スペイン代表、カタールW杯欧州予選の歩み。第4節から。EUROの歩みはこちら。
2021/9 招集メンバー
GK
ダビド・デ・ヘア(マンチェスター・U)
ロベルト・サンチェス(ブライトン)
ウナイ・シモン(ビルバオ)
DF
セサル・アスピリクエタ(チェルシー)
ラウール・アルビオル(ビジャレアル)
パウ・トーレス(ビジャレアル)
マルコス・ジョレンテ(A・マドリー)
エリック・ガルシア(バルセロナ)
ホセ・ガヤ(バレンシア)
ジョルディ・アルバ(バルセロナ)
エメリク・ラポルト(マンチェスター・C)
MF
セルヒオ・ブスケツ(バルセロナ)
ミケル・メリノ(ソシエダ)
カルロス・ソレール(バレンシア)
コケ(A・マドリー)
ロドリ(マンチェスター・C)
ブライス・メンデス(セルタ)
FW
アルバロ・モラタ(ユベントス)
ジェラール・モレノ(ビジャレアル)
フェラン・トーレス(マンチェスター・C)
アダマ・トラオレ(ウォルバーハンプトン)
パブロ・サラビア(パリSG)
パブロ・フォルナルス(ウエスト・ハム)
アベル・ルイス(ブラガ)
第4節 スウェーデン戦(A)
■アイデンティティをアイデンティティで封じる
EUROのグループステージ以来の再戦となった当カード。ちなみに当時の記録も残してあったのでご参考に。
ナショナルチームにアイデンティティを植え付けるのが難しい時代になって久しいが、この両チームはシステムも含めてそれぞれの国のアイデンティティを落とし込んでいるチームだと思う。
保持に特化したスペインの4-3-3も、強固なブロック守備をベースとしたスウェーデンの4-4-2もどちらもその国らしさが詰まったもの。この試合の展開も試合を見ていない人にも十分想像できる個性のぶつかり合いであった。
EUROでは強固な守備のスウェーデンに対して、スペインが攻めあぐねたという印象が強い。この試合もスペインの保持の局面が多くなった。スペインはCBとブスケッツを軸にサイドを入れ替えながら、サイドの突破からスウェーデン攻略に挑む。
この試合の保持局面におけるスペインは非常にオフザボールの動きを重視していることが読み取れた。特にクロスに対してスペースに入り込む動きが非常に活発。IHがエリア内に入ることで枚数も確保されており、高さのあるスウェーデンに対しての押し込んでの攻撃がEUROよりも準備されているように見えた。
とりわけ目についたのはフェラン・トーレス。シティでもそうなのだが、縦パスも含めてボールを引き出す動きだしが非常に上達しているように思う。早々に入った先制点も、クロスに対してトーレスの斜めの動き出しにアウグスティンソンが釣り出されたせいで、外側のソレールが空いた形。活発なフリーランで、スウェーデンのブロックに穴を開けてみせた。
しかし、即座にスウェーデンは反撃。ショートカウンターからイサクの俊敏性とダイナミックさを生かしたミドルですぐさま同点に追いつく。スペインとしては得意の保持の局面で、しかも得点を決めたソレールが絡んでのミスということでがっくりくる失点となってしまった。
イサクとクルセフスキの2トップはロングカウンターでも存在感。スピードもパワーも十分。スペインは広いスペースでDFが彼らと1対1で対峙してしまうと歯が立たない。ロングカウンターを成立させていたのは彼らのレベルの高さである。
定点攻撃においてはフォルスベリの貢献度の高さが光る。彼の保持と周りの追い越す動きで、スウェーデンのサイド攻撃を成り立たせていた。イサクとクルセフスキのフィジカルの強固さはここでも効いていて、単純な動き出しのスピードやターンの際のパワーにスペインは手を焼いていた。
スウェーデンの逆転弾はクルセフスキのターンがきっかけ。パスワークを軸に前を向く隙を伺うスペインに対して、パワーで引きちぎった感のあるスウェーデンのチャンスの作り方は非常に対照的だった。
70分くらいには徐々に運動量が落ちてくるスペイン。基本的には疲労しにくいスタイルだと思うんだけど、オフザボールで飛ばしていた分、終盤の尻すぼみが目立った。加えて、整えてから壊しにかかるスペインのスタイルは特に追う局面が苦手。パワー面を加味してアダマ・トラオレを投入するのは理解できる。
しかし、スウェーデンのブロックは最後まで崩せず。特に中盤のカバーリングは見事。CHがサイドに出ていった際によくあるのは、彼らが元いたバイタルが空いてミドルを撃ち込まれてしまうパターンなのだが、スウェーデンの場合は彼らが元いたスペースを使わせないのがとても上手。サイドに出ていったら折り返しをさせずに封じ込めた。
アイデンティティをアイデンティティで封じ込めた一戦で勝利を挙げたのはホームのスウェーデン。これでスペインの自力首位突破は消滅。スウェーデンはスペイン戦以外の勝ち点を落とさなければ、首位突破を決められることになった。
Pick up player:デヤン・クルセフスキ(SWE)
より直線的なイサクに対して、サイドに流れた際や局面が静的な場合でも力を発揮できる万能型。パワー、スピードだけでなくパスの精度も高く、緩急をつけながら味方の上がりを待つこともできる。スウェーデンの早い攻撃に異なる彩りを添えることが出来る選手。
試合結果
2021.9.2
カタールW杯欧州予選 第4節
スウェーデン 2-1 スペイン
フレンズ・アレナ
【得点者】
SWE:5′ イサク,57′ クラエソン
ESP:4′ ソレール
主審:アンソニー・テイラー
第5節 ジョージア戦(H)
■アクセルを踏み、スピードに乗る
スウェーデンに敗れて首位通過に黄色信号。負けどころか引き分けも許されない状況のスペインであるが、正直言ってこの試合は彼らが冷や汗をかくような試合ではなかった。スペインの保持の局面が続くゲームであり、ジョージアは90分間それに耐え忍び続ける状況となった。
ジョージアの4-1-4-1の守備に対して、スペインはいつものようにサイドから崩しを狙っていく。サイドの崩しの基本的なイメージとしてはSB、IH、WGの3枚で4箇所のポジションを入れ替わりながら動く形。
1. ハーフスペースの手前
2. ハーフスペースの奥
3. 大外
4. 後方のサポート
この4箇所を入れ替わりながらポジションをとっていく
ここを3人でローテするのが基本。思うに、人にたいして場所が1つ余っているのがミソなんだと思う。初めからそこに人がいれば、守備側もその位置をあらかじめ埋めればいい話だけど、そこに人が入ってくるのならばあらかじめ人をそこに置くのは難しい。
4-1-4-1のジョージアはIHをスペインのIHにマンマーク気味につけているが、マンマークについていればいい状況からスペインは保持で揺さぶりをかけてくる。例えば、運ぶCBは放っておいていいのかとか。あるいは降りてくるCFは受け取らなくていいのかとか。ジョージアのIHがマーカーを離してしまう誘惑はスペインによって数多く散りばめられている。そういう中でフリーになったスペインのIHがフリーランで躍動する。そんなパターンが多かった。
スペインとしてはジョージアのCBからIHとWGの間を斜めに割るパスが通ると一気に局面が進む。このパスとハーフスペースの裏抜けがコンボで発動するとジョージアのDFラインはどうしても崩れてしまう。
ポゼッション型のチームの課題としてやり直しに備えすぎるあまりに、PA内の迫力が薄まることが挙げられる。その部分でもこの日のスペインは万全だった。ハーフスペースの裏抜けというアクセルを踏むと、ボールサイドではない選手がきちんとそれに応えてエリア内に雪崩こむ。スコアラーになったソレールやガヤはその仕事を忠実にこなしていた。
3点目を取ったフェラン・トーレスは、動き出してからフィニッシュまでの一連の仕事をやり遂げる力がメキメキついている印象。クラブでの好調をうまく代表でも還元している。
あまり見せ場のなかったジョージアだったが、この試合で目立ったのは右のWGであるズリコ・ダヴィダシュヴィリ。ルビン・カザンにも所属歴がありロシアリーグを主戦場として活躍する20歳。後半は何回か彼の突破からチャンスを迎えるシーンも。前節のコソボ戦でも同ポジションのツィタイシュヴィリが躍動するなど、ジョージアは右WGにはいいタレントが揃っているようである。
ただし、試合をひっくり返すような力はなし。後半にもサラビアのゴールで4得点。最後はGKを入れ替える余裕まで見せたスペインが危なげなく大勝を飾った。
Pick up player:ホセ・ルイス・ガヤ(ESP)
オーバーラップで攻撃の加速を促したり、的確なエリア内の進出が光るパフォーマンス。攻撃のアクセルを踏むこと、走り出した攻撃に厚みを加えることのどちらもこなした。オフサイドで取り消されたもののネットを揺らしたシーンでは飛び込みのタイミングもバッチリ。相手のレベルもある話ではあるが、アルバに対抗する存在であることを示した。
試合結果
2021.9.5
カタールW杯欧州予選 第5節
スペイン 4-0 ジョージア
エスタディオ・ヌエボ・ヴィヴェーロ
【得点者】
ESP:14′ ガヤ, 25′ ソレール, 41′ トーレス, 63′ サラビア
主審:チアゴ・マルチンス
第6節 コソボ戦(A)
■捨ててでも噛みつく
先に言っておくが、グループBの第6節の2試合は面白かったのでオススメである。
この試合を面白くしたのは間違いなくコソボである。第4節、第5節のコソボは最終ラインの可変をベースとして、5レーンを埋めながらのアタックを行ってきた。Jリーグでいうと若干鳥栖のような感じ。ジョージアやギリシャに対して渡り合いながら勝ち点をもぎ取ってきた。
スペインに対して、この可変を引っ提げてどう戦うのかな?と思っていたのだけど、普通に第6節のコソボはこの可変をあっさりと捨てる。4-4-2で組まれたコソボの陣形は特に動くことはなく、可変の要素は非常に減った。
恐らく、この変更はレギュラーのIHであるハリミがサスペンション、ベリシャが前節と負傷(この試合モベンチにはいた)と苦しいやりくりだったことと無関係ではないはず。しかし、このやり方は十分スペイン対策とコソボの弱点を隠す形になっていた。
前節のギリシャ戦でコソボが見せた課題はバックラインにプレスをかけられた際にボールコントロールが乱れ、怪しいショートカウンターを受けてしまうということである。
この試合のコソボのボール回しはSBにまずボールを預ける。すると、スペインは前線が横方向にスライドしながらプレスをする。こうなると、コソボは逆サイドのSBにピッチを横断するロブパスを送る。スペインの前線がスライドした分、時間がもらえたコソボのSBはここから2トップに向けて一気に裏に蹴りだす。コソボはスペインのプレスの裏をかくこと、そして自軍のビルドアップ耐性の低さを覆い隠すいいやり方を見つけたように思った。
コソボが徹底していたのは中央をなるべく保持において使わないこと。先ほどのボール循環のルートを見ればわかるが、ほぼ中央でのロストの可能性はない。仮に中央を使うとしたら2トップにロングボールを当てるときくらい。これも、当然ショートカウンターの危険性は少ない。しかも、ラシツァとムリキは割と収まったし、裏抜けのところからチャンスは作れていた。
そりゃ、中央を経由できた方がチャンスはあるだろうが、スペインが相手ならばおかせないリスクはあるだろう。大量にあるチャンスを外した!というのは言い過ぎだが、どれかを決めていればあるいは・・・と夢をみれるくらいにはコソボにはチャンスはあった。
守備の局面でスペインに対するときにはハーフスペースと大外をどう埋めるかは課題になる。コソボは左右でやり方を変えていたのが印象的だった。右サイドはSHのラシャニが根性で大外をケア。逆サイドの大外はSBのヴォイヴォダがでていったところをCHのドレシェヴィッチを埋める形だった。このドレシェヴィッチが最終ラインに出たり、入ったりするのがうまい。下がりっぱなしだと、バイタルが空きすぎてしまうし、もちろん最終ラインに穴をあけてはまずい。ここをドレシェヴィッチはうまくこなしていた。
横移動を減らし、ズレを作りにくくしたコソボの4-4-2はだいぶ効いていた。スペインは左のユニットであるマルティネス、レギロンの組み合わせはここ2試合の組み合わせと比べるとビルドアップであまり効いていなかったのも大きかった。
だが、スペインもさるもの。押し込んだ状態から細かいパス交換で最後はフォルナルスが仕上げ。前半のうちにコソボのブロックをこじ開けて見せた。
細かい部分においてもスペインはさすが。コソボのCBへのプレスが甘いと見るや、ブスケッツが1列前に出たりなどポゼッションの調整を図っていたし、フェラン・トーレスのクイックネスが一番効いてることを見ると、後半はアダマ・トラオレを入れてみるなど、十分に嫌がらせは出来ていた。
チーム全体の話でいうと、後半のスペインはワンタッチのパスを増やしてテンポを早めに前に運び、コソボの守備ブロックの変形の時間を奪い、判断の負荷を上げていた。
見事な対策を打ったコソボだったが、スペインはもう一段上だった。それでも時折、スペインは背筋を凍る思いをするくらいにはコソボもチャンスを作っていた。敗れはしたが10月以降も楽しみなチームとなったコソボだった。
Pick up player:イブラヒム・ドレシェヴィッチ(KOS)
穴をあけることが少ないブロック守備を形成できたのは彼の判断能力の高さを生かしたシステムが成功したことが大きい。急造感のあるフォーメーションをうまく回す原動力となった選手。
試合結果
2021.9.8
カタールW杯欧州予選 第6節
コソボ 0-2 スペイン
プリシュティナシティ・スタジアム
【得点者】
ESP:32′ フォルナルス, 88′ トーレス
主審:ボビー・マッデン
2021/11 招集メンバー
GK
ダビド・デ・ヘア(マンチェスター・U)
ウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)
ロベルト・サンチェス(ブライトン)
DF
セサル・アスピリクエタ(チェルシー)
ダニエル・カルバハル(レアル・マドリード)
アイメリク・ラポルテ(マンチェスター・C)
エリック・ガルシア(バルセロナ)
パウ・トーレス(ビジャレアル)
イニゴ・マルティネス(アスレティック・ビルバオ)
ジョルディ・アルバ(バルセロナ)
ホセ・ルイス・ガヤ(バレンシア)
MF
セルヒオ・ブスケツ(バルセロナ)
ロドリ(マンチェスター・C)
ガビ(バルセロナ)
カルロス・ソレール(バレンシア)
コケ(アトレティコ・マドリード)
ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)
FW
パブロ・サラビア(スポルティング)
ジェレミ・ピノ(ビジャレアル)
アルバロ・モラタ(ユヴェントス)
ロドリゴ(リーズ/イングランド)
パブロ・フォルナルス(ウェストハム)
ダニ・オルモ(ライプツィヒ)
アンス・ファティ(バルセロナ)
ブラヒム・ディアス(ミラン)
第9節 ギリシャ戦(A)
■許してしまったことが致命傷
やらかしてしまったスウェーデンのおかげで首位に立つチャンスを得たスペイン。ギリシャとの一戦で結果を出せば、最終節をかなり優位な条件で迎えることができる。
展開としては非常に静的な流れになったこの試合。トランジッションが非常に少なく、保持しているチームが長い時間ボールを回すシーンが目立った。スペインは端的に言えばそういう展開に慣れているし、得意なチームである。保持でやり直しは効くし、中盤の選手たちが相手に対しての枚数調整にも当然できる。
ギリシャがシャドーが絞る形で中央を固めながら網を張るような守備をしたことも相まって、スペインは外を回しながらやり直しを繰り返しながら、どの部分が破れそうかを検討する流れになっていた。
強力なWGがいない分、こういう流れで強引にこじ開けることが難しいのがスペインの悩みである。中を固める相手ならば、外を壊せる選手は本来ならば欲しいところである。それゆえ、セットプレーの流れからPKを獲得できたことはスペインにとって大きかった。
1点をとってしまえば、スペインの保持はゴールに向かわなくても許される部分が大きい。ギリシャは低い位置まで押し下げられてしまうと、カウンターで縦に進むことができなかった。この日は中盤から前に出ていく推進力をもたらすことができるバカセタスがいなかったのが大きかった。それを差し引いてもスペインの両CBの仕事は見事。ラポルトとマルティネスのコンビはギリシャの前線に前を向かせることなく完封して見せた。
保持で許されたスペインはボールを回しつつ、ネガトラでボールを取り返し、再び保持の循環に突っ込むことができる。新参者のデ・トーマスが当然のようにこの流れに入り込めるのはさすがだし、後半にブスケッツが登場すると、その落ち着いた流れに拍車がかかるのが匠である。
ギリシャは後半に左のWBに入ったリムニオスが終盤強引に打開を試みたものの、スペインのバックス相手には歯が立たないまま時計の針は進んでいく。1-0という最小得点差ながら、保持でも非保持でもギリシャに糸口を掴ませなかったスペイン。ゴールに向かわないことを許してしまったことでギリシャは勝ち筋を見失ってしまった印象だ。
Pick up player:エメリク・ラポルト(ESP)
こういう試合はCB。不慣れな右側でチャンスを潰し続けたラポルトをチョイス。フルタイム出ていればブスケッツだったかもしれない。
試合結果
2021.11.11
カタールW杯欧州予選 第9節
ギリシャ 0-1 スペイン
アテネ・オリンピックスタジアム
【得点者】
ESP:26’(PK) サラビア
主審:シモン・マルチニャク
第10節 スウェーデン戦(H)
■適切な舵取りで本大会ストレートイン達成
ついにグループBもクライマックス。スペイン×スウェーデンは文字通りの決勝戦。W杯の出場権をかけた直接対決である。前回のスウェーデンホームでの対戦と同じく、試合は『スペイン×スウェーデン』という看板通りの内容となった。スペインは保持、スウェーデンは非保持で立ち向かうという構図で流れる試合である。
スペインのボール保持はIHがまず降りる動きを見せるところから。この試合で降りる役割を担ったのはガビ。ブスケッツとフラットな位置で並んで最終ラインからボールを引き出す。彼らのこの試合のボール保持の第一ステップはスウェーデンの4-4ブロックを乱すこと。より具体的に述べれば、SHを吊り出し4-4ブロックを4-3に変えてしまうことである。
スペインが狙いを定めたのはクラエソンのサイド。ガビの降りる動きにクラエソンがついて来ると前方への進撃が始まる。狙い目となるのはCHの間。このスペースにデ・トーマスやダニ・オルモが入り、そこにトーレスやガビから楔を入れる。
楔を受けた選手は自らが反転、もしくはポストでボールを落とすことで前を向く選手を作る。まとめるとブロック外で前を向く選手を作り出し、ライン間で前を向く選手を作るという2ステップ。4-4ブロックの手前、大外、ライン間、DFラインに張り付く選手の4人を同サイドで形成し、そこから崩す。先導役はガビ、ブスケッツ、そして最終ラインの2人である。
スペインはそもそもこの試合は引き分けでOK。無理にゴールに向かわなくていい時のスペインは強い。かつこの試合はスペインのバックスの舵取りが非常に適切だったので、プレスに引っかかるのも数えるほど。致命傷にはならなかった。
スウェーデンの戦い方は前節よりはだいぶ修正されたように思う。固く守る4-4-2から繰り出されるのはロングカウンター。2列目やクルゼフスキの特徴を踏まえると以前のスウェーデンと比べるとやや機動力を大事にするスタイルの方が今のチームには合っているのかもしれない。
ロングカウンターからイサクやフォルスベリがチャンスを迎えるスウェーデンだが、ゴールはまだ遠い状況。スペインはロスト後のハイプレスによる即時奪回と撤退4-3-3を使い分け。ロングボール以外の組み立ての意識が薄いスウェーデンに対してあえて保持の時間を与えるという選択もした。
後半になると得点が必要なスウェーデンはプレスの時間を増やしながら試合を活性化する。正直、スペイン相手にプレスに行く状態は不本意ではあっただろうが、点が必要なので仕方がない。
トランジッション増加+イブラヒモビッチというコンボで得点を狙うスウェーデン。しかし、この2つは取り合わせが悪く、速いテンポの中でイブラヒモビッチが輝くのは難しい。ハイプレスに貢献するのは難しいし、裏抜けというよりは足元で受けたがるのがイブラヒモビッチ。それでも凄みがあればいいのだけど、前節と同じく決定的な働きはできなかった。
そんな中で点を取ったのはモラタ。同じく途中交代のダニ・オルモのシュートを押し込んでスペインのW杯を決定づける先制点をゲット。凄みはないが、真面目なストライカーが優れたポジショニングでこぼれ球を押し込むという、モラタらしいゴールで試合は決着。ラスト2節で一気にスウェーデンをまくったスペインが本大会の出場権を確保した。
Pick up player:ガビ(ESP)
素直に9月トップデビューの選手がW杯出場の命運を背負った試合に出ているというのが一つ。そういう試合で違和感なく普通に代表の一員としてプレーできているのがさらに上乗せ。
試合結果
2021.11.14
カタールW杯欧州予選 第10節
スペイン 1-0 スウェーデン
エスタディオ・オリンピコ・セビージャ
【得点者】
ESP:86′ モラタ
主審:フェリックス・ブリヒ