■誘発されたミスマッチで沈んだオランダ
ここまでアグレッシブなスタイルを貫くことでグループステージを彩ってきたオランダ。この試合でもそのスタイルは健在。立ち上がりから積極的な動きでチェコに挑む。特長的だったのは前線の人選。長身で基準点型のベグホルストではなく、より機動力に長けているマレンをチョイスした。
狙いとしては裏抜けの動きでチェコのDFラインを縦方向に揺さぶることだろう。特に集中的に動き出していたのは左サイドの裏の周辺のあたり。マレンやデパイだけでなく、右のWBであるダンフリースもこのサイドまでわざわざ流れてから裏抜けをしていたので、チームとしてここを狙っていこうという意志があったのかもしれない。
チェコも立ち上がりはその戦いに付き合った。チェコ、結構不思議なんだけど、序盤はとりあえず相手に肌を合わせるような戦い方をする。例えば、スコットランド戦ではやたらキックアンドラッシュなスタイルに全乗っかり。この試合ではボールサイドにやたら人をかけてショートパスをつなぐスタイルだった。10分くらいでやめたけども。
守備の部分ではチェコはオランダの中盤をマンマーク的に捕まえる。チェコが上手かったのは、浮いているオランダの最終ラインがボールを持った時に、周辺の選手がマーカーを捨てて圧縮をかける選択ができたこと。そのため、オランダは常に窮屈な状態から脱することができなかった。デパイやマレンを前線に使ったにもかかわらず、彼らがDFを背負いながらプレーする機会ばかり。オランダの前線の人選と展開はミスマッチになってしまった。
結果的にオランダの攻め手はダンフリースの猪突猛進の突撃ドリブルか、タイミングが全く合わないファン・アーン・ホルトの抜け出しくらい。チェコの非保持によって乏しい前半になってしまった。
後半はやや落ち着かないオープンな展開になった両チーム。後半早々に両チームに訪れた決定機の成否が試合を大きく分けることになった。先に決定機を得たのはオランダ。スルスルと抜け出したマレンが迎えたGKとの1対1はシュートを撃てないまま終了。
一方、チェコが迎えた決定機はシュートには至らなかったものの、デ・リフトのハンドを誘発。これが決定的な得点機会の阻止により一発退場になってしまう。10人になってもオランダが攻める余力はまだあったが、先制点を得たのはチェコ。ファーに流したFKからニアに折り返すシンプルな形でチェコは簡単にフリーな選手を作ることができた。オランダ、数的不利関係ないじゃん!という失点シーンだった。
その後のオランダはいいところなし。80分にはシックにとどめの2点目を決められる。ダンフリース、5バックの感覚でカバーをサボってしまったように見えた失点シーンだった。2失点をするとオランダは完全に意気消沈。奇跡を起こすための下地となるエネルギー自体がもう残っていないように見えた。
戦況と人選のミスマッチを解消できなかったオランダ。相手を苦しめるやり方に注力したチェコに屈し、伝統的な勝負弱さをまたしても露呈してしまった。
試合結果
オランダ 0-2 チェコ
プスカシュ・アレナ
【得点者】
CZE:68′ ホレシュ, 80′ シック
主審:セルゲイ・カラセフ