■デュエル×盤面のコントラスト
試合は早々にアウェイのフランクフルトが先制してスタートする。開始1分も経たないうちに華麗な連携を見せたのはフランクフルトの3トップ。リンドストロムのポストから鎌田が前線までキャリーし、パスを受けたボレが反転する。左サイドを軸に作り上げられた連携の終着点になったのは逆サイドから飛び込んできたクナウフ。ライン間をコンパクトにできなかったことで逆サイドまで展開を許したウェストハムは早々に先制点を許してしまう。
その後もフランクフルトはボールを持ちながら、ウェストハムの守備ブロックの噛み合わないところを利用しながら前進していく。狙った箇所は主に2ヶ所。やたら低い位置を意識する左SHのフォルナルスが開けたスペースをワイドのCBのメロが運ぶというのが1つ目。
もう1つは高い位置を取るボーウェンの裏側をカバーしにややサイドに流れ気味のソーチェクが開けた中央のスペース。中盤中央に空いたスペースからフランクフルトは縦パスを入れることができていた。守備に回った時のウェストハムのライン間の幅は先制点の場面でもわかるようにコンパクトに維持することができていなかったので、あっさりと前進を許していた。
一方のウェストハムの攻撃はバックラインを3枚にする形で組み立てを狙う。普通、ボールの保持側は相手に対してどうズラすかを考えることが多いのだけど、ウェストハムはあえて噛み合わせに行っているように見えたのが不思議だった。
だが、この方向性が全然ダメだったかと言われるとそういうわけではない。なぜならば、フィジカルコンタクトにおいては明らかにウェストハムが優位だったからである。ガツンと当たることさえできれば吹っ飛ばすことができる。ここまで優位であるところとかを見てしまうと噛み合わせてしまうのはあえてなのだろうか?と思ってしまう。セットプレーからのウェストハムの同点弾は彼らのフィジカル的な優位が前面に押し出されたものと言っていいだろう。
両チームのアプローチは非常に対照的。フランクフルトはズレを最大限に使うことによって前進することを狙い、ウェストハムはコンタクトが発生することを前提として噛み合わせることでデュエルを出口とした解決策を見せていた。解決策の違いこそ文化の違い。欧州国際大会の面白みであると自分は思う。
その哲学に後半も殉じることができたフランクフルトが最終的に先勝につながる2点目を奪って試合は終了する。1点目と全く同じライン間でのランドストロムのポストを使っての鎌田の勝ち越しゴール。保持時の哲学はともかく、非保持におけるシャープさが欠けていた分、ウェストハムはフランクフルトに屈してしまった印象であった。
試合結果
2022.4.27
UEFAヨーロッパリーグ
Semi-final 1st leg
ウェストハム 1-2 フランクフルト
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:21′ アントニオ
FRA:1′ クナウフ, 54′ 鎌田大地
主審:セルダル・ゴズビュク