強度あるプレスを掻い潜ったCHがもたらした同点弾
グループEの初戦。本命視されるチェルシーの2番手争いと目されるザルツブルクとミランの直接対決である。
試合は非常にテンションの高い入りであった。このテンポを牽引していたのはザルツブルク。レッドブル印のイメージ通りの高い位置からのプレスと、奪った後の縦への鋭さでミランを慌てさせる。
ミランはひとまずこのプレスをやり過ごす必要があった。有効打になったのは逆サイドへの展開。4-3-1-2で同サイドに圧縮してくるというメカニズム上、ザルツブルクのプレッシングは逆サイドに大きな穴が開いている。こちらのサイドにボールを届けることができれば、ミランはスムーズに前進ができる。
もしくはボールを運べるCHにスペースができてもOK。ベナセル、トナーリの両選手は前にスペースさえあれば、敵陣まで侵攻ができる。ミランはこの2人にボールを渡す形でもプレスを回避することができていた。この両CHは行動範囲を広げながらボールを受けに動き回っており、ザルツブルクが張っている網をいかにしてすり抜けるかを考えていたように見えた。
しかしながら、ザルツブルクの強度は徐々にミランを飲み込んでいく。ボールサイドとゴール前に集中的に人数をかけるいわゆるオーバーロードを採用したザルツブルクの攻めにミランはやや戸惑っている様子だった。攻撃の圧力に屈するようにミランは失点。カルルを叩きのめしたオカフォーが先制ゴールを奪うことに成功する。
だが、ミランも自分たちのメソッドで追いつくことに成功する。中盤でボールを運ぶことに成功したベナセルからレオンにこの試合で最もいい形でボールが入ると、引き取ったレオンはファーサイドにラストパス。これをサレマーカーズが冷静に決めて前半の内に追いつく。CHが前を向くというミランの形から同点ゴールを決めて見せた。
後半もハイプレスでスタートしたザルツブルクだったが、時間の経過とともにその勢いはトーンダウン。徐々にオフザボールの動きも消えていき、相手を閉じ込めるようなハイプレスも鳴りを潜めるように。ホルダーに選択肢を与えられなくなったパスワークは速度が減少。余裕のないパス選択からミスを連発することでザルツブルクはリズムを手放していた。
対するミランも密集地帯のコンビネーションという前半とはややテイストの異なるボールの動かし方が見られるようにはなったが、こちらはバックラインがクリーンにボールを奪い取れないせいでリズムがぶつ切りに。前半よりはザルツブルクは明らかにスピード感が落ちていたが、それでなおファウルを犯してしまうのは残念だった。
試合の主導権は時間ごとにお互いのチームに流れてこそいたが、どちらのチームが攻めていても決定機が少ない状態に変化はなし。後半は保持面で輝きを見せられなかった両チームが攻めあぐねるやや寂しい内容になってしまった。
ひとこと
いわゆるストーミング気質のチームといえるザルツブルクだが、勝負をかけた前半でリードを取れなかったのが痛恨。逆にミランは自分たちのペースを守りながら追いつけるという試合運びのしたたかさを見せた。
試合結果
2022.9.6
UEFAチャンピオンズリーグ
Group E 第1節
ザルツブルク 1-1 ミラン
スタディオン・ザルツブルク
【得点者】
SAL:28‘ オカフォー
MIL:40’ サレマーカーズ
主審:スルジャン・ヨバノビッチ