■内容に結果を見合わせたムバッペ
CLの再開を告げるのはRound 16屈指の好カード。パリの地で優勝候補と目される2チームによる激突で3カ月に及ぶサバイバルがスタートする。
まず目についたのはパリのプレッシングのスタンスだ。基本的にはプレッシングへの意識は強いのだが、CFの位置に入ったメッシはほとんど強気にプレスにいかずにカゼミーロの周りを浮遊するのみ。その分、両WGがCBにプレッシングをかけるという亜流のプレッシング。ハイプレスただしCFは参加しません!って風情で周りがメッシを追い抜いていく様子はかなり新鮮だった。
マドリーのボール保持といえば、クロースの左落ちから始まる気配が強いのだけど、パリの守備の基準はマンマーク。クロースがどこに行こうと対面の選手がついていく仕組みになっており、落ちてもフリーになることはできなかった。
最終ラインには時間を与えてもらえないマドリーはとりあえず前方にボールを蹴るだけ。負傷明けの前線のベンゼマはボールを収めることができず、頼りの綱のヴィニシウスはハキミとそれをフォローするダニーロに監視され続け、ボールをPAまで運ぶことが出来なかった。
というわけで主導権を握ったのはホームのパリ。2人のCBに加えて3人のCHが5人で後方を形成することが多かった。最終ラインに入れるダニーロは出来る仕事の範囲が広い。前や後ろを構成する人員は流動的。WGが幅を取るケースの時は、SBが下がって、その分CHがPA内に上がってくるケースもあったし、メッシが降りてくればWGがそこに入ってくる役割を担う。
要は全体のバランスが良ければなんでもOKである。大外レーンはムバッペ、ディ・マリア、ハキミ、メンデスのうちだれが使っても問題はない。そして、誰が使っても突破は見込めるという相手からするとはた迷惑な話。パリが大外で1対1を構えれば、中盤の前よりで守備していたモドリッチが飛んできてハーフスペースを埋めるという非常に慌ただしい流れとなった。
というわけで剥がされ続けるマドリー。前半の序盤は特にサンドバックのような状態が続いてしまう。1つ違えば危うく大量失点の目もあったはずである。
猛攻に晒されたマドリーはこのままじゃいけん!と一念発起。モドリッチ、クロース、ベンゼマと稀代の役者たちが根性のキープでボール保持を行うことで回避する。
だが、プレスを回避したからといって相手の守備網を打開できるかは別問題。撤退してブロックを敷くのが完了したパリに対して今度は攻める手立てがなく、苦戦を強いられてしまう。なお、パリはロングカウンターがあるので、ボールを持たれても問題ない。
苦しむマドリーは後半早々にハイプレスを敢行し、奇襲をかける。だが、これはむしろパリの前進の手助けに。縦パスを刺すスペースを見つけることが出来たパリは直線的な侵攻で後半早々にクルトワを脅かす。
マドリーのプレスを鎮圧したパリは前半と同じくワンサイドに持って行くと、サイドのムバッペの突破からPKを獲得。これで試合がようやく動くかと思いきや、メッシのPKはクルトワがストップ。マドリーも譲らない。
このプレーで流れを変えたいマドリー。ロドリゴとヴィニシウスの両翼にして、スピード勝負を仕掛けたり、アザールを投入してゆっくり攻撃できるポイントを作ったり、ベイルを入れて何とかしてくれと願ったりなどあらゆる策を講じたのだが、いずれもパリを破る解にはならなかった。
そんなマドリーを尻目にパリはネイマールを投入する。ひどい奴らである。さらに武器を増やして総攻撃を仕掛けるパリに対して、マドリーも攻撃の糸口を探りつつ意地で跳ね返すという構図。
圧倒的なスタッツを誇りながらドロー決着が現実的な状況になった94分に試合は動く。最後に決めたのはまたしてもムバッペ。裏抜けだけでなく、止まってからの突破も一段凄みを増した感のある怪物は、ミリトンとバスケスの間をこじ開けて右足を振りぬいて見せた。
圧倒して見せた内容に見合った結果をパリにもたらしたムバッペには賛辞を贈るしかない。対するマドリーはカゼミーロとメンディという2人が出場停止で2ndレグを迎えることに。スカッド的にもスコア的にも内容的にも苦しいマドリーに2ndレグで逆転の目は残されているだろうか。
試合結果
2022.2.15
UEFAチャンピオンズリーグ
Round 16 1st leg
パリ・サンジェルマン 1-0 レアル・マドリー
パルク・デ・フランス
【得点者】
PSG:90’+4 ムバッペ
主審:ダニエレ・オルサト