■「潔癖さ」は先のラウンドでの懸念になりうる
ともに開幕節で勝利を飾った両チーム。次節の対戦カードを踏まえればオランダは勝利でノックアウトラウンド進出が確定する。
前節は4-4-2で臨んだエクアドルだったが、今節のプランは5-4-1。ある程度オランダにボールを持たせる立ち上がりとなる。3トップがナローに絞ったことからもインサイドにある程度ボールを入れさせないというのがエクアドルの目的だろう。
オランダの保持はティンバーがSBになり、ダンフリースを押し出すような4バック化がメイン。目立っていたのは左のCBに入るアケ。ボールをキャリーしながらインサイドにボールを入れるタイミングを伺っていく。
アケのボール運びの1stトライが見事に成功したオランダ。インサイドに差し込んだボールをカイセドが処理しきれず、クラーセンに繋がったボールはガクポに渡る。ガクポのフィニッシュはお見事の一言。左足でニアに強いボールを蹴るしかなかった状況だったが、注文通りの強烈なシュートを撃ち抜いてみせた。
アケのキャリーを使ったオランダのビルドアップは以降も有効。リードをオランダが奪ったことで、より前がかりになったエクアドルの前線や中盤を簡単に引き出すことができていた。フレンキーは狭いスペースでも簡単に前を向くことができるためエクアドルにとっては厄介。大暴れだった前節ほどではないにしても低い位置からの自在なドリブルで敵陣深くまで進んでいく。
しかしながら仕上げの局面はやや手数が必要なオランダ。狭い中央のスペースを細かいパス交換で崩して仕上げたがる。この傾向はひょっとすると先のラウンドにおいて苦しむ要因になるかもしれない。綺麗な崩しでないとシュートまでいけないという潔癖さはラウンドが先に進むにつれて悪い方向に転んでいくような気がちょっとしている。
エクアドルの守備は確かに良かった。だが、フレンキーがキャリーできたシーンが何回かあったにもかかわらず、先制点以降のシュートが非常に少なかったことを考えると、オランダの保持の部分も考えなければいけない部分があると言えるだろう。
エクアドルのボール保持は3バックをベースに時折カイセドが最終ラインに入っていく。オランダはこれに対して前節と同じくマンマーク色が強いプレッシングで対抗。後方はファン・ダイクを余らせる形で、中盤・バックラインで相手を捕まえるためのプランを採用する。
バックラインは人数を余るような噛み合わせだったため、本来であればカイセドやメンデスはバックラインまで降りる必要はない。しかしながら相手の守備のスタンスがマンマークであれば、移動自体がズレを生み出すための武器になりうる。特にカイセドのマッチアップ相手であるクラーセンはカイセドがバックラインから前線のあらゆるところに顔を出すことで、どこまでついていっていいか悩ましかった様子。
一人に迷いが出れば他の人まで影響が出てしまうのがマンマーク色が強い守備の弱み。カイセド以外にもWBのビルドアップ枚数調整などマッチアップ相手に悩みが起きるような駆け引きを行うことはできていたように思う。
エクアドルはアタッキングサードにおいては左サイドのユニットを活用。オランダの守備のアキレス腱であるダンフリースをカイセド、エストゥピニャンのブライトンコンビが制圧。左サイドからインサイドに斜めに切り込むというブライトンの頻出パターンから同点を狙う。
押し込み続けたエクアドルは前半の内に同点ゴールをゲット!かと思いきや、これは非常に際どい判定でのオフサイド。先制点を奪われて以降、素晴らしい手応えで試合を運んだエクアドルだったが、同点に追いつけないままハーフタイムを迎える。
後半、エクアドルのプレスの強度はワンランクアップ。プレシアードを1列上げて、明確にプラタにインサイドをケアさせる4-4-2に近い形にする。中央の選手を増やしたことで、よりプレスに強気に行くことができたエクアドルはショートカウンターから同点。襲いかかるようにボールを奪うと爆速でオーバーラップしてきたエストゥピニャンから最後はエネル・バレンシアが決めて追いつく。
ゴールを皮切りにプレスを強めて畳み掛けていくエクアドル。オランダはこのプレッシングに非常に手を焼いていた。ターンして敵陣に迫ることができるデパイやロングボールのターゲットになるベグホルストなど、攻撃的なタレントで反撃を狙うが、最後まで中央を崩し切ることはできず。
ネームバリューだけで見ればエクアドルが健闘した試合に見えるが、シュート数を見ればむしろ勝利を逃したと言えるのはエクアドルの方。敗退が決まっているカタールを最終節に残すオランダは突破に関しては有利な状況で最終節を迎えるが、「潔癖さ」ゆえのシュート機会の少なさは今後のラウンドでどうしても気になるところだ。
試合結果
2022.11.25
FIFA World Cup QATAR 2022
Group A 第2節
オランダ 1-1 エクアドル
ハリファ・インターナショナル・スタジアム
【得点者】
NED:6′ ガクポ
ECU:49′ バレンシア
主審:ムスタファ・ゴルバル