1st leg
保持が長いのはバイエルンだが・・・
3点のビハインドを背負ってミュンヘンに戻ってきたバイエルン。シティ相手にビハインドを取り返すべく、ボール保持からスタートする。GK、2CB、2CHを軸にポゼッションを行っていく。
このバイエルンのポゼッションがどこまでうまくいっていたのかという評価はなかなか難しいように思う。バックラインでボールを回しながらグリーリッシュを引き出しつつ、ギュンドアンをそのカバーに奔走させるように高い位置まで誘き寄せることはできていた。
その結果、右のハーフスペースに縦パスを差し込むことでスムーズな前進はできていたように思う。だが、今年のシティが厄介なのはここからである。実質CBが4枚並ぶ最終ラインに対してはなかなか簡単にアドバンテージを取ることはできない。
バイエルンは右のDF-MF間のハーフスペースからアケとディアスの間にスルーパスを通し、コマンが外から斜めのランでこのパスを受ける形を狙っていた。しかしながらシティのバックラインは鉄壁。やや前線のプレスを掻い潜られる形になったとしても後方で無理が効く形で全て跳ね返すことができていた。
よって、バイエルンの保持は敵陣にボールを運ぶフェーズでは問題はなかったが、最後のきっかけを掴んでPA内に迫るフェーズでは問題が起きていたと言えるだろう。バイエルンは撤退守備で困る相手には大外のウインガーの質で壊すのが定番だが、その質の部分ではこの試合はイニシアチブを取れなかった。
総じて試合のテンポがゆっくりだったことを踏まえても、ペースはバイエルンよりはシティ寄りだったと言える。ボール保持ではバイエルンは主導権を握っていたが、ずっと彼らのターンというわけではない。鉄壁の最終ラインはバイエルンに畳み掛けるような攻撃を許さないし、保持のターンに入ればシティはもちろんじっくりボールを持つことができる。
そして、カウンターからのハーランドという一発も持っている。堅い守備からの一発というのはまさにCL仕様のシティという感じだろう。紙一重のオフサイドに救われていなければ、ハーランドを後ろから倒したウパメカノの退場で試合は早々に決していたはずだ。ウパメカノはその後もPA内でハンドを犯すなど散々な日だったが、ハーランドがこのPKを外すなどギリギリで救われる前半となった。
それでも、3点リードを盾に試合を過度にハレーションさせない中で得点の脅威を突きつけていくのはさすがである。そもそもボールを持っているバイエルンをここまできっちり抑えられるのは彼らの地肩の強さを感じる。
後半も試合の展開は大きくは変わらない。バイエルンは保持に回っても大外の優位を活かすことができず、シティは試合のテンションを上げないように時計の針を進めていく。この部分のせめぎ合いだった。
やっと、バイエルンが右サイドから打開できそうになったシーンではコマンのマーカーがグリーリッシュだった。列を下げずにアケが対応する方が守れているというのはなかなか面白かった。だが、このチャンスを逃すと、ハーランドがカウンターからついに結果を出す。逆を取られたウパメカノが三たび許されることはなく、シティがついに前に出ることに成功する。
バイエルンは左の大外ユニットの選手を入れ替えることでシティに対抗。右サイドで踏ん張り続けるコマンも含めて両ワイドから少しずつゴールに迫っていく。
そして、80分すぎにエンドライン付近の粘りからの折り返しでハンドを獲得。これで2ndレグだけのスコアを振り出しに戻す。
しかし、追撃はここまで。2年前にファイナルで立ちはだかったトゥヘルを退け、マンチェスター・シティがベスト4進出を決めた。
ひとこと
バイエルンは確かにこうしたバックラインの脆さを有しているチームではあるが、押し込まれる局面における圧力を受け切るシティはさすがである。ハーランドの存在も当然上積みであるが、後方に4枚のCBをおいてポゼッションの質を落とさないことも今季のシティの強さである。
試合結果
2023.4.19
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 2nd leg
バイエルン 1-1 マンチェスター・シティ
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
BAY:83′(PK) キミッヒ
Man City:57‘ ハーランド
主審:クレマン・トゥルパン