■フリーズしても許されたポーランド
メキシコ戦ではメッシが一振りのシュートで勝利を決めて、首の皮一枚つなぐことに成功したアルゼンチン。しかし、負けたら即終わりの旅はまだまだ続く。というより、ここを凌いでも先はノックアウトラウンドなので敗退するまで続く。
対するポーランドはここまで無失点という鉄壁ぶり。サウジアラビア戦で与えられたPKのジャッジもシュチェスニーが跳ね返してみせる。ポーランドは引き分け以上であれば自力突破が確定する。
メッシの今日の立ち位置は3トップの中央。後期のメッシの代名詞とも言える0トップ的なポジションで先発することになる。その分、インサイドに入り込むのはWGのアルバレス。左サイドは大外のアクーニャが使う形となった。
アルゼンチンの攻めのパターンは中央に起点を作りつつサイドの深い位置に展開し、そこからマイナス方向に折り返す形。ポーランドのラインを下げながら折り返すことでチャンスを演出していく。途中でディ・マリアとアルバレスがサイドを変えていたが、左がアルバレスの方がそれぞれがSBとの関係性をうまく使えていたように思う。
特に左サイドは大外を駆け上がるアクーニャと鋭い抜け出しとサボらないオフザボールを連続的に行えるアルバレスが効いていた。アルバレスを捕まえるのにポーランドの守備陣はかなり苦労していたと言えるだろう。
メッシを中央に配した布陣はサイドを変えたり中央のコンビネーションの起点になるという意味は非常に機能的だった。その一方でネガトラのスイッチにならないことや、プレスの先導役としてはほぼ機能しない。ポーランドはCBどころかCHまで自在にボールを持って前を向ける状態を作ることに成功していた。
アルゼンチンはメッシを使った中央のコンビネーションを崩しの頻出パターンとして使っていた。こうした攻撃はポーランドにとってロスト後のカウンターに移行しやすい。よって、落ち着いたボール保持においても、カウンターの局面においてもポーランドには前進のチャンスがあった。
だが、実際にはポーランドの前進はスムーズではなかった。アルゼンチンのロストの仕方が危うかったところまでは確かなので、ポーランドのボールを前に運ぶスキルが乏しいか、あるいはレバンドフスキの前に門番として立ちはだかったデ・パウルとフェルナンデスが優秀だったか、そのどちらもか。
前進がままならないポーランドに対して、アルゼンチンは40分手前にPKを獲得。正直、この大会の中でもトップクラスに疑問が残るジャッジだったが、立ちはだかったのはシュチェスニー。メッシのPKを止めて前半をスコアレスで折り返す。
しかし、そのシュチェスニーの健闘が水の泡になるのはあまりにも早かった。後半早々にポーランドは失点。アルゼンチンはモリーナが縦パスを引き出してディ・マリアとのコンビで右サイドにて深さをとる。マイナスの折り返しを決めたのはマック=アリスター。ポーランドはニアのDFがマイナスのパスコースを消せなかったのが痛恨だった。
負けても突破の可能性は残すポーランド。他会場ではメキシコの猛攻が伝わってくる。自らがなんとかするにはもちろん得点を奪うしかないのだが、ポーランドは高い位置からボールを奪い取りに行かない。
メキシコが得点を重ねても、アルゼンチンが4-4-2にシフトしてもポーランドは動かない。というかもしかすると動けないのかもしれない。
前半から効いていたアルバレスの動き出しからアルゼンチンがこの日2点目を奪うと、ようやく少し前に出てくるようになるポーランド。だが、フェアプレーポイントが絡む状況の中で前に出た瞬間にクリホヴィアクが警告を受けたとなれば、前に出ようとした気持ちが再び萎んでもなんら不思議ではない。
というわけで実質ポーランドはフリーズ。アルゼンチンは特に手を抜く気配もなく、「とりあえずこのままでいたい」というポーランドの願いを汲み取ることもなく淡々と攻撃を続行。バックパスをラウタロに掻っ攫われた時は絶体絶命と思ったポーランドサポーターも多いはずだ。
しかしながら、なんとか試合はそのまま終了。遅れて終わった他会場の結果を受けてポーランドは突破が決定。スタジアム974に集った両チームは互いのノックアウトラウンド進出を祝い合う和やかな雰囲気となった。
試合結果
2022.11.30
FIFA World Cup QATAR 2022
Group D 第3節
ポーランド 0-2 アルゼンチン
スタジアム974
【得点者】
ARG:46′ マック=アリスター, 67′ アルバレス
主審:ダニー・マッケリー