■消極的だった180分
1st leg
1stレグは電光石火のヴラホビッチの先制ゴールで口火を切ったユベントス。だが、その後の時間での逃げ切りには失敗。ビジャレアルに追いつかれてトリノでのリターンレグを迎えることになる。
ここ何年か、全体的にCLノックアウトラウンドの試合は積極的に見てきた方だと自負しているのだが、この試合はここ数年のノックアウトラウンドの中ではかなり異質だったように思う。というのも他のどの試合に比べてもテンポが遅い。具体的にいうと、プレスラインを下げてホルダーを捕まえよう!という意識があまりない両チームの対戦だった。
格上のチームがリードしているのならば、試合を一方的にポゼッションで終わらせる!みたいな流れも見たことはある。だが、先ほども説明したようにこの試合の頭の段階では両チームはタイスコア。得点を取らなければPK戦までまっしぐらの試合である。
個人的にはビジャレアルの振る舞いはまだわかる。ユベントスのボール保持は左のSBのデ・シリオを高い位置に取らせて、SHのラビオが内側に絞り、5レーン気味にふるまっていたので、とりあえずこちらも5バック気味にして迎え撃とう!ということで右のSHであるピノを低い位置まで下げたのだろう。
ユベントスは左のデ・シリオ、右のクアドラードを軸にクロスで砲撃。特に右は3人程度で連携しながらクロスを上げることもあったが、あんまり旋回で誰かをフリーに!という感じは伝わってこず。チャンスはクロスの精度によって担保されている感じだった。
シュートがバーを叩くなど攻撃面ではクロスの精度起因での成功が見えなくもなかったユベントスだったが、守備に関してはとにかく消極的。ビジャレアルはGKを挟む形でCBがビルドアップを行っていたが、そこにはプレッシャーをかけることは皆無。SBの攻め上がりを警戒してか、こちらも5バック気味で攻撃を受ける形となった。
どちらのチームも保持側の時間を奪おうというアクションがないので、とにかく展開がスローリー。攻守の切り替えとか、インテンシティというワードをどこか別の世界に置いてきてしまったようなのんびりとした時計の針の進み方をしている試合だった。
後半になり、ようやくユベントスが重い腰を上げてプレッシングに打って出る。だが、ショートカウンター気味になりそうな場面においても、前線にスピードアップができる存在がいない。縦に速い攻撃は実現できないまま時間が過ぎていく。
そんな中でユベントスに綻びが出てしまったのは5バック変形までして手厚くしたはずの守備。5バックで構えているチームとしては許したくない2本のフリーでのパスを中央で許してしまったゆえに、ユベントスは対応が後手に。これがルガーニのPK献上のトリガーとなってしまう。
交代直後のモレノがこのPKを決めると、続く85分にはパウ・トーレスがセットプレーから追加点をゲット。慌てるユベントスを尻目にカウンターからデ・リフトのハンドを誘い、ビジャレアルはものの15分でユベントスを奈落の底に突き落とした。
思えば、2試合における見せ場といえる見せ場は開始1分で決めたヴラホビッチのゴールくらい。確かに2ndレグは枠内シュートの数も相手を上回ってはいたが、この試合を見て『よくやった』と胸を張れるファンはあまりいないように思える。消極的なメソッドからの脱却を図れなかったユベントスにとっては結果以上に厳しい内容を突きつけられるCLとなってしまった。
試合結果
2022.3.17
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 2nd leg
ユベントス 0-3 ビジャレアル
ユベントス・スタジアム
【得点者】
VIL:78′(PK) モレノ, 85′ トーレス, 90+2′(PK) ダンジュマ
主審:シモン・マルチニャク