Fixture
プレミアリーグ 第34節
2023.5.2
アーセナル(1位/23勝6分4敗/勝ち点75/得点78 失点38)
×
チェルシー(11位/10勝9分13敗/勝ち点39/得点30 失点35)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
過去の対戦成績
過去5年間の対戦でアーセナルの6勝、チェルシーの4勝、引き分けが1つ。
アーセナルホームでの成績
過去10回の対戦でアーセナルの4勝、チェルシーの3勝、引き分けが3つ。
Head-to-head from BBC sport
- アーセナルは2021年4月のエミレーツでの2-0での敗戦を除き、直近6試合のチェルシーとの公式戦で5勝。
- アーセナルは03-04年以来のチェルシー戦3連勝のチャンス。
スカッド情報
- 背中を負傷しているウィリアム・サリバはこの試合にもフィットしない。
- モハメド・エルネニー、冨安健洋は膝の怪我で長期離脱中。
- 膝を負傷していたカイ・ハフェルツはフィット。
- ハムストリングを負傷したカリドゥ・クリバリは評価予定だが、マーク・ククレジャ、リース・ジェームズ、メイソン・マウント、アーマンド・ブロヤは欠場。
Match facts from BBC sport
- 4試合リーグ戦で勝ちがない(D3,L1)。アルテタ政権での最も長い勝ちなしのストロークは2020年11-12月の7試合。
- 直近14試合のリーグ戦のうち、7試合でポイントを落としている。それ以前の19試合ではポイントを落としたのは3試合。
- 1985年の5月-8月以来の初めての5試合連続のリーグ戦の複数失点の可能性。
- 今季の11試合のロンドンダービーで9勝。残りの2つはドロー。
- ガブリエル・マルティネッリは22-23のプレミアで15ゴール。ロベルト・フィルミーノが17-18に記録したブラジル人のプレミア最多得点記録に並んでいる。
- フランク・ランパードの再登板後、公式戦5試合で全敗しており、6連敗だった1993年の10-11月以来最悪のストローク。
- 直近7試合の唯一の得点はブライトン戦のコナー・ギャラガーのディフレクトショット。
- ランパードは監督した直近15試合の公式戦で勝てておらず、直近6試合は負け。最後のプレミアでの勝利は10月のクリスタル・パレス戦。
- 32試合のリーグ戦で13敗。20チームになってからのプレミアでは97-98の15敗以来2番目に多い数字。
- ピエール・エメりク=オーバメヤンは11月6日のスタンフォード・ブリッジでのアーセナル戦を最後に、チェルシーの試合で先発を飾っていない。
予習
第31節 ブライトン戦
CL QF 2nd leg レアル・マドリー戦
第32節 ブレントフォード戦
予想スタメン
展望
スペシャリティの掛け合わせが理想系か
4試合のリーグ戦での未勝利。そして、直近のマンチェスター・シティ戦における敗戦で、アーセナルは実力的にも勝ち点的にもタイトルレースの主役を完全に明け渡してしまった感がある。今現在のアーセナルは間違いなく今季一番の苦境に立たされていると言える状況だ。
アーセナルにとってシーズンにおける苦しい状況をここ数年で跳ね返すきっかけになっていたのがチェルシー戦である。アーセナルはチェルシーをロイター板として、反攻態勢を整えることはもはやお馴染みになっている。
ただ、今回はいつものこのカードと様子が違う。というのは、相手のチェルシーの方がアーセナルに比べてもより深い沼に沈み込んでいるという状態なのである。
元々、つかみどころのないチームであるというのは大前提である。だが、2回の監督交代とその結果指揮をとっている監督がどうやら来季はトップチームにはいなそうという特殊な状況に追い込まれており、しかもその役目を担っているのがランパード。この現状はどれだけカオスを好む予言者であっても言い当てられる類のものではないだろう。
ランパード就任以降の5試合でチェルシーはここまで全敗。CLではレアル・マドリー相手に敗退と下馬評通りの苦戦を強いられている。フォーメーションやメンバー起用もここまではバラバラであり、ここ数試合の中から傾向を導き出すのはなかなか難しい作業となっている。
ビルドアップは4バックスタートでも3バックスタートでも、バックラインのうち2枚をGKを挟むように立たせる形で固定されている。ここは共通点と言えるだろう。ブレントフォード戦は3バックであったが、3バックの右を担当していたフォファナがSBのようなロールを担当していた。
中央ではエンソが高さを調整しながらサポートの位置を変えつつ、バックラインからのボールを引き出している。司令塔のところに彼を置くのはポッター政権から同じところ。というかここは監督によって代えられるような類の場所ではないとは思うが。
メンバー構成の中で大きいのはカンテとフォファナの復帰だろう。右サイドの持ち上がりをこなすことができるフォファナと前線への飛び出しと中盤でのフィルター機能を兼ね備えるカンテがいることで右サイドの機能性は少しずつ上がっているように見える。
大外には攻撃面を考えればアイソレーションで力を発揮することができる選手がいる方がベターか。ムドリク、スターリングなど大外から正対して仕掛けることができる選手の方がありがたいところ。ブレントフォード戦を見る限りはアスピリクエタだとちょっと寂しい。
CFには何を求めているかが分かりにくい。自分の見る目がないだけかもしれないが、どういう選手を優先して起用すべきかのところがぼんやりしているように見える。よって、攻撃における理想の形は見えずらい。
なので、チェルシーの理想の攻撃でビルドアップの段階で個人のスペシャリティを掛け合わせて、いかにスムーズにゴールに繋げていけるかにかかっているように思える。例えば、エンソの裏へのロブパスとCFの飛び出し。大外にピン留めした選手に合わせるハーフスペースの抜け出しなど。こうしたズレをスムーズにゴールまでが相手に脅威を与える形である。
PA付近までの出し手はエンソ、そしてPA付近のサイドからの押し下げはチルウェル。スペシャルカードのこの2人が生み出す縦のギャップはチーム全体が機能しない中でも得点に繋がる武器になっている。
ジンクスは独占すべき
チェルシーがアーセナルにどう立ち回るかを予測するのが難しい。レアル・マドリー戦のような追い込まれた試合では高い位置からのボールハントで圧力勝負には出たが、あれはチェルシーにとって乾坤一擲を狙う今年最大の大勝負だった。順位にこだわりがない状況で迎えるアーセナル戦にどこまでモチベーションがあるのかはわからない。
むしろ、逆に5バックを敷きながらボールをアーセナルに渡す可能性もあると言えるだろう。エバートン時代に苦しい状況で使った撤退第一からのロングカウンターという形に再び光明を探す可能性もある。ブライトン戦ではロングカウンターで得点の兆しは見えないこともなかった。
何よりこのビッグロンドンダービーにおいては、不振の流れで来たアーセナルがチェルシーを撤退上等の5バックで少ないチャンスをものにして勝利した過去もある。ジンクス的にもチームの流れ的にもランパードがこうしたシフトを敷くことになってもおかしくはない状況と言えるだろう。
アーセナルからすると、まずはチェルシーの出方を観察することが重要ではある。だが、最も大事なのはきちんと自分たちにできることを見つめ直すことだろう。確かにマンチェスター・シティには通用しなかったが、かといって他のチームに通用しないわけではない。
相手がプレスに来たら縦への間延びを発生させるために、自陣側にチェルシーの選手を誘導する。チェルシーが撤退するのであれば、サイドの破壊を優先しつつ、中盤を経由して素早く薄いサイドを作っていく。ラインを上げてのバックラインの対応も恐れることなくやるべきである。
ホールディングの起用時の問題点として指摘されている右サイドの押し上げの甘い部分は、トロサールやジョルジーニョの起用で補ってもいいだろう。前者は右サイドにおける縦方向のラインブレイクのスキルが高く、CFを務めながらも右サイドの奥行きを作る動きに長けている。後者はポゼッション局面の時間を伸ばすことでホワイトの攻め上がりの時間を確保することができる。
非保持においては大外のアイソとファーを狙ったクロスには気をつけたいところ。オフザボールとオンザボール両面における守備対応では負けないことが求められる。
ビッグロンドンダービーはここ数年アーセナルが不調から脱するための場だった。仮にチェルシーに勝利を許せば、このダービーが「アーセナルが不調から脱する場」ではなく「不調から脱する場」になってしまう。
今後を見据えてもジンクスは独占したい。相手にはV字回復をさせない。V字回復は自分たちだけ。ビックロンドンダービーはアーセナルがジャンプアップするための土台である。ジンクスを独占するV字回復とリーグ戦5試合ぶりの勝利をぜひ掴み取ってほしい。