面目躍如のキーンの一撃がステッリーニから白星を奪いとる
マンデーナイトで迎えた29節の最後を飾る試合は残留争いとCL出場権争いという異なる争いで正念場を迎える両チームの対戦。グディソン・パークにトッテナムが乗り込む一戦である。
コンテからステッリーニに指揮官が交代したトッテナムだが、この試合を通してメンバー選考や大きな戦い方の方針においてコンテと異なる部分を見出すことは難しかった。基本的には継続路線なのだろう。
よって、試合の序盤はまずはプレッシングで相手の力量を確かめるフェーズからスタートする。エバートンのバックラインは躊躇なく蹴っ飛ばしていたし、失ったところからセカンドボールの回収に向かっていたので、試合は非常に落ち着かない展開になった。
非常にトランジッションのカラーが強い一戦はややトッテナムが優勢だったように思う。バックラインにプレスをかけている意義はボール回収の精度を見ればそれなりに見出すことができるし、前に出て行ってからの素早い攻め手もそこまで悪くはない。大外を経由して直線的なスピードは下がることはあっても、クロスからフリーのケインがヘッドするなど、十分に得点のチャンスは作れていたといっていいだろう。
一方のエバートンはプレッシャーをかけられて前線にボールを蹴るものの、前線がグレイでは収まるもののも収まらない。プレッシングも2列目から出て行くなど、積極策を見せてはいたが、前半にその有効策を見出すことが出来ず、手早くゴールに迫る手段を作ることができなかった。
エバートンは自陣からきっちりつないでチャンスを作る形は難しいので、手早い手段が見つからない前半はゴールに向かうことが出来なかったといえるだろう。相対的にトッテナムの方が多くチャンスを作っていた。
後半、エバートンはキッチリとサイドを埋めることでトッテナムのチャンスを封じにかかる。機を見て3センターがボールハントに行くという彼らの運動能力に任せたラインアップで反撃の隙を伺う展開になった。
しかし、後半15分も経たないうちにエバートンは数的不利に。ドゥクレがケインとの小競り合いから手を挙げてしまい、一発退場の憂き目に遭う。エバートンはボールハントの先導役を失った上に10人で残り時間を戦うことになった。
押し込む機会は増えたトッテナム。その甲斐あってサイドのクロスからPKを獲得する。セカンドボールの競り合いに出足が遅れたキーンがPKを献上。これをケインが決めてトッテナムが前に出る。
数的不利を追いかけるようにやってきた先制点。通常であれば勝ちパターンである。しかしながら、トッテナムはこの後のゲームプランが中途半端だった。保持で試合をなだめるのか、それとも2点目を狙いにいくのか、あるいはゴール前に壁を築くのか。どのプランでもいいように思うのだが、トッテナムはリード後に自分たちがどのように振る舞うべきかを整理できていないように見えた。特にボールを持っている時において。
前から出て行くしかないエバートンにとっては失点はグイっと前に出て行けるいい機会だったように思える。なりふり構わないエバートンに対して、トッテナムは必然的に受けに回ることになる。
さらにトッテナムはルーカスが不用意なタックルで一発退場となり、数的優位というアドバンテージも失うことに。勢いに乗るグディソン・パークの声援に応えたのはPKを献上したマイケル・キーン。ブロックの外からのミドルでゴールを射抜き、汚名返上の同点弾を決めてみせた。
互いに退場者を出す乱戦模様の一戦は痛み分け。ライバルが足踏みしているトッテナムにとっては足並み揃えることになる手痛いドローとなった。
ひとこと
10人になるまでのトッテナムはそれなりにうまく試合を運べていただけに最後の10分のバタバタ具合は気になるところ。いわゆる解任ブースト的な結束感も感じられず、目標達成に向けて暗雲が立ち込めている印象だ。
試合結果
2023.4.3
プレミアリーグ 第29節
エバートン 1-1 トッテナム
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:90′ キーン
TOT:68′(PK) ケイン
主審:デビッド・クーテ