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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 European qualifiers」~カタールW杯 欧州予選 コソボ代表編

 コソボ代表、カタールW杯欧州予選の歩み。第4節から。

目次

2021/09 招集メンバー

GK
アリヤネット・ムリッチ
サミル・ウイカニ
ヴィサル・ベカイ

DF
メルギム・ヴォイヴォダ
アミル・ラフマニ
フィダン・アリティ
フロラン・ハデルジョナイ
ミルリンド・クリエジウ
ベティム・ファズリー
アルメンド・サチ
ダヴィッド・ドミジョニ
リリム・R・カストラティ

MF
ベサル・ハリミ
イブラヒム・ドレシェヴィッチ
ヴァロン・ベリシャ
ヘロリンド・シャラ
フローレント・ムスリヤ
フロリアン・ロシャイ
ジメール・バイティキ
ムハレム・ヤシャリ

FW
リリム・カストラティ
エルバ・ラシャニ
ベダト・ムリキ
アストリト・セルマニ
ミロト・ラシカ

第4節 ジョージア戦(H)

画像1

■滑らかなサイドチェンジを生かした先制点

 記念すべきグループB観戦の1試合目にして、最も情報がない2チームによる対戦である。と思いきや、コソボ代表にはなんとこんな情報源がありました。すげー。

 というわけでコソボは多少予習ができた。立ち上がりはジョージアがボールを持つ展開に。4-4-2からCHが縦関係に段差をつけてパスコースを作る。コソボはこれに対して4-3-3の形で構える。コソボの守備の特徴としてはIHのハリミとペリシャが高い位置を取ること。ジョージアのCHが縦に動くのについて行ったり、あるいはジョージアのCBにプレッシャーをかけにいくのはIHの役目である。

 なので、前後関係としてはコソボのWGがIHよりも後ろの形。ジョージアのSBには持たせるのはOKというのが考え方のベースにはあって、彼らがボールを持った時はコソボは内側のパスコースを優先的に切っていた。

 全体的にコソボは中央だけ閉じてサイドに追い込みさえすれば、ジョージアが前進できないという算段だったのだろう。このコソボの読みは当たっていたといえそうで、ジョージアは実際最終ラインでボールを行ったり来たりさせているだけ。ボールを持っているというよりは持たされている形であった。

 高い位置までボールを運べれば右のWGであるツィタイシュヴィリがカットインで勝負を仕掛けられるのだが、そこまで辿り着けないジョージア。CFのクヴィリタイアへの長いボールがもう少しおさまれば押し上げが効いたと思うのだけども。

 一方、コソボの保持は3バック変形だった。両CBと右のSB3枚で最終ラインを形成する。左のSBであるハデルジョナイは高い位置をとり、同サイドのWGであるラシャニは内側に絞る。逆に右の大外はオーソドックスにWGのカストラティが幅をとる。Jリーグでいえば鳥栖に若干似たシステムだなと思った。

 システムだけでなく、前進の仕方は非常にスマートだったコソボ。3バック+2センターの5人でジョージアのプレス隊を空転させて、幅を使いながら攻撃を進めていく。これだけ自在に大きく展開さえできれば、4-4-2で守るのは難しいだろう。

 先制点もこのサイドへの展開を生かした形。左サイドでラシャニが潰れた後、後方から実直にオーバーラップを繰り返していたハデルジョナイがエリア内にクロスを上げる。これをジョージアの選手がクリアしきれず。ややオウンゴール気味だったが、持ち味を発揮したコソボが予選初勝利に向けた大きな先制点を手にした。

 リードを許した後半はジョージアが攻めの姿勢を強め、コソボはラインを下げて受けに回る。ラインを深い位置まで下げたせいで、コソボは保持で時間を見出すことができず、前半よりもジョージアはプレスが効くようになってくる。

 だが、最終ライン勝負になるとジョージアはやや分が悪い。前半と異なり、縦に早いロングカウンターからジョージアのハイラインの裏をとり、後半もコソボはチャンスを創出する。

 後半はトランジッションを増やし、クロスに対しても人数を揃えたジョージアだったが、終盤はややガス欠気味に。しっかりとゲームクローズを決めたコソボがアウェイで勝利。予選未勝利対決を制し、4節目で同国史上初のW杯予選勝利を挙げた。

Pick up player:ヴァロン・ペリシャ(KOS)
 プレッシングに加えて、逆サイドのハーフスペースの裏抜けまで試みるダイナミズムさが輝いていた。システマティックなチームは仕組みに目が行きがちだけど、フィジカル的にタフなタスクを背負っている選手の強度が落ちると一気に機能性が下がる。そういう意味で彼の存在はコソボにとって大きい。

試合結果
2021.9.2
カタールW杯欧州予選 第4節
ジョージア 0-1 コソボ
アジャラベット・スタジアム
【得点者】
KOS:18′ ムリキ
主審:マイコラ・バラキン

第5節 ギリシャ戦(H)

■ハイプレスに隠された事情

 前節、ジョージアに競り勝ちW杯予選史上初の勝利を決めたコソボ。上位に食いついていくためには、ジョージア以外の相手からも勝ち点を奪い取れなければ厳しい。そういう意味ではこのギリシャ戦は試金石となる試合だろう。

 一方のギリシャは開幕後2試合で未勝利。スペインはともかく、ジョージアに引き分けのは痛恨で出遅れをここから巻き返していかなければいけない立場となる。

 局面としては互いに等しくボールを持つ時間を持てる展開となった。コソボの保持は前節と同じ。ハデルジョナイを片上げする、ややアシメな3バック化。ギリシャに対してサイドを押し上げる。ギリシャの守備はコソボの左サイドにボールがある時は若干厳しめでこちらのサイドからはボールを運ばせないという意思を感じた

 コソボの左サイドはこれに対してIHのベリシャが外に流れるなどしてマークを乱しに。高い位置をとるハデルジョナイを生かすために動きをつけていく。逆に右のサイドからはズレを作れずに苦しんでいる感じ。ボールを進めるならば左から運びたいのだろうなと思った。

 ギリシャは5-3-2の形をあまり変形させない形でのビルドアップ。これに対してコソボはワイドのCBに対してはWGがマーク、CFのムリキはアンカーを警戒する。ギリシャのWBへのチェック役はIHが出ていき、逆サイドのIHがアンカーのドレシェヴィッチとフラットに並びながら中央をカバー。前線と中央が連動しながらギリシャのバックラインに対してミドルブロックを組み、プレスをかけていく。

 ギリシャはCBの中央であるツァベラスが最も時間に猶予を持ってプレーすることができていた。ここから幅を使ったフィードを飛ばせれば、コソボのIHが出てくる前に前進できるのだが、このフィードがどうも決まらない。

 コソボは左サイドのズレ、ギリシャは数的優位のバックラインのところから前進のチャンスがありそうな状況だったが、なかなかミドルゾーンからゴール前まで進むことができない。

 ズレを生かしてゴールに迫ることが互いにできず、拙攻が続く中でチャンスを得たのはギリシャ。ミドルプレスから引っ掛けたところで、この試合ではなかなか見られなかったカウンターを発動。最後はドゥヴィカスが仕留めて前半終了間際に先制点を獲得する。

 後半頭から、リードを得たギリシャはよりタイトにコソボにプレッシャーをかけていく。これまでの時間帯においては最終ラインにあまりプレッシャーを受けない状況で進んでいったコソボだったが、プレスに晒され時間の余裕がないとミスが目につくように。プレス耐性にはやや課題を覗かせたコソボだった。

 しかし、ギリシャにもギリシャでハイプレスに打って出る事情がある。撤退した際の守備の強度がどうも怪しい。EUROを優勝したイメージから堅守の印象が強いチームだが、このギリシャはエリア内の対応が結構怪しい。だからこそ、前から捕まえに行かないと守り切れないのだろう。

 プレスが弱まったことで前進できたコソボはボールを左右に振りながらエリア内にハイクロスを放り込んでくる。その試みが実を結んだのは後半追加タイム。エリア内に飛び込んだハデルジョナイの折り返しからムリキが同点弾を決めて土壇場で勝ち点を確保した。

 2節連続で勝ち点確保に成功したコソボ。次節はいよいよスペイン戦。ハリミが出場停止、ベリシャが負傷交代と厳しい台所事情ではあるが、チームは上昇気流で強豪に胸を借りることができそうだ。

Pick up player:アナスタシオス・バカセタス(GRE)
 引き分けた試合はどちらから選手を選ぶか迷ったけど、本文がコソボの話が多めだったのでギリシャから選出。プレスに出た後半の立ち上がりはこの試合において最も力関係が片方に傾いていた時間帯だったし、IHは比較的長い時間ホルダーをチェイスしながらプレスを成り立たせようと奮闘していた。その中でも先制点のインターセプトに絡んだバカセタスをチョイス。

試合結果
2021.9.5
カタールW杯欧州予選 第5節
コソボ 1-1 ギリシャ
プリシュティナシティ・スタジアム
【得点者】
KOS:90+2′ ムリキ
GRE:45+1′ ドゥヴィカス
主審:フランシス・ルテクシエ

第6節 スペイン戦(H)

■捨ててでも噛みつく

 先に言っておくが、グループBの第6節の2試合は面白かったのでオススメである。

 この試合を面白くしたのは間違いなくコソボである。第4節、第5節のコソボは最終ラインの可変をベースとして、5レーンを埋めながらのアタックを行ってきた。Jリーグでいうと若干鳥栖のような感じ。ジョージアやギリシャに対して渡り合いながら勝ち点をもぎ取ってきた。

 スペインに対して、この可変を引っ提げてどう戦うのかな?と思っていたのだけど、普通に第6節のコソボはこの可変をあっさりと捨てる。4-4-2で組まれたコソボの陣形は特に動くことはなく、可変の要素は非常に減った。

 恐らく、この変更はレギュラーのIHであるハリミがサスペンション、ベリシャが前節と負傷(この試合モベンチにはいた)と苦しいやりくりだったことと無関係ではないはず。しかし、このやり方は十分スペイン対策とコソボの弱点を隠す形になっていた。

 前節のギリシャ戦でコソボが見せた課題はバックラインにプレスをかけられた際にボールコントロールが乱れ、怪しいショートカウンターを受けてしまうということである。

 この試合のコソボのボール回しはSBにまずボールを預ける。すると、スペインは前線が横方向にスライドしながらプレスをする。こうなると、コソボは逆サイドのSBにピッチを横断するロブパスを送る。スペインの前線がスライドした分、時間がもらえたコソボのSBはここから2トップに向けて一気に裏に蹴りだす。コソボはスペインのプレスの裏をかくこと、そして自軍のビルドアップ耐性の低さを覆い隠すいいやり方を見つけたように思った。

 コソボが徹底していたのは中央をなるべく保持において使わないこと。先ほどのボール循環のルートを見ればわかるが、ほぼ中央でのロストの可能性はない。仮に中央を使うとしたら2トップにロングボールを当てるときくらい。これも、当然ショートカウンターの危険性は少ない。しかも、ラシツァとムリキは割と収まったし、裏抜けのところからチャンスは作れていた。

   そりゃ、中央を経由できた方がチャンスはあるだろうが、スペインが相手ならばおかせないリスクはあるだろう。大量にあるチャンスを外した!というのは言い過ぎだが、どれかを決めていればあるいは・・・と夢をみれるくらいにはコソボにはチャンスはあった。

 守備の局面でスペインに対するときにはハーフスペースと大外をどう埋めるかは課題になる。コソボは左右でやり方を変えていたのが印象的だった。右サイドはSHのラシャニが根性で大外をケア。逆サイドの大外はSBのヴォイヴォダがでていったところをCHのドレシェヴィッチを埋める形だった。このドレシェヴィッチが最終ラインに出たり、入ったりするのがうまい。下がりっぱなしだと、バイタルが空きすぎてしまうし、もちろん最終ラインに穴をあけてはまずい。ここをドレシェヴィッチはうまくこなしていた。

 横移動を減らし、ズレを作りにくくしたコソボの4-4-2はだいぶ効いていた。スペインは左のユニットであるマルティネス、レギロンの組み合わせはここ2試合の組み合わせと比べるとビルドアップであまり効いていなかったのも大きかった。

   だが、スペインもさるもの。押し込んだ状態から細かいパス交換で最後はフォルナルスが仕上げ。前半のうちにコソボのブロックをこじ開けて見せた。

    細かい部分においてもスペインはさすが。コソボのCBへのプレスが甘いと見るや、ブスケッツが1列前に出たりなどポゼッションの調整を図っていたし、フェラン・トーレスのクイックネスが一番効いてることを見ると、後半はアダマ・トラオレを入れてみるなど、十分に嫌がらせは出来ていた。

    チーム全体の話でいうと、後半のスペインはワンタッチのパスを増やしてテンポを早めに前に運び、コソボの守備ブロックの変形の時間を奪い、判断の負荷を上げていた。

 見事な対策を打ったコソボだったが、スペインはもう一段上だった。それでも時折、スペインは背筋を凍る思いをするくらいにはコソボもチャンスを作っていた。敗れはしたが10月以降も楽しみなチームとなったコソボだった。

Pick up player:イブラヒム・ドレシェヴィッチ(KOS)
 穴をあけることが少ないブロック守備を形成できたのは彼の判断能力の高さを生かしたシステムが成功したことが大きい。急造感のあるフォーメーションをうまく回す原動力となった選手。

試合結果
2021.9.8
カタールW杯欧州予選 第6節
コソボ 0-2 スペイン
プリシュティナシティ・スタジアム
【得点者】
ESP:32′ フォルナルス, 88′ トーレス
主審:ボビー・マッデン

2021/10 招集メンバー

GK
アリヤネット・ムリッチ
サミル・ウイカニ
ヴィサル・ベカイ

DF
メルギム・ヴォイヴォダ
アミル・ラフマニ
フィダン・アリティ
フロラン・ハデルジョナイ
ミルリンド・クリエジウ
ベティム・ファズリー
ダヴィッド・ドミジョニ
リリム・R・カストラティ

MF
ベサル・ハリミ
イブラヒム・ドレシェヴィッチ
ヘロリンド・シャラ
フローレント・ムスリヤ
フロリアン・ロシャイ
ジメール・バイティキ
ベルサント・ツェリナ
トニ・ドムジョニ

FW
リリム・カストラティ
エルバ・ラシャニ
ベダト・ムリキ
アストリト・セルマニ
ミロト・ラシカ

第7節 スウェーデン戦(A)

■ダイナミックな選択はわからなくもないが…

 9月シリーズでは検討を見せたコソボだが、3連戦の後ろ2つはあえなく連敗。スウェーデンとのアウェイゲームは上位進出を賭けるラストチャンス。敗れてしまえば、2位争いからは数字上で弾き出されてしまうことになる。

 4-4-2に迎え撃つことが容易に想像できるスウェーデンに対して、コソボがどう立ち向かうのか?と言うのがこの試合の最も注目のポイントだった。コソボが選択したのは4-4-2。スウェーデンと噛み合わせる形だった。

 コソボの視点からいえば一見ロジカルに見えるこの選択。だが、個人的にはちょっと色々悪手だったかなと思った。まず、スウェーデンはここ最近の列強国と同じくとりあえず3-2-5への変形を行うチーム。4-4-2で迎え撃ってもコソボは単に目の前の相手を捕まえればいいわけではない。

 加えて、スウェーデンはEUROの段階で特にこの3-2-5の移行をスムーズに行っていたチームの1つ。ひとりひとりが決まったポジションを取るのではなく、それぞれが周りの動きに合わせて上下動し、バランスを維持することができる。

 スウェーデンの保持が誰がどこに入るか決まっておらず、移動が多いとなるとコソボにとっては判断の負荷がかかる感じ。それならば5バックにしてとりあえずレーンを埋めてしまうやり方もありだったかなと思ってしまった。

 スウェーデンはサイドから安全にボールを運搬。左サイドのフォルスベリを軸に、内外を使い分けながらコソボ陣内に迫っていく。先制点こそVARサポートによって導かれたPK判定など苦戦はしたが、主導権を握っていたのはスウェーデンだった。

 コソボは保持においても正直いえば残念だった。こちらも変形しながら相手の4-4-2の穴を開けるやり方が輝いているチーム。だが、今回の試合ではその持ち味がほぼ出ず。直線的なロングボールから進んでいこうとすることを優先していた。

 確かにスウェーデンのバックスは機動力が足りていないので、早めに攻め落としてしまえば!というのもわからなくはないのだが、如何せん前線の空中戦の勝利が悪すぎる。全体の押し上げもままならないままに、蹴るのでセカンドボールもスウェーデンに。

 56分のシーンなど、長いボールでサイドに展開できた時はチャンスになったものの、コソボはそこに至るまでの状況を作り出すことができなかった。一方、そんなコソボを尻目にスウェーデンは得点を積み重ねていく。後半に生まれたイサクとクアイソンの得点はいずれもダイナミックでスーパーな得点。この試合のコソボのFWにやって欲しかった働きをスウェーデン側のストライカーがやって見せた。

 3-0で完敗となったコソボ。突破の可能性は完全に消滅。どうせ散るならロングボール主体ではなく、保持での変幻自在さの部分でスウェーデンに通用するかを見てみたかったところ。どうみても不利なフィジカル勝負に突っ込んで行ったのは、この予選でコソボを見守っている身としては少し勿体無いように思えた。

Pick up player:アレクサンデル・イサク(SWE)
 FWの個でワンチャンスを狙っていたコソボをワンチャンスで仕留めることで返り討ち。チームの核となるFWであることを示した。

試合結果
2021.10.9
カタールW杯欧州予選 第7節
スウェーデン 3-0 コソボ
フレンズ・アレナ
【得点者】
SWE:29′(PK) フォルスベリ, 62′ イサク, 79′ クアイソン
主審:マルコ・ディ・ベッロ

第8節 ジョージア戦(H)

■終盤に食らったしっぺ返し

 ボール保持の主導権を握ったのはコソボ。シャドーがやや絞り気味の3-4-3で構えるジョージアに対して、大外のSBを安全地帯にしながら前進していく。

 コソボが狙っていたのはサイドの裏のスペース。WBとワイドのCBのギャップを突くようなフリーランで相手をサイドから押し下げる形でPAに迫っていく。

 しかし、試合は早々にジョージアが先制。問題なく処理できるボールだったのだが、GKのムリッチがまさかのファンブル。ジョージアにプレゼントの形で先制点を与えてしまう。

 失点後も変わらず前進し続けることが出来ていたコソボであったが、最後のPAのところでジョージアの守備はエリア内に人数を揃えることが出来ており、なかなかクロスが有効打にはならない。38分にようやく相手を外したクロスからコソボは決定機を得るが、これはギオルベリジェがスーパークリア。コソボは同点のチャンスを逃す。

 それでも、前半終了間際に実直に押し込み続けたコソボにはご褒美が与えられる。左サイドからの侵入でフリーになったハリミに対応が遅れたジョージア。カシアがこれにアフタータックルをかましてしまいPKに。前半のうちになんとか同点に追いついたコソボだった。

 しかし、試合はジョージアが勝利をモノにする。コソボは守備時に相手のシャドーとWBを自軍のWGとSBがマンマークで見る形で守っていた。だが、終盤の守備→攻撃への移行のところでコソボの左のSBであるアリティが前に運ぶ際にロスト。再びエリア内にあげられたクロスに合わせたのは彼がマーカーとして監視していたダヴィダシュヴィリだった。

 思えば前半のコソボのPKはジョージアの守備後の脱出が甘くなってしまったところに付け込んだもの。後半にジョージアと同じミスをしてしまったコソボには痛いしっぺ返しが受けた形での敗戦になってしまった。

Pick up player:グラム・ギオルベリジェ(GEO)
 さすがに押し込まれる展開は楽ではなかったので、38分にスーパークリアをかましたのはでかかった。

試合結果
2021.10.12
カタールW杯欧州予選 第8節
コソボ 1-2 ジョージア
ファディルボクリ・スタジアム
【得点者】
KOS:45‘(PK) ムリキ
GEO:11‘ オクリアシュヴィリ, 82’ ダヴィダシュヴィリ
主審:パベル・ラコウスキー

2021/11 招集メンバー

GK
アリヤネット・ムリッチ
サミル・ウイカニ
ヴィサル・ベカイ

DF
メルギム・ヴォイヴォダ
アミル・ラフマニ
フィダン・アリティ
ミルリンド・クリエジウ
ベティム・ファズリー
ダヴィッド・ドミジョニ
リリム・R・カストラティ

MF
ベサル・ハリミ
イブラヒム・ドレシェヴィッチ
ヘロリンド・シャラ
フローレント・ムスリヤ
フロリアン・ロシャイ
ジメール・バイティキ
ベルサント・ツェリナ

FW
リリム・カストラティ
エルバ・ラシャニ
ベダト・ムリキ
アストリト・セルマニ
ミロト・ラシカ

第10節 ギリシャ戦(A)

■有終の美を許さず、意地を見せたコソボ

 前節でW杯出場の目が潰えてしまったギリシャ。コソボとの試合が消化試合になったのは不本意だろうが、有終の美を飾るべく主導権を握ったのはホームのギリシャの方だった。

 コソボの4-4-2のプレッシングに対して、ギリシャはWBを経由しながら大外を回しつつボール保持。ハーフスペースの裏抜けを噛ませることでギリシャはコソボの最終ラインに穴をあける。

 相手に裏を意識させることができればこちらのもの。コソボのCHが最終ラインに意識を向けることを利用して、今度はマイナス方向のIHに前を向かせてボールをもつ形を作りボール保持を進めていく。

 コソボの最終ラインは4枚、かつ同サイドにギリシャがきっちり寄せる形でポゼッションをするので、逆サイドは空くことが多い。ファーにクロスを上げることでミスマッチを作りゴールに迫るのがギリシャの狙いだった。特に印象的だったのはペルカス。保持よし、飛び出しよしでコソボの守備の切れ目に顔を出し続けた。

 ラシツァのカウンターから活路を見出したいコソボ。動き出しでギリシャのDFラインを置いてけぼりにすることはできなくもないが、タメができていないのでそこから先に手詰まりになる。

 そもそもコソボは予選のもっと手前の段階では保持でサイドを変えながら徐々に前進していく形はもっと上手いチームだと思ったので、そこが試合を追うごとに失われてしまったのは残念である。

 ギリシャ優勢の中で、ホームチームに先制点が生まれたのは前半終了間際。コソボのリトリートが遅れたことで、4−4ブロックの形成が不安定に。ここも持ち上がったのはペルカス。彼のクロスからニアに潰れたマスラスのゴールでギリシャが先制する。

 後半もペースは変わらずギリシャ。動き出しが早く大きいシャラのところを狙い目に、ギャップをついてパスワークで安定したポゼッションを見せる。このまま、ギリシャが試合を掌握して終わりそうになったところでセットプレーでやり返したコソボ。意地のラフマニのゴールでタイスコアに持ち込む。

 そこから先は試合は一気にアップテンポに。コソボが裏への浮き球を軸にゴール前の崩しを見せると、ギリシャはマスラスへの長いボールから一気に前進を狙う。交代選手がエネルギッシュなプレーを見せたこともあり、ゴール前でのプレー自体は増えた終盤戦。しかし、試合はそのまま終了。最終節は痛み分けで予選の全日程を終えた両チームとなった。

Pick up player:アミル・ラフマニ(KOS)
   試合全体で見ればペルカスも良かったけど、最終ラインを支え続けたラフマニの一発はエモかった。

試合結果
2021.11.14
カタールW杯欧州予選 第10節
ギリシャ 1-1 コソボ
アテネ・オリンピック・スタジアム
【得点者】
GRE:44′ マスラス
KOS:76′ ラフマニ
主審:アレクセイ・クルバコフ

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