■滑らかなサイドチェンジを生かした先制点
記念すべきグループB観戦の1試合目にして、最も情報がない2チームによる対戦である。と思いきや、コソボ代表にはなんとこんな情報源がありました。すげー。
というわけでコソボは多少予習ができた。立ち上がりはジョージアがボールを持つ展開に。4-4-2からCHが縦関係に段差をつけてパスコースを作る。コソボはこれに対して4-3-3の形で構える。コソボの守備の特徴としてはIHのハリミとペリシャが高い位置を取ること。ジョージアのCHが縦に動くのについて行ったり、あるいはジョージアのCBにプレッシャーをかけにいくのはIHの役目である。
なので、前後関係としてはコソボのWGがIHよりも後ろの形。ジョージアのSBには持たせるのはOKというのが考え方のベースにはあって、彼らがボールを持った時はコソボは内側のパスコースを優先的に切っていた。
全体的にコソボは中央だけ閉じてサイドに追い込みさえすれば、ジョージアが前進できないという算段だったのだろう。このコソボの読みは当たっていたといえそうで、ジョージアは実際最終ラインでボールを行ったり来たりさせているだけ。ボールを持っているというよりは持たされている形であった。
高い位置までボールを運べれば右のWGであるツィタイシュヴィリがカットインで勝負を仕掛けられるのだが、そこまで辿り着けないジョージア。CFのクヴィリタイアへの長いボールがもう少しおさまれば押し上げが効いたと思うのだけども。
一方、コソボの保持は3バック変形だった。両CBと右のSB3枚で最終ラインを形成する。左のSBであるハデルジョナイは高い位置をとり、同サイドのWGであるラシャニは内側に絞る。逆に右の大外はオーソドックスにWGのカストラティが幅をとる。Jリーグでいえば鳥栖に若干似たシステムだなと思った。
システムだけでなく、前進の仕方は非常にスマートだったコソボ。3バック+2センターの5人でジョージアのプレス隊を空転させて、幅を使いながら攻撃を進めていく。これだけ自在に大きく展開さえできれば、4-4-2で守るのは難しいだろう。
先制点もこのサイドへの展開を生かした形。左サイドでラシャニが潰れた後、後方から実直にオーバーラップを繰り返していたハデルジョナイがエリア内にクロスを上げる。これをジョージアの選手がクリアしきれず。ややオウンゴール気味だったが、持ち味を発揮したコソボが予選初勝利に向けた大きな先制点を手にした。
リードを許した後半はジョージアが攻めの姿勢を強め、コソボはラインを下げて受けに回る。ラインを深い位置まで下げたせいで、コソボは保持で時間を見出すことができず、前半よりもジョージアはプレスが効くようになってくる。
だが、最終ライン勝負になるとジョージアはやや分が悪い。前半と異なり、縦に早いロングカウンターからジョージアのハイラインの裏をとり、後半もコソボはチャンスを創出する。
後半はトランジッションを増やし、クロスに対しても人数を揃えたジョージアだったが、終盤はややガス欠気味に。しっかりとゲームクローズを決めたコソボがアウェイで勝利。予選未勝利対決を制し、4節目で同国史上初のW杯予選勝利を挙げた。
Pick up player:ヴァロン・ペリシャ(KOS)
プレッシングに加えて、逆サイドのハーフスペースの裏抜けまで試みるダイナミズムさが輝いていた。システマティックなチームは仕組みに目が行きがちだけど、フィジカル的にタフなタスクを背負っている選手の強度が落ちると一気に機能性が下がる。そういう意味で彼の存在はコソボにとって大きい。
試合結果
2021.9.2
カタールW杯欧州予選 第4節
ジョージア 0-1 コソボ
アジャラベット・スタジアム
【得点者】
KOS:18′ ムリキ
主審:マイコラ・バラキン