マドリーのお得意パターンに飲まれる
「途中解任の年のチェルシーは買い」というCLにおけるジンクス一つだけではもはや信じることは難しくなっている今季のチェルシー。ランパード再登板初戦となったウルブス戦も内容的には前を向き難いものであり、ベルナベウでレアル・マドリーと対峙するには不安が残るものになっただろう。
戦前から劣勢が予想されるチームが5バックできっちりと守りに入るというのはCLではよくある話。というわけでこの日のチェルシーも5-3-2でのブロックを組んでスタート。2分にはロングカウンターからジョアン・フェリックスが決定機を迎えるなど、立ち上がりのスタンスはくっきりしていた。
よって、保持で攻略することになったレアル・マドリー。2トップ脇から起点を作りながら攻略の糸口を飾る。ただし、3センターにはマンツーでチェルシーの選手がついている。出足が抜群なカンテがフィットしたのはチェルシーがこのシステムを組む後押しになったはずである。
インサイドに強引にパスをつければ痛い目に遭うことは早い段階で把握したマドリー。WGにボールをつけながらワイドから打開の可能性を探っていくことに。だが、このマドリーのアプローチも3センターのスライド、WBとCBの迎撃でそれなりにチェルシーに受け止められた。
10分くらいにチェルシーは手応えを感じたのかラインを上げる決断をする。2トップは前から少しずつ前から追うようになり、中盤もそれに連動する。こうした色気を見せる決断は裏目に出ることもあるが、戦況的にはそこまで大きく欠陥が出ることはなかった。ラインはミドルゾーンまで押し上げつつ、ボール保持に回れば3バック+3センターの6枚でマドリーのプレス隊を広げつつ、中盤でフリーマンを作っては大外のWBもしくは裏に抜ける3トップorカンテへのロングボールからチャンスを作っていく。
チェルシーとしては悪くない序盤戦であったはず。しかしながら、こうしたいける!という状況をひっくり返すのはレアル・マドリーの十八番でもある。中盤に顔を出したカルバハルからラインの裏に抜け出すヴィニシウスというこれまでとは少し違うテイストの攻撃から先制点をゲット。ヴィニシウスのギリギリのコントロールはベンゼマにつながり押し込むことに成功する。
この先制ゴール以降はマドリーが優位に試合を運んだ印象だ。基本的にはチャンスが少ない展開だったが、チェルシーのチャンスを封殺しつつ、インサイドにパスをつける場面も徐々に作りながらチェルシーの陣内に迫っていく。盤面をうまくコントロールしながら試合はハーフタイムを迎える。
後半、チェルシーは前半と同じくそれなりに前からプレッシングにいく形を選択する。異なるアプローチを仕掛けていったのはむしろリードしているマドリーの側。WGがシンプルにワイドから裏を使う形から勝負をかけていく。クリバリにギリギリ止められたロドリゴの抜け出しや、左のヴィニシウスきっかけにモドリッチのミドルなどチャンスを作っていく。チェルシーもマドリーに合わせるようにスターリングを活かす縦に速い攻撃を仕掛ける。
結果を出したのはマドリーの方だった。ロドリゴの抜け出しからチルウェルを一発退場に追い込むことに成功。先ほど、この抜け出しを防いだクリバリは負傷交代していたというのも切ないところ。チェルシーはこれを受けて5-3-1にシフト変更。なお、チェルシーが喉から手が出るほど欲しかったであろうリュディガーという交代カードをアンチェロッティが起用したのはたまたまなのかは不明である。
セットプレーからのアセンシオのミドルという数的優位とは関連が薄そうなプレーでさらなる追加点を手にしたマドリー。ランパード的には1点差ならOKだけど、2点差は許容できない!ということなのだろうか。チアゴ・シウバを削り、MFを追加することで4-4-1にシフト。自陣からの繋ぎの機会を増やしながら、反撃の隙を伺っていく。
だが、流石に10人でなんとかできるほどベルナベウの舞台は甘くはない。豪華な交代カードを次々と切りながら試合をクローズしていくマドリーに対して、なかなかチャンスを作ることができず。終盤にはマウントが敵陣で決定的なチャンスを得るが、ここに立ちはだかるのがリュディガーというのもよくできたストーリーである。
むしろ、チェルシーはベンゼマに大チャンスを決められなくて幸運だろう。正直、内容の割には2点差は許容範囲内。とはいえ、当然ホームで跳ね返すにはヘビーな状況であることに変わりはないのだが。
ひとこと
いけると思ったところできっちりひっくり返すマドリー。ベルナベウには落とし穴でも掘ってあるのだろうか。途中からチュアメニとリュディガーが出てくるチームに10人でどうやって点を取れるかなと考え込んでしまった。
試合結果
2023.4.12
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 1st leg
レアル・マドリー 2-0 チェルシー
エスタディオ・サンチャゴ・ベルナベウ
【得点者】
RMA:21′ ベンゼマ, 74′ アセンシオ
主審:フランソワ・ルトゥグジェ