スローだと落ちつかない
立ち上がりに勢いを見せたのは最下位のサウサンプトンの方だった。ウルブスのバックラインに対して力強いプレッシングを仕掛ける。5-3-2では手薄になりやすいサイドにおいてもWBが出て行くことで高い位置から塞ぐ意思を見せる。
ボールを奪った後はラビアを軸に素早く縦に進撃。押し込む機会を増やしつつ、セットプレーからあわやというシーンを作って見せた。
5分経過したくらいでウルブスはサウサンプトンのプレッシングに慣れた感じがあった。レミナ、ネベスの位置を下げて最終ラインの数を増やし、サウサンプトンの2トップが追いかけまわすべきターゲットを増やす。ボールはサイドからの裏を狙う形で安全に敵陣深くまで運んでいく形である。
幅を使うポゼッションをすることにより、まずウルブスはサウサンプトンの1列目のプレスを越えることができる。2列目となる3センターが出てくれば積極的にサイドチェンジを行い、3センターの届かない位置にボールを運ぶ。
保持でロジック重視の解決策を見せるウルブスに対して、サウサンプトンは強度重視。こうした展開をされる前にボールを奪い、縦に早く動かしていく。異なる理念でぶつかり合う両チームだったが、先制したのはサウサンプトン。プローが受けたファウルからセットプレーでアルカラスが押し込んで先制。
さらに、ウルブスは3分後におそらく抗議により2枚目の警告を受けたレミナが退場。1点のビハインドを背負いながら10人での残り時間の戦いを強いられることになる。4-3-2へのシフトを選んだウルブスは序盤に見せたような幅を使うポゼッションが消滅。保持で落ち着くのが難しくなる。
苦しい状況になったウルブスだが、幸運だったのはサウサンプトンが試合を制御する術を持ち合わせていなかったことである。リードを奪い、1人多い状況というのは試合をコントロールするのに適した条件といえるのだが、強度で押していくサウサンプトンにとって、テンポを落としてプレーすることはむしろ戸惑いが生まれるものだった。
プレスにどこまでいったらいいかという迷いをかけながら時計の針を進めるサウサンプトン。後半はウォード=プラウズのセットプレーなど、さらなる追加点の匂いがする展開を作れており、悩みつつも何とか試合を運ぶことができていた。
ウルブスは4-4-1にシフトし、何はともあれサイドを広く使うことを優先したようだった。膠着状態が後半に入ってもしばらく続いたが、右サイドのトラオレから徐々に打開策を見つけていく。
トラオレに押し込まれることでどこまで出て行けるかが完全にわからなくなったサウサンプトンは自陣での時間が増える。ラインを上げよう!としたところでウルブスが的確に裏抜けを挟んでくるのがニクイ。サウサンプトンの即興性が高いバックラインはこのウルブスの裏抜けについていけないシーンが目立った。
左右から押し込まれたサウサンプトンは72分にベドナレクがオウンゴール。相手のボールを処理しきれずにゴールネットを揺らしてしまう。すると85分にはサウサンプトンの味方同士の衝突からこぼれ球を拾ったゴメスが貴重な勝ち越し弾を手にする。
10人ながら保持から解決策を見出したウルブス。逆に相手の数的不利と先制点を生かせなかったサウサンプトンはこれがネイサン・ジョーンズ監督のラストマッチとなってしまった。
ひとこと
冬の補強も積極的に動き回った分、伸びしろはあるサウサンプトン。時間がなく、ライバルも強力という難しい状況で残留争いをどの指揮官に託すのか注目である。
試合結果
2023.2.11
プレミアリーグ 第23節
サウサンプトン 1-2 ウォルバーハンプトン
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:24′ アルカラス
WOL:72′ ベドナレク(OG), 87′ ゴメス
主審:ジャレット・ジレット