■展開にマッチする先制点
立ち上がりにボールを保持したのはポルトガル。ショートパスを軸にボールを動かす。ベルギーは並び的には3-4-3気味なのだが、トップに入ったデ・ブライネはアンカーのパリーニャを監視する役割。攻撃においても中盤でボールを引き出しながらビルドアップに参加するので、実質的な役割は中盤だろう。中盤の枚数が合わせるマンマーク気味の対応である。
ポルトガルの保持に対してベルギーは同サイドに圧縮気味に対応する。特にエデン・アザールがいる左サイドにおいては、DFラインのスライドも大きめ。ただし、ポルトガルのボールホルダーに対してチェックが甘くなることがあり、逆サイドへの展開をすることで大きく脱出することができている。担い手となっているのはレナト・サンチェス。ボールを引き出し、強いフィジカルでベルギーの中盤に体をぶち当てながら逆サイドにボールを流す。大会中に上り詰めた中盤の核は、この日も好調だった。
ただ、彼以外のポルトガルの選手はそこまで横への展開が得意ではない様子。強引に縦につける場面も散見され、左に流した方がいいタイミングでも急ぐ時もあった。この辺りの展開の折り合いは割と個人によってばらけていた印象である。
一方のベルギーにはデ・ブライネが縦横無尽に動くことで、中盤のマークを引きはがし、フリーになり局面を一気に進めるパスがある。デ・ブライネは相変わらずの射程距離の長さ。縦方向の精度は抜群で、ルカクを軸にポルトガルのDF陣と直接対決する状況を作り出せていた。
均衡した展開の中で、1つスイッチが入ると『待ってました!!』といわんばかりにカウンター合戦が発動するのが面白い。ベルギーが縦に急げばロナウドを前に残すポルトガルがそこを狙って反撃など、少しのきっかけでダイナミックな展開のスイッチが入るのはなかなかである。先制点となったトルガン・アザールの豪快なミドルシュートはまさしくこの試合のオープニングゴールとしてふさわしいものだった。
前半終了間際にリードしたベルギーだが、悲劇が起きたのはその直後。おそらく足首周辺を負傷してしまったデ・ブライネが途中交代をしてしまう。後半も一度は出場してみたものの、すぐにプレーを中断。この後のトーナメントやプレミアリーグ開幕に危ぶまれるところである。
縦に相手を揺さぶれるデ・ブライネの不在と先制点を得たことで後半のベルギーはロングカウンターに専念する。デ・ブライネ不在のチームをアザールが牽引。全盛期のようなスピード豊かな突破こそ鳴りを潜めたものの、ボールを落ち着かせてファウルを得て進撃を食い止める一連はさすが。Jリーグファンに向けていえば川崎の家長のような働きであった。
そんなベルギーを見て、ポルトガルは勝負の交代に出る。ジョアン・フェリックスとブルーノ・フェルナンデスの2人を一気に投入し、攻撃への圧力を一気に高める。
ポルトガルはエリア内での放り込みか、大外へのロングボールでサイドからラインを下げた状態でのエリア内での折り返しが攻撃の主なパターン。ラファエル・ゲレーロがポストを叩くなど、惜しい場面もなくもなかった。だが、ポルトガルは最後までゴールを割れず。フェリックスもブルーノ・フェルナンデスも決定的な働きができなかった。
人員もフォーメーションも変化をつけながら死の組を突破したポルトガルだったがここでストップ。前回王者はベスト16で大会を去ることとなった。
試合結果
ベルギー 1-0 ポルトガル
エスタディオ・ラ・カルトゥーハ
【得点者】
BEL:42′ T・アザール
主審:フェリックス・ブリヒ