3人でゴールの鍵をこじ開ける
グループHの第3節。ベンフィカのホームにパリ・サンジェルマンを迎えるという注目度が高い一戦である。ボールを持つのはパリ・サンジェルマン。GK、CB3枚とヴェッラッティがビルドアップ隊として顔をだす。CHの相方であるヴィチーニャはあまりボールに関与せず、高い位置を取ることが多かった。
ベンフィカは4-4-2でガッチリとブロックを組む形である。基本的にはビルドアップ隊にボールを持つことを許容するが、サイドにボールを追い込めると判断した時は一気に閉じ込めていく形で圧縮をかけていく。この状況においてはベンフィカは逆サイドがスカスカ。よって、パリは広い方向に脱出できるかという勝負を仕掛けられている。
パリはライン間にボールを入れる形も残している感じ。むしろ、こちらが本丸というイメージも。狭いエリアを狭いまま攻略しようとしているので、あまり多くの工夫がされているようには見えないが、ムバッペ、ネイマール、メッシの3人のうちの1人がこのエリアで前を向くことができれば一気にチャンスになるから恐ろしい。先制点のシーンはこの3人がボールを持った瞬間にスイッチが入り、いつの間にかメッシが点を取っていたという感覚。まるでバスケみたいに簡単に点を取る人たちである。
しかし、ベンフィカにもチャンスがないわけではなかった。裏のスペースを前線の4枚でひたすら走り回るという形ではあるが、結構これが効いていた。特にWBの背後を利用してサイドから押し下げる形は有効である。
パリの守備はネイマールが下がる5-3-2のような形でコンパクトな陣形でミドルブロックを敷く。気になったのは前線がホルダーのプレッシングにほぼ無頓着だったこと。ムバッペとメッシなので当然と言えば当然なのだけど、ホルダーがフリーのハイラインというのは原則には反している感がある。
ベンフィカはブロックの外から攻撃はやりたい方だった。先にあげた裏を狙う動きもそうだし、大外からのクロスもそう。中に入り切ることはできなかったベンフィカだが、大外からのクロスをきっかけにオウンゴールを誘発し、前半の内に同点に追いつくことに成功する。
後半は両チームとも前半よりはプレスをかけることで攻守の切り替えが多い展開となった。ベンフィカの裏抜けがパリのバックラインにきっちり捕まる機会が多かった分、どちらかといえばパリにペースが流れた時間帯だったと言えるかもしれない。
例の3人がスイッチを入れる攻撃は終盤も健在であり、一気にスイッチを入れる形を作られるとベンフィカは厳しい。少しでもライン間のスペースはコンパクトに保ちながら守り切りたいところだが、降りていくネイマールは無視しにくいのだから、彼が動けば動かざるを得ないのは理解ができる。
彼ら3人が揃っているメリットが一瞬の魔法であることは間違いない。だが、同点の80分で低い位置におりた自らのロストを追わないメッシもまた彼らならではという感じ。表と裏のようなことがパリ・サンジェルマンには溢れているように思えた。
最後まで決め手を見つけられなかった両チーム。試合は1-1のドローで決着。勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
ベンフィカもいいチームだったけど、やはりパリの尖り方には目がいく。どこまでいけるのか気になるところである。
試合結果
2022.10.5
UEFAチャンピオンズリーグ
Group H 第3節
ベンフィカ 1-1 パリ・サンジェルマン
エスタディオ・ダ・ルス
【得点者】
BEN:41′ ダニーロ(OG)
PSG:22′ メッシ
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ