■『悪くはない』から脱せず
1st leg
マンチェスターでの一戦はアトレティコが5-5-0という地獄を作り出し、シティをそこに引きずり込んだことで話題になった。シティ相手の塹壕戦はおそらく0-0で我慢できれば成功、2-0にされてしまったら明確に失敗という感じだろう。
今回の結果はその中間。1-0でホームに帰ってきた結果が成功か失敗かは『自分たち次第』といったところだろうか。成功を阻んだのは途中交代で入ったフォーデンだった。
1週間前に比べればアトレティコの振る舞いは明らかにアグレッシブだった。1トップに入ったジョアン・フェリックスは敵陣深くまでプレッシャーをかけに行っていたし、そのフェリックスと共にロドリを狭いスペースに閉じ込める中盤のコンドグビアとコケのコンビも必然的に高い位置を取る必要がある。
アトレティコのシャドーはボールサイドではシティのSBにプレスをかけつつ、逆サイドにボールがあるときは中央に絞って高い位置を取りながらカウンターの機会を狙っていく。ボールを奪った後のトランジッションはシティを上回っている感があった。特に左のレマル、ロディのコンビは攻撃に転じてから、シティのバックラインよりも素早く高い位置を取ることが出来ており、ここから敵陣に迫ることが出来ていた。
1stレグよりも明確に攻撃の道筋ができていたアトレティコ。だが、フェリックスにボールを渡すところでの精度が伴わない。素早くカウンターに出ていけない時のバックラインからのつなぎなどはさすがスペインのチーム!といううまさなんだけど、終点のフェリックスにボールを届けるところでやや手間取っている印象を受けた。
シティがアトレティコを保持で押し込めなかったり、トランジッションで後手を踏むのは言うまでもなく週末のリバプールとの激戦の影響だろう。後方でボールを持ちつつ、なるべく時計の針を進めるような振る舞いでなんとかリードをキープする意識が垣間見られた。
しかし、それでも手を打てるのがシティの強さ。左サイドで先発していたベルナルドを右のIHに移動させてレマルの背後を浮遊させる修正を行ったのは30分付近のこと。背後にまとわりつかれたルマルはウォーカーにプレスに出ていけなくなり、バックラインの保持の安定×トランジッションで優勢に立っていたレマルを低い位置まで押し下げることに成功。
以降はベルナルドとデ・ブライネがこの役割をシェアしつつ、レマルのプレスの背後にまとわりついて、バックラインからのボールをひきだそうとする。アトレティコとしてはヘイニウドが前に出ていってつぶすやり方もたまに見せていたが、常時そのやり方というのは難しいところ。この時間帯はちょうどシティがバックラインの裏に走り出す動きを積極的に使いだしており、DFラインを上げようとするアトレティコに脅しを突きつけていた。
前半の終盤はペースを握ったシティだったが、後半は再びペースはアトレティコ。やはりシティは自陣からの脱出が安定しないことが問題。後半はより積極的な裏抜けの姿勢を見せるグリーズマンやフェリックスや、それにキャッチアップするロディやジョレンテのようなWBにより、前半以上に押し込まれる機会は増えていくシティ。
センターサークルでフリーの選手を作りつつ、裏に蹴る保持も安定したアトレティコ。前半よりも右サイドのグリーズマンとジョレンテが躍動している分、期待感も膨らんでいた。
シティは負傷にも苦しんだ。デ・ブライネやウォーカーなど要人を次から次へと負傷で失ってしまう。それでも交代選手が奮闘。特に左サイドにSBとして入ったアケは背走するアトレティコのアタッカー陣へのフィードの跳ね返しへの貢献度が非常に高かった。
最後はアトレティコは4-3-3で戦っていた。5-5-0からは考えられない話である。PA内のクロスに入る人も増え、あわやというシーンがいくつか見られた。だが、ワンダ・メトロポリターノでは女神がなかなか微笑まず。そうこうしているうちにフェリペが退場し、女神はどこかに旅立ってしまった感すらあった。
終盤は乱闘も多かったこの試合。アトレティコは悪くはなかったが、『悪くはない』を脱する決め手に欠けたのも事実。シティがマンチェスターで手にした1点をマドリードでも守り切ることに成功。同じく、マドリードの雄が待つ準決勝に駒を進めた。
試合結果
2022.4.13
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 2nd leg
アトレティコ・マドリー 0-0 マンチェスター・シティ
エスタディオ・ワンダ・メトロポリターノ
主審:ダニエル・シーベルト