■デメリットだけ享受した3バック採用
ベンフィカとのCL準々決勝に、エティハドとウェンブリーに乗り込んでのシティとの頂上決戦。ハードな日程が続くリバプール。CLとFA杯は勝ち抜け、リーグは持ち越しと少なくとも90点はつけていい成績でこの2週間を駆け抜けた。最大4冠の可能性が残っている中で厳しい日程は続くが、ベンチまで豪華な充実のスカッドでその過密日程と渡り合う準備はすでにできている。
一方のユナイテッドは不振を極めている。絶不調のエバートンに敗れてしまったことはその象徴だろう。前節のノリッジには勝利こそしたが、最下位相手に刺し違え覚悟の特攻フォーメーションで臨み、ロナウドのFKで救われるというスリリングな白星であり、復調アピールとは程遠いものだった。
布陣をいじってきたのはアウェイのユナイテッドの方。バックラインを3枚にして、3-4-3のフォーメーションでリバプールを迎え撃つ。だが、この3-4-3で何がやりたかったのかはよくわからなかった。
降りていくリバプールの前線に対して、バックラインがついていく動きは見せていたので、おそらく後ろ3枚はリバプールの3トップについていく役割なのだろう。だけども、別にユナイテッドの中盤や前線が相手を捕まえるわけではないので、基本的にボールホルダーはフリーである。
それでいて、リバプールの前線にはマンマークで相手がついてくるのだから、降りる動きさえ見せてしまえばユナイテッドのバックラインには簡単に穴が空く。リバプールは降りてくる前線へのポストを使ってフリーの選手を作り、穴が空いた最終ライン目掛けて放り込む。リバプールがユナイテッドを壊すにはこれだけでよかったので、すごく簡単な仕事だったように思う。
進んでユナイテッドのバックラインがリバプールの前線を同数で迎え撃った理由はわからない。本来、リバプールの前線との同数のマッチアップはどのチームにとっても避けたい形のはず。
そんなリスクのあることをあえてやるときはそれなりの理由があるのが普通。例えば、相手から時間を奪うために前から人を捕まえるプレスに行った結果、仕方なく後方を同数で迎え撃つとか。そうした他の部分でリターンを得る可能性がある場合である。この試合のユナイテッドのように、そうした目的がピッチの中で見えてこないまま、バックラインが同数で迎え撃つというのはリバプールにとってはイージーモード以外の何物でもない。
後半のユナイテッドはそういった部分はいくばくかは改善していた。ある程度前から捕まえに行くのならば、同じように後方で苦しい形になってもまだ理解はできる。前半はそうした狙いが見えないまま、ただただ殴られていたのでよく2点で済んだなというのが正直な感想である。
後半はサンチョが登場し他の前線の選手にスペースを供給できるようになったのと、プレッシングで相手を捕まえる意識が増えたため、前半と比べればユナイテッドははるかにマシだった。それでもリバプールの優勢は動かない。効いていたのはチアゴ。つかれているチームにとって、プレーの緩急を付けながらテンポを落とせる彼の存在は偉大である。
そしてもう1人言及しておきたいのがロバートソン。鋭い出足によるプレッシングと機を見たオーバーラップで攻撃に出たいエランガを牽制。3点目は縦パスをカットして一気に駆け上がり、フリーになったマネにラストパスを送ると、4点目もプレッシングからハンニバルに洗礼を浴びせる。
ユナイテッドの中で誰も良かった選手はいないがこの日のマグワイアは特に散々。いてほしい時におらず、動いてほしくない時に動き、動いて欲しい時に動けず、出してほしくないパスを出す。4点目は直接ボールを奪われたのこそハンニバルだったが、彼にパスを付けたのはマグワイア。あんな適当なパスをデビュー戦の選手につけるなんて、ロバートソンにプレスをしてくれといっているようなものである。
リバプールにとってはイージーなゲームだったはずだ。リズムも得点も自由自在。無抵抗で穴を空けてくれるユナイテッドに対して、テンポを調整して週末に不要な疲れを残さない形で勝ち点3を奪うことができた。
最後に。子供を亡くしてしまったロナウドのためにスタジアムが一体になって拍手をするアンフィールドは素晴らしかった。いざという時に手をつなげる関係性は素敵だ。ロナウドのお子さんのご冥福を祈るとともに、アンフィールドに集ったファンには敬意を表したい。
試合結果
2022.4.19
プレミアリーグ 第30節
リバプール 4-0 マンチェスター・ユナイテッド
アンフィールド
【得点者】
LIV:5‘ ディアス, 22’ 85‘ マネ, 68’ サラー
主審:マーティン・アトキンソン