■プレス耐性と中盤の層の薄さに泣く
日本のライバルとして、今予選を通じて戦った両チームが最終節に激突。突破の可能性を賭けた一戦ではないということは残念ではあるが、この予選においては屈指の好カードである。
両チームとも保持を落ち着いてやりたいスタンスは見ることができた。中盤1枚(オーストラリアならばジェッコ、サウジアラビアならばアルナージー)が最終ラインに降りてCBに加わりゲームメイクに参加。保持側は3枚でのビルドアップを行おうとする。守備の陣形はどちらのチームも2トップが先導するプレススタイルなので、このやり方はとりあえず数的優位を確保するという視点では妥当ではある。
しかしながら、その数的優位の確保が両チームにとってはビルドアップの安定につながることはなかった。互いに高い位置からアタックしてくる相手チームのプレスに慌ててしまい、ボールを落ち着いて回すことはできなかった。
特にひどかったのはオーストラリア。サイドにボールが出たタイミングでシャドーがスイッチを入れるサウジアラビアに対して、自陣でのボール回しが安定せず、結局はクリアすることになってしまったり、ボールを奪われたり。CHにレギュラーポジションの選手がいないというエクスキューズがあるとはいえ、もう少しできて欲しいというのが本音である。
サウジアラビアはそれに比べればマシではあった。プレッシングに慌てる場面もないわけではなかったが、CHの相棒のカンノも降りて対角のパスを使いながら圧力を回避していたので、オーストラリアに比べれば逃げる手段はあった。
オーストラリアのチャンスはほとんどハイラインを敷くサウジアラビアのDFの裏を狙う動きから。これだけ直線的な動きでのチャンスメイクが成立するのだとしたら、もう少しビルドアップの時に裏に蹴って回避することを積極的に取り入れていいと思った。38分のボイルの抜け出しによってネットを揺らした場面(オフサイド判定)はオーストラリアの裏抜けが最もクリーンに決まったシーンだ。
一方のサウジアラビアはサイドに振りながら薄い場所を作り、壊していく幅を使ったやり方。特に予選を通して効果的だったアッ=シャハラーニーのオーバーラップを使える左サイドを使った攻撃はこの試合でも効いていた。
後半になるとプレスもトーンダウン。そうなるとオーストラリアも幅を使ったポゼッションをできるようにはなったが、運動量が落ちた影響で直線的なゴールの手段が薄くなったマイナスもそこそこ。薄いサイドを使った攻撃でPKを得たサウジアラビアに比べるとやや物足りなさがあった。
結局は彼らのスタイルで言えばポゼッションが物足りないのだろう。プレス耐性と負傷者だらけの中盤で3月シリーズはボロボロだった印象のあるオーストラリア。プレーオフの開催される6月にはもう少し上手く戦えるチーム状況になっているといいのだが。
試合結果
2022.3.29
カタールW杯アジア最終予選 第10節
サウジアラビア 1-0 オーストラリア
キング・アブドゥラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:65′(PK) アッ=ドーサリー
主審:アドハム・マハドメ