■夢の劇場で見せたアトレティコの哲学
1st leg
終了間際のゴールでなんとかタイスコアでリターンレグを迎えることができたユナイテッド。この試合でも序盤はどちらかといえばユナイテッドが攻勢に出ていた。ユナイテッドの攻撃陣はSHがやや絞り気味。特に右のエランガはインサイド側に絞ることが多かった。
よって幅をとってチャンスを作るのは左サイド。ロナウドもサイドに流れながらこちらのサイドからクロスを上げることを狙う。アトレティコの5バックはWBが最終ラインのプロテクトをすることを優先。低い位置からクロスを上げるユナイテッドの選手にチェックをかけるのが遅れることが多かった。
ユナイテッドはチャンスを作れてはいたが、SHが内に寄ったりロナウドが外に流れたりすることでズレができた!というメカニズム的な話というよりは、ハーフスペースに抜けるフレッジやスピードのあるエランガで局所的にデュエルで勝利することでのチャンスメイクが中心。ロナウドはどっちかといえばインサイドにいた方が良さげのように思うんだけど。
サイドからのクロスで危険にさらされることが増えたアトレティコは、グリーズマンをSHに落とす形で5-4-1でブロックを形成し直す。この役割をグリーズマンにやらせられるのがアトレティコだし、シメオネ!という感じである。これにより、ユナイテッドの攻撃はある程度手当をすることができた。
アトレティコの保持は立ち上がりはユナイテッドのバックラインのギャップを突くような裏へのランを使いながらの前進が目立ったのだけど、前半途中からはやや淡白さが際立つように。そのため、段々と横に降りながらの攻撃に傾倒していくアトレティコ。ただし、長いレンジのパスの精度が刺さらず、一本ピッチを横切る大きなパスが決まればなーという感じだった。
そのピッチを横切る大きなパスがようやく決まったのはアトレティコにとって最高のシチュエーション。右サイドでフェリックスのタメからフリーになったグリーズマン。このグリーズマンのクロスがファーまで正確に届き、これをロディが押し込んで先制する。
ポイントだったのはフェリックスがサイドに流れながらヴァランを引きつけていたこと。その分、インサイドに絞ったダロトにはファーのロディへのケアは少し難しくなってしまっていた。
リードで迎えた後半、アトレティコは前半以上に5-4-1で構えてのワンチャンスカウンタースタイル。ユナイテッドはこれを崩すチャレンジをすることになる。
左右に振りながら攻撃の糸口を探るが、アトレティコの5-4-1を動かしながらの揺さぶりをかけることができないユナイテッド。攻め込んではいるけども、打開策を見出すことができない。
ラングニックの手打ちも非常に中途半端だった印象。クロスが主体となっているのに、パワープレーでターゲットになりうるマグワイアを下げて、スピードに難がある上にすでに警告を受けているマティッチをバックラインに組み込み、カウンターを迎撃させるというのははっきり言って意味不明。いくらマグワイアが不安定なプレーに終始していたとはいえ、終盤にこの交代をするのは攻守に自らを弱めただけのようにしか思えない。
アトレティコは強いていえばもう少しボールを大事にすることができれば楽に試合を運べたが、それでもブロック守備の強度は十分。こうした苦しい時間をストレス少なく過ごせるのは彼らのカルチャーである。
5-4-1へのシフトチェンジからワンチャンスでリードを掠め取り、ブロックを組んで逃げ切る。夢の劇場で見られたのはユナイテッドの勝利ではなく、彼らをねじ伏せたアトレティコの哲学だった。
試合結果
2022.3.16
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 2nd leg
マンチェスター・ユナイテッド 0-1 アトレティコ・マドリー
オールド・トラフォード
【得点者】
ATL:41′ ロディ
主審:スラヴコ・ビンチッチ