■したたかに引き分けに持ち込んだポルトガル
ネーションズカップの仕組みはよくわかっていないが、とりあえずドイツとスペインの予習!という感じで見始めた。スペインとポルトガルの一戦は互いに4-3-3の形。互いのプレッシングは仕組みとしては結構似ていたように思う。どちらのチームもWGが外切りのプレスを行い、CBに外側からプレッシングをかける形である。
一方でプレスの強度には差があった。よりプレスに積極的だったのはスペイン。外切りのプレスに合わせて中盤や後方がボールを捕まえるべくラインを上げる。特にポルトガルのWGには重点的にケア。アスピリクエタは低い位置まで下がり、レオンに前を向かせないように警戒していた。
よりプレスに慎重だったのはポルトガルの方。WGの外切りのプレスがハマらないと素早く位置を下げるようにして撤退。なるべく早く4-5-1ブロックを再構築し、スペインの攻撃に備える。トップのアンドレ・シルバはアンカーをケアする形で中盤やや下がり目の位置を取ることが多かった。
そうした中でより効果的に前進が出来ていたのはスペインの方。一般的にポルトガルが採用した外切りプレスはWGが背中でパスコースを切っているだけなので、角度を変えてしまえば脆いのが弱点だ。ブスケッツなどの中盤に相手を背負わせてワンタッチでSBに叩いたり、CBがドリブルで運びながらパスコースを作ることもできる。もちろん、裏に蹴ることもある。このあたりは教科書通りのアプローチを完璧にやっている印象だ。
ディエゴ・ジョレンテは正直リーズではそこまでうまい選手というイメージはなかったのだが、対面のレオンを手玉に取るようにボールを動かしてパスコースを切り拓いていたのでとてもうまいなと思った。
狭くプレスしてスペインを閉じ込めたいポルトガルだったが、スペインは脱出には成功。だが、そこからスピードアップはなく、再構築されたポルトガルの守備ブロック崩しにはやや苦心していた印象だ。
一方のポルトガルの保持で打開策になりえたのはベルナルド・シウバ。シティでもお馴染みの低い位置への移動でスペインの中盤のマンマーク破りに挑む。ズレを作るベルナルドから左サイドでギャップを作り、レオンとアスピリクエタの前を向いた1on1ができればOK。相手を剥がせる解決策が見つけやすそうだったのはポルトガルの方だった。
押し込めるけども崩し切れないスペインはカウンターから先制。ガビがボールを運ぶところを起点にしたゴールだが、これはモラタのフリーランが秀逸。相手の背中を取るようにスルスル間をすり抜けつつオフサイドを回避。前から思っていたけどモラタはこういう動き、めっちゃうまい。先制点に大きく貢献したことは言うまでもないだろう。
追うポルトガルは後半にかけてMF-FW間が徐々にルーズに。これはプレスの意識が強まっていることが理由の1つ。そして、後半に途中交代で入ってきたロナウドにはアンドレ・シルバほどの守備における貢献が期待できないのも原因である。レオンも前残りをすることが増えたため、ポルトガルは8枚で守備を行うケースが増える。最終ラインから出張するペペの負荷はさらに増えることに。時間がたつにつれてスペインの保持はさえわたることになる。
しかし、終盤にあっさりとした形でポルトガルは同点に。右サイドを破ったポルトガルはそのままサイドからのクロスにオルタが合わせる。とてもあっさりとしていたけども確実に相手を崩す形でポルトガルが追いつく。
試合は支配しつつとゴールに向かう迫力の部分と詰めの甘さで勝利を奪えなかったスペイン。ポルトガルがしたたかにスペインの勝ちを阻止した格好だ。
試合結果
2022.6.2
UEFAネーションズリーグ
グループA2 第1節
スペイン 1-1 ポルトガル
エスタディオ・ベニト・ビジャマリン
【得点者】
ESP:25′ モラタ
POR:82′ オルタ
主審:マイケル・オリバー