■混乱の先にあった切り札
前回のこのカードはチェルシーの苦しいスカッドが印象的だった。コロナの蔓延によりアンカーにはチャロバー、控え選手は6人という苦境で試合を行うことになり、スコアレスドローに追い込まれた。今季のチェルシーの中でも最も仕方のない引き分けだったように思う。
当時に比べれば今のメンバーは豪華といっていいだろう。しかし、チェルシーは直近の試合ではなかなか結果を出せずに苦しんでいる。一方のウルブスも同じく結果が出せずに苦しんでいるチーム。後ろにロンドン勢が迫ってくるチェルシーにとっては是が非でもここを勝ってシーズンを逃げ切りたいところである。
立ち上がりからハイプレスを仕掛けてくるのはチェルシー。ボール保持も支配的で、チェルシーが保持でのウルブスの5-3-2攻略に挑むという構図はすぐに定まったように見受けられた。
CHのコバチッチはロフタス=チークと並ぶのではなく、彼と縦の関係を形成。より深い位置でボールを引き取ることを狙っていた。チェルシーは前線からウルブスの5-3-2の最終ラインからの抜け出しを狙いながらブロック攻略に挑む。裏抜けでスペースが間延びすれば、ロフタス=チークの運ぶドリブルやライン間で受けるコバチッチが効くことになる。
ウルブスにも反撃の手段はあった。WBの裏にスピード勝負を仕掛けることで一気に陣地回復。特にネトのカウンターは脅威。攻撃の意識が強い3センターを採用している上、決して戻りが早いとは言えないチェルシーのバックラインを脅かすには十分な威力だった。
スコアレスで迎えたHT明け。一気に攻め込んだのはチェルシー。前半以上に圧力をかけながら敵陣でのプレータイムを増やす。その結果、ルカクが粘り勝ちでPKをゲット。これを沈めてチェルシーは先手を奪う。
すると、この先制点でウルブスは混乱。バックラインからの簡単なパスミスであっさりと追加点を奪われてしまう。この日はラージがコロナのためいないということで、この2失点目はだいぶ混乱。おそらくタブレットで連絡を取っているラージに指示を仰ぎながらも、ベンチは交代策を準備するのにだいぶ時間がかかってしまった。
守備面に不安は前半からあったものの、ベンチの混乱の様子を見ればチェルシーの勝利は揺るがないと個人的には思っていたのだが、混乱したウルブスベンチから投入された交代選手が試合の流れを一変させる。
主役となったのはトリンコンとシキーニョ。流れを引き戻すスーパーシュートをトリンコンが決めて1点差に迫ると、後半ラストプレーに2失点目のミスを犯したコーディが執念の同点ゴール。どちらもアシストはシキーニョであった。
ミスに漬け込み、後半に優位に立ち、大混乱まで引き起こしたのに勝てなかったチェルシー。とはいえ、アンカー脇をあっさり明け渡してしまう守備ブロックの脆さを見れば、マドリー戦以降の抜け殻のような状態はつづいているといっていいだろう。いわば起き得た奇跡である。これ以上、まさかを積み重ねてしまうと後方の影の姿はまずます大きくなるばかり。そろそろ歯止めをかけたいところだが。
試合結果
2022.5.7
プレミアリーグ 第36節
チェルシー 2-2 ウォルバーハンプトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:56′(PK) 58′ ルカク
WOL:79′ トリンコン, 90+7′ コーディ
主審:ピーター・バンクス