日本代表、カタールW杯アジア最終予選の歩み。
2021/9 招集メンバー
GK
川島永嗣(ストラスブール)
権田修一(清水)
谷晃生(湘南)
DF
長友佑都(無所属)
吉田麻也(サンプドリア)
佐々木翔(広島)
酒井宏樹(浦和)
山根視来(川崎F)
室屋成(ハノーファー)
植田直通(ニーム)
中山雄太(ズウォレ)
冨安健洋(ボローニャ)
MF
原口元気(ウニオン・ベルリン)
柴崎岳(レガネス)
遠藤航(シュツットガルト)
伊東純也(ゲンク)
南野拓実(リバプール)
守田英正(サンタクララ)
鎌田大地(フランクフルト)
板倉滉(シャルケ)
堂安律(PSV)
久保建英(マジョルカ)
FW
大迫勇也(神戸)
古橋亨梧(セルティック)
※板倉がケガのため途中離脱し、DF昌子源(G大阪)を追加招集(9/1)
※酒井がオーバーワークを考慮し途中離脱(9/2)
※南野がケガのため途中離脱(9/4)
※FWオナイウ阿道(トゥールーズ)を追加招集(9/4)
第1節 オマーン戦(H)
■優位性の担保が外れたことが招いた敗北
中央とサイドにバランスよく人を置いた日本の4-2-3-1に対して、オマーンが採用したのは中盤ひし形の4-4-2。中央に極端に人を置いたやり方だった。
展開としては、中央に密集するオマーンの守備陣を日本がサイドチェンジを交えながら分解できるかどうか?というものになっていくのだろうなと予測できた。そういう展開に実際になった時に気になったのは柴崎の存在。柴崎の持ち味はトランジッション局面における状況把握の早さとそれを活かした縦パスで一気に局面を進めるカウンターを発動できることである。
しかし、この試合においては中央に人が多い陣形になっているオマーンに対して、一撃必殺スルーパスは相性があまり良くない。柴崎自体のコンディションは悪くはなさそうだったが、持ち味と展開がミスマッチになりそうなプレイヤーだなと思った。
もう1つ、柴崎は守備においてニアのハーフスペースを埋める意識が希薄で、左のペナ角付近で相手に前を向かせる頻度が多かった。この試合においてはオマーンのアタッカー陣が中央から外まで自在に流れながら攻撃を繰り返していたので、対応しにくかったかもしれないが、3分のシーンのように割と埋めるのが簡単そうな場面でもオマーンの選手にノープレッシャーで前を向かせているのは気になった。
オマーンの守備の目的は明らかに同サイドでの封鎖。ボールサイドのFWは自陣の低い位置まで下がっていたし、トップ下やアンカーなど盤面上はピッチのセンターラインにいる選手もボールサイドに流れることで密な状態を作っていた。
それでも、日本は吉田を主体として対角にパスを送ることで徐々にペースをつかんでいく。広いスペースがある方のサイドに振るパスはもちろん、特に効果的だったのは右のWGの伊東の裏抜けに合わせたフィード。オマーンの最終ラインを縦に突っつくこのやり方は試合を通して最も効果的だったといえるだろう。
逆に、大外のサイドでボールを持った時は手詰まり感があった。DF-MFのライン間の内側で原口のサポートをする先週や、ハーフスペースの裏に走り抜けることで、原口にカットインのスペースを作る動きがなかったことが停滞の要因。そうなると、原口がドリブルで相手をちぎって投げ続けなければ活路は見いだせない。
オマーンの攻撃はその日本が出来なかったサポートが非常に上手だった。大外でボールを持つ選手を内外から追い越すように同サイドの裏抜けを挟むことでSBをピン止めしつつ、CHやSHをどかしてしまうフリーランは効いていた。後方からのビルドアップもアンカーが浮いたり、インサイドハーフがサポートのために降りてきたりなど日本のプレスにつかまらない工夫を披露。高い位置においてはサイドチェンジを減らす代わりに、エリア内に飛び込む人数をかけてクロスに威力を持たせるやり方に専念していた。
そういう時にこれまで何とかしていたのは日本のバックス。大外で持たれた場面でいえば酒井と長友にボールホルダーが食い止められてしまえば何もできはしない。しかし、この試合ではアジアで敵なしだった両者の絶対性は見られず。酒井に関しては試合後離脱したようにコンディションの部分がおかしかったし、長友も本来であれば置いていかれないところで置いていかれてしまう場面が目についた。吉田も離脱こそしていないが、コンディション的にはぎりぎりだろう。
アジアで優位性を保つために不可欠だったバックスがツケを払えないとなると、いよいよゴールを脅かされることになる日本。抜け出しから大外に柴崎を引っ張り出すと、クロスするランで手前に入ってきた動きで植田を翻弄したアル・サブヒがフィニッシュ。試合終盤に先制点をゲットした。
後半の日本は今、最も旬なタレントである古橋に左サイドを託すが、原口の焼き直しの役割では難しいだろう。もっとスピードに乗った状態でボールを渡したいプレイヤーだ。個人的にはこういうことをやらせたいなら三笘が一番向いている気がする。ちなみに前線の裏抜けも裏へのフィードもなかったことを踏まえると、チームとして奥行きを使う考え方はあまりなかったはず。そうなると仮に古橋を中央で起用していたとしても厳しかったように思う。
アドリブで何とかしたい!という前提に基づくのならば、交代で入った久保と堂安を併用するアプローチが最もシンプルで効果的だと思う。けども、そのやり方がオマーン相手に通用しなかった以上は、前提を考え直さなければいけないのではないだろうか。バックラインの優位という安定性がなくなったこの試合は、日本の厳しい現状が見えてくる90分となった。
試合結果
2021.9.2
カタールW杯アジア最終予選 第1節
日本 0-1 オマーン
市立吹田サッカースタジアム
【得点者】
OMA:88′ アル・サブヒ
主審:モハメド・アブドゥラ・ハッサン
第2節 中国戦(A)
■苦しみの程度が違う
共に初戦の敗戦で厳しい最終予選のスタートとなった中国と日本。中国はオーストラリア戦の4-2-3-1から5-3-2にシステム変更。脆さを見せたバックラインを固めるために形を変えてこの試合に臨んできた。一方の日本はフォーメーションは維持。離脱組や合流組の顔ぶれの変化も相まって久保、古橋、冨安、室屋の4人をスタメンに新たに起用してきた。
日本のオマーン戦の課題は中央に固まる相手を攻略できなかったこと。中国が5-3-2を採用しているのは、オマーンに形だけでも近づけて日本を初戦と同じような手詰まりに追い込もうとしたのかもしれない。
同じ形で臨んだ日本だったが紐解いてみるとやや変化があった。1つは左サイドに起用された古橋がPA付近の前線に張るケースが増えたこと。動き出してもらいやすいインサイド寄りの立ち位置の方が、前回のような大外に貼る使われ方よりもやりやすそう。
オマーン戦に比べれば大迫が中央でボールを収められたのも大きい。前線はエリア内のスペースにおける動き出しで勝負できており、前回よりは持ち味を発揮できていたように思う。欲を言えば、外を使う長友と古橋の関係性を構築できなかったのは痛かった。内から外への斜めのランを使えれば久保や柴崎が飛び込めるスペースはもう少しできたように思う。
右サイドにおいては久保が崩しに加わったことが大きかった。オマーン戦では酒井と伊東という2枚の関係でヨーイドンの裏抜け一発勝負だったが、このサイドに久保が加わることでボールも人も動きが出るように。伊東や室屋がボールを引き出すためのフリーランで中国のDFラインを下げることができていたし、久保自身も中国の中盤の隙間に入り込むカットインを織り交ぜながら内外を使い分けることができていた。中の守備がスカスカだった相手の力量の問題もあるが、レパートリーとしてはオマーン戦よりも増えたように見える。
しかし、当然まだ問題もある。1番気になったのは攻撃時に左サイドで長友が孤立しまうこと。オーバーラップするのは大事だとは思うが、彼が1人で持ち上がったところでできることは限られている。インスイングでクロスを上げるのが一杯で、高さの面では分がある中国の最終ラインに対しては効果的ではなかった。
もっともこれは長友のせいだけではない。彼がそういうプレイヤーだというのは今に始まった事ではないし、サポートがいない中でも輝けるSBはそもそもなかなか日本にはいない。
むしろ気になるのは中盤のポジションバランスの方。特に柴崎はどうバランスを取ったらいいのか悩んでいるように見えた。行動範囲広くフリーダムにボールを持ち運ぶ嫌いがある選手なのだが、右サイドでは久保が下がってボールを運ぶところからトライアングルの崩しまでは担当できる。そういう中で柴崎は持ち味の棲み分けには困っていた印象。
むしろ彼には孤立する左サイドの手助けをして欲しかったところ。右サイドですでに人数がいるところで浮遊していてはネガトラの際の対応にも効かないし。オマーン戦では中央を固める相手とのミスマッチさを指摘したけど、中国戦では味方との相性の部分が気になった。コンディション以上にミスマッチ感がどうしても気になってしまうのが今の柴崎である。
30分を過ぎたあたりから日本は徐々にボールは足元から足元につながる形が増える。こうなると停滞感が出てくる。それでもある程度崩せてしまうほど、中国の中央密集の守備は脆かったけど。それでも受けてから考える感の強い崩しは気になる。
このメンバーでの崩しならば、伊東と古橋をまずどう抜けさせてスピードに乗った状態で敵陣に迫るか?から逆算してもいいのではないか。ラインが低くても初速で逆を取れるランができる彼らならば、動き出しで違いは作れるはず。
なので、日本はこの2人にボールを届けるレパートリーを見せて欲しかった。徐々に足元に収束していくのは少し残念だったし、得点シーンのように独力で伊東がスピードに乗りながら加速できることを許す相手が本大会に多く存在するとは思えない。大迫のキープ力が弱まる中で、彼らの動き出しをどう活用するかは最終予選を通しての日本の課題になりそうだ。
一方の中国はより厳しい状況だった。エウケソンは吉田、冨安はもちろん、室屋を相手にしてもロングボールのターゲットとしては機能せず。陣地回復の方法を見つけることができず、ローラインからの脱出方法がなかった。
後半の4-4-2の変形でのマンマークチャレンジはやけっぱち感が否めない。確かにアタッカー陣は攻撃の機会を得れば強力かもしれないが、ボールを取り返すのに特化した面々ではないし、日本代表は局面での対人勝負に限ればアジアではそもそも非常に優位な立ち位置にいる。日本の得意なフィールドで、かつボール奪回の機会を増やせない設計となれば、びっくり箱以上の効果はないのは当然だと思う。
案の定、彼らのプレスが脅威になったのはせいぜい10分程度。なんか、 ONE PIECEのルフィに負ける前のモリアみたいだなと思った。監督は解任危機も叫ばれていたし、仕方ないのかもしれないが。
試合はそのまま終了。互いに苦しみが見える一戦だったが、下馬評通り日本が勝利。局面での質の差が勝敗を分けたと言っていい試合だろう。
試合結果
2021.9.7
カタールW杯アジア最終予選 第2節
中国 0-1 日本
ハリーファ国際スタジアム
【得点者】
JAP:40′ 大迫勇也
主審:ナワフ・シュクララ
9月雑感
■悩ましい両サイドと柴崎
日本にとっては苦しい9月シリーズとなった。
オマーンの攻撃は狙うサイドに目星をつけての同サイド攻略。もちろん配置的にやられた部分は非常に大きいのだが、気になるのは両SBのパフォーマンス。残念ながら日本が配置的にやられるというのはさして珍しい話ではないのだが、そういった歪みを取り除いていたのがバックス。とりわけ両SBが大外で攻撃を食い止めることでそういった部分の不利を強引に覆している印象は強かった。
しかし、オマーン戦では長友も酒井もアジア最強レベルのパフォーマンスが見られず。酒井に関しては勤続疲労を含めたコンディションが主要因だろうが、10月もここでアドバンテージが見込めないのならば、一気に日本は余裕のない戦いに追い込まれることになる。
2試合を線で見ると、中国戦では古橋の役割の変化、及び久保の投入により右サイドの活性化が図られるなど、オマーン戦の反省はある程度活かされていたように思う。
ただし、対策の完成度としては十分かは不明。中国はオマーンと比べると攻守にスケールダウンしている相手であり、内容が向上したことに相手のレベル差が大きく寄与していることは否定しきれない。
加えて、中国戦においても左サイド攻撃で孤立する長友など気になった部分も大いにある。2試合を通して個人のパフォーマンスで最も気になったのは柴崎。コンディション以前に、トランジッションで一発を狙う持ち味がオマーン戦ではかみ合わなかったり、自由なポジショニングの弊害で中国戦は久保との共存が難しかったりなど、相手や味方とのすれ違いがやや多い気がしてしまう。
元々、柴崎はトランジッションの頻度が上がるほど、持ち味は出やすいタイプだとは思う。なので対戦相手のレベルが上がる10月シリーズは期待できる可能性はある。だが、広いスペースを守る際の対応の不安を考えると楽観視ばかりはできない。守田、田中碧、川辺、橋本など試せる人材は多いポジションゆえに、10月の2試合にこのポジションをどういった構成で臨むのかは気になるところである。
気になるポジションでもう1つ挙げられるのは両WG。大迫の凄みがやや割引の状態が続くならば、伊東と古橋のスピードは今後の代表の生命線となる武器になりうる。彼らがスピードに乗った状態で渡すパターンをどのように構築するかは、9月で不満だった部分でもあるし、今後の注視していかないといけないだろう。
しかし、10月シリーズの話に限れば問題はそれ以前の部分。伊東がサウジアラビア戦は累積警告で出場停止。負傷交代した古橋や今回コンディションが整わなかった南野の出場が危ういとなれば、このポジションに誰を据えるかから考え直さねばいけない。
10月の2戦はトライしている余裕がある相手ではない上に、勝ち点的にも日本はがけっぷち。どちらにも勝てないとなれば、本大会ストレートインではない3位争いに回ることが現実味を帯びてくる。不安要素と試さなくてはいけない部分が混在する中で難しい宿題を残してしまった9月の戦いぶりになってしまった。
2021/10 招集メンバー
GK
川島永嗣(ストラスブール)
権田修一(清水)
谷晃生(湘南)
DF
長友佑都(FC東京)
吉田麻也(サンプドリア)
酒井宏樹(浦和)
室屋成(ハノーファー)
植田直通(ニーム)
板倉滉(シャルケ)
中山雄太(ズウォレ)
冨安健洋(アーセナル)
橋岡大樹(シントトロイデン)
MF
原口元気(ウニオン・ベルリン)
柴崎岳(レガネス)
遠藤航(シュツットガルト)
伊東純也(ゲンク)
浅野拓磨(ボーフム)
南野拓実(リバプール)
守田英正(サンタクララ)
鎌田大地(フランクフルト)
三好康児(アントワープ)
堂安律(PSV)
田中碧(デュッセルドルフ)
FW
大迫勇也(神戸)
オナイウ阿道(トゥールーズ)
※FW古橋亨梧(セルティック)を追加招集(10/1)
※堂安がケガのため途中離脱(10/7)
第3節 サウジアラビア戦(A)
■均衡から動く戦況への対応が勝敗を分ける
アウェイのサウジアラビアという今大会の最大の難所を迎える日本。本来ならばグループ突破の最大のライバルとのアウェイなので、引き分けOKくらいの気楽な気持ちで臨みたいところ。だが、ホームでのオマーン戦の敗戦がその気楽な気持ちを許してくれていないという状況。むしろ引き分けが悪くない結果なのはアウェイでオマーンをきっちり叩いているサウジアラビアの方だったかもしれない。
試合の流れとしてはいつも通り感が強かったのはサウジアラビア、サウジへの対策色が濃かったのが日本という構図だった。日本で目を引いたのは中盤のマンマークである。サウジアラビアも日本もトップ下を置く正三角形型が基本フォーメーションだったが、柴崎がそれを崩して前から人を捕まえに行ったのが印象的だった。
恐らく、中盤で引っ掛けてからのショートカウンターが狙いだったのだろう。ボールを取り切るというところの役割でいえば柴崎は物足りないかもしれないが、奪った後に刺すパスを入れるという部分では守田よりも実績がある。隣に奪い取る部分では信頼を置ける遠藤がいるというのも大きかったかもしれない。
おそらく田中碧は信頼のところが足りていない。森保ジャパンにおいては信頼感は大事にしているファクター。埼スタUAEでの大島のようなことをサウジの地で主人公を田中碧に変えた形で繰り返すわけにはいかないということだろう。ビルドアップにおいても柴崎のサリーを主に据えた形を採用していたので自陣からの攻撃+ショートカウンターで最も任せられるのは柴崎という判断をしたんだろうと思う。
日本のサウジ対策はそれなりに機能していたと思う。日本は前線から中盤までの立ち上がりの守備はサウジアラビアの時間を奪っていたし、サウジアラビアはプレスをかけられたときのボールコントロールには怪しさがあった。これだけトランジッションの機会があれば、ポジトラにおけるカウンターパスを刺す機会を柴崎は十分に得られる。
その上に、日本が深い位置からボールを持つときにサウジはなぜか日本の中盤にプレスに行くことに興味がなさそうだったので、深い位置からでもプレッシャーが少ない状態でボールを持つことが出来た。
その上で誤算だったのは2つ。1つはトランジッション時の縦方向のパスが刺さり切らなかったこと。伊東の出場停止、かつ堂安と久保の欠場という中での浅野の先発はこのトランジッション重視スタイルの採用で正当化されている感があったのだが、有効打となるパスは多くなかった。
収まらなかった大迫も同様。この試合に限った話ではないけど、今までだったら収まるものが収まらなくなっている。鎌田のパスから抜け出した場面は一番の決定機だったが決めきることはできなかった。といってもこの場面はDFにコントロールのタイミングと方向を制限された状況であり、見た目よりもシュートをきめる難易度は高かったシーンだと思うけど。
前線の中で起用方法が一番ぼやけていたのは南野。攻撃の核ではないという状況の中で守備のカバーに走り回るでもなく、攻撃でとりあえず走りまくるでもない状況で何を託したのかはわかりにくかった。チームとしての狙いであるボール奪取→素早い縦パスまでは機会を得ることはできていたが、前線のコンディションと役割が微妙でそこから先には進めなかったのが前半の日本の攻撃だ。
もう1つはサウジのサイド攻撃に対してやや後手に回っていたこと。特に2-3-5型に変形した時に左の大外のSBであるアッ=シャハラーニーは余りやすく、クロス飛込に備えて中央に枚数を揃えるサウジに対して日本は大外が手薄になっていた。浅野を前に残したいのかわからないけど、アッ=シャハラーニーについてきっちり戻るように命じられている感は薄く、彼がフリーで大外でボールを待ち受ける機会は多かった。
そんなこんなでやばいクロスを放り込まれる機会が増える日本。しかし、ここは吉田と富安を中心にブロック。さすがにここの質はアジアでは別格。前節までの相手と比べてのCB陣の質にサウジも苦しむ。オマーン戦のサウジは中央の即興パス交換で崩している感が強かったが、この試合ではフレアに頼った崩しは吉田と富安にひっかけられ続ける。特に富安は広い守備範囲で中盤の水漏れまでカバーしていた。
押し込めるもセットプレーからしかチャンスが作れなかったサウジ、多角的なサイド攻撃から中盤でのパスミスを誘発はできるがその先がついてこなかった日本と共に仕上げがうまくいかない状態で前半を終える。
迎えた後半、狙いが見えてきたのはサウジの方。中盤でのプレスを強化し、徐々に日本との中盤のデュエルを増やすように。特に柴崎は狙われていた感が強い。やはり失点シーンのパスミスの話になってしまうが、この場面以前に前を向いてのプレーをいくつかとがめられたのがバックパスミスの背景としてあったはず。ミスが続くなら、後ろに・・・という消極的な選択をサウジは逃さなかった。
日本としては前半はうまくいっていたので難しいかじ取りになったかもしれない。失点の手前の時点でミスが増えた時点でプラスにもマイナスにも振れが大きい柴崎はあきらめておけば!というのは理解できるので、交代の準備自体はわかる。けど、ビハインドの中で攻撃の舵取り役を託した人間を懲罰交代のような形でぶっこ抜くのは正直びっくりした。次のスタメン、どうするんだろう。
日本は柴崎を下げた後にも攻撃のメカニズムは特によくなることもなく、前線にとりあえず当てて古橋やオナイウが縦に抜けて頑張る!という感じ。攻撃の指揮者がぶっこ抜かれたのだから当たり前っちゃ当たり前。その結果、むしろ交代した選手のパフォーマンスに負荷がかかる形に。それだけにオナイウがボールがやたら足についてないのは目についてしまった。
ビルドアップのサウジアラビアを強襲し、ショートカウンターという日本の狙いは悪くなかったが、保持で落ち着かせて未知数なサウジの非保持を脅したり、中盤のプレスがきつくなってからのプラン移行はもう少し視野に入れてもよかったはず。
500さんが『自分たちで考えるサッカー』とこの代表を称していたけども、中盤のボールの取りどころを徐々に定めてきたサウジに対して、考えた結果戦況に対応しきれなかった日本の差が出た試合だろう。ミス1つといえばそれまでだが、日本が命運を託したキーマンを翻弄しての決勝点。均衡したプランからの移行のところがこの日の両チームの結果を分けた。
試合結果
2021.10.7
カタールW杯アジア最終予選 第3節
サウジアラビア 1-0 日本
キング・アブドゥッラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:71′ アル=ブライカーン
主審:アドハム・マハドメ
第4節 オーストラリア戦(H)
■IHに課されたタスク
オマーンに続いてサウジアラビアにも敗戦。グループ上位2チームが順調に走っていることもあり、日本はW杯出場の道が徐々に狭くなっている感。2強の一角を直接切り崩すチャンスであるオーストラリア戦は是が非でも逃してはいけないチャンスである。
出場停止で欠場していた伊東の復帰を除けば、日本のメンバー構成で変わったのはトップ下の鎌田とCHの柴崎を外して、田中と守田の川崎セットを組み込んだことである。ただ、前節もトップ下+CHの2枚でサウジアラビアのマンマークでの守備を行っていたので、守備の局面の形としてはあまり大きく変わらないかもしれない。前節は課題となった攻撃面での組み立ても含めてもどのようにサウジアラビア戦から修正したのかを見ていきたい。
まず、目についたのは日本のWGの守備である。内に絞って外を切る形でのプレッシングで制限をかけていく。CBにはボールを持たせつつ、パスコースに立ち塞がる形。これはサイドの選手がシンプルに人についていく意識が強かったサウジアラビア戦とは明確に異なる部分だった。
日本の中盤がマンマークで相手を捕まえる原則なのはサウジアラビア戦と同じ。加えてWGの守備と連動して中盤3枚に課されたタスクは、WGの裏のスペースのカバーである。4-3-3の外切りの守り方において最も怖いのはWGの裏にいる相手のSBにボールを通されること。
ちなみにこのWG裏のスペースをインサイドハーフにカバーさせるやり方は川崎での頻出パターン。特に川崎でIHを務めることが多かった田中は懐かしい役割だった。中盤の3枚は並びの上ではアンカーが遠藤になることが多かったが、動きながら相手を捕まえるという意味では均質的な要素が強かった。入れ替わったとしても中盤中央のスペースを埋められるという意味ではその部分は織り込み済みだったかも知れない。
トップ下がいないということでIHは攻撃面においては前線に出ていく必要がある。そうしなければPA内の枚数が足りなくなり大迫が孤立してしまう可能性がグッと高まる。それをサボることなく遂行したのが先制点の場面における田中碧。ベヒッチの対応の拙さが目立つ場面ではあったが、ゴール前では非常に落ち着いてボールをコントロールし、逆サイドにボールを撃ち抜いてみせた。川崎時代を彷彿とさせる過負荷な役割だったこの日のタスクだったが、早い時間に結果を出せたのは本人にとっては大きかったように思う。
■穴は届かないところに
というわけでビハインドになったオーストラリア。とはいえ、オーストラリア的には日本のWGの裏にボールを届けてしまえば簡単に前進できる状況が整っていた。だけども、どうやらオーストラリアの守備陣にはWGの頭をロブパスで越すというプレーがレバートリーにない様子。4-3-3外切りプレス破りの定跡と言っていいWGの頭を越すパスをこの試合でオーストラリアはほぼ実践できていなかった。
ただ、オーストラリアは何も用意していなかったわけではない。第3節のオマーン戦でも見られたが、彼らはビルドアップに仕掛けを持たせて相手を破壊する意識の強いチームである。ちょっとだけ彼らのオマーン戦のアプローチを復習する。
日本も苦しんだオマーンだったが、オーストラリアはまずCHを自陣の深い位置に落とすことで、オマーンのIHを釣り出す。オーストラリアのWGは前線にとどまり、対面のオマーンのSBをピン留め。これにより、オマーンのIHとSBの距離が空く。これでSBがボールを持てるようになる。
オーストラリアの得点パターンの一つはサイドからのクロス。数的優位から空いている選手が積極的にクロスを上げる。この形でオマーンをノックアウトしたのが前節のオーストラリアだった。
で、日本戦の話に戻ってくる。この試合のオーストラリアの用兵のポイントは左サイドハーフにWGであるメイビルではなく、MF色の強いムーイを最終予選で初めてスタメンに抜擢したこと。彼らの狙いは明確にここにあった。日本が起用してきた選手のキャラクター(鎌田、柴崎ではなく田中、守田)はオーストラリアの想定外だったかも知れないが、中盤がマンマークでくることはサウジアラビア戦を見れば簡単に予見できる。
したがって、MFタスクができるムーイをサイドに置くことで中盤にアウトナンバーを作る。これがオーストラリアの狙いだったはずである。
オマーン戦もそうだけど、オーストラリアのビルドアップのアプローチは中継点を増やしながら壊すというアプローチ。オマーン戦は余計な点を1つ噛ませることで相手の陣形を引き伸ばした。日本戦は数の面で余計な点を1つ増やして相手の中盤のマンマークに迷いを与えたいというイメージである。
というわけでCHが縦関係になりながら日本の中盤を引き出そうとするオーストラリア。だけども、この中盤数的優位創出作戦はうまくいなかった。彼らにとって邪魔だったのは日本のWGである。外切りで内側にプレスをかけることで日本の3トップの立ち位置は相対的に中になりやすい。したがって、中盤のプレスがズレた場合に前線がヘルプに行くのが容易になる。
縦横無尽に動くムーイの存在のおかげで案の定、日本はマンマークできっちりついて行ききれない場面はあった。でも受け渡しができるので特に困らない。そもそも、日本は南野と伊東がオーストラリアの横幅を制限しているので、オーストラリアは狭いグリッドの中でしか数的優位を得ることができない。グリッドが狭いほど受け渡しの移動距離が短くなるので、日本としてはマンマークを外されつつも受け渡しながら中盤中央でフリーマンを作らせない難易度が下がる。オーストラリアが中継点を増やすイメージならば、日本はエリアを狭くしつつ早く移動できる点(守田、田中)を入れて無効化するイメージ。
先制したこともあってか、CFの大迫も中盤のカバーに参加する頻度が高かったのも大きかった。オーストラリアの狙いの一端である、中盤中央のマンマークを乱すという現象はピッチには現れてはいたが、かといって前を向ける選手ができるわけではないという状況に。
日本のプレスにはWG裏という穴はあった。だけどもそこを使わせなければ問題ない。オーストラリアの狙いとは異なるところに穴を作ることで、日本はオーストラリアに機能的な前進をさせずに試合を進めることができた。もっと、ボイルが長友とのミスマッチで何かができれば違ったのかも知れないけども。
■急ぐか否かのジレンマ
日本の保持は前節に比べれば落ち着いていたと言えるだろう。オーストラリアの4-4-2ブロックに対して、日本のアンカー脇にIHが降りてフラットな関係を作りながら攻撃を組み立てる。アンカー脇に降りるIHはどちらかといえば左が多かった。
おそらく、左が降りることが多いのは全体のポジションのバランスによるものだろう。WGの南野が内に絞りライン間に入り込む機会が多く、SBの長友がその外を回って高い位置を取ることが多い。逆サイドは伊東が幅を取りがちなので、SBの酒井が攻め上がるのは長友に比べると控えめ。その分、IHが高い位置を取るためのスペースが空いていた。
攻撃においても比較的ポジションを入れ替えることが多かった日本の中盤だが、前半は田中碧が左を務めることが多かった。先制したこともあり、ゆっくり組み立てたい意思はバックパスを多めに指示する田中から読み取ることができた。やはり保持で休める時間を作れるならば休みたい。
だけども、その意思とは裏腹に比較的急いで縦パスを入れるシーンもちらほら。ただ、ここの是非は難しいところ。何しろ、広いスペースでの機動力勝負ならば、この試合は圧倒的に日本に分がある。背負えない試合も珍しくなくなってきた大迫もこの試合では久しぶりに起点として機能していたし、南野や中盤の選手たちも体を入れ替えながらドリブルで前に運ぶことができていた。伊東のスピードは言わずもがなである。
その上、日本はアタッキングサードにおける崩しの手段はあまり豊富だったとはいえない。ライン間に入る動きと大外での長友の連携を駆使する南野は前節よりは良かったが、他の武器が結局伊東のスピードになるならば、ブロック攻略よりももう少し手前のオーストラリアがラインをまだ高く設定している状況の方が攻め落としやすいと考えるのは自然だろう。
休みながら保持をしたい、でもオーストラリア相手に点を取るには手早く動かした方がいい。急げば急ぐほど崩しやすいけど、急げば急ぐほど運動量の多いWGやIHに負荷がかかる。ゆっくり進んだり、あるいはブロックを崩したりする事があまり得意ではないことも相まって、日本はジレンマに悩まされている印象に見えた。
■畳めなかった風呂敷アゲイン
サウジ戦のポイントになったのは個人的には店じまいのタイミングだと思っている。柴崎のマークが甘かった序盤戦は『頼むぜ柴崎岳作戦』はそれなりにうまくいっていたと思う。でも失点シーンの少し手前の場面から、明らかにプレスで狙い撃ちにされて孤立する場面が増えていた。森保さんの日本代表はここで作戦を切り上げるのが結構苦手だったりする。
というわけでオーストラリア戦は盤面は違えど似た状況である。先制点はあるけど、1点差は怖い(サウジ戦は『引き分けでも悪くないけど、できれば勝ちたい』)。前半は守備はうまくいっているけど、WGの裏を使われたら怖い(サウジ戦は『柴崎が潰されたらどうしよう』)。という感じ。
この試合の日本のポイントは点の動く速度をどこまで維持できるか?という話である。特にプレスにどこまで行くかの指揮権があるWGとそれに追従するIHはそこのコントロールがシビアになってくる。
オーストラリアは22番のアーヴァインが非常に周りを気にするようになった。おそらく自分を経由してワンタッチで外に出す手段を探っていただろう。背中でマーカーを消す日本のWGのプレスを脱出するには角度を変える手段というのは非常に有効である。
加えて、オーストラリアのバックスはグラウンダーであればSBにボールを繋ぐことができる様子。特に南野のサイドの外消しの角度がズレることが増えたことで、オーストラリアは徐々に日本を引き出しての前進ができるようになる。
南野や伊東としては、CHを経由して外に繋がれてはまずい。ということで前半は距離をとりながら対応していたCBへのプレスを強めるようになる。となると当然、後方はそのスペースを埋める頻度が多くなる。大迫が足を痛め気味になってなお伊東と南野は最終ライン深い位置までプレスをかけていたので、相当焦っていたのだろうなと思う。
IHがWG裏を埋める機会が多い日本だったのだが、間に合わなければSBが出てくる決まりになっていたようである。失点につながるFKの場面もそうだった。南野が出て行ったら長友が出て行く。ただし、長友が出て行く条件は南野が越されてしまい、かつ守田のカバーが間に合わない場合のみ。となるとなかなかに判断の材料が多い。しかも、南野は深追いをしているため、物理的な距離も遠い。
失点シーンにおいての長友の追い出しはほぼ無理筋だった。長友のインタビューを聞く限り、この試合での原則はCBのスライド(場面によっては非常に現実的な原則だと思う)による解決だったのかも知れないが、この場面では冨安が長友に追従せずにプレスに行かない判断をしても仕方ないと思う。遅れたプレスは重ねるほど傷口は大きくなる。
というわけで深追いで南野が踏み込みまくったアクセルに、ついて行った長友と、ついていかなかった冨安でギャップが生まれてしまいそのスペースを使われて最後がファウルというのが失点の流れだろう。
ちなみに56分でも似たように南野の背中を使われるシーンがあったのだけど、この時はIHの守田のカバーが間に合っている。失点場面との差はアーヴァインをCFに受け渡せているか否か。失点場面では古橋がCBにさらに追い出しを図ったため、守田はアーヴァインについて行くしかなかった。56分の場面ではマーカーを大迫に受け渡せているからサイドのカバーに間に合っている。こうなると長友は飛び出してこないので少なくとも縦に穴が開くことはない。
さて、追い込まれてしまった日本。幸運だったのはオーストラリアが引き分けでよしという姿勢を見せなかったこと。大迫を失った日本にはもう前に進むための手段がひたすらアタッカーのスピードを生かした奥行きありきのやり方しか残っていなかったので、浅野の投入も彼らを生かせるパスを出す柴崎のリベンジ投入も理解できる。
中盤はガバガバ。それも上等。オーストラリアに作られる決定機。それも織り込み済み。何しろ、それがこの日一番点が取れるやり方である。攻め込まれる頻度が多く、分が悪い賭けになった終盤の日本だったが、なんとかこの賭けに勝利。首の皮を繋いだ大きなオーストラリア戦の勝利となった。
試合結果
2021.10.12
カタールW杯アジア最終予選 第4節
日本 2-1 オーストラリア
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JAP:8′ 田中碧, 86′ ベヒッチ(OG)
AUS:70′ フルスティッチ
主審:アブドゥラフマン・アルジャシム
10月雑感
■90分には足りていない
結果は勝ちと負けという対照的なものにはなったが、日本がぶち当たりやすい問題はだいぶ見えてきた印象。プランAで前半は悪くない手応え。ただし、そのプランには当然相手からすると狙い目がある。そのうえ、そのプランはプレッシング強度に依存する場合が多く、強度が下がりやすい。
例えば、今回は川崎のエッセンスを活用したIH過負荷のプランになっていたが、Jの川崎に比べるとアジアの日本はボールを持って休める頻度が少ない。従って、プレスを主体としたプランは長持ちしにくくなっている。この試合でもプレスは後半頭には怪しさを見せており、失点の前兆は十分にあったと捉えるべきだ。本戦ならば大会が進むごとの勤続疲労も懸念になる。
この試合ではエンドプランがスピードスターによるカウンターの応酬なのだとしたら、川崎エッセンスの外切りが機能しなくなってから、締めのプランに繋ぐまでの空白の時間を埋められていない。これが最近の日本の問題だなと思う。ちなみに、この試合の締めのプランも点の移動速度を大事にしたもの。日本は点の位置勝負のオーストラリアを移動速度で振り切った感じである。
おそらく、オーストラリアやサウジアラビアは世界基準で見ればその日本の怪しさを露呈させてから仕留めるまでの速度も、怪しさを露呈させる速度も比較的遅いように思う。本戦で手合わせする相手は日本の外切りプレスは前半のうちに対応されているはずだ。
そういうわけでプランを次々盤面によって組み直して行く必要があるのが今の日本だ。この日見せた形一辺倒だけでは厳しいだろう。ちなみに浅野を筆頭にアタッカー陣は試合の閉じ方が下手だったので、エンドプランの中身にも改善の余地はありそう。他にできることといえば、保持の時間を増やすこと。休むことができれば体力消費が激しいプランは比較的延命しやすい。
確かにオーストラリアは早く攻めたほうがいい相手だった。だけども、ゆったりと進むことをあえて選ばなかった!と言い張るには日本代表の保持はこれまでの積み上げがなさすぎる。保持の時間を増やすためのアプローチはもう少し欲しいところ。この日のスターターならそういう新しい引き出しのトライをしてみても面白いと思うのだけども。
2021/11 招集メンバー
GK
川島永嗣(ストラスブール/フランス)
権田修一(清水エスパルス)
谷晃生(湘南ベルマーレ)
DF
長友佑都(FC東京)
吉田麻也(サンプドリア/イタリア)
酒井宏樹(浦和レッズ)
谷口彰悟(川崎フロンターレ)
山根視来(川崎フロンターレ)
室屋成(ハノーファー/ドイツ)
板倉滉(シャルケ/ドイツ)
中山雄太(ズウォレ/オランダ)
旗手怜央(川崎フロンターレ)
冨安健洋(アーセナル/イングランド)
MF/FW
大迫勇也(ヴィッセル神戸)
原口元気(ウニオン・ベルリン/ドイツ)
柴崎岳(レガネス/スペイン)
遠藤航(シュトゥットガルト/ドイツ)
伊東純也(ヘンク/ベルギー)
浅野拓磨(ボーフム/ドイツ)
南野拓実(リヴァプール/イングランド)
古橋亨梧(セルティック/スコットランド)
守田英正(サンタ・クララ/ポルトガル)
鎌田大地(フランクフルト/ドイツ)
三笘薫(ユニオン・サンジロワーズ/ベルギー)
前田大然(横浜F・マリノス)
上田綺世(鹿島アントラーズ)
田中碧(デュッセルドルフ/ドイツ)
※MF堂安律(PSV)を追加招集(11/6)
※守田がクラブ事情により途中離脱(11/14)
第5節 ベトナム戦(A)
■速攻以外のギャップが…
5-4-1と5-3-2を併用して今最終予選に臨んでいるベトナム。彼らのこの試合での選択は5-3-2だった。5-3-2の場合、日本には2トップの脇からボールを持つ時間を捻出することが出来る。日本はこの場所からボールを進める。
左サイドは守田がこの位置に降りることで長友を同サイドの高い位置に押し上げる。SHの南野は内側に絞ることで大迫のそばに位置する形である。
逆サイドはもう少し流動的。2トップの脇は山根か田中のどちらかが使う。山根が高い位置に入るときは伊東は内側のスペースに入り南野と左右対称のナローな3トップを形成するが、山根が低い位置に入り田中が高い位置を取るときは伊東は大外に張る。どちらかといえば後者の方が割合としては多かっただろうか。
変則的ではあったが5トップ気味になり、ベトナムの3センターを外から回るように超えることが出来た日本。だが、苦戦したのはそこから。5バックは5レーンを埋める相手にはマッチアップがはっきりしやすい。対人で上回る選手がいればいいのだが、日本はその糸口を見つけるのが難しかった。
左の大外を取る長友には対面したWBを交わせる力はない。大外で優位が取れない5レーン型の攻撃はなかなかにしんどい。逆サイドの伊東も連携が不完全。押し込んでからの攻撃で光る部分はなかなか見えなかった。
こういう停滞の時に期待されるのはここ数カ月増量中の川崎成分だろう。すなわち、守田と田中である。しかし、この試合の彼らの役割は前者が左サイドの低い位置まで降りて長友を押し上げる役割をやっていたのに対して、田中は前線に留まる役割。互いの距離が遠い上、オーストラリア戦で見せた均質的な3センターによるポジションの入れ替わりは鳴りを潜め、分業型での前進となっていた。
前進はできる。けど5レーンで詰まった先は打開できない。ベトナムからはカウンターが飛んでくるという状況。日本にとって誤算だったのは日本の守備陣のカウンターでの対応が意外と危うかったこと。特に相手に反転を許したり、スピードで置いていかれる吉田麻也のパフォーマンスはちょっと不安定。勤続疲労か加齢の影響なのかはわからないが、ここでハイラインが維持できないようだと今後の予選の見通しはいろいろ変わってくる。
逆に日本にとって幸運だったのはベトナムが前から捕まえに来てくれる意識を持っていたこと。早い攻撃ならば日本のWG陣のスピードを生かした攻撃が可能。まさしく日本のチャンスはこの速い攻撃から。大迫のポストから南野が裏を取り、いつの間にか伊東純也が相手を追い越しているという質的優位マシマシのゴールで先制点をゲット。ちなみに2点目も伊東純也マシマシだ!!になるはずだったのだけど、残念そこはオフサイド!である。
ただ、日本のゴールを生んだベトナムの強気な姿勢も日本にとってありがたかったばかりではない。徐々に長友をプレスやロングボールの狙い目として前に進むチャンスを見出していた。
後半も大きな展開は変わらず。日本の攻撃で気になったのはとにかくライン間を使わないこと。確かに5-3-2は本来ならば中央を固めており、攻撃側に外から壊すことを強要する形である。だけどもベトナムの3センターはサイドに拠るときに横並びが過ぎる。アンカーの位置に入る選手はIHの斜め後方に入るべき。ベトナムの中盤はこれを怠っているので、日本はとてもライン間への縦パスが入れやすい状況だった。
にもかかわらず、日本はとにかくライン間にパスを入れられない。そもそもライン間に人がいないのもあるし、いても受ける気も出す気もない感じ。それならば裏抜け一本!!という形で浅野、伊東、古橋の三雄揃い踏みで出し手の柴崎までセット!というところまではわからなくもないけども、そうなった途端ボールキープとか始めちゃうのはどうして!ライン間で受ける浅野が松井大輔にダメだしされるというシュールな状況になっていた。
ベトナムのカウンターには最後まで冷や汗をかいたものの、日本は何とか逃げ切り成功。残り20分くらいから85分のサッカーをやっていた感も否めないのだが、結果が大事と本人たちが言っているので、その結果をオマーン戦でも出してくれることを信じたい。
試合結果
2021.11.11
カタールW杯アジア最終予選 第5節
ベトナム 0-1 日本
ミー・ディン・スタジアム
【得点者】
JAP:17′ 伊東純也
主審:モハメド・ハッサン
第6節 オマーン戦(A)
■後半のペースアップに貢献した左サイドコンビ
日本の保持の狙いはベトナム戦と大きく変わらなかったように思う。中央を固めてくる相手に対して、サイドの関係性を作りながら壊していく形がメイン。左のIHは低い位置を取りながら長友を押し上げたり、内に入ってくる南野の邪魔をしないバランサー的な役割をこなす一方で、右のIHが前線やサイドの高い位置でボールに絡みながらよりゴールに近い位置でプレーするという左右非対称な役目も同じである。
異なっていたのは人選である。守田の出場停止の煽りを受けて左のIHには田中碧、右のIHには柴崎が入った。この4-3-3の中で最も難しいかじ取りになるのは左のIHではないかなと思う。得意なプレーや使いたいエリアが決まっている長友や南野を基準に動き方を考えないといけないし、かといって2人でいってこい!ができるほどサイドアタックが強力なわけではない。
オマーンのシステムだけを見れば、日本のWG,SB,IHでオマーンのIH,SBに対して数的優位を取れるのだけども、オマーンはアンカーのアルサーディがボールサイドにスライドするため数は均衡。オマーンはアンカーの遠藤にトップ下のアルヤハヤエイがついているため、日本は素早いサイドチェンジが出来ない。なので、アンカーは常にボールサイドで計算に入れてOK!というオマーンの守備である。
したがって日本が取り組まなくてはいけないのは3対3のユニットでサイドを壊すことだった。低い位置に降りる田中碧にはどこから進むかという舵取りまで任されている。
左サイドは前節のベトナム戦に比べれば長友が大外で仕事が出来たこともあり、惜しいクロスもあったのだが、中盤にいわゆる川崎成分を注入した効果をチーム全体に広げるまではいっていない印象である。ここはベトナム戦と同じ。田中碧が頑張っていた分、やや上乗せかな?くらいのものである。
右サイドは伊東純也への1つ飛ばしのパスでまずズレを作る。DAZNの冨安と田中碧が話していたベン・ホワイトのようにCBの吉田は山根を飛ばして一つ奥に付けられると可能性は広がる。後方の山根は後ろから押しかける形で走りこんでフォローもできるし、柴崎は高い位置に留まることで普段よりはずいぶんとタスクワーカー寄りの仕事をこなしていた印象である。
止まってタメが作れるタイプがいないのが難点だが、そこは大迫が時たま流れていくことでカバー。ズレを作ってサイドを壊すというテーマでいえば、この右サイドの方がうまくいっていた。とはいえ、シュートまで行ける場面は稀。最終ラインにきついプレッシャーがなかった分、サイドを迂回しながら押し込めはしたが、チャンスメイクまでは物足りない!というのが日本の動きだった。
オマーンの保持に対する日本のプレスはあまりハマっていなかった。4-3-3での守備だとアンカーへのプレスがかからない上に、サイドにおいてもSBをつり出してIHやFWを裏に抜けさせて日本のサイドの裏からの侵入を成功させることもしばしば。
オマーンはなんでこういうことを中国戦でもやらなかったのか不思議で仕方がない。アバウトで雑なクロスを繰り返しては跳ね返されるというおおよそ日本戦の彼ららしくないプレーを数日前には見せていたので、日本戦だけつなぎでやたららしさを見せたがるのかがちょっとわからない。身体能力に長けてはいるけど、規律の部分で怪しさのある中国の守備にも十分通用する保持だったはず。
ましてや日本と異なり、中国には絶対的な最終ラインの要がいない。PA内で吉田や冨安相手に後手を踏んでばかりだったこの日とは異なる結果になってもおかしくはなかったはずである。
日本の最終ラインはベトナム戦よりも安定していた。状態を不安視していた長友、吉田も及第点の出来、速い攻撃は比較的スマートに止めることが出来ていた。そのため、オマーンの攻撃もまたなかなか前に進むことが出来ず。
アンカーシステムに対して日本のプレスがハマらないのはもはやおなじみだが、前回対戦時よりもオマーンはアタッキングサードにおけるオフザボールの質と量は少し割引かなという印象。日本と同じようにオマーンもまた攻め手がなく苦しんでいた。
後半、日本は三笘を投入し、4-3-3から4-2-3-1にシステム変更。システム変更のほかにも個々のポジションを微調整したのが特徴で、例えば前半高い位置を取った長友は大外を三笘に譲り、攻め上がりを自重。三笘との関係性がより深い田中碧をサイドに流しながらサポート役として付けることで、ドリブラーだがソリスト専門ではない三笘の手助けをしていた。
もともと左に流れながらのプレーが多かった南野も含めて、左サイドには人数をかけるようになった日本。三笘投入の効果は絶大。1人ないしは2人をかわすという前半の日本にはなかったプレーで、オマーンの右サイドを切り裂く。その分、右サイドはかける人数が少なく、伊東の裏抜け頼みの側面が強くなっていた。
田中がサイドに流れる分、負荷がかかったのは中央でのネガトラの局面。前半よりも中盤が高い位置を取ることが多かったので、日本は被カウンター対応を何とかしなければいけなかった。ここで光ったのが中央でバランスを取った遠藤と長友に代わって入った中山。オマーンのアタッカー陣に前を向かせる前に摘み取ることで、日本は波状攻撃に移行することが可能に。
三笘が伊東にアシストを決めた貴重な先制点も中山の高い位置でのインターセプトから。三笘のボールの引き取り方もさることながら、中山のお膳立ても見事。後半に入った2つの武器がエースの伊東の元にシュートチャンスをつなぎ先制点をゲットした。
オマーンはボールを運べはするものの、PA内に迫るための武器が見いだせずに悪戦苦闘。プレスは剥がせるけどチャンスは作れないという状況を試合最後まで解決することが出来なかった。
試合は日本が逃げ切りに成功。交代で入った新しい武器とエースの融合で2位浮上。ようやく予選突破に向けて明るい兆しが見えてきた。
試合結果
2021.11.16
カタールW杯アジア最終予選 第6節
オマーン 0-1 日本
スルタン・カブース・スポーツ・コンプレックス
【得点者】
JAP:81′ 伊東純也
主審:コ・ヒョンジン
2022/1 招集メンバー
第7節 中国戦(H)
■結果が欲しかった南野
立ち上がりからホームの日本がボールを握って試合を支配する展開となった。日本は左サイドの低い位置からゲームを作り、右サイドに大きく流す形でチャンスメイクを行う。
日本が目をつけたのは右の大外の伊東純也のところ。サイド攻略を主体に置くチームはトライアングルなどの多角形を軸に壊すトライが普通。だけども、この試合においては右サイドは酒井と伊東の2人で十分。なぜならば伊東のスピードが中国のSBを大幅を上回っていたからである。同数でも、どこにボールを運ぶかがバレていても、純粋にスピードで上回ることができるのならば問題なく攻略が可能。この日の伊東はそんな感じだった。
右サイドにボールをとりあえず運んではぶち抜く。この繰り返しで日本はチャンスクリエイト。そして、前半中程の段階で中国のハンドを奪取し、PKを獲得。中国に無理な対応をさせ続けた伊東のスピードが招いたPKと言って良いだろう。
ただ、PK以降においては流石に中国も伊東を警戒。SHが素早くサポートに入り、2対1を作ることでなんとか対応する。さすがの伊東でも対面のSBが縦に抜けることを塞ぐことに集中されると難しい。
その時に日本が目をつけたのが右のハーフスペース。大外の伊東に意識がいっていることを利用し、大迫や田中、南野がこのスペースに入り込む。カバーも含めて外の伊東に集中していたので、この走り込みは効いていたように思う。
この試合において評価が難しかったのは南野。ストライカータスクがメインで中央に絞ることはおろか、逆サイドに流れることも頻繁にあった。ワイドに張るタイプのプレイヤーではないので、本人の資質を考えればもちろんそれで良い。
だけども、左サイドでの仕事はほぼハーフスペースの裏抜けに特化し、リンクマン的な役割はほぼ果たしていなかった。左サイドの攻撃を活性化させる判断より右の優位を利用する判断はわからなくなかったので、できればそれを正当化するためのゴールに絡む結果は欲しかったところ。どこからでも攻められるというやり方よりも、崩しは右サイドに依存してフィニッシャーに特化するのならば、そのリターンを数字でもたらしたかったところである。
中盤や2列目の選手は比較的相手陣側で受ける姿勢が多かったこの試合。50:50状態でもバックラインは躊躇なくボールを入れたので、中国は谷口を中心に狙いを定め、徐々に縦パスをカットしてカウンターに転じる場面が目につくように。
後半に入った前田は一瞬の抜け出しでCBからのパスから決定機まで結びつける役割を託されたように思う。個人的には相手の意識をライン間の縦パスから逸らす役には立っていたと思うけど、トランジッションが多いわけではなかった展開的には不向きだった。むしろ、サウジ戦に向けた試運転の意味合いが強そうに思う。
同じ交代選手の中で結果を出したのは中山。スローインから怠慢だった中国の右サイドの守備からフリーになり、ファーの伊東へとクロスを送る。地味に柏出身のホットライン。中山は大外でもクロスからチャンスメイクができるとは恐ろしい男である。
個人レベルで言うと田中碧はもう少しできても良かったように思う。非保持の守備の強度は十分だったけど、ボール関与の部分はもっとできたかなと。縦にパスを刺す速度や精度とか、攻め上がりの頻度とかはもう少し気にしていきたいところである。
伊東のゴールとPKの2点で安全圏に入った日本。難なく逃げ切りに成功し、3ポイントをゲットし、大一番であるサウジアラビア戦に勢いをつけて臨むことになった。
試合結果
2022.1.27
カタールW杯アジア最終予選 第7節
日本 2-0 中国
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JAP:13′(PK) 大迫勇也, 61′ 伊東純也
主審:アブドゥラフマン・アルジャシム
第8節 サウジアラビア戦(H)
■狙い通りと奇襲、2つの顔で首位撃破
レビューはこちら。
直接の勝ち点差が4なので首位攻防戦という色はやや薄めだが、それでも予選突破に向けた大事な一戦には変わりない。サウジには突破決定がかかっているし、日本はこの試合の結果で次節の必要要件が変わってきそうな予感である。
試合は共にやや慎重な立ち上がりを見せた。比較的高い位置から追っていくケースは日本の方が多かったが、大迫+外切りプレスのWGの2枚でスイッチを入れるプレスに対して、サウジはそこまで無理をしなかった。
サウジの前進の黄金パターンは外切りの日本のWG裏にいるSBにボールを渡し、日本の中盤を引っ張り出しつつ、中央への細かいパス交換でサイドチェンジを狙う形。
この場合、最も楽なのはGKから直接浮いているSBに届ける形なのだが、サウジのGKはどうやらそのボールは蹴れないようなので、CBがポゼッションの駆け引きで勝利しSBにボールを届けなければこのパターンが見えてこなかった。
サイドチェンジを受けた左のSBのアッ=シャハラーニーがオーバーラップからファーに正確なクロスを届けられれば、長友の外側からチャンスを作ることが出来たのだが、中盤での前進からのSBのオーバーラップを生み出す頻度とそこからのクロスの精度にはやや難があったため、サウジはチャンスを量産することが出来なかった。
決まった攻め手で結果を出したのはむしろ日本の方。伊東純也が任意の相棒(IHor大迫or酒井)を引き連れて、大外+HSで右サイドを崩し切る形はこの日も機能。特に1on1じゃ止めるのが難しい伊東がもう1人を引き付けることが出来たために、相棒が動き回れるスペースはかなり確保できていたように思う。
1点目のシーンは日本の攻撃の理想といってもいいだろう。右の伊東のスピード勝負で優位を取り、大迫と南野の連携でフィニッシュ。左右非対称のWGのタスクの正当性が結実した得点となった。
後半の頭、日本はプレスを強化。外切りプレスをやめて、サイドは迎撃する場所に設定。日本のWGが縦を切るようにホルダーにチェックをかけるタイミングでIHと大迫が中央を圧縮し、ボールを奪取。ここからショートカウンターでチャンスを作る。
プレスで主導権を握った日本は先制点ではアシスト役に回った伊東純也が今度はスーパーミドルで4戦連発のゴールをゲット。サウジをさらに突き放す。
終盤は交代選手がやや精彩を欠いたことで主導権をサウジに渡す場面もあったが、CB+3センターの非保持の冷静な対応で自陣深くの守備でもサウジの攻撃陣をシャットアウトする。
両チームとも限られた手段での前進が多く見られた試合だったが、前半にその形で点を奪い、後半にモデルチェンジで奇襲をかけた日本がサウジを上回った試合となった。
試合結果
2021.2.1
カタールW杯アジア最終予選 第8節
日本 2-0 サウジアラビア
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JAP:32′ 南野拓実, 50′ 伊東純也
主審:コ・ヒョンジン
1月雑感
■田中碧抜擢の理由と国内合宿の意味合い
森保JAPANを追いかけている有識者からよく出てくるキーワードは『選手個人の対応力』である。最低限の原理原則は設定するものの、細かいピッチでの修正点は選手に任せる。物議を醸した遠藤が戦術ボードをいじっている映像はこうした森保監督の大元となる方針を象徴したものといっていいだろう。
となると、議論のポイントは『選手に任せる裁量の調整』というハード面の話と『選手たちがどれだけピッチで修正できるか?』というソフト面の話の2つに絞られる。
森保さんは選手を固定するとよく言われてはいるが、最終予選の中で日本代表は中盤にドラスティックな改革を加えている。無論、田中碧と守田のことである。
この2人の抜擢の理由は川崎ユニットでセットで起用しやすいこと!だと思っていたのだけど、最近は広範囲に動き回りつつ、ピッチで必要な場所に顔を出す動きを質が高く繰り返すことなのかなと思うようになっている。それが川崎で普段行われていることやで!ってことかもしれないけども。
柴崎→田中碧への入れ替えはレビューでも繰り返し指摘した『3センターの均質性』の部分の発現により、ピッチの中で選手たちが歪みを修正する手段を増やすシステム的なアプローチである。それに加えて、行動範囲は広いものの歪みが出にくいように動きなおしながら調整できる彼ら2人の特性を加えた感じ。
なので、守田中のコンビの採用は3センターの均質性によってハード面で不具合の手当てをしたという側面もある一方で、ピッチで修正しながらトライできる選手が新たに登用されたというソフト面での手当でもあるように思う。
森保JAPANが1月に行った国内合宿の意味として竹内さんは
-
代表常連組のコンディション向上
-
代表候補組に対する基準の再提示
-
パリ五輪組に対する経験
の3つを挙げていた。
代表の練習はとにかく強度が高いらしい。国内合宿の意味合いは代表はこれくらいの強度は必要!という基準を再提示するとともに、自分たちが普段やっている環境とは異なる状況、より高い強度での適応能力を見ているのかもしれない。
ここをクリアできなければ、守田や田中のようにソフト面で日本代表の力になるのは難しいという判断なのだろう。同時に、その基準をクラブに持ち帰ることが自クラブの底上げにもつながるはず。
指導側にとっても、選手側にとっても一つでも実りが多い代表期間となることを祈るばかりである。
2022/3 招集メンバー
第9節 オーストラリア戦(A)
■再び決め手になった川崎ユニット
レビューはこちら。
スタートダッシュには失敗したが徐々に順位を上げてきた日本と、日本に敗れてから緩やかに下降線をたどっていっているオーストラリアの一戦。互いに負傷者を多く抱える中でアジア予選はいよいよクライマックスを迎える。
序盤、ボールを持つ機会が多かったのはアウェイの日本。IHを最終ラインにおろしながらSBを上げる形を取り、サイドの選手を押し上げる。
中央を固めてくるオーストラリアの守備網に対して、日本は裏にボールを出す形でのアプローチも。浅野、南野などから前線の裏を狙う形で、スピード不足のオーストラリアの弱点をうまく出し抜いて見せた。
数の上では揃っているオーストラリアの中盤だったが、田中と守田の2人を守るにはメトカーフとステンスネスのコンビはいささか力不足といわざるを得ない。動き直しで相手を置いていかれてしまい、中央から日本のストロングである右サイドへの展開を許してしまうこともしばしば。防波堤になり切ることはできなかった。
右からの攻撃が成り立つのならば、左サイドの南野は何時ものように安心してエリア内に飛び込むタスクに集中できる。シュートは枠には飛ばなかったけどね。それでも中央でのデュエルと右サイドでの質はオーストラリアに対して決定機を作った大きな強みといっていいだろう。
一方のオーストラリアは右サイドのフルスティッチへの長いボール一辺倒。日本の左サイドの対応が遅くなりやすいこともあり、右に流れた形からのチャンスメイクを選んだ一因だろう。あわやという冷や汗をかく場面もあった。
後半、前半以上に長いボールでの前進を狙うオーストラリアに対して、日本はお付き合いする形に。アジアの舞台ではオープンに試合が流れると、それに付き合えるように快足アタッカーを投入するのだけど、この試合ではベンチにそのタスクを請け負える人が不在。いつもに比べると、この時間帯に相手ペースから脱する手段が乏しかった。
その状況に屈しなかったのが守田。右サイド、深い位置でボールをキープし味方のオーバーラップを促す。手前に引き出してのためだけではなく、奥に入り込んでのつぶれ役も出来ていたので、山根や伊東からすると非常にありがたかったはずである。
山根、伊東、守田を軸に右サイドでの川崎風味の崩しで優位を得た日本は畳みかけるべく、左サイドに三笘を投入。すると89分。山根のクロスに絞った三笘が先制点をゲット。ワールドカップ出場を大きく引き寄せる。
つづく後半追加タイムにはまたしても三笘が追加点をゲット。オーストラリアサポーターとライアンに無駄なトラウマを植え付ける形で試合を決定づける。
守田を軸にした右サイドの崩しとジョーカー三笘。今予選で日本を助け続けた川崎ユニットが最後の最後でも決め手になり、日本は今大会も無事にワールドカップ出場を決めることができた。
試合結果
2022.3.24
カタールW杯アジア最終予選 第9節
オーストラリア 0-2 日本
ANZスタジアム
【得点者】
JAP:89′ 90+4′ 三笘薫
主審:ナワフ・シュクララ
第10節 ベトナム戦(H)
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