クリスタル・パレス【11位】×ウェストハム【15位】
ザハ復帰のパレスが乱戦を制する
激烈な冬場の過密日程を乗り越えて以降は残留争いとは無縁のシーズンを送っているクリスタル・パレス。今節はその立場に一歩でも近づきたいウェストハムとの一戦である。
パレスのメンバーにおけるトピックはやはりザハの復帰だろう。後方のアンデルセンから放たされるザハへのフィードは彼への信頼感と、前節は懲罰交代気味にベンチに下がることとなったアンデルセン自身の復調のしるしとしての意味合いがこもっていたように思う。
ボール保持の機会はパレスの方が少し多かったように思えたが、先制したのはウェストハム。セットプレーからのソーチェクの一撃で先手を奪う。その直前のボーウェンのドライブも好プレー。強みをかみ合わせるいいゴールで先にリードを得る。
しかしながらパレスはすぐに同点。右サイドに君臨するオリーズからのパスをアイェウが沈めてあっさりと追いつく。ウェストハムはこのゴールの直後にズマが負傷交代。いい入りを台無しにする踏んだり蹴ったり展開に苦しめられることになる。
パレスは勝ち越しゴールも右サイドから。オリーズとアイェウが右から作り最後はザハ。復帰を自ら祝うゴールを決めて、前半の内にパレスが逆転する。
さらにはパレスは30分にソーチェクのロストから発動したカウンターから3点目。決めたのはシュラップ。パレスはここまでの30分で3本のシュートを全てゴールにするという効率のいい形でウェストハム相手に得点を積み重ねていく。
苦しい状況のウェストハムだが、アントニオがセットプレーからゴールをもぎ取り1点差に。後半に望みをつなぐことに成功する。
ウェストハムは攻め手を探る後半。だが、リトリートで落ち着いて受け止める機会が増えたクリスタル・パレスに対して、なかなかシュートまでの道筋を作ることができない。
むしろ、パレスはカウンターからチャンスを迎えるように。どちらかといえば得意な形から反撃することが出来ていたパレスの方が優勢な後半だったといえるだろう。
そんな優勢なパレスが再び突き放したのは66分。エゼが自らの突破で生み出したPKを沈めて試合は再び2点差に。
これで勝負の大勢は決まった。ウェストハムは72分にセットプレーからアゲルトがゴールを奪うが、流れの中からさらなる得点を奪うことが出来ずにそのまま終戦。中位をさまようロンドンダービーは上位のパレスが撃ち合いを制した。
ひとこと
ザハが帰ってくるとワンランク破壊力が高まる感じがする。
試合結果
2023.4.29
プレミアリーグ 第34節
クリスタル・パレス 4-3 ウェストハム
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:15′ アイェウ, 20′ ザハ, 30′ シュラップ, 66′(PK) エゼ
WHU:9′ ソーチェク, 35′ アントニオ, 72′ アゲルト
主審:クレイグ・ポーソン
ブレントフォード【9位】×ノッティンガム・フォレスト【17位】
明暗くっきりの逆転劇
前節、ブライトンを撃破するというサプライズを提供したノッティンガム・フォレスト。続く、ブレントフォードのホームスタジアムも難所として名高いが、2試合連続のサプライズで一気に残留争いから抜け出したいところである。
ブレントフォードはバックラインからゆったりとしたボール回しを敢行。いつものようにインサイドを固める陣形を取るフォレストに対して、外循環からボールを回してく。
基本的な方針はサイドに人を集めてのクロスだろう。前線がワイドに開いての守備をあまり行わないフォレストに対しては、サイドからボールを無理なく運んでクロスを上げることができるし、エリア内の空中戦という彼らの得意な形も作ることができる。
ボールを長い時間もつことが出来たのは基本的にはブレントフォードの方。セットプレーを軸としたチャンスメイクの手ごたえは悪くなかっただろうが、なかなかゴールマウスを破れないまま時間が過ぎる。
一方のフォレストもボールを持ったらゆったりとした保持を志向する。最近のフォレストはボールを奪ったらとにかくサイドから早く駆け上がってクロスというのをただただ休みなく繰り返していたので、ボール保持からライン間に縦パスを入れるというアプローチはどこか久々なようにも思えた。
攻撃の主軸となったのは左サイドに流れることが多かったギブス=ホワイト。サイド寄りのライン間に入り込むことでクロスや同サイドの奥を使った攻撃でアクセントをつけていた。
どちらもチャンスが多くないじりじりとした展開。試合を動かしたのは前半追加タイムのフォレスト。セットプレーからのロングスローのこぼれ球をダニーロが叩き込んで喉から手が出るほど欲しかった先制点を手にする。
ビハインドで迎えた後半。ブレントフォードはアップテンポなハイプレスで主導権を握っていく。フォレストは単発のロングカウンターで反撃に出ようとするが、後半はブレントフォードの圧に押し込まれる展開といっていいだろう。
そして、ブレントフォードはセットプレーから同点。トニーはトニーでも直接FKという摩訶不思議な感じがあるゴールから同点に追いつく。
逆転を狙いたいフォレストだが、交代枠を使い切った後にダニーロが負傷してしまい10人に。数的不利に追い込まれてしまい苦しい状況に。
すると、後半追加タイムに試合を決めたのはブレントフォード。右サイドからゴリゴリとエリア内に進んでいくダ・シルバがそのままゴールマウスを打ち破って勝ち越しに成功する。
終盤の2ゴールで逆転勝利を収めたブレントフォードと勝ち点がするりと手から零れ落ちたフォレスト。逆転劇の末に迎えた結末はあまりにも対照的なものだった。
ひとこと
ケイラー・ナバスに救ってほしい感があったシーンもちらほら。終盤に救世主になれそうな経験値を持った選手なのだが。
試合結果
2023.4.29
プレミアリーグ 第34節
ブレントフォード 2-1 ノッティンガム・フォレスト
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:82′ トニー, 90+4′ ダ・シルバ
NFO:45+1′ ダニーロ
主審:ピーター・バンクス
ブライトン【8位】×ウォルバーハンプトン【13位】
テンポの早さで振り切られたウルブズをオーバーキル
前節、まさかのフォレストに敗れてしまい欧州カップ出場権争いに暗雲が立ち込めているブライトン。いつも通りの4-4-2で自陣からボールをつなぎつつ、ウルブスを攻め立てていく。
ウルブスの序盤は威勢が良かった。ブライトンのフォーメーションと同じく4-4-2で受けるスタンスを利用し、CBまでプレスに行くスタート。ブライトンに高い位置からプレッシャーをかけていく。
しかしながら、ウルブスはサイドのケアが甘かった。降りてくるWGに対してウルブスはSBがついていく踏ん切りがつかなかったのか、簡単に反転を許して前を向かせるシーンが目立つように。
すると、左サイドからセメドと対峙したエンシソからブライトンは先制点をゲット。右サイドのマーチまで展開し、マイナスのフェルトマンに折り返すと最後はクロスをウンダフ。起用に応えたCFがブライトンのゴールショウのオープニングゴールを飾る。
すると13分には追加点。ハイプレスによるトランジッションからエンシソ→グロスであっさりと2点目をゲット。プレスの餌食になったヌネスは非常に軽いプレーで大きな2点目を与えてしまうことに。
こうなるとブライトンの勢いは止まらない。力みの抜けたグロスがブロックの外からミドルを放って3点目を奪う。試合はこの時点でほとんど決着したといっていいだろう。
この試合のブライトンは自陣からのビルドアップよりもプレスからのトランジッションからチャンスを作っていた。マンツー気味についてくるブライトンを相手にウルブスは完全にプレーのテンポで後手。ポゼッションでのスローリーなテンポは悪い意味でブライトンのプレスにハマってしまった。
ブライトンは前半の内にさらに1点を追加。ファーに流れたウェルベックが追加点を叩き込んで見せる。
ウェルベックのゴールは後半にも。開始早々に5点目を奪い、さらにウルブスを突き放していく。ウルブスとしては後半は試合を軟着陸させようと5バックにしたが、そのために投入されたコリンズのパスミスが失点の起点になるなど散々な後半の幕開けだった。
その後も高いラインを小気味いいパスで切り裂いていったブライトン。ウルブスにとってめんどくさかったのはフレッシュな状態で交代で登場した主力組。ゴール自体は66分の6点目で打ち止めとなったが、イキイキと前からプレスをかけてくる三笘はウルブスにとってはウザくて仕方なかったはずだ。
試合はブライトンの完勝。逆転の欧州カップ出場に向けて再スタートを飾ることに成功した。
ひとこと
三笘のオーバーキル癖は川崎が育てたかもしれない。
試合結果
2023.4.29
プレミアリーグ 第34節
ブライトン 6-0 ウォルバーハンプトン
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:6′ 66′ ウンダフ, 13′ 26′ グロス, 39′ 48′ ウェルベック
主審:デビッド・クーテ
マンチェスター・ユナイテッド【4位】×アストンビラ【8位】
強気アプローチで好調ビラを飲み込む
ELの敗退も決定し、残されたミッションはトップ4の座の死守。スクランブルなバックラインには不安が残るが、終盤戦ではそういった苦しいスカッド事情も四の五の言っていられない。
好調のビラに対してユナイテッドが打ち出したプランは強気そのもの。高い位置からプレスに向かい、アストンビラのバックラインから時間を奪い取るアプローチに出て行く。
いつもであれば相手のプレスを利用しての前進が得意なはずのアストンビラだが、この日は苦戦。中盤で2列目がポイントを作れない状態が続いてしまい、プレスを押し返すための起点を作ることができない。
一方のユナイテッドの保持に対してはアストンビラのプレス隊の警戒は薄め。CBにはボールを持たせてOKというプランだった。ユナイテッドが積極的に狙っていたのは高い位置を取るアストンビラのバックラインの背後。ホルダーがフリーでハイラインであるのならば、まず裏を狙おう!は何となくセオリー感がある。できれば、その先もきっちり用意したいところだけども。
ユナイテッドの意識はとにかく裏。バックラインとのタイミングが合ったら裏、中盤に刺した縦パスがきっかけでフリーマンを作ることが出来たら裏。とにかく裏を使うことでビラの最終ラインを押し下げるアプローチが立て続けに行われていた。
時間の経過共に徐々にテンポを掴んできたのは左サイドのサンチョ。彼を軸とした左サイドの崩しからユナイテッドはだんだんとチャンスのきっかけをつかみ始める。先制点はこの左サイドのラインブレイクから。ラッシュフォードのシュートのこぼれ球をブルーノが押し込んでユナイテッドが先制する。
できれば、ビラの守護神であるマルティネスにはキャッチしてほしかったところ。ラインブレイクの後に攻撃を止められるのはここしかなかった。しかしながら、オールド・トラフォードに降りしきる雨を見れば、そういった注文が簡単ではないことは想像に難くない。
反撃に出たいビラだが、後半も中盤と前線で起点を作れないという苦しい展開。リードしてなおプレッシングを続けるユナイテッドの方がより優勢の展開が続く。ユナイテッドがとてもよかったわけではないが、ピリッとしないビラのパフォーマンスではこの日は主導権に手がかからなかったというのが適切だろうか。
だが、ユナイテッドもなかなか決定的なチャンスを作れないまま試合は終盤に突入。点差は1点のままビラは最後の最後にセットプレーから決定機を迎える。しかし、これはユナイテッドが凌ぎきってそのまま逃げ切り。オールド・トラフォードの観客が冷や汗をかいた幕切れとなったが、CL出場権に前進する3ポイントを手にした。
ひとこと
ビラが調子が出なかった理由がイマイチよくわからない。
試合結果
2023.4.29
プレミアリーグ 第34節
マンチェスター・ユナイテッド 1-0 アストンビラ
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:39′ フェルナンデス
主審:ジャレット・ジレット
フラム【10位】×マンチェスター・シティ【2位】
仕事人躍動のシティが低出力で目的達成
アーセナルとの首位攻防戦を完全勝利で制し、数字的にも勢い的にも完全に優勝争いの主役に躍り出たマンチェスター・シティ。照準を合わせた試合の次は難しくなるのはあるあるな話。クレイブン・コテージという舞台はそんな彼らにとっては不気味なことだろう。
それだけに早々にアルバレスが獲得したPKはシティを助けるものだった。接触がソフトだった判定はフラムファン(とアーセナルファン)にとってはフラストレーションの溜まるものだったかもしれないが、一連のプレーがストーンズを1列前に押し上げる3-2-5型の良さが出た崩しだったことは間違いない。
先制点以降もシティはゲームを支配。3バックの外側から逆サイドのWGへの対角パスでフラムのDFラインの背後を使いながら試合を動かす。フラムのSHはロドリとストーンズによってインサイドに縛り付けられており、ウォーカーとアカンジはかなり自由にボールを持てる状況に。シティはWGが1on1を作れる形を安定して供給できる状態になっていた。
フラムはウィリアンがいない中でなかなか前進の活路が見出せないところだったが、ワンチャンスから同点に。パリーニャのロングボールから斜めに動き出したウィルソンが合わせると、落としを決めたのはヴィニシウス。豪快なシュートで煙の立たないところからフラムは同点に追いつく。
フラムはアタッキングサードでのフィーリングは悪くはなかった。ロングボールの的周辺へのオフザボールの動きが多く、シティのバックラインはやや狙いを絞りきれない状況が続いていた。自陣からの組み立ても少しずつ余裕が出てくるように。リームの負傷で急遽結成されたディオプとアダラバイオのコンビの出来も悪くはなく、攻守に流れは悪くない。
シティはこの流れを変えようとグリーリッシュとの1on1の対応に慣れてきたテテ周辺にちょっかいをかけていく。インサイドのハーランドへの縦パスを入れることでテテの注意をインサイドにむけて、アウトサイドのグリーリッシュをフリーにする。だが、立ちはだかったのはレノ。多くのシュートを防いで試合の興味を繋ぐ。
フラムも保持に回れば悪くはなかったのだが、中盤での不用意なパスミスが多く、カウンターを受ける機会が多くなっていた。そこにふって沸いたのがアルバレスのスーパーゴール。フィニッシュはスーパーでDFもGKもどうしようもないが、フラムの軽いロストの仕方にはケチがつく。そんなゴールだったと言えるだろう。
リードで前半を折り返したシティは後半も猛チャージ。右サイドのマフレズを軸に決定機を作り、更なる得点を狙っていく。しかし、これも立ちはだかったのはレノ。スーパーセーブで1点差をキープしていく。
アンドレアス・ペレイラの負傷など、フラムにとってはなかなかいいことがなかった後半。それでもロングボールからチャンスを狙っていく。
終盤は試合を寝かせることに成功したシティ。低出力ながらもきっちりと欲しいものを手にし、アーセナルに更なるプレッシャーをかけることに成功した。
ひとこと
出番になったら確実に結果を残す男、アルバレス。
試合結果
2023.4.30
プレミアリーグ 第34節
フラム 1-2 マンチェスター・シティ
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:15′ ヴィニシウス
Man City:3′(PK) 36′ アルバレス
主審:サイモン・フーパー
ボーンマス【13位】×リーズ【17位】
好戦的に挑んだ結果の先制パンチで逃げ切り
降格争い真っ只中のリーズ。暗中模索のハビ・グラシアがこの試合に向けてひねり出したのは3バックの採用であった。
3バックの採用によって生み出されたリーズの最終ラインの数的優位。4-4-2で迎え撃つボーンマスに対して、サイドからキャリーしていこうという姿勢はオーソドックスなものといえるだろう。
しかしながらこの日のボーンマスはやたらとプレスが好戦的に2トップの脇に中盤から人をぶつけて、同サイドを縦にスライド。背後のスペースはDFが根性でカバーという形で簡単に前進を許さない立ち上がりとなった。
ボーンマスの好戦的な姿勢はボール保持においてもみられた。バックラインからDF-MF間に差し込んでいくパスはリーズの狭く守っているはずのエリアにズバズバと入り込んでいく。このチャレンジが奏功し、押し込む機会を得たボーンマスはレルマのミドルで先制する。
すると、勢いに乗ったレルマは4分後に追加点。セットプレーからゴールを奪い、前半の内にこの日2得点目を挙げて見せた。
リーズは高い位置にボールを運ぶことができればサイドでのトライアングル形成は比較的やりやすいフォーメーション。ボーンマスに対してそうした高い位置からの攻撃機会を創出できるかどうかがポイント。ハリソンが外に回ってくる左サイドの攻撃は脅威になっている一方で、インサイドに押し込められたニョントはやや窮屈な感じもした。
それでも高い位置まで進出したリーズはクロスからゴール。左サイドから上がったボールをケリーのマークを外したバンフォードが叩き込んで1点を返す。
2点を奪った後のボーンマスはやや緩慢さが見られた。簡単にロングボールに逃げては跳ね返されたり、プレスの意欲が下がったりなど、序盤戦の意欲的な姿勢があまり見られなかったのは気がかりだった。
しかし、そんな心配もよそに後半はボーンマスの独壇場。ソランケのロングボールをようやく真面目に運用するようになり、だんだんとペースを引き戻していく。試合はフラットに戻った状況でどちらの物ともいえない展開が続く。
すると、ボーンマスはロングカウンターから追加点。右サイドのワッタラから生まれたチャンスをソランケが決めて3点目を奪う。リードをさらに広げてリーズは追い込まれてしまう。
後がなくなったリーズは総攻撃でボーンマスを攻めたてる。しかしながら立ちはだかったのは守護神のネト。ファインセーブの連発でさらなるゴールをリーズに与えない。
リーズにとどめの4点目を刺したのは交代で入ったセメンヨ。後半追加タイムの一撃でリーズの心を完全にへし折ったボーンマス。あわよくばトップハーフも視野に入る大勝でリーズのハビ・グラシアを解任に追い込んだ。
ひとこと
リーズにアラダイスを呼んだのは実質ボーンマスということで。
試合結果
2023.4.30
プレミアリーグ 第34節
ボーンマス 4-1 リーズ
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:20′ 24′ レルマ, 63′ ソランケ, 90+1′ セメンヨ
LEE:32′ バンフォード
主審:クリス・カバナフ
ニューカッスル【3位】×サウサンプトン【20位】
決着はもつれるが完勝
バックラインからのキャリーからチャンスを作るのはニューカッスル。サウサンプトンはバックラインに対して厳しく高い位置からプレッシャーをかけていくスタートとなった。
しかしながらサウサンプトンのプレスはニューカッスルの機能的な部分を防ぐ事になっていない。CBにはプレスをかけてもアンカーのギマランイスのところにプレッシャーがかかっていない。4-3-3の組織に対して、4-4-2でハイプレスをかけていくときに、ミスマッチになる中盤。ここのケアなしにサウサンプトンはプレッシングを始めてしまったように見えた。
ニューカッスルはこのミスマッチの中盤を活用。ライン間に差し込む中盤への縦パスからサイドの深い位置までパスを送り、サイドの攻略を狙っていく。サイドのラインブレイクを担っていたのは左サイドのWGのゴードン。相手をワンランク押し下げるアクションで敵陣深くに入り込んでいた。
一方のサウサンプトンも相手のバックラインのエラーにはつけ込む隙がありそうな予感。中盤でのパスミスからプレゼント的にカウンターのチャンスをもらう機会はあった。
カウンターの担い手になっていたのはアルカラス。アーセナル戦あたりから継続している好調さはこの試合でも健在。数人に囲まれてもスルスル抜けていくドリブルで、少しずつチャンスを引き寄せていく。
それでもトータルで見ればチャンスが多いのはニューカッスル。サウサンプトンはなんとか踏ん張りながらチャンスを迎えたのは41分。ラヴィアのボール奪取からカウンターでS.アームストロングが先制点を奪う。
後半、追いかけるニューカッスルはイサクを投入。ウィルソンとの併用という得点が欲しい時の陣形にシフトし、サウサンプトンを攻め立てる。この日の併用の特徴は2トップではなく、イサクを純粋な左のWGで活用したこと。
この采配は大当たりと言えるだろう。サイドに自由に流れるイサクをサウサンプトンは防ぐことができず、54分には同点の起点になることを許してしまう。チャンスメイクはイサク、フィニッシャーはウィルソンという関係性はウィルソンのゴール以降も継続。オフサイドでなんとか助かるが、サウサンプトンは劣勢を覆すことができない。
均衡が破れたのは80分の手前。セットプレーからウォルコットのオウンゴールを誘発しようやくリードを奪うに成功する。
そして仕上げは再びウィルソン。長いボールを収めようとするニューカッスルの前線を前に、メイトランド=ナイルズの対応はあまりに軽すぎたと言えるだろう。
決着には時間がかかったが、落ち着いたニューカッスルは追いついてからは盤石な試合運び。さらにCL出場権を固める勝利を危なげなく手にした。
ひとこと
終盤の両チームには地力の差を感じた。
試合結果
2023.4.30
プレミアリーグ 第34節
ニューカッスル 3-1 サウサンプトン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:54′ 81′ ウィルソン, 79′ ウォルコット(OG)
SOU:41′ S.アームストロング
主審:アンソニー・テイラー
リバプール【7位】×トッテナム【5位】
後半追加タイムに二転三転のアンフィールド劇場
立ち上がりの15分はまるで先週のトッテナムのゲームの再放送を見ているかのようだった。違ったのは先週の時点では監督ではなかったライアン・メイソンがこの試合のトッテナムの指揮を執り、ステッリーニのラストゲームの4バックではなく、3バックを採用したこと。
CBを3枚にすることである程度受けることができる構成になっていたはずだが、トッテナムはこのバックラインの強度がかなりまずいことになっていた。1失点目はインサイドの動きに簡単に釣られ過ぎてしまったポロのポジショニングの悪さがファーのジョーンズをフリーに。これでは5バックの意味がない。
続く失点もバックラインの個々に個人のプレーの責任をとってもらいたい気持ちになるシーンだった。右の大外を起点とするリバプールはハーフスペースにガクポが飛び出すと、この動きでダイアーが入れ替わられてしまう。横にスライドしたロメロのサポートも間に合わず。ニアを抜くディアスが素晴らしい復帰後初ゴールを決める。
なおもリバプールは攻撃の手を緩めずにあっという間に3点目をゲット。エリア内への侵入に対してロメロが非常に安易なタックルを見せて、ニアを抜かれる隙を許してしまった。
リバプールからするとアレクサンダー=アーノルドの攻撃参加がスムーズになっているのは朗報だろう。1得点目は大外へのクリアな展開からだったし、それ以降も着実にリズムを刻みながら前線での攻撃の参加と後方のポゼッションの安定を図る。
一方のトッテナムは縦に速い攻撃から活路を探しにいく。だが、やや急ぎ過ぎか。ただ、そうしたトッテナムのプレーの方向性よりも個人的にはプレーが上手くいっても行かなくても、互いに声を掛け合うことがないトッテナムの選手たちになんとなく彼らのチームの雰囲気が透けて見える方が気になった。
一方的にリバプールペースのまま終わるかと思われた試合だが、トッテナムがハイプレスからリズムを掴むと様相は一変。自陣からのスキップへの長いパスを起点に左サイドでソンと入れ替わるように抜け出したペリシッチから最後はケインが決める。特にこのゴールも誰も声をかけにいってはなかったように放送では見えたけども。
特にリバプールのバックラインでポゼッションにおいて不安定さを露呈していたのはロバートソン。よって、リバプールは残りの時間を左サイドにファビーニョをスライドさせる形で彼のポジションをプロテクトする。方向性としてもポゼッションに思い切って振りながらペースを引き戻していく。
後半も方向性としては同じ。リバプールは極端なポゼッションからゲームから得点の匂いごと締め出しを行い、試合のテンポを殺すことが狙いだったはず。
テンポを落としてきたリバプールを相手にトッテナムはギアを入れる手段が見つからず、ただただ時間だけが過ぎていく展開に。それだけに77分に生まれたソンのゴールはリバプールにとって青天の霹靂と言えるだろう。試合は終盤にかけて勝ち点の行方がわからなくなった。
2点目で加速したトッテナムの勢いを得点に結びつけたのは交代で入ったリシャルリソン。セットプレーからファーに入り込んで根性で合わせ、後半追加タイムに試合を振り出しに戻す。
しかし、直後のプレーで試合は再び動く。ルーカス・モウラのパスミスを掻っ攫ったジョッタが冷静に沈め、トッテナムの歓喜はあっという間に終焉。後半追加タイムに二転三転したアンフィールド劇場は苦しみながらもリバプールが勝利。肉離れをしながらも4点目のゴールを喜ぶクロップはこの試合のリバプールの戦いをある意味よく表していると言ってもいいだろう。
ひとこと
3点の得点差をひっくり返すほどトッテナムの出来が良かったとはあまり思えなかっただけに、きっちり勝ち点だけは確保したかっただろうなと思う。
試合結果
2023.4.30
プレミアリーグ 第34節
リバプール 4-3 トッテナム
アンフィールド
【得点者】
LIV:3′ ジョーンズ, 5′ ディアス, 15′(PK) サラー, 90+4′ ジョッタ
TOT:39′ ケイン, 77′ ソン, 90+3′ リシャルリソン
主審:ポール・ティアニー
レスター【16位】×エバートン【19位】
残留争いは続くよどこまでも
両チームにとっては残留をかけた重要な重要なシックスポインター。勝った方が残留に大きく近づくデスマッチである。
どちらのチームもバックラインにはそこまで無理にプレッシャーをかけず、中盤のかみ合わせを重視しながらスペースを消していくスタンス。互いにバックラインから前に時間を作りながら進んでいくアクションは得意としていないチームだが、それでもこの日はそれぞれの攻撃パターンを捻出していた印象だ。
レスターが狙っていたのは左のハーフスペースの抜け出し。大外のバーンズを基準にハーフスペースをスマレやヴァーディが突撃することで、エバートンのラインを下げていく。しかしながらこれはエバートンのラインコントロールにより、オフサイドで無効化されるケースが多かった。
一方のエバートンはキャルバート=ルーウィンがいるありがたみを全面的に表現していくプラン。インサイドにある高さの優位を生かして、サイドから早めにボールを入れていくスタンス。特に右サイドからはこの傾向が強く見られた。
それぞれのプランでまず結果を出したのはエバートン。キャルバート=ルーウィンがカスターニュからファウルを受けることでPKを獲得。これを仕留めてまずは前に出ることに成功する。
しかし、レスターもすぐさま追いつく。ファエス→ソユンクという2人のCBがつなぐセットプレーから同点ゴールを奪う。
同点以降は非常に一進一退の見ごたえのある攻防が続く。肉弾戦を狙っていくエバートンに対して、徐々にクリーンな抜け出しの成功例を作っていくレスター。2人のエースが交互にゴールに肉薄したシーンなどはこの試合の前半を象徴するようなシーンといえるだろう。
そうした中でゴールを掴んだのはヴァーディの方。CBをぱっくりとかち割る裏抜けでレスターが勝ち越しのゴールを決める。勢いに乗るレスターはさらに追加点のチャンス。ハンドで与えられたPKで突き放す機会を得たが、マディソンのPK失敗で追加点を得ることは出来ず。試合はレスター1点リードでハーフタイムを迎える。
ロングボールの応酬でスタートした後半。ゴールに結びついたのはエバートン。左サイドのマクニールのクロスからイウォビが同点となるゴールを決める。レスターとしては2人のCBが跳ね返し切れなかったのは痛恨だっただろう。
追いつかれた後にはレスター側にも左右のクロスからチャンスが出てくる。バーンズ、ヴァーディが同時に決定機を迎えるなど、得点には十分に近づいていた印象だった。
同点となった試合は時間の経過とともにオープンに。レスターは前半から裏抜けでの仕上げを狙っていたが、前半よりも裏抜けの手前の下準備の過程をすっ飛ばして、早い段階からロングボールを蹴っていく傾向が強かった。
60分台から押し込み始めるレスターはミドルがことごとく跳ね返されるという状況に苦戦。それでも飛び出したピックフォードのミスからヴァーディは無人のゴールに押し込むチャンスがあったが、この機会を生かすことが出来なかった。
エバートンも十分にカウンターの機会は作っていたし、終盤の盛り返しも含めればよりチャンスの数は多かったくらいかもしれない。しかしながら、こちらも決定機を決めきることは出来ずに試合はドローで終了。どちらのチームも大きく残留に歩み寄ることは出来ず、苦しみが続く痛み分けとなった。
ひとこと
残留争いはまだまだ続く。大変。
試合結果
2023.5.1
プレミアリーグ 第34節
レスター 2-2 エバートン
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:22′ ソユンク, 33′ ヴァーディ
EVE:15′(PK) キャルバート=ルーウィン, 54′ イウォビ
主審:マイケル・オリバー
アーセナル【1位】×チェルシー【12位】
より沼の浅いチームが未勝利を脱出
レビューはこちら。
シティに敗れてしまい優勝争いの主導権を明け渡してしまったアーセナル、そしてランパード就任以降公式戦での連敗が続いているチェルシー。どちらのチームも厳しい流れの中で迎えるビッグロンドンダービーである。
試合はその両チームの勢いを反映しているかのような重たい立ち上がり。アーセナルのプレッシングは鈍いが、チェルシーのボール保持のパススピードは上がらず、アーセナルを左右に振ることが出来ても相手を外すことができない。アーセナルがボール保持に回った場合もミスが目立ってしまい、リズムのいい崩しを生み出すことができない。
それでもやはり両チームの出来を比べればアーセナルの方が上だといえるだろう。ボールを失った後の即時奪回の部分は錆びておらず、自分のターンを確保するのに苦労はしていなかった。一方のチェルシーは前線の選手たちのボールタッチの悪さが不調に輪をかけていた印象だ。特にスターリングはこうした流れの中で全く貢献することが出来ず前線のブレーキになってしまっていた。
保持から崩す機会を得ることは出来ていたアーセナル。チェルシーは非保持においてはマドゥエケに自陣までのプレスバックのタスクをかけることによってジャカを封鎖するタスクを託していた。しかし、規律の部分でも攻撃に打って出ることを考えてもマドゥエケにジャカをマークさせるために低い位置まで戻らせるのは効率が悪い。
結局、アーセナルの先制点はマドゥエケをジャカが離してしまったところから。ウーデゴールのミドルという全く同じ出口でアーセナルは早々に2点を手にする。
さらにはアーセナルは前半の内にジェズスのゴールでもう1点を追加。チェルシーに対してセーフティなリードを奪うことに成功する。
しかし、アーセナル側も後半はなかなかピリッとしなかった。左右からのクロスで攻勢をつよめてあわや4点目というシーンを作れたのは良いのだが、両SHを軸にプレッシングとリトリートに置ける規律があまり整っておらず、チェルシーに落ちついてボールを持たれた時はピンチになる。
そして、チェルシーに反撃弾となるゴールを許してしまうことに。マドゥエケに簡単に抜け出しを許してしまったジンチェンコも良くなかったが、ホルダーの受け渡しに失敗し、コバチッチに悠々とパスを通させたジェズスとウーデゴールもよろしくなかった。
それでもチェルシーに残り2点のビハインドを覆す勢いはなし。不振の沼がより浅いアーセナルが試合を殺し、久しぶりの勝利とビッグロンドンダービーのシーズンダブルを達成した。
ひとこと
どちらのチームも良くはなかったが、より良いチームが勝利を手にした一戦だった。
試合結果
2023.5.2
プレミアリーグ 第34節
アーセナル 3-1 チェルシー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:18′ 31′ ウーデゴール, 34′ ジェズス
CHE:65′ マドゥエケ
主審:ロベルト・ジョーンズ