッスルファンは5分の後半追加タイムにもかかわらず、8分近くまでプレーを続けたことにフラストレーションを溜めたはず。何とか粘るニューカッスルファンを前にしたカルバーリョの一撃はこの日のニューカッスルの頑張りを台無しにするものだった。

試合結果
2022.8.31
プレミアリーグ 第5節
リバプール 2-1 ニューカッスル
アンフィールド
【得点者】
LIV:61′ フィルミーノ, 90+8′ カルバーリョ
NEW:38′ イサク
主審:アンドレ・マリナー

第6節 エバートン戦(A)

両GKの活躍が互いのジャンプアップを阻む

 第6節のオープニングマッチを飾るのは青と赤が対峙するマージ―サイドダービー。近年は苦しむエバートンをリバプールが一蹴するという構図が目立つ一戦だが、ここまでのシーズンにおいては共に苦戦を強いられており、順調とは言い難いシーズンの滑り出しといっている。共にライバルを叩いての上位進出を目論んでいるはずだ。

 今季は5-4-1がメインのエバートンだったがこの試合では4バックを採用。戦術的な変更というよりも、ベンチを見るとCBがいないことからおそらく人員的な話が先にくる部分だろう。

    エバートンは4バックでも高い位置からボールを追いかけないスタンスはキープ。ハイプレスはそこまで行わないスタンスでプロテクトは中央を優先する。要するに、これまで5バックでやっていたことを4-5-1でやっているというイメージである。

 リバプールはこれに対いて右サイドを中心に攻撃を組み立てていく。前節活躍したエリオットがいるこちらのサイドにアンカーのファビーニョまで流れる形で人数をかけて崩していく。

 今季これまでのリバプールはヌニェスが起用されている時間帯ではアバウトでも裏に抜ける彼にボールを預けてしまうパターンが多かった。しかし、この日はそもそもエバートンのライン設定は低く、ヌニェスが流れたり抜け出したりするスペースはなかった。そういう意味では存在感がイマイチだった。

   右サイドからファーのヌニェスに向かうクロスがリバプールの王道パターン。だが、これはなかなか刺さりきらない。

 それ以上にリバプールがらしくなかったのはプレッシングである。エバートンのバックラインに対してほとんど追いかけて捕まえることができない。リバプールのハイプレスのスイッチを入れるのは割とヘンダーソンな気がするので、カルバーリョとエリオットにはそのあたりは少々荷が重かったかもしれない。

 プレスのスイッチがかからず、エバートンはバックラインから自由にフィードを飛ばすことが出来た。逆にエバートンは散発的にやるプレスをうまくハメることが出来ていた。リバプールのCBは慌ててしまい、ショートカウンターでゴードンに仕留められそうになったことも。

 劣勢に苦しむ後半、リバプールはフィルミーノを投入し4-2-3-1に移行。左右にバランスよく展開しながら味方を助ける動きが少しずつ出てくるようになっていく。

 前半から言えることだが、この試合はミドルゾーンにおける攻防が非常に少なく、どちらかのゴール前でプレーが進むことが多い。そういう意味では中盤がなくなったような試合といってもいいだろう。

 リバプールは外循環で攻めていく。左の大外をツィミカスで突っついたのはわかるけども、エリアの外からの武器という意味では同じく有効なアレクサンダー=アーノルドを早々とあきらめたのは少々意外だった。あまりパフォーマンスはよくはなかったけど、外から壊せる武器なので。

 一方のエバートンはロングカウンターが主体。この試合ではリバプールの即時奪回がそこまでだったため、敵陣で落ち着いてボールを持てる機会もしばしば。

 両チームともそれなりにゴール前での攻撃の機会があり、それなりに決定機もあった。だが、この試合の後半の主役は両GKである。アリソン、ピックフォードの2人はことごとく相手の決定機の前に立ちはだかり得点を許さない。

 特にピックフォードは止めれば止めるほど乗ってくるタイプのGK。クロップが試合後に「どうしようもない」とコメントした通り、リバプールをシャットアウトして見せた。

 GKの神がかり的な活躍もあり、マージ―サイドダービーはスコアレスドローで終了。ライバルを踏み台にしたジャンプアップには至らなかった。

試合結果
2022.9.3
プレミアリーグ 第6節
エバートン 0-0 リバプール
グディソン・パーク
主審:アンソニー・テイラー

第9節 ブライトン戦(H)

らしさと結果を両立させた旅の始まり

 監督の玉突き人事に見舞われたブライトン。ポッターとの突然の別れを経てデ・ゼルビとの新たな旅が今節から始まることになる。始まりの地はプレミア屈指の難所であるアンフィールドだ。

 立ち上がりからブライトンはデ・ゼルビらしいボールの動かし方を見せる。変わったのは大きな展開の対角のパスが減り、バックラインと中盤を行き来する縦方向のベクトルのパスが増えたことである。

 相手を1つ目の縦パスで動かし、リターンを受けた後方の選手が1つ目のパスで動かしたところを次のパスでつく。ざっくりといえばこういう流れだろうか。パスをフリに使って本命のパスを通し、フリーの選手がターンして前を向く。そうしたメカニズムで前進していく。

 この日のブライトンにとって助かったのは対戦相手のリバプールとのかみ合わせが悪かったこと。バックラインにリバプールのWGを食いつかせることができれば、ブライトンのWBはフリーに。ブライトンはここを安全地帯としてチャレンジをすることができる。

 縦パスを通す判断の素早さはこのサッカーで最も大きな特徴といえるだろう。ブライトンの先制点はセカンドボールで粘り切った中盤はさすが。その上で、ボールを奪ってからのアタッキングサードでの加速からあっという間にシュートチャンスを迎えたのはいかにもデ・ゼルビ流というところだろうか。マック=アリスター→ウェルベックとつなぎ、最後はトロサールがゴールを決めて見せた。

 2点目はより狙いが如実に出たシーンといえるだろう。ワイドに揺さぶったウェルベックからマイナスのパスを受けたマーチがワンタッチで抜け出すトロサールに。マイナスのパスにいったんリバプールが食いつくように前がかりになったのをうまく利用したワンタッチパスだった。リバプールとしてはリアクションの良さが仇になった形になる。

 ブライトンほどでははないが、リバプールの攻撃もそこまで悪いものではなかった。チアゴ、マティプが揃っていたことで遅攻のカギはあった。ブライトンは3トップを2トップ+トップ下気味にプレスで変化することでマーカーをはっきりさせていた。

 リバプールの追撃弾はウェルバックから逃げたマティプが持ち運んだところから。プランは適切だったが、やり切ることが出来なかったブライトン。隙を突かれた形での失点となった。

 徐々に試合はテンションが上昇し、強度勝負になっていく。そうなるとペースはリバプールに。後方の選手がパスを出す余裕をもてなくなったブライトンは怪しいひっかけ方を増やし、ビルドアップに安定感を失っていく。WBへのケアも強気になっており、リバプールは前がかりのやり方がハマったといえるだろう。

 早い攻撃の打ち合いで決め手になったのはルイス・ディアス。後半から入ったディアスが同点弾をおぜん立てすると、リバプールはそこから一気に勢いに。セットプレーからウェブスターのオウンゴールを誘発し、逆転までこぎつける。

 ビハインドの切り札としてデ・ゼルビが選んだのは三笘。左サイドから対面のアレクサンダー=アーノルドを手玉に取り、投入直後から存在感を見せる。そして、同点弾もこのサイドから。左サイドから三笘が上げたクロスを決めたのは三度トロサール。見事なハットトリックで再び試合を引き戻す。

 就任初戦でいきなりらしさを見せたデ・ゼルビ。トロサールの大暴れと三笘の決定的な働きもあり、上々の船出に成功することとなった。

試合結果
2022.10.1
プレミアリーグ 第9節
リバプール 3-3 ブライトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:33‘ 54’ フィルミーノ, 63‘ ウェブスター(OG)
BHA:4’ 17‘ 83’ トロサール
主審:アンディ・マドレー

第10節 アーセナル戦(A)

大人なクローズで見せた力の差

 まさしく電光石火の立ち上がりだった。ゴールが入ったのは試合が始まった1分も経たないうちのこと。左サイドから抜け出したマルティネッリがいきなりリバプールのゴールネットを揺らし、アーセナルが先制する。

 序盤ということで落ち着かないうちの得点とも捉えられるが、アーセナルが決めた先制点の形はこの試合において彼らが狙える形でもある。高い位置を取ったツィミカスとファン・ダイクの間にサカが入り、そこから逆サイドまで展開しアレクサンダー=アーノルドを前後で挟み撃ち。身動きを取れなくする。相手のバックラインをスライドさせてから裏を狙うというビジョンは見事。理想を早々に実現したアーセナルがあっという間にリードを奪う。

 一方のリバプールは前の4人の抜け出しを最大限に使うやり方を採用。バックラインのパス回しでアーセナルの中盤を引き出しつつ、右は外にサラーを固定。アーセナルの横幅を引っ張りつつ、カバーする中盤を前に引き出す形で前線が抜け出せるスペースを確保できている状態だった。

 そういう意味では同点ゴールは狙い通りだといえるだろう。ポジションを入れ替えるように右サイドに抜け出したディアスからラストパスをヌニェスに送り同点。アーセナルはガブリエウが足を延ばして処理したボールを敵に渡してしまうことになった。

 アーセナルはリバプールの縦に早い形に付き合わされていく。リバプールの守備にツッコミどころがある分、アーセナルが縦に急ぎたくなる理由もわかる。ボールを持ちながら攻められるアーセナルが急いでしまったことで試合は落ち着かない展開に。お互いにチャンス自体は作れてはいたが、この展開自体はリバプールが望んだ土俵といえるだろう。それだけに前半終了間際に得たサカのゴールは非常に大きい意味を持った。

 後半はアーセナルが急ぐ攻撃の精度を上げた分、追加点の匂いがするようになってきた。左サイドのマルティネッリの抜け出しに狙いを定め、確実に勝てるマッチアップを見極めてきた形である。

 しかし、次の得点を決めたのはリバプール。ジョッタ→フィルミーノのコンビネーションから始まった2点目は圧巻のクオリティ。アーセナルとしてはサリバの動きがややカットインに備えるのはやや早かった分、ジョッタ→フィルミーノのパスコースはより空くことになってしまった。

 ここまで一進一退かややアーセナルの方が決定機は多かった。しかしながら、終盤になると近々の地力の差が出てくるように。ボール保持した後に落ち着いて人数を賭けながら落ち着けることができるアーセナルの長所が徐々に直線的なリバプールを遮る。

 敵陣を押し込んでからのクオリティもアーセナルは十分。大外から次々と選手が出てきて、リバプールのバックラインにギリギリの苦しい対応を強いていた。チアゴのPK献上も押し込まれるケースにおいて確率が高まるアクシデンタルなコンタクトだった。

 リードを奪ったアーセナルはボールを持ちながら敵陣に押し込むアプローチで確実に時計の針を進める。リバプールが次々に裏を攻めれるアタッカーを下げてしまったこともあり、ホールディングを入れてバックラインを厚くする必要はないと考えたのだろう。

 決勝点でリードを奪うと、保持とプレスによる大人の対応でゲームをコントロールしたアーセナル。確かな力の差を見せつけて首位キープに成功した。

試合結果
2022.10.2
プレミアリーグ 第10節
アーセナル 3-2 リバプール
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:1′ マルティネッリ, 45+5‘ 76’(PK) サカ
LIV:34‘ ヌニェス, 53’ フィルミーノ
主審:マイケル・オリバー

第11節 マンチェスター・シティ戦(H)

息の詰まる後半に決着をつけたのは

 近年のプレミアでは双璧をなす両雄の一戦。だが、今年は例年と異なり、無敗のシティにボトムハーフで不振にあえぐリバプールが胸を借りるという構図での激突となった。

 前節のサウサンプトン戦からシティはバックラインのメンバーはいじらなかったものの並びを変更。左に入っていたカンセロを右に移し、アケを左に出す形でリバプールを迎え撃つ。中盤の構成はIHの2人が比較的フラットに並ぶ形。ギュンドアンがエリア内に突撃していく機会の多さを踏まえると、デ・ブライネのトップ下を採用しているとはちょっと言いにくい感じである。4-3-3と捉えるのが自然だ。

 ビルドアップはカンセロを押し出す形での後方3枚が主流。右サイドから作る形がメインでデ・ブライネにボールが入ると一気に攻撃は加速する。仕留める形は右からハーランドと入り込んでくるギュンドアンに直接入れ込む形か、逆サイドのフォーデンまで展開し、抉る形を作ってからエリア内に折り返すかの二択。どちらを使うかはデ・ブライネ次第!といった感じであった。

 今季のリバプールですでにおなじみになったが、前線からのプレッシングでリズムを掴むことはこの試合もできない。それに対してプレスを効かせていたのはシティ。デ・ブライネとギュンドアンがハーランドを追い越す形でCBにプレスをかけてまでハイプレスを敢行していたのは印象的だった。

ただし、リバプールのバックラインの踏ん張りはこの試合ではよく効いていた。負傷直後にベンチに入ったアレクサンダー=アーノルドの代わりにスタメンを張ったミルナーを含め、バックラインはパフォーマンスが安定していたのは救いである。シティが30分以降にさらにゴールの気配を強めてもエリア内では完全に主導権を渡すことはなかった。

 保持においても見せ場は十分あったといえるだろう。アリソンを使ってハイプレスを超えることができれば、ロドリの周辺にはスペースは十分にある。この日の主役はサラー。アーセナル戦では外に張ることで他の前線の選手たちが裏に抜ける手助けをしていたが、この日は完全なメインディッシュである。自身が裏抜けをしながら、エリアに迫っていく役割を担い、ゴールをダイレクトに脅かす振る舞いを徹底する。リバプールが途中から4-2-3-1にして、サラーを中央に移動させたのも彼自身がゴールに向かう機会を増やすためであろう。

 当然、その分ワイドに開く人は減るわけだが、このあたりはSBのミルナーがオーバーラップで見事にカバー。アレクサンダー=アーノルドに比べるとできることは少ないが、着実にタスクをこなしているのは好印象である。

 後半の頭はシティが4-2-3-1に変更。手早い攻撃でリバプールとの打ち合いに挑む。エリア周辺のパスワークでの流麗さでいえば明らかにシティに軍配。しかしながら、リバプールは降りてくるフィルミーノがカウンターの起点になっており、シティはここをなかなか咎められなかった。

 サラー、ジョッタ、ハーランドなど両チームともエース級の選手が決定機を得るが、互いになかなかゴールを割ることが出来ず。アリソン、エデルソンの美技も飛ぶかう中でゴールという結果になかなかたどり着くことが出来なかった。

 先にネットを揺らし、歓喜を上げたのはシティ。しかしながらこれはゴールまでのプロセスの中でハーランドのファウルがあったため取り消しになってしまう。

 首の皮1枚で助かったリバプールは再三決まらなかったサラーの抜け出しがようやく火を噴き先制。サクッと入れ替わられたカンセロとやけに淡白なFKでアリソンにリスタートの機会を与えたデ・ブライネにとっては痛恨だったといえるだろう。

 最後まで猛攻をかけるシティ。カンセロにとっては汚名返上となりそうなスーパーな折り返しもリバプールの最終ラインに防がれてしまう。試合自体がヒートアップする機会が増えて、クロップも退場したリバプールだが、DF陣の集中は最後まで継続。シャットアウト勝利を決めた。

 今季3勝目は宿敵相手挙げた貴重な一勝。ジョッタの怪我は気がかりだが、勢いに乗って上位を目指せるための足掛かりにしたいところだ。

試合結果
2022.10.16
プレミアリーグ 第11節
リバプール 1-0 マンチェスター・シティ
アンフィールド
【得点者】
LIV:76‘ サラー
主審:アンソニー・テイラー

第12節 ウェストハム戦(H)

2人のストライカーの特性を存分に生かす

 ディアスに続いてジョッタも離脱。リバプールの前線の事情はだいぶ苦しいことになってきた感じがある。欧州カップ戦も掛け持ちしているというハードな状況において、かなりやりくりが難しくなってきたのは否めない。

 一方のウェストハムはズマがCBに復帰。今節はダウンズが中盤に入る形での少しアレンジを加えたフォーメーションでアンフィールドに乗り込む。

 ウェストハムのフォーメーションは4−3-3と4-4-2のハーフアンドハーフという感じ。非保持においてはボーウェンを前に残す4-4-2のような形の方が多かった。カウンターを見据えてボーウェンを前に出しておきたいということもあったのかもしれない。

 しかしながら、ウェストハムは非保持における4-4-2の形が歪。前に出ていく意識はあるものの、前後が分断気味になってしまいライン間をコンパクトに保つことができない。かつ、2トップはキーマンであるチアゴを管理することができないという厳しい状態に。ライン間が空いてくると輝いてくるのはフィルミーノ。相手が生み出した隙をつく達人であるフィルミーノに縦パスを入れてリバプールは前に進んでいく。

 もう1人のFWであるヌニェスも好調だ。バックラインのチアゴはダイレクトな裏へのパスでヌニェスを走らせながらゴールに直線的に向かうアプローチも敢行。ボールコントロールには難があるが、とにかくゴールに向かう力がとても強い男にはぴったりのアプローチである。

 持ち味を生かすことができた2人のFW。先制点を決めたのはヌニェスの方だった。チアゴが展開した左サイドからのクロスに合わせてウェストハムのゴールをこじ開けて見せる。

 リバプールに比べるとウェストハムはアタッカーの持ち味を生かすことができなかった。ボールを大事にする意識が強かったこの日のウェストハムはスカマッカにはボールを入れるチャレンジがそもそもなかなかできない状態に。基本的には触ってナンボのストライカーは完全に孤立してしまった。

 ウェストハムはより手薄なサイドの攻略に挑むが、この日のリバプールはエラーになることも多いアレクサンダー=アーノルドも食らいつきながら守る。前半終了間際にチャレンジが遅れたことで献上したゴメスのPKもアリソンがセーブ。追いつくことを許さない。

 後半、試合のテンポを上げていくウェストハムだがリバプールはフィルミーノを指南役としたハイプレスで対抗。カウンターのスピード感も十分でウェストハムに得点の隙を与えない。

 停滞感の割にはモイーズはアントニオの投入が遅かった感がある。74分に投入したアントニオで推進力を得ると最後の力を振り絞りリバプールのゴールに向かうウェストハム。左サイドを攻略したベンラーマから生まれた決定機はソーチェクのゴールをアリソンが阻んで得点には至らず。

 ストライカーの特性を活かして先制点を得たリバプールが2試合連続でMOM級の働きを見せたアリソンの貢献で逃げ切りに成功。公式戦3連勝で本格的な反撃の態勢に入った。

試合結果
2022.10.19
プレミアリーグ 第12節
リバプール 1-0 ウェストハム
アンフィールド
【得点者】
LIV:22′ ヌニェス
主審:スチュアート・アットウェル

第13節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)

デザインされたセットプレーで最大級のアップセットを提供

 なかなか未勝利地獄から脱出できないノッティンガム・フォレスト。ランチタイムで迎える今節の相手はようやく連勝で勢いが出てきたリバプールである。

 だが、星取りとは裏腹にリバプールは台所事情の苦しさが目立つ。特に苦しいのは前線。ディアス、ジョッタに続いて今節はヌニェスも欠場となり、控えメンバーで最も攻撃的な選手はオックスレイド=チェンバレンになっている。司令塔のチアゴも不在となり、中盤のやりくりも決して楽ではない状況だ。

 というわけで早い時間に得点が欲しいリバプール。フォレストは立ち上がりから猛プレスをしてくることはないので、問題なくボールを持つことができる。

 この日のリバプールの攻撃は右サイド偏重。とはいえこれまでと違い、逆サイドがディアスではないのである程度は仕方ないという感じでもある。カルバーリョはボールが集まってくるわけではなかったけども、動き出しをサボらずに駆け引きしている感じはよかった。そしてその動き出しを見逃さないゴメスの配球もよかった。

 右サイドの攻撃はミルナーの斜めのランが効いていた。大外に相手を釘付けにしてから斜め方向に内側に入ってくるオフザボールの動きでフォレストを翻弄する。動けるクヤテの注意をきっちり外に向けることができればかなりクリティカルなチャンスになっていた。

 セットプレーの好機もあり、押し込むこと自体がある程度得点のチャンスに掴み取れないそうなリバプール。しかし、無理に中央につけようとするとフォレストのカウンターの好機に。前半の中盤あたりはかなりリバプールはミスが目立っていたため、少なくない機会でフォレストはロングカウンターに向かうことができていた。

 しかし、フォレストはこの好機を活かせない。ボールを2,3本繋ぐ過程でミスが出てしまい、リバプールのDF陣にチャレンジする手前の段階で攻撃が終了してしまうのは勿体無い。リンガードにはこの辺りをスムーズに牽引して欲しいのだが、なかなかスマートにボールを前につなげない。

 序盤を見る限りリバプールのプレスは中盤の連動が遅れていたため、フォレストはショートパス主体の保持を根性入れて頑張る!でもよかったのだけども、早い攻撃も遅い攻撃もなかなかリバプールを脅かすクオリティまでは持っていけず。攻略するのには苦労した前半となった。

 迎えた後半はカウンターの打ち合いからスタート。打ち合いになればリバプールに分がありそうなものだが、ゴメスのパスミスからファウルを与えると、このプレーからアウォニイが先制ゴールをゲット。大外にクックを走らせるデザインされたセットプレーから先手を奪う。

 追い込まれたリバプールはアレクサンダー=アーノルドを投入。右サイドの攻撃力強化に加えて、セットプレーのキッカーを強化することで畳み掛けにいく。

 フォレストは5-3-2に変更し、撤退を最優先。ジョンソン、ギブス=ホワイト、クヤテorイエーツでロングカウンターからあわよくばという形にシフトする。試合終盤には2トップもサイドの守備に駆り出されるようになり、場面によっては6-4-0のように見える場面すらあったほどである。

 そんな撤退守備に対して、リバプールはセットプレーを中心に攻め立てる。おそらく、この日一番決定機を多く手にしたリバプールの選手はファン・ダイクというのがリバプールの攻撃を物語っている。

 しかし、立ちはだかったのはヘンダーソン。押し込まれても冷静にミスなくプレーを正確に刻み続ける守護神によって、リバプールはゴールをこじ開けることができない。

 試合はそのまま終了。フォレストはウェストハム戦以来の今季2勝目をゲット。一方のリバプールはアウェイでのリーグ戦は5戦勝ちなし。ワールドカップまでにアウェイで勝利を挙げるにはトッテナムを下さないといけないという状況になった。

試合結果
2022.10.22
プレミアリーグ 第13節
ノッティンガム・フォレスト 1-0 リバプール
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:55′ アウォニイ
主審:ポール・ティアニー

第14節 リーズ戦(H)

大抜擢された若手が要塞陥落の大仕事

 けものプレミアの配信はいつも配信者たちが映像を速くしたり遅くしたりしながら時間を合わせている。この試合の立ち上がりは時間合わせが終わり、通常速度にしたにもかかわらず「あれ?これ1倍速?」と疑いたくなるような立ち上がりの強度だった。つまりは両チームがそれだけ高い強度で入ったということである。

 そのテンポを牽引していたのはアウェイのリーズである。ハイライン、ハイプレスの急戦でリバプールにテンポを上げて決闘に応じるよう促すかのような振る舞いで、激しくプレスをかけ続ける。ボールを奪ったら素早く縦にというムーブを続けて攻守の切り替えを繰り返す。

 リバプールにとってもこのリーズのスタンスは悪くないものだった。今季のリバプールはエンジンのかかりが遅く、なかなか強度が高いパフォーマンスを維持できない。そういう意味ではリーズがケツを叩くかのように振る舞ってくれたことはありがたい部分もある。強制的に高いテンションに着火せざるを得ないからだ。これでなかなかエンジンがかからないという今季の懸念の1つは消えたことになる。

 しかし、この高いテンションにほだされてしまったのもリバプール側。右サイド奥深くで受けたプレスに対して、繋ごうとしたゴメスがロドリゴにプレゼントパス。アリソンがいない無人のゴールに沈めるだけという今季最も簡単なシュートのお膳立てをしてしまう。リーズも直前でDFとGKがあわや!連携ミスをしていただけに明暗が別れる格好になった。

 リーズは得点後も強気のプレスをしてきており、特にマイナスのパスに対しては二度追いを繰り返す。それでもリバプールの布陣上、中央に刺すパスをやらないわけにはいかない。涼しい顔で縦パスを刺していたチアゴは流石である。

 リバプールは3人のFWのうち、サラーは右サイドに寄りながらアレクサンダー=アーノルドと連携して大外の崩しに参加。フィルミーノは中央の幅広い範囲に顔を出すなどかなりポジションは自由だった。

 同点弾はサラーが流れた右サイドから。サラーとアレクサンダー=アーノルドのコンビからファーにクロスを届けると、ロバートソンの再びの折り返しをエリア内に入り直したサラーが押し込んで同点にする。

 同点ゴールを決めてようやく徐々に落ち着いてポゼッションの機会を増やすリバプール。後半の頭にかけてリバプールはゆったりとした時間を過ごす。しかし、リーズは前節と同じように試合の起爆剤としてバンフォードを投入。プレス隊長を入れることで試合は再び前半のような激しいプレスの応酬に引き摺り込む。

 乱戦の様相となった後半。際立っていたのはメリエである。リバプールの決定機を次々と阻止。決して彼らにリードを許さない。アンフィールドの観客からのプレッシャーさえ味方につけるかのようなパフォーマンスでタイスコアを継続する。

 そのメリエに応えたのがアタッカー陣だ。ジョーカーになったのはなんと今季初出場になったニョント。イタリア代表に選ばれた俊英は交代で入るとすぐさま前線でアクセントに。すると89分、左サイドで2枚のディフェンスを剥がすと、中央のバンフォードになんとかボールを届ける。その落としを拾ったサマーフィルが決勝点をゲット。

 チャンスが多かったのはリバプールだが、このゲームのテンポを管理していたのはリーズ。ニョント、サマーフィルという若手の活躍で、リバプールの最後の砦だったアンフィールドは陥落。リーズにとって2ヶ月ぶりのリーグ戦勝利は思いもよらない特大インパクトでもたらされることになった。

試合結果
2022.10.29
プレミアリーグ 第14節
リバプール 1-2 リーズ
アンフィールド
【得点者】
LIV:14′ サラー
LEE:4′ ロドリゴ, 89′ サマーフィル
主審:マイケル・オリバー

第15節 トッテナム戦(A)

W杯前にアウェイ初勝利を達成

 リーグ戦は直近3試合で2敗と苦しむトッテナム。ワールドカップ開催前の本拠地に迎えるのは今季アウェイのリーグ戦で未勝利のリバプールである。

 陣容で見れば苦しい両チーム。特に前線のやり繰りは非常に苦心している。トッテナムはソンの負傷でWBのペリシッチをスクランブル起用。リバプールもありったけのFW陣を投入するスタンスがもはやお馴染みになっている。

 ボールを持つことができたのはリバプールだ。3枚目が時折DFに当たってくるトッテナムの前からのプレスをかわすのは問題なし。プレスの届きにくいSBから落ち着いてポゼッションをすることができた。

 前線はボールを収める起点として機能。左サイドに流れたヌニェスが裏に抜けながらトッテナムのラインを押し下げて見せる。前線の踏ん張りでSBのオーバーラップの時間を作ることができれば、リバプールはより厚みのあるサイド攻撃をすることができる。

 先制点を奪ったのはリバプール。中盤で時間を作ったフィルミーノとエリオットから、左サイドのロバートソンのオーバーラップを促す。ロバートソンからのクロスを収めたのはヌニェス。ラストパスをサラーに送り先制点をゲットする。敵陣に押し込んでからの攻撃はやや苦しんでいたが、スピーディにゴールまで迎えるシーンでは強さをみせた。

 トッテナムは右サイドに流れるケインからチャンスメイクを狙う。しかしながら、孤軍奮闘感はどうしても否めず。なかなかゴールまで向かうことができない。バックラインは懸命なスライドでリバプールの攻撃を防いでいたが、40分にダイアーの決定的なミスからリバプールに追加点を献上。このゴールでやや意気消沈してしまった感は否めない。

 苦しくなったトッテナムは右サイドを軸に反撃に出る。ダイアーは積極的に攻撃に参加して、ポゼッションでサイドに+1を確保するように。左右に相手を揺さぶりながらのボール保持でトッテナムは後半に押し込む機会を増やしていく。

 逆にリバプールは左サイドからカウンターを狙っていく。しかしながら、徐々にヌニェスが低い位置まで下がって守備をするようになったため、カウンターの威力は低下していく。

 畳み掛けるようにトッテナムは右サイドの攻撃を強化。ドハーティと待ちに待ったクルゼフスキの投入で一気に同サイドからリバプールのゴールに迫っていく。

 交代直後にはケインのゴールが生まれるなど、終盤は完全にトッテナムペースに。強引にゴールをこじ開けるためのトライをしていたが、リバプールはアリソンの安定感と、DFの枚数増加で対抗する。

 猛攻を凌ぎ切ったリバプールは苦しみながらもトッテナムの本拠地制圧に成功。W杯前最後のアウェイゲームでようやく今季のアウェイ初勝利を手にすることに成功した。

試合結果
2022.11.6
プレミアリーグ 第15節
トッテナム 1−2 リバプール
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:70′ ケイン
LIV:11′ 40′ サラー
主審:アンディ・マドレー

第16節 サウサンプトン戦(H)

起点にフィニッシャーに大暴れのヌニェス

 トッテナムの本拠地を攻略し、悪い流れをひとまず食い止めたリバプール。W杯の中断前の最後の試合はホームにネイサン・ジョーンズ新監督の初陣となるサウサンプトンを迎えての一戦となる。

 リバプールのフォーメーションはすっかりお馴染みの3トップを軸としたもの。4-3の後方にトップの個性を合わせながら戦っていくものである。

この日の主役はヌニェス。サウサンプトンの4-4-2の2トップ脇からチアゴやロバートソンがボールを持ち、同サイドの裏側にボールを蹴り出す。裏に走るヌニェスとベラ=コチャプの戦いはなかなかに見応えがあった。ベラ=コチャプも奮闘してはいたが、ここはヌニェスの得意分野。パワーとスピードをスペースで競う形では負けない。

 逆サイドではサラーが相手を背負う形で起点を作る。サイドを主体に押し込む機会を得たリバプールはセットプレーから先制。右サイドからのFKで先手を奪ったのはフィルミーノ。ブラジル代表に選ばれなかった悔しさをぶつける先制点をもぎ取り、リバプールがリードする。

 しかし、サウサンプトンも即座に同点に。こちらもセットプレーからアダムスがゴールを奪った。すぐにやり返すことができたのは、リバプールと同じくサウサンプトンも流れの中で前進の手段を得ていたからである。

 非保持においては4-4-2気味だったが、保持においてはやや変化をつけてきたサウサンプトン。ウォード=プラウズが1列前に入り、S.アームストロングがインサイドに絞り、プローがWBに入る3-1-4-2気味の陣形に。

 アダムスへのポストをS.アームストロングが拾い、そこからサイドに展開しながら敵陣に迫るという形は効果的。アダムスはリバプールのバックライン相手に十分ボールを収めることができていたし、MF陣はリバプールの中盤の守備の切れ目で巧みにボールを拾ってみせたし、パスワークのリズムとスピードも順調だった。

 ヌニェスとアダムス、どちらのFWも前進に大きく貢献していたが、ここから先の時間帯でのフィニッシュの貢献度には差が出ることに。勝ち越しゴールを決めたのはヌニェス。エリオットからの抜け出しで追加点を奪うと、ロバートソンのオーバーラップから折り返しを受けて前半のうちにさらに加点。ハーフタイムまでに2点のリードを奪う。

 後半のアダムスにも得点を奪うチャンスは十分あったが、立ちはだかったのはアリソン。髭を剃って見た目が変わっても、リバプールのゴールマウスに鍵をかける役割は同じ。アダムスの更なる得点を許さない。リバプールが徐々に4-4-2フラットの陣形で低い位置まで下がるブロックを組むようになったこともあり、後半のサウサンプトンは前半ほど伸び伸びと攻めることはできなかった。

 早い時間でリードを奪ったということもあるが、高いラインを張るサウサンプトンとリバプールのFWのダイナミズムを活かした攻めの相性は良かったように思う。試合終盤までリバプールには決定的な得点のチャンスがあったし、その多くはサイドの裏抜けから生み出されたものである。

 撤退ブロックの崩しという課題は据え置きだが、そこの課題に向き合うのは前線の故障者が帰ってきてからということになるだろう。終盤まで攻め続けたリバプールはサウサンプトンに反撃を許さずに逃げ切りに成功。苦しい前半戦となったが、最後は連勝で中断期間を迎えることになった。

試合結果
2022.11.12
プレミアリーグ 第16節
リバプール 3-1 サウサンプトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:6′ フィルミーノ, 21′ 42′ ヌニェス
SOU:9′ アダムス
主審:シモン・フーパー

第17節 アストンビラ戦(A)

乱戦に終止符を打った若武者

 ここからCL出場圏内にジャンプアップをしていきたい反撃のリバプール。まず、初戦で乗り込むのはビラ・パーク。エメリ就任間もないアストンビラがリバプールの前に立ちはだかる。

 試合は序盤にいきなリアストンビラの選手同士が交錯。バタバタとした立ち上がりとなった。今思えば、そんな立ち上がりはこの試合の落ち着きのなさを象徴していたのだろう。

 バタバタが落ち着かないままセットプレーからリバプールに先制点を許してしまったアストンビラ。とはいえ、これはリバプールを褒めるべきシーンだろう。アレクサンダー=アーノルドが最終ラインから素晴らしいフィードを送り、抜け出したロバートソンの折り返しをサラーが押し込んで先制点を奪う。ダイレクトなパスワークから生み出した華麗なフィニッシュだった。

 以降の展開も非常にダイナミックそのもの。ビラは左サイドから深さを作り、左右への大きな展開で1on1を作っている。サイドからのクロスは比較的効果があり、ビラは立ち上がりからリバプールに追いつくチャンスを作り続けていた。早い時間に先制したことで、リバプールがやや撤退気味の守備を敷く場面が増えたが、相手に持たせても意外と危険な場面を作られている。そうした部分を鑑みても、アバウトでも前進していこう!という流れから撃ち合いに持ってくるこの日のプランは彼らに合っているのだろう。

 リバプールの本命はサイドからの裏抜け。ヌニェス、サラーが無限に抜け出す動きを繰り返すことでチャンスメイクを行っていく。抜け出すところまでは完璧なのだが、ヌニェスはカップ戦に続き今日も決め切ることができない。幾度か回ってきたチャンスを全てフイにしてしまう。

 全体的に大味な流れではあるが、そうした流れに抗うこともなくスムーズに乗ったのはリバプール。アストンビラは前半途中からゴールに迫るシーンはやや減ってきた。そうした中でセットプレーから再びリバプールがゴール。混戦の中からファン・ダイクが決めて、前半の内に大きな2点目を奪い取ることに成功する。

 後半、攻勢に出たのはビハインドのアストンビラ。中央のワトキンスに積極的に縦パスを入れていくことで陣地回復を図っていく。ワトキンスのオフサイド、マッギンの決定機のチョンボなど追撃弾を挙げるチャンスをことごとく逃していたアストンビラ。だが、後半の時間がある程度過ぎても攻勢がなかなか終わらなかったのは救いである。

 もちろん、アストンビラが攻勢に出れたのには訳がある。リバプールは前線のうち、サラーとヌニェスが前残りしていたし、オックスレイド=チェンバレンは守備面でやや迷子になっていた感があったので、実質後方は7枚守っていた感があった。よって、手薄になるのはサイドの守備。アストンビラは左右の大外から無限にクロスを入れ込み、シュートまで持っていく状況をコンスタントに作れていた。。

 ただ、前残りの意味もある。サラーとヌニェスの抜け出しからロングカウンターにチャンスメイクができる状況は作れていた。いや、2人とも後半はゴールは決められなかったのだけども。

 アストンビラがようやく得点を手にしたのは59分のこと。右サイドからのクロスをファーで待ち構えていたワトキンスが叩き込み、ようやく1点差まで迫る。リバプールはエリオットを投入し、サイドできっちりクロスを咎める役割をさせるなど手当を行うことに。

 リバプールファンの脳裏によぎった不安をかき消してくれたのが交代で入ったバイチェティッチ。左サイドに流れたヌニェスの抜け出しからの折り返しの流れで、ミングスの股を抜くシュートで3点目を奪って見せた。

 乱戦に終止符を打ったのはカラバオカップでも存在感があった若武者。年末年始で上位陣を追いかけたいリバプールにとっては若手が押し上げに加わるのは頼もしい限りだろう。

ひとこと

 ヌニェスとかベイリーとかシュートの精度がアレな感じの選手がやたらとチャンスメイクで効いていた。ヌニェスは抜け出しの頻度はいつも以上な気がするけど、シュートは呪われている。シュートが呪われてしまうと、前残りの収支がどれだけ合うかは不透明。ベン・ドークくんもなかなか面白かった。

試合結果

2022.12.26
プレミアリーグ 第17節
アストンビラ 1-3 リバプール
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:59′ ワトキンス
LIV:5′ サラー, 37′ ファン・ダイク, 81′ バイチェティッチ
主審:ポール・ティアニー

第18節 レスター戦(H)

煙の立たない逆転勝利

 前節の出来で言えばホームのリバプールの勝利を阻むものは何もないかのように思えた。しかしながら、この日のレスターの立ち上がりはメリハリがはっきりついており、リバプールに食ってかかるものとしてしっかりと準備ができていたように思える。

 まず、変わったのはフォーメーション。中盤の三角形の配置を2CHに変更。これにより、リバプールのストロングサイドである右サイドにスマレが素早くスライドができるように。相手のトライアングルに食いつきやすくなる人員の配置でリバプールの強みを抑えにかかる。

 ボールを奪ったらレスターは素早く左サイドから裏を狙っていく。デューズバリー=ホール、バーンズが裏に抜ける形はいつもレスターが狙っている形ではあるが、ティーレマンスがおらず、バックラインのビルドアップの信頼度が高くない状況では普段以上に縦に速い選択をしていた。

 そして2回目の裏抜けのトライでレスターは結果を出す。大きくレスターの左サイドに偏ったリバプールのバックラインはロングボールの落としを拾い、中盤からドリブルで飛び出していたデューズバリー=ホールを捕まえることができず。ロバートソンが逆に動いてしまい、ファン・ダイクとの間がぽっかりと空いてしまった。独走したデューズバリー=ホールはアリソンとの1対1を制して先制点を奪うことに成功する。

 ストロングサイドを封じ、カウンターも鋭い。バックラインのバタバタ感はあるものの、ほぼゲームプラン通りと言っていいだろう。レスターの強気のバックラインへのプレスに対してはチアゴを落とすといういつものやり方で対応していたが、右サイドを封じられるとかなりリバプールは手詰まりに。中盤は強引な縦パスでカウンターを誘発。時間をもらえた左サイドではロバートソンがクロス、ドリブルともに不調で、アタッキングサードにおける結果を出すことができなかった。

 そうした中で同点ゴールを奪えたのはリバプールにとっては幸運。右サイドからのクロスはGKのウォードが処理すればなんて事のないボールだったが、これをニアのファエスが強引に触りにいってしまいオウンゴールに。リバプールは煙の立たないところから追いつくことに成功する。

 さらにファエスの受難は続く。左サイドから抜け出したヌニェスが放ったループはポストに跳ね返り、ファエスに当たってゴールにすっぽり。まさかの前半で2つのオウンゴールを犯してしまったファエス。うまく進んでいたレスターのプランは前半のうちに思いもよらない形での逆転で台無しになってしまう。

 後半、リバプールはプレスの強化を実施。高い位置からのプレスに力をいれて強度の部分でレスターを飲み込む。レスターのバックラインのバタバタは増長されることとなり、リバプールには追加点のチャンスがやってくることに。しかし、サラーやヘンダーソン、ヌニェスは決定機をことごとく決めることができない。

 レスターは左サイドを軸にカウンターで反撃。押し込んだ後もデューズバリー=ホールが内外を移動しながら暴れ回るなど、なかなかの好機を演出する。ティーレマンス投入以降はさらに右サイドでもサイドアタックが良質なものに。徐々にリバプールに牙を剥いていく。

 しかし、レスターの攻撃のメインを担っていたロングボールはリバプールのバックラインの体を投げ出して守備に阻まれる。時間経過とともにバーンズやヴァーディあたりには疲労を感じたが、選手的にも交代回数的にも控え選手を入れる余裕はなかった。

 終盤は落ち着いて受けることができたリバプールが前半のリードを守りきり逆転勝利を達成。再開後のプレミアを連勝でスタートした。

ひとこと

 連勝も立ち上がりを見るとバックラインを軸に不安が残る出来であるリバプール。アタッカーのフィニッシュワークのフィーリングを含め、もう少しパフォーマンス的には要求したい。

試合結果

2022.12.30
プレミアリーグ 第18節
リバプール 2-1 レスター
アンフィールド
【得点者】
LIV:38′ 45′ ファエス(OG)
LEI:4′ デューズバリー=ホール
主審:クレイグ・ポーソン

第19節 ブレントフォード戦(A)

実ったウィサの連打

 年末年始3連戦の旗頭を務め続けたブレントフォード。3連戦の最後はホームに再開後は連勝を飾っているリバプールを迎えての試合となる。

 ブレントフォードは高い位置からボールを追い回しにいく「当たり」の仕上がりっぽいブレントフォード。ビックゲームにきっちり当たりを持ってくるあたりは流石である。

 このブレントフォードの守り方に対してリバプールは手早く縦に急いでいく。ブレントフォードは高い位置でのマンツー気味の追い回しと自陣側での5-3-2のブロック守備を使い分ける形。リバプールのビルドアップにはエリオットが積極的に顔を出したこともあり、詰まる回数はいつもよりやや少なめ。ただし、長いパスの精度はあまり良くなかった。

 リバプールの理想はブレントフォードがマンツーからリトリートに切り替える前に攻撃を完結させること。自陣に戻り、陣形を整理されてしまう前にきっちりと敵陣を追い落とすことである。

 先制のチャンスを得たのはリバプール。サラーのシルクのように滑らかなトラップから抜け出したヌニェスがGKを交わして決定機。だが、これはミーに阻まれてしまいノーゴールに。

 以降はブレントフォードの5-3-2のブロックに対して、リバプールが解決策を探しにいく形になっていく。2トップの脇からチアゴ、アレクサンダー=アーノルドという塀の外から精度頼みで打ち込める選手たちが主役。早い段階でクロス勝負に打って出る。左の大外も比較的タイトではなかったので、クロスを上げるチャンスをもらえたが、こちらは精度の部分が足りずに決定的な働きができなかった。

 高い位置から捕まえにいくスタンスの時のブレントフォードはショートカウンターを軸にしていたが、リトリートしてブロックを組んでからはロングカウンターに移行。両サイドの裏のスペースから決定的な抜け出しのチャンスを作り出す。だが、これはアリソンのセーブに遭ってしまう。

 しかし、カウンターは止められてもブレントフォードのセットプレーは止めることができなかったリバプール。先制点を決めたブレントフォードのCKはコナテの足に当たりオウンゴールに。

 このセットプレーを止められないという課題はこの試合中リバプールにずっと付き纏うことになる。セットプレーの度に、ウィサにネットを揺らされ続けるリバプール。2回はオフサイドで許されたが、3回目はオープンプレーでオンサイド。ウィサは三度目の正直でゴールを決めて、前半の内に突き放すことに成功した。

 後半、リバプールは縦に速い攻撃でブレントフォードに襲いかかる。ヌニェスがようやくトンネルを抜け出すゴールを決めたかと思ったが、抜け出しのタイミングが早くオフサイド判定。

 それでもリバプールは早い時間に追撃弾をゲット。右サイドのアレクサンダー=アーノルドのクロスから合わせたのはオックスレイド=チェンバレン。ブロックの外からの攻撃を完結させたリバプールが反撃を開始する。

 ここから試合はオープンな展開に。互いに縦に急ぐ時間帯が続く中で、ゴールに向かう前の段階でつまづいてしまう。得点の匂いは後半の時間の経過とともに消えていき、ボールのロストが多い攻撃の応酬になってしまった。

 リバプールの同点の雰囲気がなかなか出てこない中で点を奪ったのはブレントフォード。コナテからボールを奪い取ったムベウモが試合を決める3点目を手にする。

 ゴールをとりに行こうとすると自らの守備が脆くなってしまう悪癖が再び顔を覗かせたリバプール。攻守の噛み合わなさが生み出す悪循環を断ち切ることができず、難所を前に黒星を喫することになってしまった。

ひとこと

 大物食いに定評があるブレントフォードは今日も結果を出して見せた。トニーがいなくてもスタイル自体の持続性を証明できたことは大きな収穫と言えるだろう。

試合結果

2023.1.2
プレミアリーグ 第19節
ブレントフォード 3-1 リバプール
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:19’ コナテ(OG), 42‘ ウィサ, 84’ ムベウモ
LIV:50‘ オックスレイド=チェンバレン
主審:スチュアート・アットウェル

第20節 ブライトン戦(A)

勝ち筋すら与えない完勝

 前回の対戦ではトロサールがハットトリックで3点を奪いながらも勝ちきれなかったブライトン。そのトロサールは渦中の人になってしまった感があるが、ブライトンの勢いは好調。リバプール相手に今度こそ勝利を手にしたいと意気込みながらホームゲームに臨むはずだ。

 リバプールは初先発のガクポとサラーが2トップのような形でブライトンのバックラインにプレスで襲いかかる。中盤も前がかりにプレスにいき、おそらく同サイドに閉じ込めながら高い位置でボールを奪おうという方針なのだろう。しかしながら、このハイプレスは怪しさ満点。特にエストゥピニャンを誰が見るのかが不透明であり、アレクサンダー=アーノルドが前に出て行ったり、ヘンダーソンがカバーに入ったり、あるいは放置されたりなど対応がまちまち。

 ブライトンはこのサイドから安定してボールを運ぶことができたため、リバプールのプレスを苦にしなかった。同サイドの三笘の裏抜け、もしくは逆サイドのマーチまで運んでの1on1。エリアに迫る武器を使う下準備はバッチリであり、リバプールのゴールを序盤から再三脅かしていた。

 特に左サイドの三笘はアレクサンダー=アーノルドとの駆け引きに完勝。マティプにもカードを出させるなど、好調の持続を感じさせる大暴れぶりだった。

 リバプールの保持はとにかくロングカウンター狙い。エストゥピニャンの背後をサラーでつく形は狙い目ではあったが、ブライトンに深い位置まで押し込まれたこともあり、ロングカウンターの精度は安定しない。

 むしろ、リバプールは20分以降に急がずに中盤で前線が降りて起点を作る動きを見せてから保持が安定するようになった。マック=アリスター、カイセドなど前向きな守備の意識が強いブライトンの中盤の背後でボールを受けるポイントを作ることで、徐々に前進ができるようになってくる。

 しかし、30分以降は再びブライトンが主導権。両WGの裏抜けを中盤から積極的に活用することでリバプールを一気に押し下げる。受け手の三笘とマーチ、出し手のカイセドは見事。特にマーチは裏抜けからあわやPKのシーンを演出し、リバプールファンに冷や汗をかかせるが、これはオフサイドで取り消し。なんとかスコアレスのまま前半を終えることに成功する。

 だが、後半早々にリバプールはミスから失点。マティプのパスミスをマック=アリスターに掻っ攫われ、ブライトンのカウンターが発動。ボールを受けた三笘が蹴ったボールは逆サイドまで流れ、マーチがこれを押し込んで先制する。

 勢いに乗るブライトンはさらに得点を重ねる。今度はライン間に降りるファーガソンが前を向いてマーチにラストパス。角度が厳しいところまで入り込んだマーチだが、ファーの厳しいコースを撃ち抜いて追加点をゲット。リバプールをさらに突き放してみせる。マティプは三笘の抜け出しが気になったせいで降りるファーガソンを捕まえられなかった。

 リバプールは右サイドを軸に深くまで切り込む機会を得るが、なかなかエリア内をこじ開けられず。サンチェスを中心とした守備陣の粘りに屈してしまう。リバプールの攻撃が終わると即時奪回でプレスを交わし、いちいち敵陣までボールを運ぶブライトンのアタッカー陣も頼もしい存在である。

 流れをさらに引き寄せたのはブライトンの交代選手。とりわけ、ウェルベックはファーガソンに負けじと存在感を放つ3点目をゲット。素晴らしい身のこなしとボールのコントロールで相手を剥がし、アリソンとの1on1を制して見せた。

 前半から好機が多かったのはブライトン。先制点が入ってからは完全に試合の主導権を手中に収め、リバプールに勝ち筋を与えない完勝で7位に浮上した。

ひとこと

 リバプールは厳しい。今日の陣容ではブライトンには何回やっても勝てないような苦しさを感じる。直線的な抜け出しが強引だった分、オフサイドに引っ掛かることも時たま見られた。ブライトンも裏抜けを多用していたが、大外でラインを見極めやすいWGがラインブレイクの主役だったため、裏抜けの割にオフサイドの少なさが非常に際立ったのが印象的だった。

試合結果

2023.1.14
プレミアリーグ 第20節
ブライトン 3-0 リバプール
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:46′ 53′ マーチ, 81′ ウェルベック
主審:ダレン・イングランド

第21節 チェルシー(H)

CL出場権はさらにおぼろげになる

 ともに勝ち点は28。優勝争いどころかCL出場権にも黄色信号が点っている両チーム。負けてしまえば光はさらに儚いものになってしまう。なんとしても上を追撃する足がかりにしたい一戦と言えるだろう。

 試合開始早々にネットを揺らしたのはチェルシー。セットプレーに反応した選手はことごとくチェルシー側という悪夢のようなセットプレーを披露したリバプール。この場面はオフサイドで許されたが、ブレントフォード戦の悪夢が蘇るような危ういセットプレーの守備で幕開けとなる。セットプレーに関してはこの場面以外にもリバプールの守備陣は何度もチェルシーの選手にフリーでのタッチを許しており、いつ失点のトリガーになってもおかしくない出来だったと言えるだろう。

 ボール保持の局面はどちらもぐぬぬという感じだった。チェルシーのシステムは保持と非保持で大きく役割が変わる形であり、上記のフォーメーションがしっくりこない人がいても不思議ではないという感じ。ボール保持では左のSBのククレジャを高い位置まで上げて3バック化し、ジョルジーニョとホールが中盤で並ぶ。大外はククレジャとツィエクが担当し、ハーフレーンにマウントとギャラガーが入る形となっていた。

 このチェルシーの可変に対して、リバプールは前節のブライトン戦と似た傾向を見せる。右のWGであるサラーがインサイドに絞って守備をするが、そのサイドの大外の選手(=ククレジャ)のケアが甘く、ここに誰が出ていくかが不明瞭。しかし、チェルシーはブライトンとは異なり、このサイドまでクリーンにボールを届けることができない。あるいは届けようとせず、フリーのククレジャを使おうという気がハナからなかった。

 他に前進の手段があれば別にいいのだが、裏を狙うタイミングが少し早く、縦に速いボールはやや淡白さが否めない感じ。ブロックの外から精度の高いボールを蹴っていたツィエクのフィーリングは悪くなかったが、基本的には受け手が一杯一杯になっている場面が多かった。

 対するリバプールの保持も苦しいところがあった。チェルシーの非保持はマウントが前線、ホールが左ワイド、中盤にジョルジーニョとギャラガーが並ぶ4-4-2であるが、前の6人の守備の間延びが非常に大きく、簡単にライン間のスペースを空けていた。

 特にギャラガーの行動範囲の広さは気になる部分で、追いかけ回す割にはボールを奪いきれずにリバプールに空いたスペースを使った侵入を繰り返される羽目に。同サイドに圧縮しようとする意識が強かったチェルシーの中盤より前の守り方だが、リバプールはすり抜けながら逆サイドまで簡単にボールを運ぶことが多かった。

 ただ、リバプールの課題はこの同サイドにおける崩しのバリエーションである。右のアレクサンダー=アーノルドがいないという事情は割り引かなくてはいけないが、外からクロスを狙う形はやや精度を欠く。サイドから押し下げてジョルジーニョを中央から引っ張り出すなど、バイタルが空いた場面こそあるが、中央へのパスが繋がらないため台無しになってしまう場面もしばしばである。

 相手の守備の陣形の欠陥はあるが、そこを使おうとした時にため息が出るような簡素なミスが出てしまうというのはリバプールだけでなくチェルシーの保持に共通する難点。好調ではない分、目を瞑らなくてはいけないのだろうが、どちらも相手の守備ブロックのソリッドさを考えればもっとチャンスは多くてもいいはず。セットプレーではチェルシーの方が明確に有利だったが、流れの中ではどちらも残念さが先立つボール保持だった。

 後半、リバプールは腹を決めたプレスで着火。チェルシーのビルドアップ隊はこれをかわし切ることができず、リバプールにハーフコートゲームを許してしまう。押し込みながら勝負に出るが、バックラインが体を張るチェルシー。低調な試合の中でもリズムを崩さないチアゴ・シウバは流石である。

 55分が過ぎるとリバプールのプレスは徐々に弱まっていき、チェルシーが前進できるように。この時間に出てきたのがムドリクである。デビュー戦としてはサポーターに期待を持たせられるものだったのではないか。オープンスペースでのスピードで相手をおいていけていたし、エリア内での細かいボールタッチも苦にしていなかった。右サイドのツィエクからのクロスをファーで待ち構える形での2回のチャンスのどちらかを決めていればサポーターの心を掴んでいただろう。

 ただし、ボールを持っていない時の顔を出すタイミング、消えるタイミングはどちらも難あり。連携には時間を要すかもしれない。また、守備は献身的ではあるが、ボールを狩りにいくプレーはシャフタールのCLではあまり見かけなかったので、チームがプレスからリズムを握ろうとする際には少し悪い意味で気になるかなというところ。もっとも、若い選手なのでこの辺りの向上はこれから見込める部分ではある。

 リバプールで存在感を放っていたのはヌニェス。ロングカウンター、サイドにボールがある時の抜け出しのセンスは相変わらず抜群。シュートは確かにこの日も苦しい形だったが、いない状態ではシュートに持っていくのすら難儀だったので、リバプールからすれば明らかに必要な存在と言えるだろう。

 交代選手の活躍で終盤に期待がかかる展開だったが、80分付近の互いに3人ずつ交代したあたりからは再び試合はトーンダウン。ともに勝ち点3を狙うチームとしてはやや寂しい迫力に欠けた終盤に。どちらも浮上のきっかけとなる勝ち点3は掴めなかった両チーム。CL出場権はまた少し朧げな存在になってしまった。

ひとこと

 余裕を持った形での決定的なチャンスというのは流れの中ではあまりなく、引き分けは妥当。パスを繋ぎながらゴールまで水を運ぶ途中でこぼしてしまう!という感じのシーンの連続でどちらのチームも調子の悪さが浮き彫りになったと言えるだろう。

試合結果

2023.1.21
プレミアリーグ 第21節
リバプール 0-0 チェルシー
アンフィールド
主審:マイケル・オリバー

第22節 ウォルバーハンプトン戦(A)

バックラインに感じるちぐはぐさ

 未だ年明けのリーグ戦では勝ちがなし。楽な相手がいなかったというエクスキューズはあるとはいえ、内容面の乏しさを踏まえれば、リバプールなのだから仕方ないの一言で片づけるには重たい試合が続いている。クロップへの風当たりも日に日に強くなるばかりだ。

 監督交代を境に徐々に勢いが出てきているウルブスはリバプールに真っ向勝負を挑んできた。バックラインへのチェイシングは同サイドに限定して、狭いスペースからリバプールを脱出させない。特にスローインに対するプレッシングの厳しさは顕著。脱出ルートが見つからないまま始めたリバプールに対して、ウルブスはプレスをはめきってショートカウンターに移行する場面もあった。

 バックラインに厳しくプレッシャーに行くというスタンスはリバプール側も同じものだった。だが、ウルブスのバックラインはリバプールよりも安定してこのプレッシャーをいなすことが出来ていた。CBが大きく開き、ライン間でGKやレミナがレシーバーとなり、ボールを動かしていく。低い位置を取るのがネベスではなく、レミナだったのは少々意外である。だが、ウルブスは長短のパスをうまく使い分けながらプレスを脱出することが出来ていたので特に問題はない。

 この日のリバプールにはアタッキングサードで感じられる違和感があった。サイド攻撃をオーバーロード気味でやろうというのがこの日のコンセプトにあったのかもしれないが、やたらとそこにバックラインの選手が絡みたがる。アレクサンダー=アーノルドが高い位置を取るのは日常かもしれないが、マティプや逆サイドのロバートソンもやたらと絡みたがるのは不思議だった。

 守備陣の攻撃参加は重要ではあるが、その分後方で残る選手の負荷が増える。特にこの日のリバプールのバックラインはやたらと中央に突っ込むような選択肢を取るので、そうした負荷を後方がもろに受けるケースがとても多かった。

 ゴメスは後方に残ることが多かったが、そんなに危なくない場面でもやたらと持ち場を離れて出て行くことが多かった。基本的には安全第一を求めたいポジションなので、あまり良くないことだが、あえて彼を弁護するのならば、不安定な攻撃参加によってポジション感覚が乱されたであろうことには言及しておきたい。

 そんなゴメスの深追いから、リバプールの失点はスタートする。出て行ったゴメスが戻り切らないまま、ロバートソンとマティプの間をファン・ヒチャンがかち割る形で、オウンゴールを誘発。ウルブスにとってやや幸運な場面はあったとはいえ、出て行ったゴメス、ゴメスが戻る前に出て行ったロバートソン、寄せ切れなかったマティプとこれだけツッコミどころがあれば、失点もやむなしだろう。

 逆にウルブスのアタッカー陣は好調。得点を挙げたヒチャンだけでなく、ボールを抜群に収めることができるクーニャも効いている。ウルブスの追加点はセットプレーのボールをクーニャが収めたところから。最後に仕留めたのはドーソン。前半のうちにリードを広げる。

 リバプールの保持はサイドのオーバーロードと即時奪回を含めた中央での突撃が多かったが、結局一番効いていたのはガクポやヌニェスのハーフスペースの突撃であることは否めない。なお、この試合ではガクポとヌニェスの位置が入れ替えられていたが、サイド起用時も最前線に裏抜けで突っこんでいけるヌニェスに比べると、ガクポの存在感はきっちり割引されていた感がある。

 アーセナルとのELではワイドに張っているシーンもあったし、ガクポ自身にワイドな適性がないわけではないように思うが、リバプールは今季左サイドのアタッカーを生かせていない感があるので、なかなかそうした持ち味が出なかった。ガクポがここ数試合でライン間を浮遊するフィルミーノみたいな働きで強みを見せたというところもあり、リバプールファンの中でこのポジションの入れ替わりに否定的な声が出る理由もわからなくはない。

 後半になると、アタッカーの抜け出しから作られる決定機はだいぶ増えたように思う。バックラインからの右への展開から、逆サイドに振り、左の大外からハーフスペースに抜けていく形がかなり見えるようになった。

 前半に見られた唯一の手段から逆算して攻撃を構築できるようになったことでリバプールはかなり攻勢を強める。押し込む→エリア内侵入の部分が強化されたことにより、前がかりな布陣が得点に向けた圧力とリンクするようになってきた。

 ウルブスはとにかくボックス内で粘っていたが、なかなかリバプールの圧力は強烈。ショートカウンターを1つでも仕留めれば、流れが大きく変わった可能性もある。このあたりは今の前線が決定力で仕事ができないという苦しい事情もある。

 ウルブスは2点のリードを得たことで、いったん受ける形で守る後半の立ち上がりだった。だが、強烈な圧力を受けたため、傷が致命的になる前に再び前からのチェイシングを開始する。個人的には素晴らしい判断だったと思う。

 試合がオープンになる中で次にスコアを動かしたのはまたしてもウルブス。高い位置でフリーズするゴメスとロストしたバイチェティッチのコンボでウルブスに大きなカウンターを許したリバプール。アダマ・トラオレからのラストパスをフリーで走り込んだネベスが決めて試合を決定づける。

 最後までどちらもファイティングポーズを取り続けたことはよかったが、試合の結果はワンサイド。リバプールはなかなか光が見えず、欧州カップ戦争いからはまた一歩後退することとなってしまった。

ひとこと

 復調気配とはいえ、降格圏に近いチームにここまで叩きのめされるのは少々応えるだろう。特に前半のバランスはクロップの深刻な血迷い方がピッチに出ているように思えてならない。もはや、欧州カップ戦へのルートはCL優勝が最短だろう。いきなりのラスボス相手なのは懸念ではあるが、なんとかここまでに復調しておきたいところだ。

試合結果

2023.2.4
プレミアリーグ 第22節
ウォルバーハンプトン 3-0 リバプール
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:5‘ マティプ(OG), 12’ ドーソン, 71‘ ネベス
主審:ポール・ティアニー

第23節 エバートン戦(H)

出足の良さを象徴する見事な先制点

 近年はリバプールの圧倒的な優位で迎えることが多かったマージーサイドダービー。だが、今回の雰囲気は少し違う。4試合勝ちなしで苦しむリバプールに比べると、むしろ監督解任で前節首位撃破に成功したエバートンの方が上向きなムードを感じる。アンフィールドといえどエバトニアンが期待できる流れである。

 両チームのスタメンで目につくのは故障者の存在。リバプールはチアゴ、エバートンはキャルバート=ルーウィンの穴をいかに埋めるかが重要になる。

 序盤、保持に回ったのはリバプール。IHに入ったバイチェティッチは低い位置に降りながらゲームメイクを行う。逆サイドのヘンダーソンも時折降りることがあったため、チアゴがいない分、IHのゲームメイクの意識は高く、いつもよりもプレーエリアも後方だたかもしれない。

 その分、今日もマティプは持ち上がる。前節は無理に突っ込んでいってる感があったマティプだが、今節はIHのポジションが比較的深かったことや、1トップ脇からの突撃にエバートンがやや戸惑っていることもあり、比較的高い効果を得られていたと言えるだろう。サイドからの攻撃においてはワンツーがほぼ読まれていたリバプールにとって、後方からマティプが支援する形は悪くはなかった。自陣でのボール処理の空振りにはゾッとしたけども。

 エバートンのプレスは初動でバックラインに圧力をかけて相手を止めるというよりは、相手がやり直しに出て行った時にラインアップして捕まえにいく形が多い。リバプールは良くも悪くも相手陣に突っ込んでいくことでやり直しは少なかったため、エバートンはラインアップのタイミングを掴むことができなかった。その分、リバプールの敵陣攻略の成功率も高くはない。クロスをファーで待ち構えるヌニェスのアクロバティックさがなければ、少なかったチャンスはさらに減っていてもおかしくはない展開だった。

 キャルバート=ルーウィンがいなくともいつも通り振る舞おうとしていた保持面のエバートン。シムズへのロングボールはスピードを生かすようにより左右に振りながらの配球にするなど工夫は見られていたが、さすがに連戦連勝を重ねていたキャルバート=ルーウィンほどの起点になることは見込めない。

 かといってグラウンダーで繋ごうとすれば粗が出る。ハイテンポで気持ちよくプレーできる時のリバプールはヘンダーソンがプレスのスイッチ役として機能することが多いのだけど、この日のリバプールはそうだった。バイチェティッチ、ファビーニョも含め、リバプールの中盤は堅実な働きを果たした。

 キャルバート=ルーウィンという前進の武器を失ったエバートンは徐々に重心を下げざるを得なくなる。イウォビ、マクニールは守備の時に取る位置が深くなる。撤退守備も前節と異なり、陣地回復はセットではないのでリバプールの押し込む機会が単純に増えることになる。

 優位に進めていたリバプールは前半の内に先制点をゲット。アーセナル戦を彷彿とさせるファーでのターコウスキの折り返しはクロスバーに当たる。すると、難を逃れたリバプールはCKのカウンターから一気に攻め上がり、最後はサラー。カウンターでチーム全体が見せた素晴らしい推進力はこの日のリバプールの出足の良さを象徴するものだった。一方のエバートンは安易に出て行ってしまって入れ替わられたコールマンの対応がまずかった。カウンター迎撃に出ていくならば、最悪ファウルでも止めるべき場面で素通りさせてしまった責任は重たい。

 リードを奪ったリバプールは後半早々に追加点をゲットする。イウォビのところでボールを奪うと、逆サイドにボールを大きく展開してカウンターを発動。やや時間がかかったかに思われたが、アレクサンダー=アーノルドのクロスはファーのガクポまで通り、リードをさらに広げることに成功する。

 このプレーにおいてはコーディにはクリアのチャンスがあった。ピックフォードとの連携面か、ファーにおけるガクポやコールマンの位置関係の把握のところかはわからないが、コーディが周囲の認知を誤っており、正しい判断ができなかった可能性が高い。

 守備面では貢献度が高かったターコウスキも保持においては中央に危険なパスミスを繰り返しており、安定感のあるプレーとはいえなかった。個々人のパフォーマンスが悪かったというのもあるが、高い位置に起点がなかったことでボールの失い方が悪かったり、苦手なショートパスでの繋ぎにトライした結果、エバートンにとって悪い方向に流れていくみたいな展開が多かった。

 押し上げられないまま単発で追う機会が増えたエバートンの中盤は、プレスの食いつきの良さがむしろマイナスに作用するランパード時代に逆戻りした感があった。彼らの背後を狙うガクポの存在もまたエバートンにとっては厄介だったはずだ。

 終盤、エバートンには単発で追撃弾を決めるようなチャンスが訪れたがモノにできず。特にファーでクロスを折り返したデイビスは試合の流れを変える機会があったと言えるだろう。

 セーフティリードをキープするリバプールはジョッタ、フィルミーノと長期離脱組のコンディション調整に交代枠を活用。今後を見据えた運用も含めてほぼ完璧なゲームプランと言っていいだろう。久しぶりのリーグ戦の勝利はマージーサイドダービー。後半の大目標であるCLに向けて戦力が整いつつあるのも大きな収穫である。

ひとこと

 一つがうまくいかなくなると、良かった部分も悪い方向に流れてしまうのが今のエバートン。きっかけはもちろんキャルバート=ルーウィンの不在だろう。得意な方向性は限られているチームなので、その方向性が出せないときにどう受け身を取るかも残留争いにおいては重要なファクターになる。

試合結果

2023.2.13
プレミアリーグ 第23節
リバプール 2-0 エバートン
アンフィールド
【得点者】
LIV:36′ サラー, 49′ ガクポ
主審:シモン・フーパー

第24節 ニューカッスル戦(A)

2敗目はシーズンダブル

 今季ここまでリーグ戦で敗れたのは1敗のみ。リーグ最少の敗戦数でありながら、直近3試合は全て引き分けと5位以下のチームに迫られる状況になっているニューカッスル。今節の相手はその「1敗」を喫した相手であるリバプールだ。クリスティアン・アツの家族がスタンドで見守っていることもニューカッスルの選手たちに静かな闘志を与えたことだろう。

 負けた相手にリベンジを果たしたいニューカッスルは立ち上がりから元気いっぱい。アルミロンを中心に速い展開でゴールに迫るが、ここはアリソン、ファビーニョ、ゴメスなどソリッドな動きを見せる守備陣にあっさりと阻まれる。ファン・ダイクの復帰で周りが自信満々でプレーできているのか、あるいはマージ―サイドダービーの勝利が彼らに自信を与えているのか、その両方という可能性もあるだろう。

 リバプールの保持の仕組みはなかなか面白かった。この日はここ数試合アンカーに入っていたバイチェティッチがIHに起用されていたのだが、時折、ファビーニョを押し上げるようにスライドさせるように動きがあった。

 左のIHが落ちてくるというのはチアゴもやっている形ではあるが、チアゴに比べるとバイチェティッチの降りる動きはよりアンカー的に中央側に動くことでファビーニョを押し上げるように見えた。バイチェティッチの方がより周りを巻き込んでの移動のように思える。

 リバプールの先制点もそんなアンカー付近の移動から。中盤の押し上げというややアシンメトリーな移動にニューカッスルがついていけなくなってのものとなった。面白いのでぜひ映像で見てほしい。決めたのはヌニェス。なかなか仕留められずに苦しんでいたストライカーについに先制ゴールを決めてトンネルからの脱出に成功する。相変わらずゴール前に顏を出すのがやたらとうまい。

 勢いに乗るリバプールは前半の内に2点目を決めてみせる。こちらを決めたのはガクポ。ターンから起点になっているバイチェティッチがまたしても重要な役割を果たしているのは見逃せないところ。すっかりリバプールの中盤を牽引する存在になっている。

 またしてもリバプール戦で思ってもいない試合運びになってしまうニューカッスル。だが、2失点した後もこの悪い循環の連鎖は続く。連鎖のトリを飾ったのはポープの退場。序盤に一回成功した飛び出しの再現を行ったのだが、ボールに回転がかかっていたのは計算外だったのだろう。急失速するボールを守ろうとした動きは結果的にハンドになる。

 このプレーは当然退場。そして出場停止の対象試合はカラバオカップのファイナル。カップ・タイド・ルールで2ndGKのドゥブラーフカもそもそも出場できないようで、ファイナルの舞台はアラン・カリウスが務めることが濃厚となった。

 ポープの退場はこの試合以降に与えるインパクトは特大だったが、1人少ない状態でリバプールに立ち向かうことの不都合はそこまで生じていなかったように思う。サン=マクシマンやイサクといったスピードスターを軸とした縦に早い攻撃によって、ニューカッスルは10人でも問題なくチャンスは作れていた。セットプレーでのチャンス構築も十分。数的優位を得たはずのリバプールはポープの退場後にやたらバタバタしてしまったように思う。

 後半もこの流れは継続。バタバタするリバプールに対してニューカッスルはイサクとサン=マクシマンを前に置く形でリバプールのゴールに迫っていく。リバプールは前半は比較的うまくいっていた高い位置からの迎撃が不発。無理な追い回しがむしろバックラインに負荷をかけてしまい、不要なピンチを招いてしまう節があった。

 ボールを持ちながら落ち着きたいリバプールだが、10人のニューカッスルの勢いに気圧されてしまい、アリソンの助けを借りる場面も少なくなかった。

 追いかけるニューカッスルも順調だったわけではない。70分にジョエリントンが負傷したところでついに中盤セントラルができる選手が尽きてしまい、リッチーを無理やり中盤で投入する。それでも最後まで速攻を軸にリバプールのゴールを脅かしたニューカッスルだったが、猛攻は実らず。今季2敗目はまたしてもリバプール戦という不思議な因果で5位後退することになった。

ひとこと

 ニューカッスルを叩いたことでリバプールはCL経由だけでなくリーグ経由でのCL出場権獲得の兆しが少しずつ見えてきている。とはいえまずは、レアル・マドリーとのCLに集中。CLの鬼との一戦は第三者としては非常に楽しみである。

試合結果

2023.2.18
プレミアリーグ 第24節
ニューカッスル 0-2 リバプール
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
LIV:10‘ ヌニェス, 17’ ガクポ
主審:アンソニー・テイラー

第25節 クリスタル・パレス戦(A)

ファウルが多い守備陣が後半のブレーキに

 ニューカッスルを下し、CL出場権獲得に向けて上位を猛追するリバプール。しかしながら、ミッドウィークのレアル・マドリー戦は衝撃の大敗。身体的または精神的なチームへのダメージが気になるところである。

 セルハースト・パークにおいてもリバプールはボールを握る。バックラインは幅を取りながらゆったりとしたビルドアップを行う。アンカーには珍しくヘンダーソン。バイチェティッチもファビーニョもベンチからのスタートで、中盤は比較的渋いメンツである。

 そうしたメンバーによる保持は少し手間取り気味。詰まってどうしようもない!というわけではないが、アレクサンダー=アーノルドが低い位置に顔を出す(そしてミスって危険なロストをする)など、ビルドアップ隊のいつものバランスも少し変わっているように思えた。

 しかしながら、リバプールには確固たる前進の手段があった。それはパレスの右WGのオリーズの背後である。ややポジションが乱れ気味のオリーズの背後からリバプールがボールを運ぶことで敵陣への前進のルートを開拓することに成功した。大外のロバートソンとインサイドに入り込むジョッタのコンビネーションはなかなかの精度。今季、終始機能不全だった左サイドに少し兆しが見えたのは朗報である。

 逆にパレスのボール保持においてはリバプールは高い位置からの積極的なプレスを敢行する。パレスの狙い目になるのはサイドの裏のスペース。プレッシングに積極的に出てくるリバプールのSBの背後から相手のエリアに逆襲。特にアレクサンダ=アーノルドの裏をとる瞬間がよく見られるようになった。

 確実な前進の手段を手にしたリバプールは明確に押し込むことができるようになっていたが、そこはセルハースト・パーク。なかなか得点までは至ることができずに苦しむ。

 後半、選手交代に動いたのはリバプール。前半、あまり機能していなかった右サイドにエリオットを置くというのは非常に丸い判断のように思える。前半よりもリバプールは左右にきっちり揺さぶりながら幅をとっての前進をしていくことに。ワイドを使った攻めで左右をバランスをよく使いながら敵陣まで押し下げる。パレスはオリーズとアイェウを入れ替えてサイドを封鎖する。しかしペースはリバプール。サラーのシュートがポストに当たるなど、リバプールの得点は間近に思えた。

 だが、リバプールは攻撃が途切れてしまうと、パレスからボールを奪う手段がない。即時奪回からリズムを掴めないリバプールはいちいち自陣まで下がることになってしまう。非保持ではやや足を引っ張り気味だったオリーズは保持に回れば頼もしい存在だ。

 ファビーニョの投入以降もリバプールの非保持の不安定さは継続。ファウルを連発し、パレスにセットプレーのチャンスを数多く与えることとなった。パレスは枠内シュートこそ飛ばせなかったものの、終盤はリバプール相手に巻き返しに成功。3ポイントを遠ざけて勝ち点1を得ることに成功した。

ひとこと

 ファビーニョ投入以降も守備のリズムが改善しなかったのは気がかり。確かに晒される機会が多いが、ファビーニョ個人もやや守備の間合いがあっていない感があるのは心配である。

試合結果

2023.2.25
プレミアリーグ 第25節
クリスタル・パレス 0-0 リバプール
セルハースト・パーク
主審:ダレン・イングランド

第7節 ウォルバーハンプトン戦(H)

プレスで測るリバプールのバロメーター

 モリニューの試合ではかなり一方的にボコボコにしてやられたリバプール。あの時期に比べると、今はリーグ戦では復調気配。怪我人も徐々に戻ってきており、CL出場圏内を目指すことも徐々に視野に入ってきたといえるだろう。

 直近のリバプールの復調気配はメンバー表だけでなく、プレッシングへの前向きさでも測ることができる。ダメな時期はマージ―サイドダービーだろうとビッグマッチだろうと着火剤にならなかったのだ。この試合のリバプールは前線からのチェイスが非常に活発。バロメーター的には「いいリバプール」だといえるだろう。

 プレスの先導役となったのはジョッタ。CFからプレスを牽引し、後方の呼応した連動を呼び込む。高い位置から相手を捕まえてのスムーズなショートカウンターでウルブスのバックラインを苦しめる。ウルブスはネベスもしくはレミナが降りる形からのビルドアップが多いのだが、ボールを落ち着けられる回数よりはひっかけてしまう回数の方が多かったといえる。

 ただ、全く抜け穴がなかったわけではない。アレクサンダー=アーノルドのプレッシングは時に強気すぎて入れ替わられることもしばしば。ウルブスは幅を取るところからの落ち着いたポゼッション主体の組み立てよりも、サイドから縦縦に進んでいくやり方の方が相性が良いように見えた。

 ウルブスもプレッシングは積極的。バックラインに対して時間を奪うトライを行う。この局面で非常に目立っていたのはバイチェティッチ。相手をかわして散らすところが非常にうまく、ウルブスのプレスの抜けどころとして機能していた。その後方におけるジョッタも降りる動きを使うのは上手。相変わらず器用な選手である。

 流れの中では十分に優勢だったリバプール。しかしながらなかなか得点を決めることが出来ず。押し込まれるウルブスも劣勢を覆せないまま前半を終える。

 後半、ウルブスはもう一度落ち着いた保持での前進を行う形を狙う。リバプールのプレスが前半ほどの勢いがあったわけではなかったので、前半に比べればウルブスはゆったりとボールを持つことができた。そういう意味では後半の頭はややウルブスペースだったといえるだろう。

 ただ、自陣の低い位置の中央でやたら足の長いドリブルをするのは気になった。レミナとファビーニョの接触はファビーニョのファウルで終わったが、一歩間違えれば警告や決定的なロストにつながったもおかしくない。うまくいった時のリターンの少なさを考えると、あまりいいリスクの取り方とは言えないだろう。

 60分が過ぎると再びペースを握ったのはリバプール。ボールを持ちながらの攻略でウルブスのブロック崩しに挑む。後半はウルブスのブロック守備の機能性がやや落ちていたといえるだろう。特にボールを持って加速する選手のストップをかけるのが遅いのが目についた。ジョッタのファウルで無効になったヌニェスがネットを揺らす場面もジョッタのドリブルの進路に対してネベスが立ちふさがるのが遅すぎる。ブロックの外からのドリブルなのだから対応したいところである。

 そんな形でリズムを取り戻したリバプール。先制点はセットプレーから。粘ったジョッタの折り返しからファン・ダイクが押し込んでようやく先制点を奪い取る。直後にはサラーが追加点。この場面もウルブスは左サイドを駆け上がるツィミカスをちっとも捕まえることが出来なかった。

 終盤に畳みかけたリバプール。モリニューでのリベンジ達成に成功し、上位を追走する勝ち点3を積み上げた。

ひとこと

 じれったい試合だったかもしれないが内容面も含めてリバプールは満足いく内容だったのではないだろうか。週末のユナイテッド戦、そしてミッドウィークのベルナベウとタフな日程になる一週間だが、なんとか弾みを付けたいところである。

試合結果

2023.3.1
プレミアリーグ 第7節
リバプール 2-0 ウォルバーハンプトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:73′ ファン・ダイク, 77′ サラー
主審:ポール・ティアニー

第26節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

ゴールをプレスのエネルギーに変えて無限ラッシュ

 4位争いレースの中枢に参入間近なリバプールと優勝争いを睨む上ではこれ以上離されるわけにはいかないユナイテッド。後半戦のナショナルダービーは両チームの異なる目標のために負けられない一戦となった。

 立ち上がりは両チームとも非常にエネルギッシュだった。ピッチのあらゆるところに顏を出してリバプールの濃い攻撃を食い止めようとしていたフレッジが展開を象徴するハードワークを見せていたのが印象的だった。

 試合の序盤からどちらかといえばペースを握っていたのはリバプールの方だった。落ち着かなかった試合の立ち上がりにおいては直線的な縦への迎撃でユナイテッドの守備陣を脅かしていたが、少し時間が経つとボールを持ちながらの攻略にシフトチェンジする。

 この試合のリバプールの攻め筋で少し異なっていたのは3トップのバランスである。直近の3トップの配置はベーシックな1トップ+2人のWGという形で配置されることが多かったが、この試合ではCFのガクポを中央で上下動させる分、WGの2人はナローなポジションを取っていた。バランスでいえば少し前のCFが全滅した時に仕方なく使っていた擬似2トップのようなバランスとなっていた。

 その分、サイドの攻撃は後方が行うことになる。SBはもちろんのこと、右のワイドにおけるエリオットの貢献は非常に印象的だったといえるだろう。リバプールの保持は前からのプレスでテンポを奪いたいユナイテッドに十分対抗できているものとなっていた。

 前線はナローで後方は広がりながら支援というリバプールのスタンスに対して、ユナイテッドは直線的なロングカウンターを軸に反撃を行う。だが、得点にはもう一味二味足りない印象。ボールを奪った後にもう少しつないでから前に進むことができれば、前線に無理なく人が送れる印象だった。ラッシュフォードがいればそれでもいいぜ!なのかもしれないが、少し攻撃の早さに前線がついていけていなかった印象を受けた。

 30分過ぎにはそうしたロングカウンターの流れから敵陣でのプレータイムを徐々に得ていくように。序盤に持っていかれた流れを引き戻すようにポゼッションでの回復を見せる。だが、先制点を決めたのはリバプール。ユナイテッドが志向していた直線的な攻撃のお返しという形でガクポが先制ゴールをゲット。均衡していた前半に大きなリードを奪う先制点を手にする。

 迎えた後半、ポゼッションでスタートするユナイテッドにいきなり落とし穴が。前半よりも数段強気でプレスに出てくるリバプールにいきなりポゼッションを咎められてしまったのである。ヘンダーソン、エリオット、ファビーニョの中盤3枚で圧をかけまくったプレスからヌニェスが後半のオープニングゴールを飾ると、これがリバプールのゴールラッシュ開始の合図に。

 3点目で実質試合は決着といっていいだろう。雨の影響か足を取られたような対応になったマルティネスをサラーが一蹴し、ガクポが角度のないところから決める。3点という得点差もさることながら、コテンパンにユナイテッド守備陣を叩きのめすという構図がこの試合の決着がすでについていることを示していた。

 ここからはボーナスステージである。自陣からのカウンターとなった4点目をはじめとしてリバプールはここからとりもとったり7得点。テン・ハーグが試合後のコメントで指摘した通り、得点差を重ねるたびにユナイテッドの守備陣から覇気がなくなっていたのは事実だが、それでもこの日は難易度の高いゴールを決めまくったリバプールの攻撃陣を褒めるべきだ。

 難易度の高いシュートを決めて、それをプレスのエネルギーに変えるという恐ろしい出力の仕方をしていたこの日のリバプール。この日の出来であればどんなチームからも勝利を視野に入れられるだろう。サラー、ヌニェスのパフォーマンスも圧巻だったが、ガクポとエリオットがこの水準のパフォーマンスを継続させることができれば、CL出場権の獲得は間違いないだろう。ファン・ダイクとコナテが揃ったDFラインも強固さを証明し、世界に特大なインパクトを与える圧巻のゴールショーに花を添えた。

ひとこと

 先週のカラバオカップの記事の終わりに「国内カップ戦のタイトルはリーグでのパフォーマンスに簡単に上書きされてしまう」と書いたのだけど、まさかこんなに早く特大インパクトに襲われるとは思わなかった。強度で勝負したいユナイテッドが過密日程でこのリバプールと衝突というのは悪夢でしかないだろう。事故としてとっとと忘れて来週以降の試合に備えたい。

試合結果

2023.3.5
プレミアリーグ 第26節
リバプール 7–0 マンチェスター・ユナイテッド
アンフィールド
【得点者】
LIV:43‘ 50’ ガクポ, 47’ 75‘ ヌニェス, 66’ 83‘ サラー, 88’ フィルミーノ
主審:アンディ・マドレー

第27節 ボーンマス戦(A)

今度は逃げ切り成功したボーンマス

 前節、マンチェスター・ユナイテッドを7点とド派手に撃破したリバプール。4位争いとサンチャゴ・ベルナベウ遠征に勢いをつけるためにもボーンマスを下しておきたいところである。

立ち上がりはバタバタとした展開に。試合が落ち着くようになるとボーンマスはいつも通りのスタンスに。アンカーを受け渡しながらのミドルプレスでリバプールの攻撃を受け止める姿勢を取る。

 リバプールはひとまずサイドにボールを付けていくことで打開を図る。しかしながら、ボーンマスのブロックに対してズレを作れている感じはしない。エリオットは右サイドで起点になろうと流れるが、あまりポイントを作れている感じはせず。ボーンマスはマンツーで相手についていくところと、受け渡すところが明確でリバプールはその隙間でフリーになる選手を作ることが出来なかった。

 左サイドではガクポとヌニェスのレーンチェンジが攻撃のメインの手段になっていた。だが、バイチェティッチが浮いているところを見ると、あまり関係性が整理されていないようにも見える。サラーとの1on1を受け入れてくれる右サイドの方がまだ有望な状態だった。

 かといってヌニェスを生かそうとするダイレクトな展開に舵を切ると、ボーンマスはカウンターで応戦。直線的ながらも高確率で敵陣に迫ることができる精度の高いカウンターはアーセナル戦に続き健在。ワッタラ、ソランケ、ビリングを軸にして少ない機会を確実にシュートにつなげていく。

 さらに、アーセナルと異なりリバプールはハイプレスを行うエネルギーはなさそうな様子。ボールを持とうと思えば持てるという状況を作ることが出来たボーンマスはストレスを保持で軽減することもできた。

 そして、この状況で先制点を挙げたのはボーンマスの方だった。大仕事をしたのはワッタラ。右サイドでファン・ダイクを引きちぎることに成功すると、折り返しを受けたビリングが貴重な先制点をゲット。ワンチャンスを生かして前に出る。ボーンマスは先制点以降も前線はカウンターの起点として戦うことが出来ていたし、後方はサラーの居るサイドを徐々に手厚くしながら守ることが出来ていた。

 後半、リバプールはジョッタ投入による4-2-3-1にシフト。ガクポはほぼ中盤仕事をこなすようになった。ファビーニョはより右に流れる頻度を上げて、右サイドの攻略を軸とする流れに乗っかる形に。前半よりは押し込めているリバプールはセットプレーでもあわやという場面を作り出しており、同点となるのは時間の問題だった。

 その勢いに乗るチームをベンチから3枚替えという形で背中を押したクロップ。投入されたミルナーのオーバーラップからリバプールがPKを獲得する。だが、これをサラーがまさかの失敗。同点の絶好のチャンスを逃してしまう。

 赦しを貰ったボーンマスはここから再び専制守備でゴールをクローズ。前節7得点のリバプールの攻撃陣にもPK失敗以降はもうガソリンが残っておらず、ボーンマスは先週と異なり今度は逃げ切り成功。リバプールはCL出場権獲得に一歩後退となる大きな一敗を喫してしまった。

ひとこと

 ユナイテッドに7点の後、ボーンマスに負けるのだからプレミアは怖い。

試合結果

2023.3.11
プレミアリーグ 第27節
ボーンマス 1-0 リバプール
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:28′ ビリング
主審:ジョン・ブルックス

第28節 フラム戦(H)

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