Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第1節
2023.2.17
川崎フロンターレ(昨季2位/20勝6分8敗/勝ち点66/得点65/失点42)
×
横浜F・マリノス(昨季1位/20勝8分6敗/勝ち点68/得点65/失点35)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近5年間で川崎の5勝、横浜FMの2勝、引き分けが3つ。
川崎ホームでの戦績
直近10戦で川崎の6勝、横浜FMの3勝、引き分けが1つ。
Head-to-head
- 横浜FMは直近6試合の川崎戦で1勝のみ(D1,L4)。
- 直近5試合はいずれもホームチームが勝ち点を得ているカード。
- 直近8回の対戦でどちらかのチームがクリーンシートを達成したのは1回だけ。
- 2021年の開幕戦で川崎が横浜FMを完封している。
- 等々力でのリーグ戦は直近7戦で川崎の6勝。
- 川崎はいずれも複数得点を挙げており、敗れた2019年だけは1得点だった。
- 開幕戦での対戦は過去に2回。等々力で1回、日産で1回開催されておりどちらも川崎が勝利。
- 直近では2年前の等々力開催で、家長昭博が2ゴールを決めて川崎の勝利。
スカッド情報
- レアンドロ・ダミアンは右足関節の手術の影響で離脱中。
- 小林悠は左足の負傷で離脱。
- 家長昭博は左足関節の外側靭帯を損傷していたが、全体練習には復帰。
- 小池龍太は右膝蓋骨脱臼で欠場。
- 右膝前十字靭帯断裂の宮市亮はすでにトレーニングには復帰しているが、開幕戦は欠場。
予想スタメン
Match facts
- 開幕戦は直近9年間無敗(W6,D3)
- ホームでの開幕戦はここ2年連勝中だが、それ以前の8年間は未勝利だった。
- 開幕戦は直近7年間クリーンシート。
- チョン・ソンリョンの加入時期と一致している。
- ただし、最後に開幕戦で失点したのは2015年の横浜FM戦。
- 横浜FM戦での川崎の最多得点者は上から順に家長昭博、小林悠、レアンドロ・ダミアン。
- 全員欠場の可能性がある。
- 前年度の王者とのリーグ戦は7連勝中。
- 2020年にも横浜FMにダブルを達成している。
- 昨シーズンの最多得点チームであり、名古屋と並んでも最少失点チームでもある。
- 前回の優勝の翌年のシーズンである2020年の成績は9位に終わっている。
- 開幕戦は直近3年間勝利がない(D2,L1)。
- 直近2回の優勝したシーズンはいずれも川崎にリーグ戦で勝利を挙げている。
- 直近3回の川崎のリーグ優勝は全て横浜FMが川崎に勝てていない年。
- リーグでのアウェイゲームは直近4戦負けなし。最後に敗れたのは8月の等々力。
- オビ・パウエル・オビンナはここまでJ1リーグに7試合出場。4勝1分2敗。
- 敗れた2つの試合はいずれも川崎戦。
予習
FUJIFILM SUPER CUP 甲府戦
展望
ついていく匙加減
自分のチームが昨シーズンノンタイトルで終わった時あるあるとして「スーパーカップに出れないから開幕戦のプレビュー書くことがない」というきっと一部の層しか刺さらないものがある。だが、幸運なことに2019年の開幕戦からプレビューを書き始めた自分はここまでこの苦悩とは無縁の人生を送っている。
まず、何よりも川崎がたくさんリーグを取ってくれているというのが大きい。ありがとう川崎。ナイス優勝川崎。その上で前年度にリーグと天皇杯を逃してしまった2020年は開幕戦の前にルヴァンカップのグループステージがあるという幸運があった。
その2020年と同じくスーパーカップの出場が出来なかった今年、またしても自分は幸運に恵まれそうである。対戦の横浜FMがスーパーカップに出場してくれているのである。命拾いである。
というわけでまずはスーパーカップの横浜FMの振る舞いを振り返っていこう。基本的なシステムは4バックだった。ただし、小池龍太や松原健がフィットしていない右のSBは非常事態である。そのため、スーパーカップでスタメン起用された上島のRSBという運用はシーズンを見据えたものというよりは、当座をしのぐための応急措置的な側面が強いといえるだろう。
CBの色が濃い上島が右のSBに吐いたことで、左右のSBにはタスクの差が表れていた。左の永戸はビルドアップに関与せず、一列前に入り込むことが多かった。その一方で右の上島は最終ラインに入りながらビルドアップに関与する。
こう説明すると3-2-5?と思われそうなものである。だが、CBの位置は左右対称となっているため、4バックのベースを維持しつつ左右のSBの働きに差をつけたとみるのが正しいように思う。
立ち上がりの甲府はこの横浜FMの変化にあまりこだわる様子はなかったため、ライン間の狭いスペースに閉じ込められた永戸は序盤はあまり出番がなかった。その状況を見て動き出したのは横浜FMのCHの2人である。渡辺は永戸がいない中央のやや左のスペースに降りて、喜田はやや右に流れながらフリーになる立ち位置探しを行う。
まず、トリガーとして重要なのは渡辺の降りる動きである。これによって甲府の中盤は釣りだされてしまい、中盤にはスペースが作られることになった。コンパクトな陣形を維持できなければ横浜FMの選手たちがそうしたスペースに侵入するのはお手の物といえるだろう。後半に結成された外国人ユニットも含めて、ここの部分はチームとしての共通認識が機能している。誰がどこを使うかの画の共有は見事である。ちなみにライン間に入った永戸はアタッキングサードに入ることができたフェーズで収支がプラスに変化することとなった。
横浜FMの攻撃はこのように1人逃がしたところから穴を連鎖的に攻撃してくる。1人でも逃すと次を延々と狙ってくるチーム。ライン間に固執するだけでなく、きっちり裏のスペースを狙っているのもこのチームの厄介なところ。特に西村は状況に応じて適切な動き出しが出来ており、目を離せばゴールに迫る決定的な仕事ができる存在である。
まだ開幕直後ということもあるだろうがプレッシングはそこまで強引に仕掛けることはなく、甲府のバックラインは落ち着いてボールを持ちながら動かすことが出来ていた。今季は川崎のビルドアップに不透明な部分もあり、同じように慎重策を敷いてきてもおかしくはない。一応ここでは横浜FMはミドルプレスをベースとした4-4-2というフォーメーションを予想しておくが、川崎としては横浜FMがよりプレス色が強い出方で来ても対応できるようにしておきたい。
3-2-5の意義とは
先に川崎の狙い目の話を済ましておこう。ポジトラのキーになりそうなのは変形の大きい永戸のサイド。このスペースを素早く狙えれば、最短で敵陣深くまで進むことができる。
プレッシングは降りていく選手たちや移動する選手たちをどこまで捕まえに行くか。具体的には最終ラインに落ちる渡辺とサイドに流れる喜田である。1人がついていくのならば後続もきっちりとついていくことがプレスにおいては重要である。1人は出て行くが、後続が続かない!だと甲府のような中盤に間延びしたスペースが出来てしまう。
プレスに出て行くならばはっきりと出て行くことが大事。そうなると例年通りに広い範囲をカバーする川崎のバックスと横浜FMの2列目より前のデュエルが大きく局面を分けることとなる。谷口不在でこのマッチアップで優位を取れない!と判断すれば、素早く異なるプランに移行する必要も出てくる可能性がある。迎撃という観点で車屋の出来が大きなキーポイントになることは間違いない。
ここからは情報が少ないながらもちらほら聞こえて来た川崎の今季を予測していく。川崎のビルドアップのキーワードで出て来たのは「シティ化」というもの。当然、川崎はシティではないので丸々コピーできるとは思っていないが、これ以外にろくに情報がないのだからこれを基にするよりも仕方がないだろう。
あくまでシティをベースに川崎のスカッドに当てはめるという強引な形になるので、いつも以上に不確定要素が多い内容になる。ご容赦いただきたい。
シティ式のビルドアップの肝は外か内か?の選択肢を相手につきつけることである。インサイドに絞るSBは紛れもなく中央の起点を増やすための働きになるだろう、その上で、同サイドのSHについてくるか?来ないかの2択を迫ることができる。
SBが内側に絞る分、外側を捨てていいとなってしまえば、守備側からするとインサイドを固めればOKとなってしまう。よって、保持側は外側にも脅威を付けつけないといけない。
CBが広く距離を取ることが重要である。サイドライン付近まで大きく広がることで大外のレーンを彼らが使う。こうすることで相手は背中を消しながらプレスをかけることが難しくなる。プレスに来るのであれば、きっちり1枚を相手に割かせる。これもポイントだ。
全員にマンツーに来てもらえれば間延びした陣形が期待できるが、局在的にプレスを動員するやり方をするも可能。エスケープのための逆サイドの大きな展開での緊急脱出は備えておきたい技術だ。
外レーンで仕事ができるかどうかについては登里や車屋は全く心配ないだろう。ジェジエウがこのポジションに入りならば少しは心配である。しかしながら、CBやGKの足元やビルドアップのスキルは後天的に伸びる能力だと思っている。キックが年々うまくなるソンリョンのように期待したい。
また大外のレーンはWGにも負荷がかかる。SBのヘルプはこれまでのフォーメーションに比べるとて薄くなりがち。そのため、WGには自ら上下動することが許されることが多い。
特にインサイドに絞るSBに相手のWGやSHがついていった際には、彼らが空けた穴を活用する必要がある。要は相手が使わないスペースを使える老獪さが重要なのである。
3-2-5の問題点として指摘できるのは誰がどこのレーンに入るかが固定されてしまい、相手から対応されやすいことである。ビルドアップで安定感がある形である一方で、ただその位置に立っているだけではアタッキングサードで変化はやや付けにくい。三笘のようなWGがいればそれでもいいが、そうでないならば工夫をする必要がある。
予定調和を乱す不確定要素を作るには中盤やSBポジションから人が出て行く必要がある。ビルドアップ隊の中心である3-2から人が出て行って高い位置の3人目としての動きができれば、サイド攻撃にも流動性ができるだろう。
この役として最も適任なのはおそらく山根。サイドでの3人目としての動きと激しい上下動を両立できる山根は中央でのビルドアップ参加とサイドでの崩しの参加の両方を担うことができるだろう。
橘田や登里など後方の選手にどこまで上がっていくかの自由度を与えるかで不確定要素の量は変化する。多い方が相手は対応は難しくなる。
しかしながら、後方を厚くする3-2-5を採用する意義は川崎側のカウンター対応の側面もあるだろう。2人で広範囲をカバーできる谷ジェジコンビは昨年をもって解散。その分のカウンター対応を枚数で確保しようと考えるのであれば、前方に人を送り込むほどカウンターの対応の強度は弱まる。ましてやライン間を使うのがバカうまな横浜FMであれば、こうした欠陥は見逃してくれないだろう。
シティ化だ、3-2-5だと一口に言ってもどこまでの自由度を与えられるかによって大きく違う。結局は試合を見ないとわからないのである。横浜FMに勝つという観点で考えると、自由度の調整を試合の中で見極められるかは重要なポイントになる。前年王者に通用する部分を見つけて、新しい取り組みの意義を確立する開幕戦にしたい。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)