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「Catch up 日本代表」~2023.3.24 キリンチャレンジカップ 日本×ウルグアイ ハイライトレビュー

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レビュー

例外を活用する前進

 「2026年への再スタート」というフレーズは富士フィルムスーパーカップの中継でも使われていた気もするが、このキリンチャレンジカップこそがしっくりくるフレーズと言えるように思う。3年後を見据えての代表の初陣はウルグアイを迎えてのフレンドリーマッチからだ。

 立ち上がりはフォーメーションの構造的特徴を全面に押し出した展開だったと言えるだろう。中盤は3枚同士でガッチリとマンツー。サイドにはある程度ついて行きつつ、CBは放置。どちらのチームも中盤とサイドはマンツー色が濃い状態となった。

 となれば、保持側がどう出るかがまずは問われることになる。まったりと保持しながらズレを作るポイントを探すか、トランジッションから相手が守備の原則を守れない状態になっているところを一気に襲撃するか。2分の三笘のドリブルはまさしく後者の代表例と言えるだろう。

 保持に回ったチームは工夫を始めることになる。日本は遠藤が最終ラインに落ちて3枚になる形、菅原や伊藤がインサイドに絞ったり、鎌田が降りるアクションもこれに含めていいだろう。ウルグアイが人重視の守り方になっているポジションの選手が動き出しながら、相手に対してどこまでついてくるかを問いかけていく流れに突入する。

 ウルグアイも保持に回った際にはアクションを増やす。ベシーノが降りての3バック化、オリベイラのインサイドに絞る動き、ロッシの降りるアクション。左の遠藤の前あたりのスペースを集中的に狙っていた節はあるが、相手を動かそうという大雑把なベクトルは日本と似たものだったと言えるだろう。

 ということで次は非保持側のチームがどのように振る舞うかが問われるターンになる。ウルグアイは守備に回った際には基本的には移動を受け渡しへの対応に切り替え、味方とボールの位置で守備の配置を決める4-4-2ゾーン色が強い形に変質していく。

 しかしながらウルグアイの守備には例外があった。それはサイドの守備。WGの降りていく動きに対して、ウルグアイのSBがかなりついていく動きが強いのである。真っ先にこの動きを利用していたのは左のSBの伊藤。三笘にゴンザレスがついていくのを狙い、三笘を追い越す形でフリーでボールを持つことに成功する。

 伊藤のこのアクションはかなり再現性を持って行われていた。伊藤にフリーで持ち上がられるリスクを許容してでも三笘をフリーにするわけにはいかないという意識はあったのかもしれない。いずれにしても三笘への守備対応はウルグアイの例外のようにも思えた。

 この動きは時間の経過とともに日本の右サイドでも見られるようになった。堂安の動きにオリベイラがついていくことで、菅原がオーバーラップするスペースが生まれるようになる。

 上がってくる日本のSBに対して、ウルグアイが早めに対応すればいいのでは?と思うかもしれない。だが、ウルグアイがそのアクションを起こす邪魔していたのがCFの浅野である。上がってくる日本のSBをウルグアイのSBが加速する前に潰しに行けば、浅野がサイドを狙う形でCB-SB間から裏に抜けていく。

 よって、ウルグアイのSBは背後を走る浅野を使われるリスクを許容して日本のSBを潰しに行くか、後方から加速してきた日本のSBと対峙するかの2択を突きつけられることに。浅野の特性、WGの人を惹きつける力、SBのオフザボールの動きをミックスさせた面白い選択の突きつけ方が日本はできていたように思う。

 日本の守備はウルグアイと比べるとまだ人基準の要素が残っていたが、こちらもベースは4-4-2。試合は序盤以降はボール保持側がまったりと過ごすトランジッション色が薄い展開になっていた。対人要素が強く残されている中で日本は代表経験が少ないバックラインの選手たちの対人強度が試される前半になった。菅原と瀬古がこの部分でほぼ問題ない対応を見せたのは今後を見据えても心強い。

 ペースとしてはやや日本寄りのようにも思えたが、先制点を奪ったのはウルグアイだった。右のWGのペリストリとCFのゴメスがサイドに流れるアクションから三笘と伊藤のサイドをつっついたことで遠藤がカバーに引っ張り出されることになる。その遠藤が空けた場所に入り込んだのがバルベルデ。相手が動かされたのを見逃さなかったバルベルデのミドルと跳ね返りを押し込むシュートでウルグアイは先手を取る。

 相手を動かす、動いたスペースを利用するというところは前半の日本は比較的できていた。だが、それができていたのはゴールからまだ遠い箇所。サイドにできたスペースを中央にチャンスとして還元するという部分は物足りない。相手が動いたことを利用して、ゴールまで持っていくという部分で超一流のバルベルデが日本にゴールまでの道筋を教えた。そんな前半だったと言えるだろう。

別格の伊東とオープンな状況を引き起こす西村

 後半、ウルグアイは日本の保持に対して同サイドに追い込むようにプレッシャーをかける。プレッシャーの中でボールを前に運べますか?という前半と異なる問いかけをウルグアイは投げかける。日本はそれに戸惑いを見せる立ち上がりとなった。

 ウルグアイは保持でも狡猾。日本はこの試合を通して、ハイプレスが機能していた時間帯はなかったため、ウルグアイはゆったりとボールを持ちながら、日本が焦れてボールを刈りにきたタイミングでボールを動かせば敵陣に迫ることができた。

 そうなると、トランジッションからの三笘という形に日本のチャンスが集約されるのはある意味自然な流れのように思える。浅野へのチャンスメイクはさすがプレミアで大活躍しているだけのことはあるなと感じさせるものだった。

 後方からの前進は少し苦しいので、前線にどうにかしてくれそうな人をおこうというのはシンプルな流れである。よって、日本は伊東と上田を投入する。これにより、日本の攻撃には活路が見えることに。

 中でも右に入った伊東は別格。正対する形でボールを渡すだけで、縦への突破からウルグアイに下がりながらの対応をさせるのだから大したものである。コンビネーションから伊東がスピードに乗る場面を演出し、PK未遂の場面を作る助けをしたという点では上田も爪痕を残すことができたと言えるだろう。

 ただ、伊東の恩恵を最も受けたのは交代で投入された西村だった。右サイドからのラインのズレと上田がややサイドに流れることで中央に生まれたスペースに飛び込んで同点ゴールをゲット。相手を動いた矢印の先をフィニッシュに繋げるという前半に物足りなかった部分を見事に達成してみせた。

 西村は守備でも前からのプレスを積極的に行ったこと、日本は中盤より後方の負荷が高まったことによりウルグアイにチャンスが増えたことなど、試合は終盤にかけて再びオープンに。最大のチャンスはオリベイラのポストから前を向いたファクンド・トーレスだったが、これはポストに救われた。

 終盤はオープンになったが、西村のゴール以降は両チームに得点は生まれず。森保ジャパンの2026年に向けての初陣はドローで幕を閉じた。

ひとこと

 保持でやりたいことは見えたのは収穫。そして、相手がプレスの強度を上げた後半のような状況でそれが再現できなかったことが課題ということになるだろう。押し込まれる状態をなんとかしてみせた伊東は別格だったし、クローズな状態に終始していたウルグアイをゴールとプレスでオープンな状態に引き摺り出してきた西村も流れを変えるジョーカーとして存在感を示した一戦だったと言えるだろう。

試合結果

2023.3.24
キリンチャレンジカップ
日本 1-1 ウルグアイ
国立競技場
【得点者】
JPN:75′ 西村拓真
URU:38′ バルベルデ
主審:コ・ヒョンジン

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