ありがたくない凱旋
マウリシオ・サッリのサンパオロ帰還となったこの試合は非常に見ごたえのある一戦だった。ここまで押せ押せで来ているナポリがラツィオに対してのプレスで慎重な姿勢を見せたのにはスパレッティのサッリへのリスペクトを感じる。
その分、互いに厳しいプロテクトをかけるのは中盤である。この中盤に対する解決策にはそれぞれのチームのカラーが出ていたといえるだろう。ラツィオは移動と中央への絞りでポイントを増やす方策を取る。ベシーノと入れ替わるようにルイス・アルベルトはアンカーのポジションに入っていたし、フェリペ・アンデルソンはRWGというベースポジションからインサイドに絞るように振る舞うことでナポリのポイントをずらすように試みていた。
ラツィオは中盤を徹底的につなぐことでナポリの中盤を攻略にトライ。大きな展開は後回しにして、とりあえずつなぐことを優先していた。
ナポリの保持はラツィオの中盤に対して、外への起点を作ることで広げるトライに取り組んでいた。クワラツヘリアを軸にした左サイドの攻撃から壊すという王道パターンの形でスタートする。
だが、大外ではクワラツヘリアが厳しいマークに遭っていたため、徐々に中盤でも工夫が見られるように。ディ・ロレンツォがインサイドの攻撃に関与したり、IHの上下動以外のポジションをズラしながらの動きも増やしており、大外の武器以外の部分でも戦おうとしていた。
ボールを失ったときのプレスの精度を加味すると、優位に立っていたのはナポリの方だった。ただ、この日のナポリはやり直しや動きだしを見計らうようなプレーが少なく、いい形でエリア内にボールを運ぶことができない。大外のWG基準にSBが突撃していく形はいつも通りではあるが、ラツィオの守備ブロックの予想を上回らない形での突撃になってしまう。
60分を過ぎたころからボールを持てるようになったラツィオ。シュートまで持っていける機会は少なかったが、67分にベシーノのミドルで突然試合を動かすことに成功。ナポリはクワラツヘリアのヘッドの方向がプレゼントにつながってしまったことと、中盤がポジションを取り直すことをサボったツケをきっちり払わされることとなった。
選手交代からカウンターに出たいナポリ。だが、交代で入ったエルマスはカウンターにおける選択が微妙でチームを後押しすることができない。急ぎすぎて手前を使えないというこの日のナポリの悪い部分はビハインドで増長された感があり、焦れば焦るほどあっさりとボールを失う回数が増えていく。
ラツィオは終盤の試合運びはばっちり。自陣でのプロテクトはもちろんのこと、カウンターからの反撃も見せることも。王者を苦しめた確かな手ごたえと大きな勝ち点3を手に入れたラツィオ。サン・パオロのファンにとってはありがたくないサッリの凱旋となってしまった。
ひとこと
勢いがいいチームが1つずつ「あれ?」となっていき、相手に粘り切られる姿はよく見る光景である。攻守に我慢を続けたラツィオを褒めたい試合だ。
試合結果
2023.3.3
セリエA 第25節
ナポリ 0-1 ラツィオ
スタディオ・サン・パオロ
【得点者】
LAZ:67‘ ベシーノ
主審:ルカ・パイレッロ