■悲劇の引き金はアタッキングサードの精度
スイスに首位の座を譲り、プレーオフに回ることになった欧州王者のイタリア。初戦の相手は英雄・パンデフと昨年のEUROで別れ、新しいスタートでワールドカップ予選に望むことになった北マケドニアである。
そもそものチーム力に加えて、北マケドニアは主軸のエルマズが不在となれば、イタリアとの力関係の差は明らかである。というわけでボール保持の時間を長くしながらこの試合を戦ったのはイタリアの方だった。左サイドの大外高い位置をエメルソンが取る片上げ形の3バックへのシフトで敵陣に迫っていくイタリアだった。
攻め上がってくるエメルソンに対して、北マケドニアはチュルリノフを低い位置まで下げる。5レーンを埋める形で北マケドニアは対応していく。北マケドニアの振る舞いとして特徴的だったのは基本的には後方に人を揃えながらも要人に対してはマンマークベースでの警戒を強く持っていたことである。
北マケドニアが最も大きな警戒を持って当たっていたのがジョルジーニョ。撤退守備に対峙した時にわずかなタイミングを逃さずに針の糸を通すパスを入れてくる彼の存在は北マケドニアのブロック守備を脅かす存在である。バルディがブロック守備を意に介さずにマンマークを続けるのも納得。一発芸を持っている飛び道具に対しては、ブロック守備の人数を変えてでも対応するやり方は個人的には良かったように思う。フロレンツィ、ヴェラッティもジョルジーニョほどではないが、人ベースでの警戒を持って当たられていた選手だった。
30分になると徐々にイタリアがプレッシングでペースを握るように。立ち上がりから積極的な守備を見せてきたIHに加えて、WGも高い位置からのプレスに参加。低い位置からのビルドアップで自分達の保持の時間を作ろうとする北マケドニアに対して、ボール奪取からのショートカウンターを仕掛ける。
だが、フィニッシュの精度が伴わないイタリア。ベラルディ、インモービレなど決定機を迎えたストライカーのシュートがことごとく枠を捉えられない。
イタリアのツッコミどころは崩しの過程においても。ファーに選手を待ち構えさせてのクロスの精度や、サイドチェンジのロングボールがズレたりなど、ここぞというときのボールが刺さらない。
後半になってもこの課題はイタリアの足枷になっていた感じ。左のエメルソンだけでなく、右のフロレンツィの攻撃参加を増やし、バレッラとの右サイドのコンビで攻勢を強めるイタリアだが、仕上げの部分の詰めの甘さは変わらず。
北マケドニアのマンマーク担当者の疲れや、アシュコフスキのような攻撃な選手をIHに置いたことにより、試合はオープンになり、イタリアのチャンスの数自体は増えた。だが、ペッレグリーニ、ラスパドーリ、ジョアン・ペドロなど前線のメンバーを総入れ替えしても決め手に欠くという状況は変わることはなかった。
攻めあぐねているうちに『その時』がやってきてしまう。我慢を続けてきた北マケドニアがイタリアに牙を向いたのが92分。ゴールの香りがしないところから右足を振り抜いたトライコフスキがイタリアの望みを打ち砕く一撃を放つ。
イタリアは内容的には支配してはいたが、アタッキングサードの精度に不満が残ったのは確か。大外での優位、ラストパス、そしてフィニッシュの精度の低さを手数で補いきれなかったイタリアは北マケドニア相手に思いもよらぬ代償を支払うことになった。
試合結果
2022.3.24
カタールW杯欧州予選 プレーオフ 準決勝
イタリア 0-1 北マケドニア
スタディオ・レンツォ・ベルバラ
【得点者】
MKD:90+2′ トライコフスキ
主審:クレマン・トゥルパン