第1節 ウルグアイ戦
■勝てそうで勝てない難敵が韓国に立ちはだかる
混戦が予想されるグループH。サウジアラビア、日本と連日のアジア勢の勢いに乗りたい韓国が迎えるのは南米の常連国であるウルグアイだ。
韓国のフォーメーションは4-2-3-1がベース。保持では2CHのうち、チョン・ウヨンがアンカーのように振る舞い、2CB、GKと共に4枚を中心にビルドアップを行う。インボム、ジェソンも必要とあればビルドアップに参加。この辺りは相手の様子を見ながら枚数調整といったところだろうか。
大外の幅取り役は左右ともにSB。サイドハーフはともに絞り、ファン・ウィジョのそばでプレーすることが多かった。
ウルグアイのプレスの先導役はCFのスアレス。運動量に不安のあるベテランを最前線に抱えるということは高い位置から追い回すことを繰り返すのは難しいということでもある。量的に制約が付いているウルグアイはミドルゾーンに構える4-1-4-1である程度韓国にボールを持たせながら迎え撃つ。
そのため、韓国のボール保持の局面は比較的安定はしていた。ただし、ゴールに迫ることができるかどうかはまた別問題。相手のプレスの人数の掛け方の割には、韓国のIHがやや降りすぎてしまうため後ろが重くなっていたし、大外のSBの打開力は独力で相手を出し抜けるほどではない。サイドでは1枚相手を剥がせることがあったとしてもバルベルデやヒメネスが爆速でカバーに飛び込んでくるので、実質無力化されてしまう。
3トップもビルドアップに絡めないとなれば、韓国がエリアに入り込むことに苦戦するのは必然だろう。ファン・ウィジョのこの試合唯一の仕事をするチャンスは、前半に唯一生まれた韓国の決定機をゴールに蹴り込むことだった。だが、30分以上ボールに触ることができなかったウィジョはこのボールをふかしてしまう。
韓国にとってはこのウィジョの決定機のように低いクロスを上げる形の方が期待値が高いのだけど、そうしたクロスはウルグアイが全て跳ね返すようにサイドに押し込んでいる。なお、ハイクロスは全てCBが跳ね返してくれるので完全に許容するというメリハリぶりだった。頭を越すクロスはどうぞ!でも鋭いやつは許しません!という距離感でウルグアイは韓国をサイドに追い込んでいた。
ウルグアイのボール保持はCBに加えてアンカーのベンタンクールが参加する形。ただし、ベンタンクールは韓国の2トップの間に常駐するわけではなく、2トップの外側に立つことも多い。その場合は併せてベシーノやバルベルデが2トップの間に立つように動く。
だが、ビルドアップの基軸はショートパスではない。序盤の前進の主役となったのはヒメネス。ロングフィードからの抜け出し一発で、前線にチャンスを供給する。バルベルデなどがレシーバーとなり、フィードからそのままシュートに持っていく。プランとしては前後分断に近い。
韓国のボール奪取の狙い目になりそうなのは最終ラインのややサイドから中央に刺すパス。ウルグアイはこのパスがやたらと甘い。何度かこのパスから決定的なピンチを迎えかける。奪われたら危険な形になりやすいパスが多いウルグアイだったが、その分帰陣もやたらと早く韓国の速攻を許さない。敵陣まで運ぶ機会は韓国の方が多かったが、決定機はウルグアイの方が多いという前半だった。
迎えた後半、両チームとも得点を目指してテンポをアップを行っていく展開に。先にチャンスを迎えたのは韓国。だが、シュートでゴールを脅かせるタイミングで足を伸ばしてきたのはヒメネス。シュートモーションに対して先に倒れすぎたか?と思ったところからもうひと伸びするスライディングで韓国のチャンスを未然に防いでみせる。
時間の経過とともに再度保持側がロングボールに走ることで膠着する後半。キム・ミンジェの負傷で様子を見る必要があるなど、韓国側にはテンポを上げきれない要因もあった。
試合が均衡する中で存在感を見せたのは両軍の交代選手である。韓国はCFに入ったギュソンが投入早々にポストからチャンスメイクをするなど流れの中での攻撃に寄与。消えていたファン・ウィジョとは異なり、いきなり攻撃のアクセントになって見せる。ポストを叩くシュートなど短い時間でフィニッシュでもヒーローになるチャンスすらあったほどである。
ウルグアイ側で存在感を放ったのも同じくCF。こちらはお馴染みのカバーニである。献身的な前プレ、プレスバックはもちろんのこと。鋭い縦パスでもあっさり収めながらボールを前に進める力は流石の一言。短い時間ながらスアレスやヌニェス以上のインパクトを残したといっていいだろう。
そんな彼らも最後まで得点をあげることはできず。韓国にとっては連日の大物食いのチャンスだったが、ドローでフィニッシュ。苦戦しつつも要所でのプレスバックの速さを見れば「ウルグアイに勝てそう」なチームは多くとも、「ウルグアイに勝ち切る」チームが少ない要因をまざまざと見せられたなという気持ちになった一戦だった。
試合結果
2022.11.24
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第1節
ウルグアイ 0-0 韓国
エデュケーション・シティ・スタジアム
主審:クレマン・トゥルパン
第2節 ガーナ戦
■左サイドを軸にした後半の猛攻は実らず
旋風を起こしたアジア勢だったが、日本とサウジアラビアが敗れて一段落。無敗を維持する最後の砦となったのがH組の韓国である。そんな韓国は前線3枚を入れ替え。大幅にメンバーを入れ替えた日本を彷彿とされるスターターとなった。
ガーナは前節の5バックから4バックにシフトチェンジ。ポルトガルと比べれば韓国とは十分に組み合えるという判断だろう。5バックを使った後のチームが4バックに移行した際に最も難が出やすいのはCB-SBのスペース。このスペースに出て行きすぎたり、あるいは放置しすぎたりなど判断のギャップが生じることが多い。
立ち上がりの韓国はこのギャップを利用。右サイドのハーフスペースを狙い撃ちしながら深さを作っていく。三角形を作ってのパス交換で優位を取り、エリア内にボールをつなぐことに成功する。ガーナがクリアした後のCKもしっかりとデザインされていた韓国。序盤は攻勢に出たのは彼らの方だった。
しかし、ガーナは前節ほど苦しい戦いになったわけではない。韓国はポルトガルと違い、ボールをロストした後の即時奪回に熱心なわけではないので、ボールを取った後に落ち着いてボールを持つことができた。
4バックにしたガーナは前節はIHだったトーマスが降りてくるアンカーロール的な振る舞いを増やすように。韓国は2トップがトーマスを受け渡しながら守るミドルプレスを維持していく。ポルトガルほど支配的でない韓国のスタンスに対して、ガーナもまたショートパスからの前進をすることができていた。
先制したのは序盤に主導権を握れなかったガーナ。セットプレーからの混戦を制して叩き込んだのはサリス。均衡を破る一撃をお見舞いする。
勢いに乗るガーナは流れの中から追加点をゲット。ジョーダン・アイェウのクロスから完璧に抜け出したクドゥスが合わせてさらに突き放す。アンドレ・アイェウとクドゥスの2人が仕掛けたラインの駆け引きに韓国のバックラインは屈してしまった。
苦しくなった韓国。時折、ロングカウンターから左サイドをソンが駆け上がるシーンが散見されるが、インサイドの攻め上がりが間に合っておらず、待っている間に挟み込まれてしまうなど有効打にならない。ポゼッションはできるか、ガーナの守備陣を攻め立てることはできず、得点とともにサイドからの崩しも沈黙してしまった印象。2点のビハインドを背負ってからは内容まで尻すぼみになってしまう。
後半、劣勢だった韓国は選手交代とともにシステムを4-3-3に変更。前プレスの強化とサイド攻撃を手厚くする形にシフトする。ガーナが前プレにきた韓国のアンカー周りを使う攻撃をするなど、リスクはあったこのシフトチェンジ。しかしながら、2点ビハインドという状況であれば多少のリスクを負っても出力を上げられれば問題はない。左サイドからのクロスを軸としてエリア内に迫る機会を増やすように。
すると、この左サイドのクロスから追撃弾を得た韓国。決め手になったのは交代で入ったイ・ガンイン。ターゲットが1枚という精度が問われる状況だったが、投入直後にこのクロスをバチっと決めてみせた。
さらに韓国は左サイドからの攻撃で畳み掛けていく。ソンが対面のランプティを縛り付けると、外を回ったSBのジンスのクロスをギュソンが叩き込む。これでギュソンは2ゴール。左サイドからのクロスを軸に韓国は一気に追いついてみせる。
ボール保持のところから呼吸をすることができずに韓国の攻勢を受け続けるガーナ。苦しい状況を打開したのはトーマス。中盤でターンを決めて前線にチャンスを供給する機会を得ると、左サイドのジョーダン・アイェウから外を回ったSBのメンサーがクロスを入れる。仕留めたのはファーに構えていたクドゥス。韓国の2点目のコピーとも言える形で3点目を奪い取る。
ファン・ウィジョを投入し、前線の枚数を増やして総攻撃を仕掛けていく韓国。イニャキ・ウィリアムズのロングカウンターの反撃に遭いながらも攻め込み続ける。後半の頭の1枚しかターゲットがいなかった状況は一変。複数枚をエリアに入れ込む韓国に対して、ガーナのDFの対応はかなりギリギリだった。
最後の最後まで得点のチャンスがあった韓国だが、ガーナのゴールをこじ開けるには一歩及ばず。後半の猛追も虚しく勝ち点を積むことができなかった。ガーナは後半は苦しい戦いだったが、攻撃的な韓国のサイドをひっくり返す形でワンチャンスをものにしてみせた。
試合結果
2022.11.28
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第2節
韓国 2-3 ガーナ
エデュケーション・シティ・スタジアム
【得点者】
KOR:58′ 61′ ギュソン
GHA:24′ サリス, 34′ 68′ クドゥス
主審:アンソニー・テイラー
第3節 ポルトガル戦
■プレミアコンビが最下位から韓国を救い出す
グループステージ1試合を残し、すでに突破を決めているポルトガル。最終節は大幅なターンオーバー+まだまだ頑張りたいロナウドの組み合わせの先発である。一方の韓国は非常に厳しい状況。勝利は最低限で後は裏のカードの結果次第という形である。
得点が絶対に欲しいのは韓国なのだが、立ち上がりは非常に慎重だった。ポルトガルのバックラインに対しては自由にボールを持たせており、我慢しながらの序盤戦を想定していたのだろう。
ポルトガルはボールを持ちながらこのブロックを攻略できるか?が問われることになる。その答えを出すのにかかったのはわずか5分。最終ラインからのフィードで右サイドからのダロトの抜け出しを誘発。インサイドでオルタが待ち構えてシュートを叩き込む。一発でラインを破られてしまい、幸先が悪いスタートとなった韓国だった。
ビハインドになった韓国はまずはロングボールで様子見しつつ、どこから前進をできるか伺っていく。非保持では4-4-2にシフトしたポルトガル。プレッシングは前から行きたい前線と、ステイして守りたい中盤より後ろで意識が分断する場面があった。よって、韓国はギャップができた中盤からボールを進めることができる。
前進の基本線は長いボールを前線に背負う形で受けてもらい、その選手を追い越す形で奥を取ること。この動きの組み合わせで敵陣に進撃していく。
敵陣進撃以降の韓国にとって、大きな武器になったのはセットプレー。ショートコーナーからのデザインなど工夫が見られる形でポルトガルの守備陣を追い詰める。同点ゴールもセットプレー。ニアで潰れる形から中央に流れたボールをヨングォンが押し込んで追いついてみせる。
押し込まれた時間はポルトガルにとっては苦しいものだった。ベルナルドとブルーノ不在の中盤はボールの預けどころがなく、ロナウドが直線的な抜け出しを狙う以外はあまり陣地回復の手立てはなかった。
前半の終盤はボールを持てるようになったポルトガル。右サイドから裏を取る形を作り、エリア内にボールを入れるようになる。先制ゴールを決めたオルタはクロスの入り方がうまくマイナス方向で待てる。ポジショニングが巧みな選手である。
ポルトガルにはゴールを奪うチャンスがあったが、ことごとくロナウドが決めることができず。韓国を突き放せる時間帯をフイにしてしまう。
後半、再び韓国は4-5-1でのブロック守備で我慢のスタート。ボールを持つポルトガルはサイドの攻撃を意識しつつもそんなに急がない。崩せない状況が続いても悪くないという考え方で時計の針が進めていく流れとなった。
意外だったのは非保持時のポルトガルの振る舞い。高い位置からのプレッシングを強化し、相手を捕まえにいく形を前半よりも多く作っていた。保持のまったりとした感じとは異なり、アグレッシブな非保持で韓国から時間をとりあげにいく。
だが、得点が欲しい韓国にとってはポルトガルのプレスは自分たちが縦に急ぐ絶好の好機と言える。スピードある前線に素早くボールを渡し、韓国は前半よりも早いテンポの攻撃を増やしていく。点が欲しい韓国が、突破を決めているポルトガルにテンポアップを促されるという結構不思議な展開となった後半だった。
韓国はファン・ヒチャンの投入を合図にプレッシングを強化。非保持の局面でも勝負に出ていく。あとから出てきたウィジョによって4-4-2にシフトしたことも含め、勝てなければおしまいなので理解できる振る舞いと言えるだろう。裏の会場はウルグアイが2点リード。韓国はこの試合に勝てば逆転で突破を決めることができる。ベルナルドなどの主力を投入したポルトガルの選手交代も含め、試合は徐々にクライマックスを迎える。
しかし、交代から少し時間が経つと、両チームともにだらっと間延びした時間を迎えることに。中盤はボールを運ぶことができるけども、敵陣では固めた相手に攻めあぐねるという状況が続き、どちらも決め手を欠いている展開だった。
どちらにもチャンスが訪れないまま試合は後半追加タイムに。そんななかで終盤に絶好機を作り出したのは韓国。CKのカウンターから3人に囲まれたソンがヒチャンに股抜きでラストパス。これをヒチャンが決めてリードを奪う。
韓国のゴールとソンのアシストは見事だったが、ポルトガルがそもそもなんでそんなにズルズルと一発で自陣まで下げられるようなリスク管理をしていたのかは不思議。自分がウルグアイ人ならばポルトガルに恨み言の一つでも言いたくなるだろう。
試合はそのまま終了。他会場の結果を持って韓国は逆転でのノックアウトラウンド進出が決定。頼りになるプレミアコンビが後半追加タイムに引き寄せた勝利で最下位から生還することに成功した。
試合結果
2022.12.2
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第3節
韓国 2-1 ポルトガル
エデュケーション・シティ・スタジアム
【得点者】
KOR:27′ ヨングォン, 90+1′ ヒチャン
POR:5′ オルタ
主審:ファクンド・テージョ
Round 16 ブラジル戦
■韓国のプレスがブラジルに火をつける
カメルーンに意地の一発は喰らったものの、依然として優勝候補の最有力と言っていいブラジル。ジェズス、テレスとメンバーの離脱が出てきたのは気がかりではあるが、ネイマールの復帰は彼らにとっては何よりも朗報だろう。
一方の韓国は後半追加タイムの勝ち越し弾でラスト1枠を最後の最後で強奪に成功。劇的な初勝利で逆転でグループステージの突破を決めてみせた。
韓国のプランは4-4-2。ソンを中央に移し、左サイドでは逆転突破の立役者になったファン・ヒチャンが今大会初先発を飾った。韓国のプランは良くも悪くも普通だった。2トップは中盤のパケタ、カゼミーロを後方に受け渡しながらバックラインにプレスにいく形を採用した。
ブラジルはこれに対してミリトンがCBとフラットに立つ片上げ型の3バックで後方に人数を確保しつつ韓国のプレスをいなしていく。この試合のブラジルは立ち上がりから行くぞ!という雰囲気はそこまで感じなかったのだけど、韓国のスタンスが前プレも捨てない4-4-2だったことがブラジルがプレス回避を伴いながら加速していく流れを誘発したように見えた。
バックラインは後方のプレスを引きつけつつサイドに大きく展開。ヴィニシウス、ラフィーニャの両翼にボールを預けることができればそこを前進の起点にすることができる。中央にはネイマールもおり盤石。韓国のプレッシングがハマる気配は皆無だったと言えるだろう。
そうした状況で先制点の起点となったのはラフィーニャ。右サイドに引き寄せた韓国の選手を一網打尽に切り裂いて、逆サイドで待ち受けていたヴィニシウスにラストパス。コースが開くのを待っていたかのように狙い澄ましたコントロールショットで先制点を奪い取る。
2点目はPKから。チョン・ウヨンの大きなキックモーションに入り込むように入り込んだリシャルリソンがファウルを獲得。個人的には取る必要はなかったように思えたが、審判はペナルティスポットを指差した。これをネイマールが決めてブラジルは追加点。直前に日本のPKを見ていただけに、キム・スンギュを完全に上回っていたネイマールの駆け引きは非常に印象に残るものだった。
正面からぶつかった結果、実質10分強で試合の決着はついてしまったと言えるだろう。韓国はグループHでどのチーム相手にも結構互角に組みながらやれていたことで、極端なプランをグループステージで敷いてこなかったのは痛かったかもしれない。ともすれば、ポルトガル戦よりも前がかりな姿勢であっという間に終戦してしまった印象だ。
精神的に余裕ができてくるとイキイキしてくるのはリシャルリソン。敵陣でのリフティングから時間を作ると、自らPA内に侵入しゴールを決めてみせる。相手をおちょくる余裕がある時のリシャルリソンは有能である。
韓国の前進はここまで見たように背負う選手+落としを拾う選手の連携で設計されている。しかしながら、ブラジルの後方の押し上げを前にあっという間に囲まれてしまう。前進のメカニズムはほとんと機能せず、韓国のアタッカーはブラジルにことごとく潰されてしまう。裏を狙ってはブラジルのラインコントロールにひっかかりことごとくオフサイドになってしまう。
意地を見せたと言えるのはファン・ヒチャン。左サイドからの強引なカットインでなんとかフィニッシュまで持っていく動きを見せていた。とはいえ、ブラジルのゴールに届くには遥か遠く、韓国は得点の匂いがしなかった。前半のうちにブラジルはパケタのゴールで4点差に。試合を完全決着させた状態でハーフタイムを迎える。
後半、韓国はプレッシングからテンポを掴み直そうとするが、ブラジルのプレス回避は後半もサビつかず。ここまで追い込めばいけるのでは?というところからひっくり返すスキルは流石である。
60分も過ぎればブラジルはプレッシングのテンポを下げてリズムを調節。韓国はボールを持ちながら敵陣に攻め込むことを許される。アタッキングサードにおけるポストで前を向かせる状況も作れるように。ソンが徐々に存在感を取り戻してきた後半だった。韓国はセットプレーからのミドルシュートで意地の一撃。一矢報いて見せる。
緩んだまま試合を終わらせることを嫌がったのか、チッチは交代選手で再度プレスを敢行する。次のラウンドを見据えた引き締めで再び韓国から主導権を取り上げてみせた。
更なる追加点を奪う事は敵わなかったがペースを落としてのベスト8は悪くないだろう。ブラジルが韓国を一蹴し、クロアチアが待つ準々決勝に駒を進めた。
あとがき
ブラジルは圧倒的だった。そちらがテンポをあげるならあげますけど?と言った形でエンジンを入れると韓国を粉砕。遊び心あるキープに当たり前のプレーを高速で繋げながら具現化させる形は唯一無二である。底を見せるのはまだ先。強豪ぞろいのベスト8でもブラジルはやはり本命と言える存在だ。
本文中でも述べたが韓国は正面衝突しすぎてしまった感がある。とはいえ、引いて受けても完全粉砕の可能性もあったので、この敗戦をどのように納得感を持って受け止められたかは気になるところ。それでもグループステージの戦い方は胸を張れるもの。このラウンドで敗れたのは残念ではあるが、顔を上げて帰国して欲しいところだ。
試合結果
2022.12.5
FIFA World Cup QATAR 2022
Round 16
ブラジル 4-1 韓国
スタジアム974
【得点者】
BRA:7′ ヴィニシウス, 13′(PK) ネイマール, 29′ リシャルリソン, 36′ パケタ
KOR:76′ スンホ
主審:クレマン・トゥルパン
総括
■ギリギリだったグループステージ突破が生んだテスト不足
初戦のウルグアイ戦は寝技に持ち込まれてのスコアレスドロー。続くガーナ戦ではキム・ジンスのオーバーラップから今大会のアイドルであるチョ・ギュソンへのクロスで2点のビハインドを一気に埋めて見せるも、ガーナに再び勝ち越しを許しての敗戦。
追い込まれたポルトガル戦では勝利のみが突破の要件。後半追加タイムのファン・ヒチャンのゴールで重かったノックアウトラウンドへの扉を開くまでは、韓国はこの大会でリードを奪ったことが一度もないほど苦しい状況でグループステージの突破を決めた。
実際のスコアの推移はともかくとして、3試合共通でいえるのは韓国は非常に「普通」に各大陸の猛者たちと渡り合っていたということである。フィジカルでの当たり負けもしないで立ち向かうことができるというのは日本、オーストラリアも含めアジアからグループステージを突破した3チームの共通点だ。
そのアジアの2チームに比べれば韓国の得意な局面はバランスが取れている。保持も苦にしないし、フォーメーションを変えながら敵陣に迫っていくという部分に関しては日本やオーストラリアに比べればスムーズである。アタッキングサードにおける仕上げには不満があったが、その部分を突き詰められている代表チームの少なさを考えれば受け入れられる部分だろう。
一方でどの局面でも問題なくやれた!というグループステージでの手ごたえがブラジル戦では裏目に出た感じであった。結局、普段通りで4-4-2でプレスをかけたことがブラジルの尾っぽを踏んでしまい、前半からあっという間に決着を付けられる一方的な展開の呼び水になったのは否めない。
このあたりはグループステージの使い方も含めた議論にはなりうる。先に示した通り、韓国がグループステージを通してリードを得たのはポルトガル戦の終盤数分のみ。ブラジル戦に向けたオプションとして誰しもが考える「引きこもって守り切る」というプランを全くテストできる状況じゃなかったのは不運であった。
無論、そうした戦い方を選択したからといってブラジル相手に健闘できたかといえるとそういうわけではないだろう。ただ、グループステージからそうしたプランのテストができなかったのが戦いの幅を狭めた可能性もまた否定できない。
Pick up player:チョ・ギュソン
ガーナ戦での2得点のインパクトは十分。韓国らしさを世界に知らしめるヘディングは彼自身の欧州の扉を開くものになるかもしれない。