チェルシー、21-22シーズンの歩み。
第1節 クリスタル・パレス戦(H)
■30分で答えを見つける
PL最年長指揮官であったホジソンが旅路を終えることを決めた2021年。クリスタル・パレスが新しく指揮官に任命したのはアーセナルOBであるパトリック・ヴィエラ。馴染み深い土地であるロンドンに帰還し、初めての公式戦の対戦相手は昨季のCL王者のチェルシーだった。
クリスタル・パレスは陣形こそ昨季と同じ4-4-2だが、中央を固めるナローな形に。はじめは外へのカバーリングにSHが行くかSBが行くか?という部分でもたつき、チェルシーに大外で簡単にクロスを上げられる場面もあったが、時間が進んでいくにつれその部分は整理されていくように。チェルシーが大外に出した時にSH、CH、SBで閉じ込めるように壁を作り、同サイドからチェルシーを脱出させないようになる。
保持の核であるジョルジーニョとコヴァチッチの両CHを2トップで消す形で中央からの供給も断ったクリスタル・パレス。前半も中盤になる頃にはチェルシーの保持は落ち着き、ボールを持ちながらも攻めあぐねるようになった。
しかし、均衡の打開は突然に。チェルシーは右サイドのペナ角付近からマルコス・アロンソの直接FKで先制点。グアイタはもちろん、クリスタル・パレスの壁もこのシュートに全く反応できず、アロンソのシュートを阻むものはなかった。
定点攻撃においてもチェルシーは徐々に解決策を見出すように。パレスの2トップがCHを消す分、時間を与えられたチェルシーのバックスは大外の奥に立つ選手に長いフィードを送るように。一手ずつではなく、ダイレクトにSBを引き出すと、パレスのカバーリングは徐々に間に合わないようになっていく。最終ライン⇒大外⇒ハーフスペースをつなぐことで、パレスの左サイドからカバーの裏を取っていくチェルシー。30分には見つけ出したこの攻略策でチェルシーはあっさり追加点を挙げる。
後半になっても流れが変わらないパレスは5-3-2へのシステム変更を決断。ハーフスペースを埋めつつ、同サイド圧縮を完遂させる形にシフトする。しかし、チェルシーはフォーメーション交代直後に解決策を提示。3センターを横に揺さぶるように左⇒右に大きな展開を挟むと、持ちあがったチャロバーが3点目。システムの欠陥を早々についたチェルシーが試合を完全に決めた。
パレスの好材料は終盤にようやくザハのボールタッチが軽くなったことくらい。策を講じたが、アッサリと解決策を見出したチェルシーを前に完敗。ヴィエラにとっては手厳しい船出となった。
試合結果
2021.8.14
プレミアリーグ 第1節
チェルシー 3-0 クリスタル・パレス
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:27′ アロンソ, 40′ プリシッチ, 58′ チャロバー
主審:ジョナサン・モス
第2節 アーセナル戦(A)
■ぺぺとジェームズに見るコントラスト
立ち上がりに勢いをよく入ったのはアーセナル。高い位置からの積極的なプレッシングと自陣深い位置からのロングカウンターでチェルシー相手にチャンスを作っていく。
アーセナルで好調だったのは前線のスミス・ロウとぺぺ。深い位置まで押し込まれても、彼らが2人くらいを一気に剥がしながら前線まで持ち運べるため、アーセナルはカウンターの糸口を見つけることができていた。加えてアクセントになっていたのはロコンガ。大きなサイドチェンジは自陣からの脱出の鍵になっている。
だが、アーセナルがよかったのは序盤くらいだろう。この日のアーセナルは4-2-3-1のハイプレスと5−4−1のローブロックを使い分けているのだが、徐々にチェルシーがアーセナルに守り方を使い分けさせないようなスピードで前進をするように。コバチッチとジョルジーニョは少しでも隙があればボールを前進させることができるし、マウントとハフェルツはボールをギャップで受けるのが非常にうまかった。そして深さを作れるルカク。チェルシーは深い位置まで進むための手段が豊富だった。
こうして4バックから5バックに移行するキーになっていたジャカが最終ラインに戻れる時間を与えないチェルシー。ルカクがマリにピン留めされているため、ジェームズが高い位置をとってしまえばティアニーは1人で2人を見なくてはいけなくなる。
こうして機能不全に陥ったアーセナルの左サイドからチェルシーはあっさり先制。敵地のエミレーツでルカクが2回目のチェルシーデビューを祝う得点を奪った。
左はシステム的に、中央は個で不利なアーセナルは右サイドでも劣勢。セドリックがアロンソに地上戦で歯が立たないというのはなかなかにスカッドの構成を考えさせられる内容だったと思う。アタッキングサードの全方位で優位を取ったチェルシーが左サイドからの打開でジェームズの追加点を奪う。
後半も構図は同じ。立ち上がりの10分くらいはアーセナルがリズムを取り戻したかのように思ったが、チェルシーはすぐさま対応。たちまち主導権はあるべき場所に戻って行ってしまったかのようだった。
対応力、そして押しているときのクオリティの差。サイドで楽々とクロス上げたりシュートを打ったりするジェームズの姿と常に2枚を剥がさなければチャンスにならないぺぺのコントラストは両チームの現在の立ち位置を如実に示しているものと言えるだろう。
試合結果
2021.8.21
プレミアリーグ 第2節
アーセナル 0-2 チェルシー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
CHE:15’ ルカク, 35’ ジェームズ
主審:ポール・ティアニー
第3節 リバプール戦(A)
■取り出したアイデンティティで持ち帰った勝ち点1
今節一番のビックマッチ。いや、今季のプレミアリーグ、ここまでの中で最も大きな試合かもしれない。開幕2節までのパフォーマンス的にはともに優勝候補に名乗りを上げた両チームによる大一番である。
試合は様子見がてらの裏抜けロングボールの応酬で始まった。両チームとも、プレスにもいくものの撤退は素早く、相手に攻められても素早くブロック守備に移行。過度なリスクを取らない守備での立ち上がりとなった。
どちらかといえばスムーズに前進をできていたのはリバプールの方。チェルシーはアンカーのファビーニョをあまりうまく受け渡すことができなかったことに加えて、ファン・ダイクやアレクサンダー=アーノルドの横に振るパスの分、相手に比べてロングボールの質が高かったためである。
しかしながら、チェルシーも黙っていたわけではない。リバプールのプレッシングに対して、ボールを前に進めていたのはカンテ。ボールを受けた後のコントロール、そしてドリブルなどプレッシング回避でチームをリードする。
押し込む機会を得ていくとチェルシーはCKから先制点。ニアで合わせたハフェルツのヘディングという少々意外な形から貴重な1点を奪う。
その後も保持の機会を得ているリバプールだが、右サイドに比べると左サイドの機能不全が気になる。右はサラー、エリオット、アレクサンダー=アーノルドの3人が内外を使い分けながら入れ替わるが、左はそういった関係性が薄め。特に普段右のIHが多いヘンダーソンはやりにくそう。むしろ、不慣れなことを無理にやるよりも、右に流れての崩しの手助けと前線に飛び込む役割を優先していた。
ただ、ボールの動線が限られている分、チェルシーは守りやすくなっていた。むしろ、カウンターからチェルシーは徐々にチャンスを得るように。しかし、この決定機をチェルシーは活かせない。特にハフェルツがラストパスを出せず、シュートに行ってしまったシーンはもったいなかった。
そして、決定機を活かせなかったツケをチェルシーは払うことに。前半終了間際、チェルシーはジェームズのハンドでPK献上+一発退場。判定に関するインパクトが大きかった場面だったが、リバプールは交代で入ったジョッタが左サイドからドリブルで侵入したプレーがきっかけでPKにつながっている。機能不全だった左サイドから好機を得ている。
チェルシーが10人となった後半はリバプールが攻め続けるハーフコートゲームに。5-3-1で守るチェルシーに対して、リバプールはエリア内にボールを送り続けるが、なかなか決定機を作ることができず。唯一、抜群の空中戦の強さを見せるジョッタへのクロスとミドルシュート以外はクリアなチャンスを作ることができない。
ロングカウンターからチャンスを作りたいチェルシーだが、ファン・ダイクを前にルカクは前節ほどは存在感を示せず。むしろ、自陣深くまで押し込まれてしまった割にはマルコス・アロンソの攻め上がりの速さが印象的。なんで足速く無いのに、そんなに上がりが早いのだろう。
ただ、むしろチェルシーで印象的だったのは守備。サイドのカバーも秀逸な5-3-1はモウリーニョが植え付けたアイデンティティを久しぶりに取り出したかのよう。前半終了間際のPKの時は選手たちの感情のコントロールが効いてなかったように見えたが、HTで立て直して規律ある守備で引き締め、アンフィールドから勝ち点1を持ち帰ったトゥヘルの手腕が光った試合だった。
試合結果
2021.8.28
プレミアリーグ 第3節
リバプール 1-1 チェルシー
アンフィールド
【得点者】
LIV:45+5′(PK) サラー
CHE:22′ ハフェルツ
主審:アンソニー・テイラー
第4節 アストンビラ戦(H)
■アストンビラの3つの誤算
前節はアンフィールドから10人に勝ち点を持ち帰ったチェルシー。内容と結果が伴う序盤戦で好調な滑り出しを決めている。ホームに迎えたアストンビラに対しても支配的に試合を進める。
チェルシーの3バックに対して、アストンビラのプレス隊は2トップ。チェルシーはGKも絡めてのビルドアップもできるので、数的優位は十分。アストンビラ側もそれは織り込み済みで2トップは無理にボールを取りに行こうという姿勢を見せず、中盤へのパスコースをケアしながらの守備になっていた。
その分、アストンビラが狙いを定めていたのは中盤。ボールを受けたところへの厳しいチェックを欠かさないアストンビラにチェルシーの中盤は苦戦。とりわけ、明らかに適応できなかったのがこの試合がデビュー戦となったサウール。ボールを受けてからのプレーの判断までが遅く、アストンビラの中盤のボールの狩りどころに。アストンビラはショートカウンターからチャンスを作っていった。
調子よくチェルシーに対する防衛策を張っていたアストンビラだったが、誤算が2つ。まず1つ目はそのサウールの相方の存在だ。取りどころに定め、窒息しそうになっているサウールにコバチッチがヘルプにいく。コバチッチは密集からのボール運びで中盤の守備を無効化すると、前線のルカクにピンポイントでパスを届ける。マルティネスの代役を任されたスティアーにはルカクの相手はやや重荷だったか。ルカクはあっさりとこれを沈めて先制点に。
ボールの取りどころを追い込み、アストンビラがカウンターのチャンスを得られそうだった形をコバチッチが一人で反転。アストンビラはオセロを一枚置いただけで盤面の優劣を一気にひっくり返された気持ちになったに違いない。
もう1つのアストンビラの誤算はメンディ。アストンビラはカウンターのチャンスは作れていたし、それをゴールゲッターのワトキンスに届けることもできていた。その上で、ワトキンスのプレーセレクトも悪くはなかった。だが、それを上回ったのがメンディ。長い手足に驚異的な反応スピードであらゆるシュートをセーブ。この日の存在感は圧巻で、このパフォーマンスが続くならば、世界最高のGK候補に彼の名前を挙げない人はいなくなるかもしれない。
結果としては敗れたアストンビラだったが、非常にいいパフォーマンスだったように思う。特に印象的だったのは中盤3人のパフォーマンス。とりわけ際立っていたのはマッギン。フォロワーさん曰く『連戦になればなるほど輝きを増す』とのことなので、9月の怒涛の代表3連戦すら彼には追い風なのだろう。あらゆるボールを刈り取り、サウールに苦い思いをさせまくっていた。
ラムジーも早い段階での警告で尻込みするかと思ったが、その後もタフなマークでチェルシーの面々を苦しめていたし、ドウグラス・ルイスはいうまでもない安定感。中盤は盤石で、この日不在のブエンディアの穴を埋めて有り余るパフォーマンスだった。
逆に残念だったのは2失点目の場面だろう。ミングスはルカクとのマッチアップに燃えていたし、ある程度はやれていたと思うのだが、この2失点目のシーンでのバックパスは軽率の一言に尽きる。フィジカルにも恵まれ、足元のスキルも十分なのだが、やや自信過剰すぎるきらいがあるのがミングス。この大一番で彼の悪い癖が出てしまったことがアストンビラにとってはこの試合3つ目の誤算だったといえるかもしれない。
試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
チェルシー 3-0 アストンビラ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:15′ 90+3′ ルカク, 49′ コバチッチ
主審:スチュアート・アットウィル
第5節 トッテナム戦(A)
■当たらなかった先制パンチからの横綱相撲
アルゼンチン派遣組やソン・フンミン、ダイアーなどの負傷組も戻り、ある程度の主力のメンバーを揃えることに成功したトッテナム。ロメロはリーグ戦のスタメンデビューの一戦となる。
トッテナムがチェルシー相手に準備してきたやり方は強烈な先制パンチを浴びせようというもの。基本的には高い位置から人を基準にひたすらハメて時間を奪い取る。多分、ここまで見てきたプレミアの試合の中で一番圧力をかけた立ち上がりだったのではないだろうか。まるで敵陣から絶対ボールを出してはいけない縛りでサッカーをしているかのように見えた。
普段と異なり、ソンを中央に移してGKまで積極的なプレスを行うトッテナム。GKにケパが入ったこともあり、連携面に不安があるチェルシーはやや圧に屈しかけるような危ういビルドアップになる場面もあった。中盤では水漏れしそうになるところをアンカーのホイビュアがカバー。トッテナムのハイプレスが生じる歪みのツケを払っており、ハイプレスはそれなりに機能していたと言っていいだろう。
カウンターに移行しても攻撃は脅威となるものを披露できていたトッテナム。20分の場面のレギロンのオーバーラップなど、チェルシーは最終ラインで水際の対応を迫られる場面も。ややカウンターで不発感のあるチェルシー相手に優勢に試合を進めた。
だが、この時間帯を境にトッテナムは徐々にトーンダウン。プレスを緩めて自陣深くまで撤退する場面も出てくるようになり、チェルシーは保持で時間を作れるようになった。押し込んだ後の攻撃のクオリティは両チームに差があった感じ。こなれているチェルシーに対して、トッテナムはやや手詰まり感が出るようになった。
ハーフタイムに動いたのはチェルシー。カンテを入れて5-3-2にシフト。攻守にいろんな改善を狙える交代のように思えるが、その効果が炸裂する前に先制点がチェルシーに入った印象。チアゴ・シウバのCKからの得点で一歩前に出る。
先制した後のチェルシーの布陣変更の効果はえぐかった。5-3-2の守備陣が相手だと、トッテナムの保持は前半以上に停滞感を伴うものに。ボールを左右に回しながら、打開を図るもほぼ手はなかったといっていいだろう。
プレスに関しても後ろの人数を増やしたチェルシー相手には体力を使ってしまったトッテナムは相手を捕まえ切ることができず。得点前から中盤のボール奪取で効果の片鱗を見せていたチェルシーのHTの交代策はリードを奪ってからより凄みを増すようになった印象だ。
そのきっかけとなったカンテのミドルで追加点をあげると、ここからはチームの格の違いを見せつける感じ。試合終了間際にはリュディガーが叩き込み3点目で試合を一気に決めた。
トッテナムの強烈なプレス攻勢による奇襲は、裏を返せば真っ向から組み合っても差があることを認める故とも取れる。そのチーム力の差をまざまざと見せつけたチェルシー。ここまでアウェイはアーセナル、リバプール、トッテナムと続いているが、未だに無敗。リーグ制覇に向けて上々の滑り出しと言えるだろう。
試合結果
2021.9.19
プレミアリーグ 第5節
トッテナム 0-3 チェルシー
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
CHE:49′ チアゴ・シウバ, 57′ カンテ, 90+2′ リュディガー
主審:ポール・ティアニー
第6節 マンチェスター・シティ戦(H)
■待ち望んだ『9番』が難敵克服の立役者
シティの史上初のビックイヤーを阻んだのはシーズン途中にプレミアにやってきたトーマス・トゥヘルのチェルシー。トゥヘル就任後、3連敗とシティにとってチェルシーはすっかり目の上のたんこぶになった印象だ。そんなたんこぶであるチェルシーは首位。すでに強敵との日程も消化し始めており、コンディションは上々。優勝候補筆頭との呼び声も高い。
この試合の立ち上がりの構図は非常にはっきりしていた。ボールを持つのはシティ、受けるのはチェルシー。その展開を両チームとも受け入れた試合だった。プレスに対する姿勢も対照的。何がなんでも敵陣で奪い取りたいシティに対して、時折はプレスに出ていくものの、基本的には自陣に引くことが多いチェルシーだった。
チェルシーがブロック守備で特に気をつけていたのは、左の大外に構えるグリーリッシュにいい形でボールを渡さないこと。内に入るカンセロからシティはグリーリッシュへのパスコースを切り拓こうとするのだが、ジェームズが細かい上下動を駆使し、前を向いてグリーリッシュと対峙する機会を減らそうとした。
それでもジェームズの負傷交代後はやや左サイドで前が向けるようになったシティ。役割を引き継いだアスピリクエタは受ける前の段階の守備よりも、受けた後の対人守備を頑張っているようだった。
右サイドはやや停滞感もあったシティ。こちらのサイドは攻撃参加に積極的なマルコス・アロンソが戻り遅れるシーンもしばしばあったが、内に絞る右のWGのジェズスがうまく彼のスペースをつくことができず。打開を担ったのはベルナルド。PA幅で自由に浮遊するベルナルドやフォーデンと徐々に繋がる機会を増やし、右サイドから中央の攻略を狙っていた。
チェルシーの攻撃の狙いは明らか。ボールを奪った後、素早くルカクとヴェルナーの2トップに繋ぐこと。縦へのスピード勝負である。わかってても止められないスピードはシティのバックスを脅かしはしたが、ここはラポルトとディアスがなんとか体を張って防ぐ。前半は互いに相手の本懐にたどり着けず、枠内シュートが0で折り返すこととなった。
後半、配置を変更したのは押し込まれていたチェルシー。ヴェルナーを右に移動させたのは、カンセロの裏を狙う意図だろうか。もう一つ中盤でバランス調整となったのは、攻守に前に出ていく役割をカンテからコバチッチに変更したこと。前半は自陣深い位置から脱する役割だったコバチッチを、より高い位置で触らせることによりゴールへの先導役としての役目を持たせたのだろう。
だが先制したのは、対策を講じたチェルシーではなくシティ。セットプレーの流れから技と根性でジェズスが押し込み先制。シティファンが首を長くして待っている9番としての仕事をジェズスがやってのけ、シティに貴重な先制点をもたらす。
チェルシーはハフェルツを投入し、3-4-3変形。CBラインを高く設定しプレスを解禁する。前線からのプレスの機能も高くリターンも見込めるやり方にシフトしたチェルシーだが、スピードに難があるバックスが後ろにスペースを背負うため、リスクも当然大きくなる。
決定機はシティの方が多かったが、2点目までは決めきれず。チェルシーは最後の交代枠であるロフタス=チークがシティの左サイドを切り裂くアクセントとなり、ファンを驚かせたものの、最後までシティのゴールを脅かすことはできず。
序盤戦のプレミアの行方を占う一戦は首位のチェルシーをシティがストップ。ようやくトゥヘルに土をつけて、両チームは勝ち点でも並ぶこととなった。
試合結果
2021.9.25
プレミアリーグ 第6節
チェルシー 0-1 マンチェスター・シティ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
Man City:53′ ジェズス
主審:マイケル・オリバー
第7節 サウサンプトン戦(H)
■テンポの早さで苦しめて、テンポの早さで苦しむ
ミッドウィークのCLから大幅にメンバーを入れ替えたチェルシー。ヴェルナー、チャロバー、ロフタス=チーク、ハドソン=オドイ、チルウェルなど、今季ここまでリーグ戦では限られたプレータイムしか得ることができていないメンバーがこの試合では起用されていた。
前線のメンバーが入れ替わったことでルカクの起用方法がどう変わるか?という部分を気にしてみていたが、あまり変わらない様子。基準点型のCFとして深さを取る役割で4-4-2に出るハイプレスの牽制役として機能していた。
正直、チェルシー相手に4-4-2でプレスに行くというのは割と自殺行為だと思うのだが、この試合のサウサンプトンは高い位置から奪いに行くことで腹を決めていた様子。噛み合っていなくても、時間さえ奪ってしまえば確かにこの日のチェルシーの面々ならばミスは出る。シャドーにハフェルツやマウントのような優れた引き取り手がいないことは大きかったかもしれない。
それでもチェルシーは中盤に時間を与えられた際には問題なく呼吸ができる。コバチッチは相変わらずの存在感。ここにボールが入れば、積極的に攻め上がる両WBの幅とルカクの奥行きを使いながら、サウサンプトンの守備ブロックに攻め込むことができていた。セットプレーからロフタス=チークのスラしをチャロバーが決めて先制したこともあり、チェルシーはスコアだけ見れば上々の序盤戦だった。
だが、先制後もプレスの手を緩めないサウサンプトンにはチェルシーは引き続き手を焼く。ボール保持の際はサイドで多角形を作り、きっちりチェルシーを押し込むサウサンプトン。特に左SBのウォーカー=ピータースの縦横無尽に動きに対してはチェルシーは後手に回っていた。ゲーム勘も含めたコンディションはサウサンプトンの方が良かったように見える。
そんな中でサウサンプトンはPK獲得。今季絶好調のリヴラメントを今季苦しんでいるチルウェルが引っ掛けてしまい、同点の機会を与えてしまう。リプレイも見るとタックルした瞬間に多くの人が頭を抱えていたスタンフォード・ブリッジの観客のリアクションが全てを物語っている感。この場面ではリヴラメントとの決闘にチルウェルは敗れてしまった。
アップテンポなリズムを引き寄せて、コンディションの良さでチェルシーを苦しめていたサウサンプトンだったが、ここで落とし穴が。ウォード=プラウズのジョルジーニョへのタックルが一発退場と裁定されて10人で戦うことになってしまう。悪意は感じなかったが、ここまで優勢に進めてきたリズムの速さにしっぺ返しを食らってしまった感じだ。
こうなるともうペースはチェルシーに。10人でプレスがかからなくなったサウサンプトンに対して、ヴェルナーが勝ち越しの得点を挙げる。バークリーからの大きな展開はサウサンプトンがタイトなプレスが消滅したゆえの伸び伸びとした形。10人になったことを存分に活用した得点だった。
試合は終盤にPKのリベンジを果たしたチルウェルのゴールで完全決着。主導権を握ったリズムの速さの制御が効かなくなったサウサンプトンにとっては、途中までうまくいっていただけにダメージの大きい敗戦。しかも、ここから3試合はウォード=プラウズが不在という難局に挑むことになってしまった。
試合結果
2021.10.2
プレミアリーグ 第7節
チェルシー 3-1 サウサンプトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:9′ チャロバー, 84′ ヴェルナー, 89′ チルウェル
SOU:61′(PK) ウォード=プラウズ
主審:マーティン・アトキンソン
第8節 ブレントフォード戦(A)
■残り20分で訪れた流れに立ちはだかる牙城
チェルシーは少々意外なフォーメーションを組んできたという印象を持った。シティ戦の焼き直しとなった5-3-2という形もそうだし、アンカーにロフタス=チークを持ってきたという用兵の部分もそう。真っ先に思ったのは機動力に怪しさのあるブレントフォードの最終ラインにルカクとヴェルナーをぶつけてしまおう!というアイデアなのかというところか。
実際に見てみた感想としては半分は当たり、半分はハズレという感じだろう。確かにチェルシーの前半のチャンスの多くはサイドからの最終ラインを強襲し、中央でDFラインギリギリでギャップを使ってオフサイドを掻い潜ろうとするルカクやヴェルナーが得点を狙うという形だった。そういう意味では当たり。
一方でこの形一辺倒だったか?と言われると微妙なところ。例えば、積極的に裏に蹴りまくることでルカクやヴェルナーのスピードだけを生かす機会を極端に増やすことはしなかった。むしろ、この試合のチェルシーは非常に保持を大事にしていた。ブレントフォードの得意な攻守の切り替えが多い展開を避けることも同時に重視していたと思う。
チェルシーの中盤はブレントフォードの中盤に数を合わせながら人主体で守られていたが、細かく立ち位置を変えるカンテはどうしても捕まえられない。もはや、保持のキーマンにもなるのがカンテである。アンカーのロフタス=チークも逆三角形同士のマッチアップになったことを享受し、比較的プレスがゆるく起点として十分な働きをしていたと思う。
ブレントフォードのトニーやムベウモへの長いボールもこの日初出場となったサールを含めた3バックを中心にシャットアウト。チェルシーも無理にチャンスを追わない分、ブレントフォードにもソリッドな組織で攻める回数自体も規制するという形で試合をこう着状態に追い込んだ。ファウルを躊躇なく行っていた両チームなので、試合の流れとしても止まりやすくぶつ切りになっている展開だった。
大きかったのは45分にチルウェルがスーパーゴールを叩き込んだことだろう。チェルシーは無理に自分から展開を動かす必要性がなくなった。
というわけで後半も膠着した展開は継続。チェルシーがこのままブレントフォードを眠らせるのかなと思った。しかし。70分を境に試合は一変。流れは一気にブレントフォードに流れこむ。中央でのパス交換からムベウモが裏を取るチャンスを作ったことで徐々にブレントフォードがチェルシー陣内で深さを作ることに成功する。
リスク承知で人をかけることで、チェルシー陣内でのブレントフォードが得意な競り合いは増加。サイドにボールが出るとロングスロー、そしてお得意のファーへのクロスからの折り返しのパターンを織り交ぜてチェルシーの首を絞めて行く。ここは文章だけでは書ききれない迫力なので、是非実際に試合を見てほしいところ。
しかし、最後の砦として立ちはだかったのはメンディ。目まぐるしくエリア内で動くボールについていき、至近距離からのシュートをスーパーセーブで回避。これまでの相手はこの形で締め落としてきたブレントフォードだったが、メンディの牙城は別格。殴れども殴れども破れない今季のプレミア最高のGKを前に勝ち点0で屈することになった。
試合結果
2021.10.16
プレミアリーグ 第8節
ブレントフォード 0-1 チェルシー
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
CHE:45′ チルウェル
主審:アンソニー・テイラー
第9節 ノリッジ戦(H)
■文字通りの『ボーナスステージ』
第9節の対戦カードは上位対決が目白押しである。トップ7のチームのうち、6チームが直接対決の潰し合いをするという大変見応えのある週末になっている。そのトップ7のうち、唯一、今週潰し合いを回避しているのがチェルシー。開幕戦から厳しい日程を続けたチェルシーは皆が潰し合いをやっているのを横目に最下位のノリッジとの対戦。側から見ればボーナスステージである。
しかし、そういう時にこそ落とし穴があるのがプレミアリーグ!そんなことを思えたのは8分間だけ。マウントがDFの股を抜くスーパーシュートを決めるまでの話だった。ルカク、ヴェルナーとCF色の強い選手が軒並み不在というわずかな不安要素を簡単に吹き飛ばす先制点であった。
ノリッジはサイドでの守備をCB、WB、IHで囲んだり、カウンターの際はWBのギアンヌリスも高い位置まで出ていったり、カバクが持ち上がったりなど一応工夫はしていなくはなかった。だけども、とにかくマークがルーズ。ハドソン=オドイは少し低い位置まで降りてしまえば簡単に反転して前を向けるし、前を向いたハドソン=オドイを止められる選手はノリッジにはいない。
同じく、チェルシー対策として一般的なコバチッチとジョルジーニョに人を当てるというところをIHの2人がやってはいたが、ここもマークが甘く簡単にボールを前に運ばせる。ノリッジは一度ラインを下げてしまうと、相手がバックパスをした際にもう一度ラインを上げ直す習慣があまりなく、ボールを縦に往復させるだけでチェルシーの両CHは簡単にフリーになることができる。
チェルシーはサイドからラインを押し下げる形でノリッジの陣内に攻め込んでいく。この日効いていたのはそこから直接狙ったシュート。チルウェル、ジェームズの大外からのシュートがともに決まるなど、大外からの攻め込みがいかに深い位置まで入り込めているがよくわかる場面だった。
試合としてはほぼ前半で終了。CL後のチェルシーはテンションを下げてはいたが、ノリッジがギブソンの退場で10人になると、最後にもう一度得点を重ねにいく。VARの助言に加えて、PKの蹴り直しというお膳立てまでもらったマウントは後半追加タイムにハットトリックを達成することができた。
上位対決の間に、チェルシーは文字通りのボーナスステージを堪能。マウントのハットトリックという副賞までつけてもらい、90分間のフットボールを楽しんでプレーした。
試合結果
2021.10.23
プレミアリーグ 第9節
チェルシー 7-0 ノリッジ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:8′ 85′(PK), 90+1′ マウント, 18′ ハドソン=オドイ, 42′ ジェームズ, 57′ チルウェル, 62′ アーロンズ(OG)
主審:アンディ・マドレー
第10節 ニューカッスル戦(A)
■堅いならブロックごと撃ち抜く
ニューカッスル×チェルシーというカードを見た段階から想像した通りの展開になったといっていい内容だった。当然、チェルシーがニューカッスルの5-3-2攻略に挑み続けるという形である。
当たり前のように時間を与えてもらうチェルシーのCB陣。ニューカッスルのプレス隊は彼らには目もくれずチェルシーの中盤を消すことを優先にまずは動いている様子だった。破壊のきっかけになりそうだったのはまずはカンテ。ゾーンの切れ目に顔を出し、誰も届かないところからボールを受けてそこから運んでいくスキルは絶品である。
ただ、内側を囲むニューカッスルもさすがに簡単に決定機は渡さない。わかりやすくマッチアップで優勢を取れるルカクやヴェルナーや、可変性をもたらすことが出来るマウントの不在によりちょっとブロック崩しのアクセントが少なかったように見える。
左サイドの縦関係はその中でも効果的なポイントの1つ。止まりつつ相手をピン留めできるハドソン=オドイと彼の外側を追い越すように回るチルウェルの関係によりニューカッスルは抉られる機会が徐々に出てくるようになった。
ただ、それよりもチェルシーが上手だったのはニューカッスルのカウンター対応だ。深い位置に押し下げられてもニューカッスルに得点のチャンスがあるのはサン=マクシマンというロングカウンターの名手がいるから。
チェルシーはそのサン=マクシマンを複数人でサイドに追いやるように囲むのがうまかった。たとえ複数人でもスピードに乗った状態で360度が確保できる状況だとサン=マクシマンなら突破してしまう可能性は十分にある。しっかりと封じ込めることが出来たのは封じ込め方をちゃんと理解していたからである。
後半になると中央への縦パスからのポストでのミドルという形でより攻勢を強めるチェルシー。押し込む機会を増やすと、左サイドのハドソン=オドイの抉る動きから最後は逆サイドのジェームズ。ラインを下げることによって外から打ち抜ける射程圏内に持って行ったチェルシー。ブロックごと外からミドルで壊すことで先制点を得てみせた。ニューカッスルはちょうどハドソン=オドイのサイドのIHをフレイザーからアルミロンにスイッチしようとしていたところ。わずかだが、ここの手当てが間に合わなかった。
ここからは完全に試合はチェルシーペース。カウンターから再びジェームズが追加点をとると、ハフェルツが完璧な抜け出しからPKをゲット。先制点までには時間がかかったが、ブロック破壊もカウンター対応にもバッチリ回答を用意してきたチェルシー。ノリッジ戦に続き、下位をきっちり叩くことで後続との差を広げることに成功した。
試合結果
2021.10.30
プレミアリーグ 第10節
ニューカッスル 0-3 チェルシー
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
CHE:65‘ 77’ ジェームズ, 81‘(PK) ジョルジーニョ
主審:ポール・ティアニー
第11節 バーンリー戦(H)
■一瞬のスイッチ切れが致命傷に
序盤戦にきつい日程を消化しながらも首位に君臨するチェルシー。下位との取りこぼしをしたくない3連戦も第3ラウンド。3タテを狙う最後の一戦はホームのバーンリーとの試合である。
試合は立ち上がりからチェルシーのペースだった。トランジッションからのスムーズな前方への運びで、チェルシーは序盤からバーンリーのゴールに攻め込んでいく。
バーンリーの4-4-2のプレスに対して、チェルシーは大外から見事に回避。最終ラインの持ち運びからSHを引き付けると、大外のWBにボールを逃がし、そこから裏に出すことでバーンリーのDFラインを下げながらゴールに向かっていく。
バーンリーはこれに対してSHが低い位置に入ることで5-3-2気味にバックラインを形成する。とりあえず埋めて5レーン的な攻撃に対して、スペースを空けないような形で受ける。チェルシーは自陣に引き込むようなボール回しで対抗。バーンリーの中盤を自陣方向に食いつかせるようなパスワークで最終ラインと中盤のライン間にギャップを生んでいく。
こうなると、バーンリーの最終ラインが手前のスペースを埋めるか否か?というところの判断をしなければいけなくなってしまう。なので最終ラインで5ラインを埋めればOK!という状況にはならなくなる。
さらにここまでのバーンリーの対応は全てチェルシーに対してラインを上げられるようなアプローチにはなっていない。2トップも起点にはなり切れず、陣地回復がままならない。チェルシーに対して一方的に攻められる状態が続く。
そうなった時に最近のチェルシーで強みになるのはWBの存在である。5-3-2ブロックを攻略することにおいて特に重要なのは外から打ち抜ける大外の選手がいるか?という話である。例えばアレクサンダー=アーノルドとか。彼のような3ポイントシューターのような特殊技能者がいればブロック攻略はグッと楽になる。
今季のチェルシーはWBはファイナルサードへの貢献が大きい。特にジェームズがこの役割を担うことが多い。この試合でもピンポイントクロスで得点を演出。前節の2得点に続き、ファイナルサードで光って見せた。アロンソもチルウェルも彼とはタイプが全く違うが、最後の局面で貢献できる選手。外から打ち抜くための武器が揃っているチームといえる。
後半もチェルシーがペースをにぎる。バーンリーはプレスの積極性を上げて食って掛かってくるが、チェルシーにとってはこれを回避するのは朝飯前。大外を使いながらプレスを回避し主導権を渡さない。
それだけにバーンリーの同点弾は青天の霹靂だった。この瞬間だけチェルシーの対応はスイッチが切れたかのよう。ホルダーへのチェックも、クロス対応も、ラインコントロールも怠慢で瞬間的にバーンリーに好き放題をさせてしまう。
その後はバーンリーのブロック攻略に四苦八苦。引き分けでOKなバーンリーはチェルシーの選手の移動には目もくれず、ひたすらPA内で跳ね返し。スコアも内容も握っていたチェルシーが一瞬のスキを突かれてバーンリーにからめとられてしまうことに。チェルシーは下位とのリードを広げる貴重なチャンスをフイにしてしまった。
試合結果
2021.11.6
プレミアリーグ 第11節
チェルシー 1-1 バーンリー
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:33′ ハフェルツ
BUR:79′ ヴィドラ
主審:アンドレ・マリナー
第12節 レスター戦(A)
■ピッチに反映された力関係
近年のプレミアならばCL出場権争いの直接対決となるカード。だが、今年は明確に両チームの勢いが違う状況での対戦となった。
チェルシーはCLのタイトルをひっさげ、リーグは首位。今や優勝争いを繰り広げる3強を牽引する存在である。かたやレスターは苦戦。開幕当初よりは勝ち星は重ねられるようにはなったが、同じく序盤戦で苦しんだアーセナルやウルブスがジャンプアップしているのを見ると、トップハーフとボトムハーフを行き来している現状は決して満足できるものじゃないだろう。
首位争いとリーグ中位となった試合は両チームの立ち位置をそのまま反映した内容になった。レスターは3-4-2-1のミラーフォーメーションでチェルシーに対抗。シャドーにはバーンズとルックマンというドリブラーを配置することで、ロングカウンターもちらつかせる構えだった。
だけど、このやり方はちっとも効かなかった。オフザボールでもドリブルでもゴールに迫れる機会は皆無。後半途中までレスターはシュートを打つことすらできなかったくらいである。出し手となるティーレマンスの不在がいかに痛かったかがよくわかる数字だ。ソユンクなど後方の選手が持ち上がってギャップを作ってもヴァーディ以外は足元で受けたがるため、チェルシーにとっては迎え撃つのがそこまで難しくはなかった。
一番大きかったのはチェルシーの保持を阻害できなかったことだろう。ミラーゲーム気味ではあったが、レスターはリュディガーのところのマークはやや甘く、ルックマンは内側にポジションをとり3センター気味に中央をプロテクトすることを優先することが多かった。
というわけでチェルシーは空きやすい自陣左サイドの深い位置にジョルジーニョが移動を開始し、リュディガーを押し上げる動きを見せる。このジョルジーニョの動きにレスターの選手がついていき、中盤にギャップが出来ればマウントやハフェルツがボールを受ける準備ができるし、ジョルジーニョが放置されるのならば裏のハドソン=オドイの動き出しに合わせることが出来る。
マンツーを意識したであろうミラーでチェルシーに全く持って対応できなかったのはレスターにとっては痛かった。前からのプレスはハマらないし、後方ではハフェルツやハドソン=オドイにファウルを犯しながら危険な位置でセットプレーを与える。
リュディガーのヘッド(ゴール側からペナルティスポット方向に走るという結構珍しいヘッドだった)はこれだけ押し込む機会があれば当然入るだろう!という感じ。続くカンテのゴールはスーパーだが、レスターはあっさり急所への侵入を許してしまった感が否めない。プレスも籠城もうまくいかなかったのがこの日のレスターだ。
後半は2トップに変更し、プレスの意識をさらに強めるレスター。チェルシーとしてはティーレマンス不在のレスターならば、失ってのショートカウンターがもっとも怖いので、前半に比べると裏へのパスを増やすことで対抗をする。後半開始早々にジェームズが中盤中央の空きスペースに侵入し、ハイプレスの脱出口として涼しい顔でプレーしていたのにはこのチームの底力を感じられずにはいられない。
後半はプリシッチのゴールでさらに突き放したチェルシー。攻守になす術のなかったレスターをコテンパンにし、快勝で冬の連戦の初戦を飾った。
試合結果
2021.11.20
プレミアリーグ 第12節
レスター 0-3 チェルシー
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
CHE:14′ リュディガー, 28′ カンテ, 71′ プリシッチ
主審:ポール・ティアニー
第13節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)
■よもやのドローとジョルジーニョの凄み
ワトフォードに敗れてついに監督交代に踏み切ったマンチェスター・ユナイテッド。後任には暫定監督としてラングニックの就任が発表されたが、この試合の時点では正式発表されておらず『みんな知っているけどまだ』という状態だった。
そんなわちゃわちゃしている形で迎えるチェルシー戦。立ち上がりから攻められる場面ばかり。開始早々にデヘアがいなければジエンドだった!というチャンスを作られてしまう。
ただ、ユナイテッドは全く無策でこの試合に臨んだわけではない。この試合で指揮を執ったキャリックのアイデアなのか、あるいはすでにラングニックの手が入っているのかはわからないが非常にプレッシングが特徴的だった。
フォーメーション表的には4-3-1-2という形になるだろうが、左右の守備の陣形は非対称。2トップの一角のサンチョは右サイドに大きく張り出しWBをケア。逆サイドのトップのラッシュフォードは中央に留まり、サイドに出ていくのはIHのフレッジという分担だった。したがって、基本フォーメーションはひし形なのに時折4-4-2フラットに見えるという不思議な感覚。特に噛み合わせているわけではないし。
チェルシーは左サイドから時間を得たリュディガーから前進。裏のハドソン=オドイへのパスでリンデロフに揺さぶりをかけていく。ユナイテッドとしては苦しい戦いだったが好材料は2つ。
1つはチェルシーのこの日のメンバーが普段と比べて周りを気にかけながらボールの前進が出来るタイプが少なく、自分のできることに注力するタイプが多かったこと。例えばヴェルナーの裏抜けもそれに合わせる動きがなくやや単発だったし、マルコス・アロンソも前がプレーの幅が広いマウントの方が尖っているハドソン=オドイよりもやりやすかったように思う。
もう1つはエリア内の守備に体を投げ出す根性はユナイテッドの守備陣に戻ってきたこと。その気力すら見られず、軽率なミスを繰り返していたワトフォード戦に比べれば状態は上向いているといえそう。
なかなか点が取れそうで取れないチェルシーに対して、先制したのはまさかのユナイテッド。やたら前がかりになるセットプレーを裏返してジョルジーニョのコントロールミスを誘い、カウンターから独走。サンチョがメンディとの1対1を制し、貴重な得点を挙げることに。
まだ時間は残されているが、チェルシーはやたらあわててテンポが速くなるように。こうなるとミスからロングカウンターの機会が得られる分、少しは展開がユナイテッドに向くようになる。それでも前進の術をもっていないのが今のユナイテッド。ミスがない限りはチェルシーからボールを奪うチャンスを得ることが出来ない。
慌てて覚束なくても押し込むことができる以上は事故が起きる可能性はある。ワン=ビサカが与えたPKは押し込まれた故にユナイテッドが払うことになった税金である。ワン=ビサカは気の毒だが、コンタクトがあってひとたび笛が吹かれてしまっては、OFRからのPK取り消しは難しいだろう。
にしてもPK後に即ボールを握りしめたジョルジーニョには覚悟を感じた。この試合のミスもそうだけど、イタリア代表でも決定的なPK失敗を犯している彼がこの局面で進んでPKスポットに立つのはなんというかすごいなという感想に尽きる。そんで決めちゃうんだもんね。
ジョルジーニョのPK成功でさらに強気にゴールを目指すチェルシー。最後の仕上げは右のWBのプリシッチ。内を固めるユナイテッドを大外から壊すための一手だろう。だが、これでも最後はPA内のユナイテッドの守備陣にシュートは阻まれる。ユナイテッドもメンディのミスから終盤に勝ち越しのチャンスは得たが、これはふわっとフレッジがGKに返すようなシュートでフイにしてしまう。
試合は1-1のまま終了。ホームチーム圧倒的優位と思われた一戦はスリリングでドラマチックな引き分けで終わることとなった。
試合結果
2021.11.28
プレミアリーグ 第13節
チェルシー 1-1 マンチェスター・ユナイテッド
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:69′(PK) ジョルジーニョ
Man Utd:50′ サンチョ
主審:アンソニー・テイラー
第14節 ワトフォード戦(A)
■したたかな布陣変更で健闘のワトフォードを退ける
前節はユナイテッド相手にホームで勝ちを逃してしまったが、内容を紐解いてみれば優勢だったのは明らかにチェルシー。想定外の展開や部分的に精彩を欠いてなおユナイテッドを相手に試合を掌握できるのはそもそもの完成度がそれほど高いということだろう。
というわけで下位に沈み、不安定な戦いに終始するワトフォード相手には楽勝かと思っていた。だが、この試合のチェルシーは苦戦。特にこれまではスムーズに運べていた球出しのところをワトフォードのプレスで咎められることが多かった。特に左サイドのところ。リュディガーのところとCHのサウールのところでワトフォードのクレバリーの出足に負けてひっくり返されることが多かった。
ボールを引っ掛けた後のデニスを主体としたカウンターはチェルシーにとって非常に危険。加えて対面がマルコス・アロンソなので裏へのケアは甘く、ひっくり返した直後にそのまま裏を使う形で攻め入ることが多かった。ワトフォードの得点はサウールのところからボールを奪い一気に攻め込む形からだった。
チェルシーは浮き玉で右サイドに振る形でのプレス脱出は見事だったけど、強引なターンや楔に関しては割と相手の守備にしてやられるパターンが多く、いつものボール保持ほどの安定感はあまりなかったといえる。加えて深い位置まで進んでもプレッシングが割と後追い気味。前線があまり細かく動きながらプレスをかけなかったこともあり、中盤もプレスの狙いが定まらなかったようである。
そんな中で同点ゴールを生んだチェルシー。得点場面でらしさを見せたのは深さを作ったマルコス・アロンソ。らしさを見せてラインを破り、最後はマウントが決めて同点に追いつく。
同点に追いついてなおペースを掌握しきれないチェルシーは選手交代と共に布陣を変更。サウールを諦め、チャロバーをアンカーに据えてIHにロフタス=チークとマウントを置くことにした。サウールの苦難はまだまだ続く。これにより、ワトフォードのプレスの主軸を担っていたシソコとクレバリーに背後を気にさせるように。
これでいくばくかのビルドアップのプレッシャーを回避したチェルシー。ボールホルダーがオープンになれば列を越えることは容易。裏へのパスでラインブレイクするとツィエクが勝ち越しゴールを叩き込む。
しかし、終盤までワトフォードの両翼の攻撃に苦戦したチェルシー。デニスのカットインに内側の選手が合わせる形で最後までゴールを脅かしてはいた。だが、僅かに及ばなかったワトフォード。戦前の予想よりもチェルシーを苦しめたが、勝ち点を奪うまでには至らなかった。
試合結果
2021.12.1
プレミアリーグ 第14節
ワトフォード 1-2 チェルシー
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:42′ デニス
CHE:29′ マウント, 72′ ツィエク
主審:デビット・クーテ
第15節 ウェストハム戦(A)
■修正から得た主導権が生んだ脈絡なき決勝点
今、ロンドンで最も高い順位にいる2チーム同士の対戦。チェルシーの対戦相手になるのはアーセナルでもトッテナムでもなく、ウェストハムである。
フォーメーション的にはチェルシーに噛み合わせた5-4-1に挑むことにしたウェストハム。しかしながら、マンマークに行くかと思いきや、プレッシングは控えめ。むしろ、遅れてプレスに行くケースが多い分、ジョルジーニョやロフタス=チークには縦にパスを入れる余裕が十分で、パスで前を進めるのは難しくなかった。
サイド攻撃においてもハーフスペースから裏を取る形でウェストハムの最終ラインを動かしながらクロスを上げることができていたチェルシー。ウェストハムのプレスの遅れと、サイドの攻撃からラインを押し下げられたことでウェストハムを釘付けにする。セットプレーからチアゴ・シウバで先制したことも含めてチェルシーとしては理想的な展開だった。
しかしながら、これで終わるようではウェストハムはこの順位にはいない。今年の記事でも繰り返しているように、隙あらばラインを上げられるのがウェストハムの強さである。プレッシングからジョルジーニョのバックパスを誘発すると、選択肢が消えたメンディが対応をミス。ボーウェンを倒してPKを与える。
だが、前半終了間際にチェルシーはマウントのスーパーボレーで勝ち越し。ウェストハムはとりあえずラインを下げるという選択肢が呼んだ失点となってしまった。
後半にウェストハムは5-3-2に変形。ロングカウンターの比率を高め、前半のような中途半端なチェイシングを減らし、メリハリのある追い方に変更する。
実ったのはまたしても高い位置への押し上げから。アントニオへのロングボールの落としをコーファルが粘って繋ぎ、最後はボーウェンがダイナミックなゴールを叩き込む。股抜き、そしてあのスピードでなければメンディをあの位置から撃ち抜くのは難しかったはずだ。
そこからはウェストハムがペースを握る。チェルシーはルカクが入ってから流動性が低下。PA内のパワーとスピードの上乗せができれば、収支は合うのだが、ウェストハムの守備陣がそれを許さない。
ウェストハムはロングボールからのセカンドボール回収で主導権を握る。中盤のフィジカルで言えば、圧倒的にウェストハム。中盤の枚数を増やした分、ソーチェクが高い位置に出れるようになったのも聞いていた。
さらに終盤、4-2-3-1に移行しクロスに飛び込む枚数を確保したウェストハムは攻勢を強める。だが、決勝点を決めたのはそんな脈絡の外側の話。ウェストハムは左の大外からメンディの虚をつくシュートでマスアクが技ありのシュートを決める。2失点目直後のアントニオもそうだけど、かなりエリアの外からシュートを狙う意識が高かったウェストハム。メンディはゴールマウスをあけた強気のポジショニングが多い!というスカウティングでもあったのだろうか。
チェルシーは終盤にプリシッチとハドソン=オドイの左サイドからこじ開けにかかるも、これ以上は失点を許さなかったウェストハム。リバプールに続きまたしても大物食いを達成。ここ数試合の取りこぼしを吹き飛ばす会心の逆転勝利を決めてみせた。
試合結果
2021.12.4
プレミアリーグ 第15節
ウェストハム 3-2 チェルシー
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:40′(PK) ランシーニ, 56′ ボーウェン, 87′ マスアク
CHE:28′ チアゴ・シウバ, 44′ マウント
主審:アンドレ・マリナー
第16節 リーズ戦(H)
■綱渡りで勝ち取った3ポイント
まず目についたのはリーズの変則フォーメーション。4-3-1-2という個人的にはビエルサのリーズでは見たことのない形でスタートをした。
トップ下に入ったロバーツはジョルジーニョをケアしてサイドチェンジを牽制する。2トップとIHは相手を外に外に追いやっていくイメージ。4枚のバックスは動かずにIHがサイドのケアに積極的に出ていきつつ、サイドチェンジを阻害することで同サイドに相手を限定していく。
一方のチェルシーは3バックから前進を試みる。リーズの2トップを牽制しつつ、IHと2トップの間に入っていくようにボールを運びつつリーズの陣形を歪ませる。相手がボールに食らいついて来るタイミングが早いと感じたならば、前線からハフェルツが降りてきての間受け。丁寧にボールを運びながらリーズの守備を壊しそうとする。
だが、先に粗が見えたのはチェルシーの方。トランジッション局面からリーズがボールを奪取すると、一気にそのままPA内に攻め入りPKを獲得する。
チェルシーからすると非常にらしくないボールロスト。マルコス・アロンソが高い位置を取った分、低い位置まで下りていったヴェルナーが決め打ちで再び攻め上がったことでスペースを明け渡してしまった感じ。その分、トランジッションには脆い受け方になってしまいPKを招いてしまった。
らしくない形で先制点を献上したチェルシーだったが、前半終了間際にダイレクトな展開からマウントがゴールをゲット。なんとか同点でハーフタイムを迎える。
迎えた後半、リーズはプレスを強める。IHがワイドのCBを捕まえに行くところまで出ていくことで、前半のような保持で運ばれるシーンを阻害にかかる。だが、出てくるということは中盤のスペースも空きやすくなる。チェルシーは縦に積極的なパスを狙うことで試合のテンポがアップすることに。
しかし、ミスが出たのはリーズの方。軽率なラフィーニャのタックルでリュディガーを倒しこちらもPKを献上。勝ち越し点を明け渡すことになった。
勝ち越し点を得たチェルシーだが、どうも試合を落ち着けることが出来ない。むしろ、プレッシングを強めることで相手を押し込もうとすることに失敗し、リーズに前進のチャンスを与えるような場面もちらほら。
落ち着かない状況から終盤に得点を得たリーズ。一枚ずつずらしながらの敵陣侵入でチェルシーのお株を奪う崩しでの同点劇を演じる。
だが、試合はまだ終わらず。後半追加タイムにリーズの陣内でPKをゲットしたのはまたしてもリュディガー。同じ日に2回PKをゲットするDFとは世にも珍しい選手である。
リーズに翻弄されて苦戦するも最後の最後で勝ちきったチェルシー。勝ち点をこぼす試合がちらほら増えてきただけに貴重な3ポイントとなった。
試合結果
2021.12.10
プレミアリーグ 第16節
チェルシー 3-2 リーズ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:42′ マウント, 58′(PK) 90+4′(PK) ジョルジーニョ
LEE:28′(PK) ラフィーニャ, 83′ ゲルハルト
主審:クリス・カバナフ
第17節 エバートン戦(H)
■ハードなスカッドで粘りのドロー
ほぼシーズン全休となっているキャルバート=ルーウィンに加えてロンドン、リシャルリソン、グレイ、タウンゼントなど前線の選手が軒並み不在。この日のエバートンのアタッカー陣の編成は非常に苦しいものだった。
選んだ5-4-1というフォーメーションもチームカラーとしては本意ではないだろう。本来ならばガンガン前に出ながら撃ち合うスタイルが持ち味のチーム。相手がチェルシーということを差し引いても、とりあえずバックスを並べるという形は彼ららしくはない。
実際、エバートンは5-4-1の特性として顕れやすい堅さを見せることができなかった。2列目が早い段階でホルダーを捕まえにいくため、最終ラインと中盤のギャップができてしまうことがしばしば。したがって、チェルシーはエバートンの1トップであるシムズの周りからCBがボールを運ぶことで簡単に2列目を引き寄せることができた。
ツィエク、プリシッチ、マウントなど上下左右に動ける前線の機動力を活かしながらチェルシーはエバートンの5バックの裏をかき乱しながら前進する。トランジッション局面でオフザボールが効いていたのはジェームズ。ライン間でボールを受けるのもOK、裏へのボールの引き出しもうまい。一歩先に進むきっかけを作る動き出しでチェルシーの攻撃を前に進めていた。
だが、フィニッシュワークがボヤけやすいのが最近のチェルシーの悩み。マウントは得点を重ねてはいるものの、他の選手はなかなかフィニッシュワークにうまく絡んで来れない感じは少ししている。
エバートンはシムズへ長いボールを当てて背負わせる形以外は前進の形は見出せず。試合のペースとしてはチェルシーが握っているのは明らか。だが、決め手にかけてしまいゴールに迫ることができない。
後半もペースは変わらずチェルシーのもの。前半からジェームズが躍動していたチェルシーの右サイドがさらに活性化。ロフタス=チークがライン間の右のハーフスペースで起点になることで、チャンスを作ることができていた。
ようやくこじ開けた先制点はチェルシーの強みだった右サイドのオフザボールがベースになっていた。ドゥクレの攻め上がりを潰したところから、カウンターを発動させると最後はマウントが撃ち抜いて先制する。
やっと先制点が入ったことで胸を撫で下ろしたチェルシーだったが、直後にセットプレーからエバートンが同点に追いつく。ブランスウェイトのマークを外してしまったのは今季波に乗れていないサウールだった。
決勝弾を得るためにもう一度襲いかかるところまではいくことができなかったチェルシー。もぎ取った1点を守ることができない詰めの甘さを見せてしまい、エバートンに勝ち点奪取を許してしまった。
試合結果
2021.12.16
プレミアリーグ 第17節
チェルシー 1-1 エバートン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:70′ マウント
EVE:74′ ブランスウェイト
主審:マイケル・オリバー
第18節 ウォルバーハンプトン戦(A)
■待ち構えるウルブズに打つ手が見えず
ベンチ入りの人数はたったの6人。そのうちの1人が病み上がりのコバチッチということになると、この試合においてはスタメン選びにトゥヘルの意志を反映させる余白はほとんどなかったといってよさそうである。
そんな中でもっとも目を引いたのはカンテとチャロバーの組み合わせ。ビルドアップにおいては3CB+チャロバーの4人で運んでいく形だった。この形を採用したのはウルブスがシティやブライトンのような保持型のチームに対して、ある程度迎え撃つ戦い方を敷く機会が多かったからだろう。3-2よりもより前に人数をかける形で敵陣攻略を挑むことに。
人数調整の部分も意図しつつ、カンテのフリーランをアタッキングサードで使いたかったというアイデアもトゥヘルの中にはあったはず。かつては守備的MFの代表格だったが、今ではボール保持でも十分以上に輝ける存在である。負傷が増えているのはやや気がかりではあるけども。
アタッキングサードでズレを作るのが3トップ+カンテであるならば、後方からズレを作ることを求められているのが3CB。ウルブスのような2トップに対しては空いた1人が持ち上がることにより、中盤より後ろをずらしながら穴をあけていくのがチェルシーの十八番である。
だけども、その十八番はこの日のウルブス相手にはあまり通用しなかった感じ。ウルブスの中盤は2トップの脇からCBに運ばれることを見越して守備をしていたように見えた。イメージとしては『ここに運んでくるでしょ?』という形でチェルシーのCBの進む動線の先にあらかじめ立っていた形。
したがって、チェルシーが後ろからボールを運んでもいつものように敵の陣形がずれるという機会があまり多くはなかった。
むしろ、中盤を縦関係にしたことでボールロスト時にウルブスはチャロバーの脇から横断をしながらの前進が容易になる。これをみたチェルシーは守備時にジェームズを上げる形で4-4-2にシフトチェンジ。ウルブスの前進に対して調整をかけて、相手の攻撃をスローダウンさせる。
深いところに入るまでは行けるウルブスであったが、そこからの攻めあぐねは前節と同じ。シティ相手にも通用したトラオレ大作戦もつかうことがなかったため、なかなかゴールに効果的な形で迫ることが出来ない。
チェルシーは前半途中に負傷したチャロバーがハーフタイムに交代。サウールが中盤に入る。しかし、どうも前進の手助けができないサウール。ボールを受けに降りるばかりで全体の重心を押し上げることができない。
だけども、もうチェルシーには選手起用で幅を出すことができない。バークリーを前線の誰かに代えるのが精いっぱいでこれ以上の手打ちは不可能だった。
対するウルブスも後半に打開策を見出すことが出来ず。互いに枠内シュートは1本ずつという乏しい内容で終わった一戦。特に開催延期を申し入れていたチェルシーの苦しみが如実に感じられる試合展開となってしまった。
試合結果
2021.12.19
プレミアリーグ 第18節
ウォルバーハンプトン 0-0 チェルシー
モリニュー・スタジアム
主審:デビッド・クーテ
第19節 アストンビラ戦(A)
■HTのルカク投入が分水嶺に
どちらもできれば保持で時間が欲しいチーム同士の対戦。より長い時間のボールの保持に成功したのはアウェイのチェルシーの方。落ち着きながらボールを動かしていく。
ただ、この日のチェルシーは保持で苦戦がみられる。具体的にはボールがやたら外循環になってしまったこと。3トップはなかなかライン間でボールを受けることができず、縦パスを引き出すことができない。
このチェルシーの難点はアストンビラにとってありがたかった。なぜならビラの守備はできるだけIHが外側に出ていくという原則を守りたいから。最終ラインを動かさないようにしつつ、シャドーを前残りさせてカウンターに備えたいからである。
IHが外に出ていく守り方をするときにケアしなければいけないのはアンカーとIHの間に縦パスを通されないようにすること。だが、チェルシーはこの縦パスを入れる意識が低かったので、ビラは比較的迷いなくIHが外にプレスに出ていくことができた。
難しいのはビラのSB。シャドーを見るのか、WBを捕まえに出ていくのか?という判断をひたすら繰り返さないといけない。だが、この部分の判断がビラのSBは非常に冴えていた。特に右サイドのキャッシュは立ち上がりから1人で右サイドを制圧。チェルシーの攻撃の出口を封じることで、外循環の攻撃を終わらせていた。
攻撃においてはワトキンスを中心に左サイドからのロングカウンターでチェルシーの守備陣を背走。敵陣ゴール付近まで迫ったが、カットインに入りかけるところでチャロバーが見事に封じ込めてこちらも水際での守備が光っていた。
ギリギリの守備が先に決壊したのはチェルシー。ターゲットのクロスをジェームズが跳ね返そうとしたところ、不運な形でのオウンゴール。しかし、直後にビラも決壊。再三繰り返した外循環のボールについにキャッシュの判断が遅れてしまいPK判定。これをジョルジーニョが決めて追いつく。
後半、悪くないパフォーマンスだったチャロバーを交代し、システム変更という賭けに出たトゥヘル。この賭けが奏功するのだからお見事。ビルドアップの人数を減らしつつ、サイドから押し上げる。
ポイントになったのは中央に鎮座できるルカクの存在。相手を背負いながら勝負できるルカクがいるせいで、ビラはサイドへの守備に今までのように出ていくことができず。結果的に押し込む時間帯が増えることになるチェルシー。
そのルカクが勝ち越し点を奪い、チェルシーは今度は撤退。ビラに攻めさせながらロングカウンター狙いにシフトする。だいぶ落ち着いてみられるブロック守備は流石である。そして仕上げでも活躍したのはルカク。相手を引きちぎりながらの単騎のロングカウンターで、最後はPKを奪取。試合を一気に決めた。
システム変更とルカクの投入で試合の流れを引き寄せたチェルシー。トゥヘルのHTの采配が吉と出て、苦しいスカッドでの難敵撃破に成功した。
試合結果
2021.12.26
プレミアリーグ 第19節
アストンビラ 1-3 チェルシー
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:28′ ジェームズ(OG)
CHE:34′(PK) 90+3′ (PK) ジョルジーニョ, 56′ ルカク
主審:マーティン・アトキンソン
第20節 ブライトン戦(H)
■『まさか』ではなく『ようやく』
プレミア屈指の変幻自在のフォーメーションの使い手であるブライトン。この試合に向けてポッター監督が選んだのはチェルシーとのミラーフォーメーションとなる3-4-3だった。
ミラーフォーメーションを選ぶということはすなわちブライトンの選択はマンマーク。となるとチェルシー側の狙いは当然1on1で一番効きそうなルカクへの縦パス。ここにまずはボールを収めて、裏抜けするマウントとハドソン=オドイを使う形でチェルシーは攻め手を見出す。
ブライトンからするとバーンとルカクのマッチアップに関しては特にスピード面で怖さがある。なのでここは織り込み済み。モデルがコバチッチを見る形で1列下がり、ララーナとバーンで挟むようにルカクを監視するようにしていた。
チェルシーはルカクを上下には動かしてはいたが、左右にはあまり動かしていなかった。ここは個人的には不思議で、もっと左右に動かせば良いのに!と思った。横の行動範囲も含めればルカクとバーンのミスマッチはさらに利用しやすい上に、ララーナがついていくのは難しくなる。なので、よりゲームのバランスは壊しやすくなるように思うのだけど。
チェルシーはガッツリ守備時にマンマーク。ブライトンとしては攻め手は両WB。対面がプリシッチなマーチと、ランプティは共にマッチアップで優位を生み出していた。
だが、10分を過ぎるとチェルシーの保持にブライトンがプレスにいけないようになる。押し込む機会が増えたチェルシーはセットプレーから先制。ルカクのヘッドがネットを揺らして先手を取る。チェルシーは直前にもセットプレーから決定機を迎えており、ブライトンとしては難しい対応が続いてしまった。
しかし、ここからチェルシーはやたら落ち着いてしまいブライトンに主導権を受け渡すことに。マンマークを解除して撤退気味にするのはわからないではないが、ビスマやククレジャのような展開力のある選手に時間を与えて自在に幅を使わせたのは良くなかった。ちなみにビスマとククレジャはこの試合では貢献度が非常に高く非保持でも輝いていた。
後半になってもブライトンの攻撃を受け続けるチェルシー。サイドの守備は前半の先制点直前にジェームズがマルコス・アロンソに交代してからはより劣勢に立たされることになっていた。後半は左のマーチの方からのクロスが多かったか。クリステンセンも交代してしまったチェルシーにはここを手当てする選手が単純にベンチにいなかった。
中盤を増やして重心を後ろにしたチェルシー。だが、チグハグさは変わらず相手に危ない攻め込まれ方をする時間は減らない。ロングカウンターからひっくり返すチャンスを見出すものの、決定機になりそうな場面はフェルトマンが体を張って防いでいた。
するとその時は91分のこと。こちらもセットプレーからウェルベックが同点ゴールをゲット。まさかの同点弾というよりはようやく入った同点弾という感じ。上々の内容を結果に結びつけた途中交代のウェルベックがブライトンに勝ち点1をもたらした。
試合結果
2021.12.29
プレミアリーグ 第20節
チェルシー 1-1 ブライトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:28′ ルカク
BRI:90+1′ ウェルベック
主審:マイク・ディーン
第21節 リバプール戦(H)
■勝者不在のスタンフォード・ブリッジ
3強と目されたリーグ優勝争いは年末の過密日程を経て、シティが大きく前に出る展開に。勝ち点的にはやや取り残された2チームにとっては、シティのフォロワーとしてついていくのはどちらかを決めるための一戦になる。
上位対決は過密日程の最後を飾るとは思えないくらい立ち上がりからインテンシティが高かった。積極的なプレッシングは相手の最終ラインのミスを誘う。特に影響が大きかったのはアリソンがいないリバプール。ケレハーは特にボール保持の部分でアリソンほどの存在感を出すのは難しい。高い位置から積極的にプレスにきたチェルシーに対して、相手にボールが渡るキックを連発する。
ただし、ケレハーはセービングに関しては非常に優秀。自分も含めた最終ラインのミスで生まれたピンチをきちんとカバーするパフォーマンスを見せたのはまずは一安心ということだろう。アレクサンダー=アーノルドのクリアミスをなんとかカバーして見せた場面などは失点を覚悟したリバプールファンも多かったかもしれない。
最終ラインのプレーが失点に直結してしまったのはチェルシーの方だった。ライン間に降りるジョッタから攻撃のスイッチを入れると、チャロバーがクリアの方向をミス。転がってきたチャンスをマネが冷静に沈め、リバプールが早々に前に出る。
早い攻撃から活路を見出したリバプールは前半の内に追加点。リュディガーが高い位置に出ていった裏に入り込んだサラーがマルコス・アロンソを置き去りにして、角度のない得意なゾーンからシュートを叩き込んで見せた。
2点リードしたリバプールだが、守備が盤石というわけではない。ローラインで受けることにあまり自信がないのか、高い位置まで出ていってなんとかしようと意識を最終ラインが強く持っていたのが印象的。その影響かCBやファビーニョが守る範囲がやたら広がることが多かった。
ファン・ダイクやファビーニョはそれでもなんとかなるかもしれないが、コナテはさすがに厳しさがあった。チェルシーはリバプールの最終ラインを横に動かすことはできていたので、リードを許したとはいえチャンスはありそうな状況。
例えば、チャロバーのサイドから縦にボールを運ぶことができれば、サイドのカバーに出てきたファン・ダイクをPA内から退かすことができる。逆サイドも似たようにコナテをサイドに引っ張り出すことは難しいことではなかった。
コバチッチのスーパーゴールで反撃ムードが一気に着火したチェルシーは左サイドからの侵入でプリシッチが前半追加タイムの内に同点ゴール。試合をハーフタイムまでに振り出しに戻すことに成功した。
後半も前半に引き続きオープンムードは継続。一気に縦に進む形でチェルシーゴールに迫るリバプール。左サイドからの連携を中心に攻撃を構築し、シュートシーンを作る。チェルシーはカンテが司令塔としての本領を発揮。ファビーニョの圧力をものともせず、左右にボールを散らしながら進撃する。
だが、後半の主役は両チームのGK。ゴールマウスに立ちはだかり、数多くのチャンスをなかったことにして見せた。特にメンディは驚異的なファインセーブを連発。畳み掛けるリバプールの攻撃をリーチを生かしたセービングで無力化する。
70分を過ぎると前半のオーバーペースが祟ってか、徐々にトーンダウンする両チーム。交代選手が機能しなかったこともあり、試合は終盤に向かって沈静化していく。
上位対決は2-2のドロー。スタンフォード・ブリッジにいる両チームのどちらも勝者になることはできず。首位に立つマンチェスター・シティがほくそ笑む結果になった。
試合結果
2022.1.2
プレミアリーグ 第21節
チェルシー 2-2 リバプール
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:42′ コバチッチ, 45+1′ プリシッチ
LIV:9′ マネ, 26′ サラー
主審:アンソニー・テイラー
第22節 マンチェスター・シティ戦(A)
■カンセロとデ・ブライネで中央破壊
レビューはこちら。
序盤からシティの保持で試合は進む。シティのバックラインに無理にプレスをかけにはいかないチェルシー。だが、ハイラインを維持するトライはしていたため、シティはまずは裏をシンプルに狙う形でゴールに迫る。
チェルシーもルカクというロングカウンターの武器を持っているため、高いラインを敷くシティのバックラインを強襲。立ち上がりはそれぞれがジャブをかます戦い方となっていた。
しかし、時間の経過とともに両チームの崩しには差が出ていく。裏だけでなく、サイドでの崩しを有しているシティがチェルシーの5バックを裏に横に揺さぶりながら、チェルシーのゴールに迫る攻撃を見せていく。
その一方でチェルシーは速攻の精度がついてこない。アンカー脇に陣取るプリシッチとツィエクはボールを自陣から引き出す動きは出せるものの、そこから素早く攻撃を完結させることができない。シティの帰陣よりも先に仕留めることができず、最前線でルカクが孤立する状況が続く。
さらにシティは年末年始に控えめだったプレスも解禁。不慣れな並びとなったチェルシーのバックスに対して時間を奪うプレスを行うことで、高い位置でボールを奪い切る機会が出てくるように。時間とともにペースはホームチームに流れていった。
前半では仕留めきれなかったシティは後半にはダイレクトに中央を刺す楔を狙うように。だが、これはチェルシーが網を張っていた部分。ロングカウンターの機会を得たチェルシーだったが、推進力の課題を解決できず、この機会をなかなか得点に結びつけることができなかった。
シティが念願の中央をこじ開けたのは70分のこと。デ・ブライネにライン間で前を向かせたカンセロのパスも、チアゴ・シウバを出し抜いたデ・ブライネのフィニッシュも絶品だった。
終盤はカウンターに舵を切ったチェルシーだったが、得点の匂いを増やす方向に展開を持っていけず。最後は堅く締めたシティが勝ち点と連勝をさらに伸ばすことに。プレミア制覇という観点で言えば、チェルシーには非常に厳しい結果になってしまった。
試合結果
2022.1.15
プレミアリーグ 第22節
マンチェスター・シティ 1-0 チェルシー
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:70′ デ・ブライネ
主審:クレイグ・ポーソン
第24節 ブライトン戦(A)
■足音が聞こえてくる引き分け
まず、目についたのはチェルシーのフォーメーションである。メンバーを見た時はいつもの並びかなと思ったのだけど、蓋を開けてみれば4-4-2というのが正しいだろう。
狙いはおそらく縦に速い攻撃の強化だと思う。ルカクに速い段階で縦パスをつけたときのフォローを2トップの相方(この日はハドソン=オドイ)にやってもらう。前節でルカクを孤立させてしまったことの手当てではないだろうか。事実、この日のチェルシーはブライトンと比べて直線的に縦に進むパターンが多かった。
だが、理想通りにいったかは微妙なところ。バックラインの押し上げは早くなく、全体が間延びした攻撃になることが多かったし、速い攻撃で完結させられるほどカウンターはスピード感のあるものではない。数の論理を最大限に生かしたチェルシーの3バックを活用したビルドアップも見られなくなっていることもあり、フォーメーションを変更してまでルカクのフォローを入れた収支はマイナスに触れているように見えた。
強いていれば崩せそうだったのはリュディガーに行くか、アロンソに行くかの判断がやたら多かったランプティのところ。最終ラインのこの部分のズレを利用し、敵陣までを運べる機会はチェルシーにもあった。ただ、ブライトンはアンカーとCFを軸に中央で待ち構え、チェルシーからサイドをスムーズに変える機会は取り上げた。なのでチェルシーは同サイドを壊し切る必要があった。制限付きのポゼッションである。
チェルシーが膠着を打ち破ったのは外からのミドル。なぜか本人は大喜びをしていない状況だったが、それなりに機能していたブライトンのブロックを打ち抜くツィエクのゴールは貴重だった。
チェルシーは守備においてはハドソン=オドイをSHに下げる形で4-5-1で受ける形に変形。中盤も3枚で受ける形にしつつ、場合によっては2列目の4人からプレス隊が出ていく形で守る。だが、ここはブライトンが一枚上手。相手のフォーメーションに寄ってビルドアップの人数を調整するのは彼らの得意分野。チェルシーの守備の狙いは綺麗にはハマらない。
WBがいない分、大外のフォローが甘くなることが多く、SBの攻め上がりには弱さを見せる場面もあったチェルシー。ブライトンは前進はできるものの、そこからアタッキングサードの侵入が少し物足りず決定機を作るところまでには至らなかった。
後半は両チームとも修正しての立ち上がり。ブライトンはモデルとウェルベックの入れ替えを断行、チェルシーは4-2-3-1へ切り替えた。ペースを握ったのは1点を追うブライトン。左サイドのククレジャが1列前に入ってボールを引き出す機会が増えたことでサイドからの侵入が増えた。
だけども前半と同じくなかなかフィニッシュまで至らない。チェルシーは前半にこの状況をミドルで解決したが、ブライトンはセットプレーで解決。見事に設計されたCKで同点に。1人だけ走り込む方向を変えたウェブスターがきれいにフリーになり、完全に狙い通りに同点弾を叩き込んで見せた。
ブライトンは直後にモペイ、トロサールが交代で入れて流れはさらに引き寄せる。モペイのポストからトロサールが前を向く形を作り、左サイドで攻めるパターンが出来てくる。逆サイドはランプティがアロンソに勝てるのでスペースを空けておけばOKである。
だけども、今度はブライトンお馴染みの決定力不足問題が立ちはだかる。この日はモペイへのパスがみんな異常に厳しくて、モペイがトラップミスしまくるというパターンもあった。
後半のチェルシーの攻撃はレーンわけを意識したポゼッションでの攻略に目を向けたものだったとは思うけど、パスの精度の部分で時間を使ってしまい、ズレをうまく前線に送れない。パスワークで前に時間を送ることに関してはブライトンの方が明らかによかった。それでも馬力に関して言えばチェルシーなのだろうけど、ルカクを下げてしまったことでその部分の強みも消滅。
交代で入ってきた選手も起爆剤にならず、ホームと同じくブライトン戦は1-1で終了。これでここ4試合のリーグ戦で得た勝ち点は3。そろそろ前よりも後ろの足音の方が気になってくる頃だろう。
試合結果
2022.1.18
プレミアリーグ 第24節
ブライトン 1-1 チェルシー
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRI:60′ ウェブスター
CHE:28′ ツィエク
主審:ケビン・フレンド
第23節 トッテナム戦(H)
■3強の影は踏めず
シティの首位叩きのチャンスも逃し、直近4試合のリーグ戦で得た勝ち点は3。首位の背中よりも、後方から迫りくるロンドン勢とユナイテッドの足音が気になってきたチェルシー。今節の対戦相手はその追ってくる足音を形成する1チーム。ヌーノ時代の借金をコンテになり着々と返し、CL返り咲きを狙うトッテナムである。
チェルシーにとっては影を断ち切りたいし、トッテナムにとっては争いに引きずり込みたい。互いの思惑が交錯するロンドンダービーは腹の探り合いの立ち上がりになった。
両チームともフォーメーションは模索中。前節から4バックも試し始めたチェルシーは今節は4-1-4-1でのスタートに。一方のトッテナムはソンの不在での試行錯誤。今節はセセニョンとドハーティをSHに置く形での4-4-2での対戦となった。
互いの守備の陣形から読み取れたのは『そっちの攻撃はボールを好きに持てばいいよ!固めれば崩されないでしょ!』という思惑。ボールを持っているときはCBには過度にプレッシャーにいかずに見守りながら撤退を優先する。
その分、攻撃の際の狙いどころははっきりしていた。チェルシーの場合、トッテナムのサイドの守備は中央に比べてずれやすいことを利用していた。特に狙い目としたのは左のSBのデイビスのところ。WGのツィエクがファジーな動きでデイビスを引き寄せると、その空いたスペースにマウントが流れて裏を取る。ここからサンチェスを引っ張り出しエリア内のルカクを狙うという動き。かなり再現性が高く見られた動きだったが、トッテナムは対応できずに非常に苦しんだ。
トッテナムの反撃はカウンターから。チェルシーはコバチッチとマウントという両IHが高い位置を取ることが多く、ボールをロストした瞬間はアンカーのジョルジーニョとの距離が遠い。トッテナムはとりあえずこのアンカー脇に突撃をすること。1枚剥がすでもよし、縦パスを入れるでも良し。アンカーの脇で前を向いて直線的に攻め立てることができれば、自陣からでもチェルシーに反撃をすることができる。
どちらのチームも限られた手段、限られた機会でのクリティカルな攻撃。先にパンチを入れるのがどちらか?という戦いに決着をつけたのはツィエク。芸術的な放物線を描いた。ミドルはロリスを越えてゴールネットに吸い込まれる。前節はほぼ喜ばなかったツィエクも控えめながら笑顔を見せたのが印象的だった。
後半にはセットプレーからチアゴ・シウバが追加点。トッテナムを一気に突き放し勝負を決める。トッテナムは後半にプレスを強化したものの、エンジンがかかるのが少し遅かった印象。メンバー的にはドハーティ、ベルフワインなど前節のご褒美の意味合いもありそうだったトッテナムだったが、この日は完敗に。
行けると思ったCL争い兼クラスのチームが、勢いに乗れていない3強に負けるのは今季のプレミアのあるあるでもある。近づいても影は踏ませない。ひとまずはチェルシーはCL出場権争いに巻き込まれることを回避したようだ。
試合結果
2022.1.23
プレミアリーグ 第23節
チェルシー 2-0 トッテナム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:47′ ツィエク, 55′ シウバ
主審:ポール・ティアニー
第26節 クリスタル・パレス戦(A)
■ルカクの重力を活かした決勝点
今節2つ目のロンドンダービーは両チームとも普段とは異なる装いでの戦いとなった。もっとも、ホームのクリスタル・パレスにとっては仕方のない事情もある。なぜならば、今季のチームの核と言えるギャラガーはレンタルの契約条項の関係で出場が不可。残念ではあるが、チェルシーに彼を借り受けていなかったらパレスはもっと下の順位なので文句は言えないという感じである。
一方のチェルシーは4-3-3にトライ。IHにプリシッチを組み込み、最終ラインのメンバーも目新しい並び。CL前に少し苦しいやりくりを強いられている感じのメンバー構成となった。パレスはチェルシーのビルドアップに対しては、ある程度持たせながら。WGがCBとSBの中間ポジションを取り珍しくトップ下に入ったオリーズはアンカーのジョルジーニョを監視する。
というわけでチェルシーはサイドから前進を狙う。WG、IH、SBのトライアングルでの崩しを徹底しており、ルカクは中央から動かないことも決まりになっている感じ。パレスの守備陣もチェルシーがそこまで人数を欠けていないし、同数でも守れる空気感だったので、最終ラインをスライドさせないまま守っていた。その分、ルカクのいる位置にパレスのDF陣が寄せられているのは面白かった。重力が働いているみたい。
パレスはカウンターが主体。トップのザハがサイドに流れることで上がったSBの裏から最終ラインを押し上げる。そこに2列目の3人が入り込んでくる形でチャンスメイクを行う。チェルシーも細かいパスワークよりも、ハフェルツへのロングボールで大外から一気に押し下げる形の方が聞いていた感じ。そこから大外へのクロスやマイナスへのグラウンダーからチャンスメイクを行っていた。
どちらのチームも前からのプレスもそこまで激しくなく、攻守の切り替えが多い展開ではなかったし、撤退守備を崩せる感じもしなかったので、全体的にもっさりした試合の流れに。前線のプレスの威力がさらに下がった後半は前半以上に重い展開に。チェルシーはWGのプレスが効かなくなり、パレスのSBから剥がされていたし、パレスはビルドアップでチェルシーのIHを下ろす形に対して有効な手立てを見出すことができなかった。
そんな中で試合を決めたのはルカクの存在を活かす形。オフサイドではあったが抜け出しからツィエクがネットを揺らすと、88分には正真正銘の先制点。ツィエクがフリーになったのはルカクに2人のDFが引き寄せられていたからこそ。CL前でテンション的にも難しい試合だったが、終盤にクロスから先制点を奪ったチェルシーが強かに勝ち点3を持ち帰ることに成功した。
試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
クリスタル・パレス 0-1 チェルシー
セルハースト・パーク
【得点者】
CHE:88′ ツィエク
主審:デビッド・クーテ
第28節 バーンリー戦(A)
■シビアなバランスで成り立っていた前半の奮闘
試合の展開としてはチェルシーがボールを持ちながら、ブロックを組むバーンリーに対してどのように攻略を進めていくか?という局面である。普通に組めばチェルシーの3-4-3はバーンリーの4-4-2に対してズレが発生する。だけども、バーンリーはそのズレを最小限に埋める形でチェルシーにプレッシャーをかけていく。
具体的にはCBにどこまでプレスにいくか?という話。つまり、チェルシーの3枚のバックラインに対して、2トップ以外のもう1枚が出ていくかどうか。これを判断する役割を担っていたのはレノンだった。彼がリュディガーにプレッシャーをかけにいくか否か。そこでバーンリーがどれだけプレスに前のめりなのかを図ることができた。同サイドのCHであるウェストウッドもレノンに合わせて高い位置をとり、リュディガーのパスの選択肢を消す動きを連動させていたのもチェルシーにとっては非常に厄介だった。
チェルシーからすると、相手のSHがCBに出てくるということはSHとSBの距離が空くということでもある。そうなれば、チェルシーとしては左のWBのサウールは前進の狙い目ではあったはず。だけども、正直ここにボールをつけることができても、チェルシーは前進の方策を見つけることができなかった。サウールもよくないし、周りもそれに連携できない。それならば、同サイドの裏にリュディガーが一気に狙う形の方がまだ可能性があった感じである。
構造的な部分でよりチェルシーの狙い目になったのは、バーンリーのSHとSBのズレではなく、レノンとウェストウッドの意識にズレが出た時。どちらかが出て行こうとしたのに、どちらかが出ていかなかったパターンである。このパターンでできた切れ目に縦パスをつけて前進するパターンが一番クリーンにチェルシーの前進がうまくいく形となった。
時折、マウントがこの形から好機を生み出すのだけど、チェルシーからすると頻度はものたりない。むしろ、引っ掛けてからの被カウンターでバーンリーのピンチに晒される方が多かった前半だった。
90分間これを同じようにやれればいいはずだったバーンリー。だが、30分以降自陣撤退で5-4-1のようにスペースを埋める時間が増えるように。初めはそれでも守ることができていたが、やはりDFラインにミスが許されない形はプレッシャーがかかる。
後半はその部分をよりうまくチェルシーがついてきた。捕まえるのがややこしかったのは中央で背負ってよし、サイドに流れて良しだったハフェルツ。彼のせいでバーンリーは5バックが狭く守る必要があった。
ハフェルツを軸にした中央からの崩しと、外に広げる動きを繰り返すことで撤退守備を壊したチェルシーは後半開始から立て続けに4点。前半は互角以上の戦いを見せたバーンリーだったが、90分これを繰り返すのは見た目以上に至難の技なのだろう。ノーミスを90分続けることはできず、大外の対応でミスが出て立て続けに失点。前半の奮闘を勝ち点につなげることはできなかった。
試合結果
2022.3.5
プレミアリーグ 第28節
バーンリー 0-4 チェルシー
ターフ・ムーア
【得点者】
CHE:47′ ジェームズ, 53′ 55′ ハフェルツ, 69′ プリシッチ
主審:アンドレ・マリナー
第30節 ノリッジ戦(A)
■カンテの投入が仕上げの布石に
5バックというフォーメーションとは裏腹に、トップから相手を捕まえにいく強気なスタンスだったホームのノリッジ。最終ラインにプレスにも行くし、降りていくチェルシーのトップの選手にも必死についていく。
確かにチェルシーはプレスをかけると少しバタバタする部分もあったし、カバクのハフェルツへの果敢なトライからカウンターへのチャンスが出来そうな場面もあった。だけども、さすがに3バックに対して2トップが追いかけ回すのはちょっと無理がある。サージェントは頑張ってはいたが、チアゴ・シウバとクリステンセンの両方を捕まえるのは不可能。クリステンセンというボールの落ちつけどころを見つけてしまっていたチェルシーに対して、ノリッジのプレスは効果が限定的だったと言わざるを得ない。
前進のしどころを見つけたチェルシーはセットプレーから先制。チャロバーが3分にネットを揺らして先手を取る。続く14分、左サイドからハフェルツとヴェルナーの縦関係からノリッジを押し下げると、マイナスのスペースに入り込んだマウントが追加点。この場面のマウントもそうだが、向かってくるノリッジの選手をいなせる力がある選手がいたのもノリッジにとっては誤算だった。コバチッチとか。
ただ、ノリッジもノリッジでタイマンでやれる場所はあった。左サイドのウィリアムズ、アンカーのノルマンあたりは相手を剥がしながらの前進が可能。前線のプッキも十分にオフザボールで勝負できる状況だった。
2点のビハインドでハーフタイムを迎えたノリッジは2枚替えで4-3-3にシステム変更、一気に状況を変えにいく。前からプレッシングに行くのかな?と思ったけどそういうわけではなく、ノルマンに代わってアンカーに入ったルップから幅を使いながらの攻撃を行いながら攻め込むことができるようになった。
狙い目になったのは左サイド。交代で入ったラシツァの対面になるロフタス=チーク、チャロバーはパフォーマンスが不安定で、このサイドからの打開で十分にチャンスは出来ていた。そして、この左サイドからPK奪取。チャロバーのハンドを誘い、プッキがこれを沈めて1点差に迫っていく。左サイドという攻め手を見つけたノリッジは同点にするべくこちらのサイドを集中的に狙う。
チェルシーは縦パスに積極的にトライはするが、フィフティーの状況で相手を外せず、ファウル奪取よりいい状況をなかなか生み出すことができない。
そのチェルシーにとって反撃のきっかけになったのが終盤のカンテの投入。ライン間での反転で自らがボールを運ぶことで敵陣に迫っていく機会を増やしていく。
すると、90分。試合を決める追加点はジョルジーニョから縦パスをうけとったカンテのドリブルが起点。ドリブルで押し下げたおかげでスペースを享受したハフェルツが得点をゲット。苦しみながらも試合を決めたチェルシーが連勝を伸ばすことに成功した。
試合結果
2022.3.19
プレミアリーグ 第30節
ノリッジ 1-3 チェルシー
キャロウ・ロード
【得点者】
NOR:69′(PK) プッキ
CHE:3′ チャロバー, 14′ マウント, 90′ ハフェルツ
主審:マーティン・アトキンソン
第29節 ニューカッスル戦(H)
■氷のようなハフェルツが決め手
どうしてもピッチの中での状況に集中するのは難しくなっている現在のチェルシー。ピッチ外の雑音と表現するにはあまりに直接的でデリケートな話ではあるが、アウェイでの遠征費用の制限や、ホームにおける観客の制限がかかってしまうのであれば、もはやピッチへの直接の影響は避けられないだろう。
そうした中で対峙するのはニューカッスル。冬の大型補強を足がかりにし、連勝でブーストをかけて残留争いとおさらばしたチームである。
立ち上がりからボールを持ったのはチェルシー。いつもと違う4-3-3のフォーメーションでポゼッションの時間を過ごす。一方のニューカッスルはこちらもいつもと違う5-4-1。中盤のメンバーを入れ替えて、まずは守備から始める形で受けに回る。
序盤はチェルシーの強度の部分にやや気圧された感がある。特にヴェルナーの馬力のところには手を焼いていた印象である。5レーンに並べられたニューカッスルの選手たちは人を捕まえにいくことを厭わないが、ファウルを犯してしまうこともしばしば。逆に言えば、ニューカッスルはファウルを犯してでもそこより前に活かせない状況で粘っている。
チェルシーの3トップは流動的。降りていくツィエクや横への移動が多いハフェルツ、そして抜け出すヴェルナーなどあっちこっちに動き回るので、どこまでついていくかは難しい。よってチェルシーは敵陣深い位置でギャップを突くことはできていた。だが、ツィエクはボールタッチの位置がゴールに対して遠く、ヴェルナーは抜け出した後のプレーの精度が伴わない。ズレができても、それを活かせないというもどかしい状況で試合が進む。
さらにチェルシーはプレスに来られるとSBのところで詰まってしまうことがニューカッスルにバレてしまう。前半の中盤以降は、プレスの積極策に切り替えたニューカッスルに徐々に主導権が移行する。カウンターにおけるアタッカー陣の好調も相変わらずで、ボールを奪った後にもチェルシーに脅威を与えていた。
迎えた後半、チェルシーは保持で3バック気味に変形。左右の大外に選手を置き、ビルドアップで詰まりにくさが出ないように工夫を行う。左の前方のヴェルナーはよりニューカッスルの最終ラインとより頻繁に駆け引きをするように。プレーの精度問題は相変わらずだったけども。
アタッキングサードにおける課題が解決しないチェルシーは後半もニューカッスルのカウンターにより危険に晒される。チャロバーのマーフィーへのホールディングでPKを取られなかったのは、チェルシーにとっては幸運だった。
ルカク投入以降のチェルシーは彼にマークが集まる分、他の前線がスペースを享受できるように。加えて、ニューカッスルの最終ラインが少しでもDFラインを高くしようとしていたため、チェルシーにとっては奥行きとして使えるスペースができていた。
この隙を見逃さなかったのがハフェルツ。裏への抜け出しから吸い付くようなトラップで流れるようにフィニッシュまで持っていき、ニューカッスルの牙城を崩す。裏に抜けられたバーンは前半にハフェルツに肘打ちを食らった選手。さぞ悔しかったことだろう。
苦しんだチェルシーだったが、またしても終盤にチームに救世主が降臨。後半に勝負を決めるしぶとさを見せて逃げ切った。
試合結果
2022.3.13
プレミアリーグ 第29節
チェルシー 1-0 ニューカッスル
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:89′ ハフェルツ
主審:デビッド・クーテ
第31節 ブレントフォード戦(H)
■先制点で覆い隠さなかった課題
メンバー表を見渡すとようやくフルスカッドが揃いつつあると言う感想だろう。2トップにはトニーとムベウモ、中盤にはエリクセンというピースが加わり、最後尾からはラヤがセービングとフィードでチームを攻守に支える。ここ数ヶ月苦しんできたブレントフォードはようやく反撃の準備が整いつつある。
自信を持って送り出したスターターがチェルシーの4-3-3に対して仕掛けたのはマンマークによる前線からの強気なプレッシングである。チェルシーのバックラインには2トップがプレスをかけに行き、中盤ではアンカーのノアゴールがアンカーのロフタス=チークを捕まえにいく。サイドではWBがSBを捕まえにいくなど、とにかくプレッシャーをかけることを優先した戦い方だった。
チェルシーはこれに対して苦しんだ。前線のハフェルツは動きながらボールを受けて持ち味が出るタイプ。相手を背負いながらパワーで勝負するのは得意分野ではない。メンディのパスミスからの決定的なピンチも含めて、この日のチェルシーのバックラインはブレントフォードのプレッシングを安定して回避する術を持ち合わせていなかった。
ブレントフォードはハイラインにおける背後のケアは得意ではないが、この試合ではとてもよくやっていた。特にヴェルナーと対峙するアイエルは機動力で劣る部分をうまくカバーしながら背後をプロテクトしていた。
高い位置から相手を捕まえるブレントフォードはカウンターからチャンスを作る。サイドを活用したカウンターは非常に鋭く、チェルシーを苦しめる。特に中盤におけるエリクセンの存在は抜群。プレスに出てくるチェルシーの背中を取るようなパスでカウンターを加速させる。マルコス・アロンソの裏をカバーするリュディガーの奮闘がなければ、もっと早い時間に失点していてもおかしくはなかった。
前半の終盤はチェルシーが押し込む場面が出てきてはいたが、押し込んだ後の一手を見つけられずに苦しむ。ロフタス=チークのところに一差しで試合を決められるジョルジーニョがいれば少しは違っただろうか。だが、チェルシーは後半早々に押し込んだ相手への回答を示す。リュディガーのミドルでラヤの守るゴールマウスを打ち破って見せた。
このゴールにより、流れはチェルシーに転がるかと思ったファンは多いだろう。しかし、前半からの課題はチェルシーを苦しめ続ける。高い位置からのプレッシング、そしてカウンターへの対応。この試合におけるブレントフォードの攻撃を食い止めるのに、先制点は十分なものではなかった。
プレスから早々に同点弾を奪ったブレントフォード。チェルシーはノアゴールのところで食い止めたかったところだが、シュートまで行かれてしまった。
さらにはカウンターからブレントフォードは勝ち越し。ツィエクが防ぎきれなかった速攻から、アロンソとカンテの連携が破られて得点を許してしまう。
ブレントフォードの勢いは止まらない。サイドに流れたトニーによってチアゴ・シウバが釣り出されると、空いているスペースに走り込んだジャネルトがこの日2点目をゲット。そして、仕上げはセットプレーから。大活躍だったムベウモに代わって入ったウィサが4点目を決める。
先制点で課題を覆い隠せなかったチェルシー。フルスカッドで開幕直後の旋風を取り戻したかのようなブレントフォードに屈してしまい、スタンフォードブリッジで手痛い黒星を喫した。
試合結果
2022.4.2
プレミアリーグ 第31節
チェルシー 1-4 ブレントフォード
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:48′ リュディガー
BRE:50′ 60′ ジャネルト, 54′ エリクセン, 87′ ウィサ
主審:アンディ・マドレー
第32節 サウサンプトン戦(A)
■理詰めで破壊した4-4-2
ブレントフォードに大敗した流れを引きずってか、CLでもレアル・マドリーに先手を取られてしまったチェルシー。2ndレグでのリターンマッチを火曜に控える難しいタイミングでセント・メリーズ・スタジアムに乗り込むこととなった。
しかしながらそうした心身の不調は杞憂であった。それどころか、チェルシーは3-4-1-2を駆使してサウサンプトンの4-4-2をほとんどパーフェクトに壊してみせた。
まずはバックラインから3枚のCBがサウサンプトンの2トっプを外すと、3枚目としてサウサンプトンのSHが飛んでくる。これで4-4-2は歪む。サイドの人が手薄になったら今度はWBがボールを受けてサウサンプトンのSBを手前に引き出す。と同時にそのSBの背後を2トップの片方が取る。それをトリガーにしてエリア内にストライカーが入る。
ほとんどこの形をテンプレとしてチェルシーはチャンスを作り続ける。裏に抜け出す役はWBでもOK。とにかくサウサンプトンのSBを手前に引き出すことさえできれば、あとはその裏にセットで走り込む形を組み合わせる。これは相当に効果があった。
SBをピン止めするのが1人、飛び出すのが1人、クロスに入り込むのが2-3人というバランスをハフェルツ、ヴェルナー、マウント、アロンソ、ロフタス=チークで無限に回している感じ。マウント、ヴェルナー、ハフェルツの3トップということで当然横の入れ替わりの流動性もあるので、その点もサウサンプトンとしてはめんどくさかったはずだ。
チェルシーはサイドをえぐる形からあっという間に先制点を奪うと、2点目はサイドが押し下げたスペースで空いた真ん中からマウントのミドル。瞬く間にセーフティリードを得るように。得点シーン以外にもチェルシーは大量にチャンスを構築しており、リードは妥当だった。
サウサンプトンが解決策を見つけるまでにチェルシーはどんどん得点を重ねていく。チームの中心であるウォード=プラウズのエラーで入った3点目の時点ですでに勝負は決していたといっていいだろう。
4点目を取られたあたりでようやくサウサンプトンは5バックにシフトチェンジし、チェルシーの攻撃の起点となっていた横のズレの制限にかかる。しかしながら、結局WBのリヴラメントとウォーカー=ピータースの戻りが遅れれば大外のカバーリングが必要なのは変わらない。
結局後半も戻りが遅れたWBのせいでサウサンプトンは3バックが横を網羅することにねってしまい、チェルシーがさらに追加点を得る。取りも取ったり6得点。公式戦連敗の鬱憤を晴らすかのように、理詰めでサウサンプトンを圧倒したチェルシーがミッドウィークに弾みをつける大勝を飾った。
試合結果
2022.4.9
プレミアリーグ 第32節
サウサンプトン 0-6 チェルシー
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
CHE:8′ アロンソ, 16′ 54′ マウント, 22′ 49′ ヴェルナー, 31′ ハフェルツ
主審:ケビン・フレンド
第25節 アーセナル戦(H)
■EUROを悪夢を振り払ったサカ
レビューはこちら。
互いに前の試合からメンバーは入れ替え。チェルシーはCLとFA杯を掛け持ちしての勤続疲労がメンバー入れ替えの主要因なのに対し、アーセナルはリーグ3連敗という悪い流れを断ち切るためのタクティカルな判断が濃い。
変更したメンバー構成で対症療法的なプレッシングを行ったのはアーセナル。チェルシーのバックラインに対して、3トップ型でプレスに向かい、時間を奪いに行くアプローチを見せた。
チェルシーのバックラインはアーセナルのプレスを利用して前進するほどの手練れが不在。ジョルジーニョ、リュディガーのどちらかがいれば、相手のプレスを裏返す前進ができたかもしれないが、彼ら2人がいないスタメンではアバウトなボールをルカクとヴェルナーに蹴り込むのが精いっぱいだった。
一方のアーセナルにも難はあった。この日のアーセナルは自陣深くでのボール奪取後にショートパスをつなぎながら前進を狙うことが多かった。だけども、このパスの精度が非常に低い。それゆえ、自陣で引っ掛けてはチェルシーのショートカウンターを食らい続けるという悪い流れになってしまう。
どちらも難がある中で先に失点したのはチェルシー。クリステンセンがロングボールの対応をミスってしまい、エンケティアにプレゼントパス。メンディとの1対1を冷静に制したエンケティアが今季初めてのリーグ戦のゴールを決める。
だが、アーセナルもその直後にミス。そのエンケティアのポストがずれたところからチェルシーのショートカウンターを食らい、ヴェルナーに同点ゴールを許す。
共にミスから失点が続いていたが、アーセナルはミス後も自陣からのショートパスでの前進を継続。継続したことでようやくチェルシーのプレスを回避し、チャンスにつながったのが2点目のゴールのシーンである。ジャカの自陣からの前進でカンテ、アロンソ、ルカクを剥がすと、サカ→ウーデゴールとつなぎ、最後はスミス・ロウが決める。
しかし、これも直後にチェルシーが同点に。前半から共に2点ずつを奪う打ち合いになる。
後半もアーセナルはハイプレスを継続。するとこれがアスピリクエタのミスを呼び、この日2点目のエンケティアのゴールを呼ぶことに。チェルシーはバックラインの足元という不安要素が失点につながってしまった。
この日3回目のリードを奪ったアーセナルはこれ以降は撤退。5-4-1でプレスを控えつつ、チェルシーのバックラインの中で最も不安定だったサールをロングボールで狙い撃ちにする。
チェルシーはハフェルツを投入し攻勢を強めるが、バックラインが我慢できないという課題が先に来てしまう。後半追加タイムに差し掛かる少し手前でアスピリクエタがボールに関係のないところでサカを倒してPK。この一連のプレーもアーセナルが狙い撃ちしたサールのサイドからだった。
このPKをサカが自ら沈めて試合は決着。サカにとってはリーグ戦2桁ゴール達成に、EUROの悪夢を払拭するPK成功と個人にとっても大きな意味を持つ勝利となった。
試合結果
2022.4.20
プレミアリーグ 第25節
チェルシー 2-4 アーセナル
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:17‘ ヴェルナー, 32’ アスピリクエタ
ARS:13‘ 57’ エンケティア, 27‘ スミス・ロウ, 90+2’(PK) サカ
主審:ジョナサン・モス
第34節 ウェストハム戦(H)
■プリシッチに救われたジョルジーニョ
残りのリーグの目標はFA杯の制覇と3位確保。CLの蓄積ダメージはまだ残っている感のチェルシーがこちらもリーグとELの二足の草鞋でシーズン終盤を迎えたウェストハムと相対する。
木曜日にEL準決勝を控えるウェストハムはメンバーがターンオーバー気味。アントニオとボーウェン、ライスをベンチにおくというのは、基本的にはメンバー固定を好むモイーズにしては思い切った入れ替えといってもいいだろう。ただし、最終ラインにやたらSBの名前があるのはターンオーバーではなく、CBの面々が負傷で不在なだけである。
というわけで籠城戦に持ち込みたいウェストハム。トップのベンラーマの優先度も中央の動線の遮断であり、チェルシーのバックラインにプレスをかけることではない。おそらく、前がかりになれば背中に潜むマウントに簡単に刺されてしまうことは承知していたのだろう。慎重な立ち上がりだった。
チェルシーはサイドで迂回させながら攻撃を行いたいところだが、常に同数以上で受けるウェストハムに苦戦。なんとかクロスを上げるスペースを捻出しながらエリア内勝負に持ち込むが、高さで競えるルカクは不在。チェルシーの前線の得意な形でエリアに迫ることができない。可能性を一番感じたのはドリブルで中央に切り込むカンテであった。
ウェストハムは攻撃でもローテンポ。バックラインは横幅を使いながら相手のプレスをいなしゆっくり進むフェーズとカウンターで一気に縦に進むフェーズを使い分けていた。だが、アントニオとボーウェン抜きではさすがにカウンターの威力は据え置き。そこの部分もゆっくりと保持するパターンを選ぶ頻度の多さにつながっていたといえそうである。
後半も相手のブロック攻略に挑むチェルシー。後半になると徐々に狙い目が見えてくる。対応が徐々に遅れてきたのはマスアクのサイド。切る方向や戻るタイミングにズレが見られるようになり、チェルシーはこちらのサイドから攻め手を見つける。
チェルシーは仕上げとして3枚替えで4バックに移行。すると、ルカクが抜け出しからPKをゲット。唯一のCBであるドーソンの退場で10人になったウェストハムは絶体絶命に。しかし、ジョルジーニョがこのPKを失敗。
絶好のチャンスを逃したチェルシーだったが、後半追加タイムにプリシッチがクロスに合わせる決勝弾。土壇場でジョルジーニョを救い出したプリシッチが勝ち点3を掬い取り、CL出場権の地位をさらに固めることに成功した。
試合結果
2022.4.24
プレミアリーグ 第34節
チェルシー 1-0 ウェストハム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:90′ プリシッチ
主審:マイケル・オリバー
第37節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)
■支配的なチェルシーだったが…
FA杯の決勝開催の影響で37節唯一の先行開催となったこのカード。立ち上がりから主導権を握ったのはアウェイのチェルシーだった。攻めの主体になったのはWBのところ。ユナイテッドのSHの戻りが遅いことを利用し、高い位置をとるWBがフリーでボールを持ち上がることができていた。
ユナイテッドはCHがスライドして対応するが、2枚で横幅をカバーするのは非常に難しく、十分にサイドを防ぐことができているとはいい難い。高い位置をとって良さが出るマルコス・アロンソとスペースを与えればボールを運ぶことができるリュディガーの2人がいるチェルシーの左サイドも、ジェームズが大外からも内側からも仕上げに向かうことができる右サイドもユナイテッドは守るのに苦労していた。
ユナイテッドはそもそもの方針が読み取りにくかった。特に中途半端なのがSHの2人のポジショニング。特にラッシュフォードの動きが不安定だった。前残りするのならば、残しておけばいいのだけども、ふらふらと遅れて戻ってくる形の繰り返し。何がしたいのかがよくわからない。どうせ戻るならば素早くリトリートしてほしいし、前に残ってカウンターで刺す役割に専念するなら守備の不利を承知でそのリスクを受け入れるべきのように思うのだけど。
いずれにしても定点から攻める形を作るという点ではチェルシーに大きく遅れをとっているのは確か。それだけにトランジッションの局面では上回りたかったユナイテッドだったが、その部分でも優位を取れたといえるかは怪しい。早い展開においてはCHがカンテに置いていかれる場面が目立ち、むしろ苦しい状況になることが多かった。
それでもチェルシーがなかなか先手を奪えなかったのはひとえにデ・ヘアのお陰である。彼のセービングがチェルシーに立ちはだかったおかげで、ユナイテッドは前半をスコアレスで終えることができたと言っても過言ではない。
後半は縦に早い展開の応酬でスタート。チェルシーペースだった前半に比べればペースはフラットに。これはチェルシーの前線は早い展開における仕上げが思ったよりも拙かったことが原因として挙げられる。特にここ数試合はハフェルツが精彩を欠いているのが気がかり。展開も相手も選ばず輝くことができていた今季だったが、最終盤にプレー精度を欠いて試合中に無駄にイライラする場面が増えている。
それでも後半開始から10分経てば再びチェルシーのペースに。そしてようやく先制点に辿り着く。空いていたサイドからジェームズがクロスを上げて逆サイドのアロンソまで展開に成功し先手を奪う。
しかし、ユナイテッドもすぐさま反撃。わずかに猶予をもらったマティッチが浮き玉でラストパスをロナウドに送ると、これを豪快に沈めてわずか2分で試合を引き戻す。
追いつかれたものの依然主導権を握っているチェルシーはルカクとプリシッチというウェストハム戦で勝利に貢献した選手たちをセットで投入する。ユナイテッドは5-2-3で噛み合わせる形で撤退するが、最終ラインを増やした分、ラインの乱れがかえって目立ってしまい、ブロックが強固になったかと言われると微妙なところ。
だが、チェルシーも終盤に強度を上げきれず、攻撃の回数を十分に担保することができない。試合は終始支配したチェルシーだったが、3ポイントを呼び込むための2点目を奪うことができず。優勢を勝利に結びつける一撃は最後まで決めることができなかった。
試合結果
2022.4.28
プレミアリーグ 第37節
マンチェスター・ユナイテッド 1-1 チェルシー
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:62′ ロナウド
CHE:60′ アロンソ
主審:マイク・ディーン
第35節 エバートン戦(A)
■後押しされたハイプレスと全てを防いだピックフォード
バーンリーの土壇場の巻き返しを受けて残留争いで厳しい立場に追いやられているエバートン。消化試合数の差があるとはいえ、マージーサイドダービーに敗れたチームはついに降格圏に足を突っ込むことになってしまった。
今節の対戦相手はチェルシー。十中八九安泰であろうCL出場権ではあるが、CL敗退からの燃え尽き症候群なのか直近のリーグ戦はピリッとしないところが目立っている。
ともに好調とはいえない両チーム。試合前の予想通り、ボールを持つ意識が高いのはチェルシー。エバートンはプレッシングで前からこれを阻害する。どこまで準備していたプレスかはわからないが、この日のグディソン・パークの雰囲気を考えるともうエバートンには前に出ていかない選択肢はないように思えた。『走らない選手は許さない』という圧力が選手にかかっていたと言っていいだろう。
エバートンは4-3-3ではなく、5-4-1でチェルシーを迎え撃つ。一番のこの日の特徴は左のWBのアロンソをイウォビが徹底監視していたこと。同サイドのワイドCBだったコールマンはヴェルナーを監視。マンマーク志向が強かった。
一方で逆サイドの面々はレーンを入れ替えながら動き回るマウント、ハフェルツを相手に回すことが多かったので、比較的流動的に対応することが多かった。
プレスをかけてミドルゾーンに留まることはエバートンのチームとしての狙いだったが、CBに無理にプレスに行くよりはライン間から縦パスを受けようとするマウントやハフェルツをDF-MFラインで挟みながら窒息させることがより優先事項。保持においては4-3-3気味に変形し、両サイドから攻めようとしていたチェルシーだったが、エバートンはサイドにボールが出たときも2人以上で挟むことでチェルシーの前進を阻害していた。
エバートンの守備がタイトだったのもあるが、チェルシーの前線は少し重たかったように思う。いつもであればエバートンの中盤をタスクオーバーに追い込むことができてもおかしくはなかったように思うのだが、どこか気迫に飲まれていた印象。小競り合いを起こす場面も多く、集中力もやや散漫だったように見えた。
そんなチェルシーの希望だったのはロフタス=チーク。相手の中盤を剥がしてのドリブルがこの試合のチェルシーの最も得点を感じさせる動きであった。
試合が動いたのは後半早々。チェルシーにプレスをかけたリシャルリソンがハイプレスを成功させてシュートチャンスをゲット。値千金の先制点を奪い取る。アスピリクエタは右にボールを逃がそうとしたが、ジェームズがボールを受ける準備ができていなかったのが誤算。それにしてもエバートンのプレスの巻き直しは見事。HTから入ったコバチッチは投入直後は完全に試合について行けていなかった。
以降は後ろに重心を傾けてカウンターというスタイルに徐々に移行していくエバートン。ローラインの時間帯が増えたエバートンで頼りになったのがピックフォード。ファインセーブを連発し、チェルシーのゴールチャンスをことごとくシャットアウトする。
後半はチャンスが増えたチェルシーだが、単調なクロスをルカクなしで行うのはスカッドの相性からするとイマイチ。カウンターで襲い掛かられる危険性も含めて得点も失点も可能性がある状況が続く。
しかしながら、ピックフォードが守るゴールマウスは鉄壁。絶体絶命の窮地からチームを救うのがよく似合う守護神の活躍でバーンリーに食らいつくための勝ち点3をなんとか死守した。
試合結果
2022.5.1
プレミアリーグ 第35節
エバートン 1-0 チェルシー
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:46′ リシャルリソン
主審:ケビン・フレンド
第36節 ウォルバーハンプトン戦(H)
■混乱の先にあった切り札
前回のこのカードはチェルシーの苦しいスカッドが印象的だった。コロナの蔓延によりアンカーにはチャロバー、控え選手は6人という苦境で試合を行うことになり、スコアレスドローに追い込まれた。今季のチェルシーの中でも最も仕方のない引き分けだったように思う。
当時に比べれば今のメンバーは豪華といっていいだろう。しかし、チェルシーは直近の試合ではなかなか結果を出せずに苦しんでいる。一方のウルブスも同じく結果が出せずに苦しんでいるチーム。後ろにロンドン勢が迫ってくるチェルシーにとっては是が非でもここを勝ってシーズンを逃げ切りたいところである。
立ち上がりからハイプレスを仕掛けてくるのはチェルシー。ボール保持も支配的で、チェルシーが保持でのウルブスの5-3-2攻略に挑むという構図はすぐに定まったように見受けられた。
CHのコバチッチはロフタス=チークと並ぶのではなく、彼と縦の関係を形成。より深い位置でボールを引き取ることを狙っていた。チェルシーは前線からウルブスの5-3-2の最終ラインからの抜け出しを狙いながらブロック攻略に挑む。裏抜けでスペースが間延びすれば、ロフタス=チークの運ぶドリブルやライン間で受けるコバチッチが効くことになる。
ウルブスにも反撃の手段はあった。WBの裏にスピード勝負を仕掛けることで一気に陣地回復。特にネトのカウンターは脅威。攻撃の意識が強い3センターを採用している上、決して戻りが早いとは言えないチェルシーのバックラインを脅かすには十分な威力だった。
スコアレスで迎えたHT明け。一気に攻め込んだのはチェルシー。前半以上に圧力をかけながら敵陣でのプレータイムを増やす。その結果、ルカクが粘り勝ちでPKをゲット。これを沈めてチェルシーは先手を奪う。
すると、この先制点でウルブスは混乱。バックラインからの簡単なパスミスであっさりと追加点を奪われてしまう。この日はラージがコロナのためいないということで、この2失点目はだいぶ混乱。おそらくタブレットで連絡を取っているラージに指示を仰ぎながらも、ベンチは交代策を準備するのにだいぶ時間がかかってしまった。
守備面に不安は前半からあったものの、ベンチの混乱の様子を見ればチェルシーの勝利は揺るがないと個人的には思っていたのだが、混乱したウルブスベンチから投入された交代選手が試合の流れを一変させる。
主役となったのはトリンコンとシキーニョ。流れを引き戻すスーパーシュートをトリンコンが決めて1点差に迫ると、後半ラストプレーに2失点目のミスを犯したコーディが執念の同点ゴール。どちらもアシストはシキーニョであった。
ミスに漬け込み、後半に優位に立ち、大混乱まで引き起こしたのに勝てなかったチェルシー。とはいえ、アンカー脇をあっさり明け渡してしまう守備ブロックの脆さを見れば、マドリー戦以降の抜け殻のような状態はつづいているといっていいだろう。いわば起き得た奇跡である。これ以上、まさかを積み重ねてしまうと後方の影の姿はまずます大きくなるばかり。そろそろ歯止めをかけたいところだが。
試合結果
2022.5.7
プレミアリーグ 第36節
チェルシー 2-2 ウォルバーハンプトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:56′(PK) 58′ ルカク
WOL:79′ トリンコン, 90+7′ コーディ
主審:ピーター・バンクス
第33節 リーズ戦(A)
■呆れ顔のマーシュと復調のルカク
前節のアーセナル戦は敗戦に加えてエイリングを一発退場で失い、踏んだり蹴ったりな結果となったリーズ。強豪3連戦のトリとなるのは週末にFA杯の決勝を控えているチェルシーである。
ややメンバーを入れ替えてきたチェルシーに対して、もちろん目の前の試合に全力のリーズ。立ち上がりから強気のプレッシングでチェルシーの人を捕まえにいく。対するチェルシーもプレッシングには積極的。3トップだけでなく、CHも相手を捕まえにいきながらリーズのビルドアップにプレッシャーをかけていた。
どちらのチームのプレスにも共通しているのは、相手を同サイドに閉じ込めて脱出させないこと。逆に言えば、ボール保持側は閉じ込められているサイドから脱出できるかどうかがポイントになるということである。それができれば保持側は開けたスペースからチャンスが作れる。
プレス攻略においてより優れていたのはチェルシーだった。リーズはラフィーニャの奥行き頼みの一点突破になっているのに対し、チェルシーは安定したルカクのポストワークからマウントを経由して、大外のジェームズまで運ぶルートを確立する。
先制点もこのルートから。左サイドから中央を経由し、逆サイドで深さを作ったジェームズがマイナス方向に走り込んできたマウントのミドルを演出して見せた。流麗な崩しでチェルシーが早い時間帯に先手を奪う。
取り返したいリーズだが、前節と同じくまたしても熱さが間違った方向に。弁解の余地のないコバチッチへの危険なタックルをかましたジェームズが一発退場になってしまう。2試合連続の前半での主力の退場にはベンチのマーシュもただただ呆れることしかできない。
というわけでここからはさらにチェルシーペース。ルカクのパワーとスピードはただでさえリーズのバックラインを苦しめているというのに、左右のボール運びが安定し、チェルシーはリーズのPA陣内に迫れるようになったのだから溜まったものではない。
さらにリーズはハリソンが負傷交代。頼みのアタッカーをさらにもう1枚失うことで完全に手詰まりになる。
迎えた後半もペースは変わらない。一方的に攻め立てるチェルシーは前半に引き続き右サイドから。チャロバー、ジェームズ、マウントを軸に右サイドからエリアに侵食していく。対する左サイドはフィニッシャーに専念することでエリア内に侵入。右サイドから作った攻撃をプリシッチが仕上げた2点目のシーンでは一歩も動けなかったメリエの心が折れる音が聞こえてくるかのようだった。
状況はさらに悪くなる。最後の頼みの綱と言っていいラフィーニャが負傷で無念の交代。もはや気になるのはこの試合の勝敗よりもリーズには次節出場可能なアタッカーがどれだけいるのだろうか?という点である。
そして、最後はルカクが仕上げ。PA内でフェイントを重ねてシュートコースを作り出して撃ち抜いたところを見ると徐々に調子を上げているように見える。ゴールだけでなく90分のパフォーマンスでFA杯出場に向けて好アピールを見せたルカク。チームも3位固めに向けて視界良好の勝利となった。
試合結果
2022.5.11
プレミアリーグ 第33節
リーズ 0-3 チェルシー
エランド・ロード
【得点者】
CHE:4′ マウント, 55′ プリシッチ, 83′ ルカク
主審:アンソニー・テイラー
第27節 レスター戦(H)
■プラマイゼロにしたアロンソ
ニューカッスルにアーセナルが敗れたことにより、来季のCL出場権が確実になったチェルシー。今節の対戦相手は消化試合がやたら過密なレスターである。
この試合のレスターのフォーメーションはやや珍しいものだった。5-3-2という形のフォーメーションは後ろを重くして立ち向かう。序盤は中盤が人を捕まえる意識が高かったため、スペースを埋めることを優先している感覚は薄かったように思う。
ボールを奪ってしまえばレスターはすぐさま反撃。2トップのスピードを生かしたカウンターから、一気にチェルシーのゴールに迫る形である。
チェルシーはかみ合わされる中盤からではなく、ワイドからボールを押し下げることを選択。特に自由にボールを持つことができるチャロバーとリュディガーから押し下げる形でレスターの陣内に迫っていく。大外担当は右のツィエク。大外から1対1でトーマスをつり出しながらデュエルする。
粘っているレスターはカウンターからあっさりと反撃。カスターニュが抜け出し、開始早々の6分に一発で壊す。決めたのはマディソンだった。
確かにレスターにはスピード豊かなアタッカーが数多く揃っている。しかしながら、この場面ではチェルシーのバックラインの怠慢が目立つ形だった。ワイドにFWが抜けていく形をこの日のレスターは多用してきたのだが、チェルシーのバックラインはこれにあまりにも無頓着。終盤戦の無気力な感じがこのカウンター対応に出ていた。
先制点を取ったことでレスターの守備陣はやや重心を低めに構える形にシフトチェンジ。チェルシーはこれを崩す形に徐々にシフトする。
サイドから押し下げられたレスターは何とか粘っていたが、デューズバリー=ホールがジェームズを逃がしてしまったことで逆サイドまでの展開を許す。これをアロンソが叩き込んで同点に。失点シーンではカスターニュの抜け出しを許して原因を作っていたが、この場面ではそれを帳消しにして見せた。
迎えた後半、より強い3ポイントへの意識を見せたのはチェルシーの方だった。狙い目にしたのはレスターの中盤の背後のスペース。時間の経過とともにレスターはアンカーのメンディがだんだんとジョルジーニョを気にして重心を前にする。
この背後のスペースをルカクで突くのがチェルシーのやり方である。レスターも殴り合いに持ち込むことで何とか展開をフラットにしていこうとするのだが、徐々にレスターは保持の時間を増やしていく。
レスターのラインブレイクの頻度を抑制し、ルカクをよりスペース感覚に優れたハフェルツに入れ替えることで2点目を取りに行ったチェルシー。しかしながら、活性化には限度があった様子。試合は前半の1得点のみで打ち止めのドローゲームとなった。
試合結果
2022.5.19
プレミアリーグ 第27節
チェルシー 1-1 レスター
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:35‘ アロンソ
LEI:6’ マディソン
主審:スチュアート・アットウェル
第38節 ワトフォード戦(H)
■セレモニーを締めくくったのはバークリー
すでに降格が決まっているワトフォード。この舞台とはしばしのお別れとなる彼らのプレミア最終節はスタンフォード・ブリッジ。最終節まで順位を確定させているチームが1つもない中で、唯一得失点差の関係で事実上の3位が決まっているチェルシーの本拠地に乗り込むことになる。
立ち上がりからこの両チームの対戦で想定できる展開で進む両チーム。低い位置からボールを持つチェルシーに対して、ワトフォードはボールを持たれることを許容する形で対抗する。
まずはケネディ、マウントの居る左サイドから突っつく姿勢を見せるチェルシー。ワトフォードは重心を下げてSH-SBでこれを跳ね返しにかかる。
しかしながら、ワトフォードはボールの奪いどころが定まっていない様子。サイドから押し下げられて、エリア内にマイナスの形を送られるなど危なっかしい形が続く。ズルズル下がってしまうのは彼らの悪癖である。
ノープレッシャーでボールの供給ができるチェルシーは自由自在に両サイドから攻める展開が続く前半に。その中で得点につながるプレーを見せたのはこの日存在感のあったケネディである。ファーサイドで待ち構えていたハフェルツにアシストを決めて先制。ケネディ、おそらく今季リーグ戦初先発だと思うのだけど、めっちゃ元気である。
後半はさすがに何かがかかっているわけでもないため、どこか雰囲気はのどか。その後もチェルシーが支配的に試合を進めているのは変わりなかったこともあり、いつもはタッチライン際とベンチを行き来しながらイライラを隠さないトゥヘルもガムを噛みながら穏やかな表情で試合を見守っていたのが印象的だった。交代でピッチを退くリュディガーのファンへの最後のあいさつやバークリーの投入など、どこかセレモニー感が出て来たスタンフォード・ブリッジ。
だが、後半も終盤に差し掛かったところでワトフォードは反撃に。右サイドからカットインで入ってきたジョアン・ペドロが同点弾をゲット。前触れがないところから得点が生まれることに。チェルシーとしては前節を思い出す緩さが際立つ失点となった。
しかし、4バックに移行していたことが奏功したチェルシー。さらに攻勢を強めたところで右サイドの攻撃が炸裂する。チェルシーの21-22最後のゴール、そして最後の決勝点を決めたのはロス・バークリー。ギリギリのところを最終節を勝利で飾る立役者となったのは、今季出番の少なさに苦しみ続けたバークリーだった。
試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
チェルシー 2-1 ワトフォード
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:11‘ ハフェルツ, 90+1’ バークリー
WAT:87’ ゴスリング
主審:マイク・ディーン