エバートン、21-22シーズンの歩み。
第1節 サウサンプトン戦(H)
■勝負を分けたのは後半の機能性
共に4-4-2同士の噛み合わせとなった一戦。攻撃に軸足を置いた両チームのスタイルを踏まえた通りの非常にオープンな戦いとなった。
サウサンプトンは昨シーズンのスタイルからマイナーチェンジ。昨季はとにかくライン間のCFに縦パスを入れて、SHが落としを受けて直線的にゴールを狙うやり方を狙っていたが、この試合では最終ラインにCHが落ち、押し上げたSBを経由しながら外に循環させつつ前に進んでいくやり方を取り入れていた。
一方のエバートンは非常に直線的。詰められるとシンプルにキャルバート=ルーウィン目掛けたロングボールを狙っていくという形。これだけだと後方からの押し上げが間に合わない!となりそうなものだけど、縦への速い展開もCHが運動量で何とかしているのがすごいところ。間延びしたロングボール一発でも前線への顔出しが間に合うのだから、ドゥクレは唯一無二である。ちなみにキャルバート=ルーウィンはロングボールを収める精度が昨季よりちょっと落ちている気がしたので、続けて観察していきたいところである。
どちらのチームも守備の部分では課題が浮き彫りになった試合でもあった。特にサイドにボールがあるときはボールサイドへのスライドが甘く、たとえ速い攻めでなくても保持側が間や裏を使うことはそんなに難しくなかった。FWもプレスバックをしないため、マイナスのパスでのやり直しもOK。非保持側はほぼ保持側のプレーを制限できず、持っている側のミス待ちのような状態が続いた。
どちらの攻撃が相手の守備ブロックを貫くか?という流れの中で先制点は意外な形で入る。トリガーになったのはマイケル・キーン。珍しく、シンプルに縦に蹴らずに出しどころを探っているなと思ったら、詰められてスペースがなくなり、ボールロスト。最後はA.アームストロングが1対1の局面からゴール角に打ち込みサウサンプトンが先制する。
しかし、後半にミスが出たのはサウサンプトンのバックス。セットプレーの流れから、跳ね返しに伴うラインアップを怠ると、裏に抜けたリシャルリソンを完全にフリーに。頭を越されたサリスは切ない。せっかくセットプレーを跳ね返したのに、遅れて押し上げた挙句簡単に相手を離してしまった。
後半はサウサンプトンのプレスが徐々に積極性を失う。体力の低下からか、中盤を素通りさせる場面が増える。その結果、エバートンが相手陣でプレーする機会を得ることになる。効いていたのは交代で入ったイウォビ。落ち着かない全然の中でボールを収め、空いているスペースを探してパスを入れることでサウサンプトンの守備に穴をあける。
2得点目のドゥクレのゴールはスーパーだが、3失点目のキャルバート=ルーウィンのゴールはあそこまで入られてしまえば必然といっていいだろう。終盤に相手の機能性低下を見逃さなかったエバートンが逆転での開幕戦勝利を手にした。
試合結果
2021.8.14
プレミアリーグ 第1節
エバートン 3-1 サウサンプトン
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:47‘ リシャルリソン, 76’ ドゥクレ, 81’ キャルバート=ルーウィン
SOU:22’ アダム・アームストロング
主審:アンディ・マドレー
第2節 リーズ戦(A)
■2節にして登場した4-4-2専用機
昨シーズン、勝負どころで登場したリーズの3−3−3−1が早くも第2節にして今季初の採用である。このシステムが採用される状況で共通しているのは、相手が4−4−2ベースのチームであること。昨シーズンの採用例はバーンリーやサウサンプトンなど。ザ・4−4−2っていう感じのチームである。
今節の相手であるエバートンも4−2−3−1ではあるが、大枠で言えば一応この採用基準は満たしているとは言えるだろう。立ち上がりからリーズは後方での数的優位を使い、ポゼッションの時間を増やしながら試合を進めていく。少なくともこの並びならば、あまりパスコースの創出に困ることはない。盤面上、縦に並ぶ選手たちは細かく左右に流れ、斜め方向にボールホルダーをサポートする。CBもボールを運び、相手の2列目を引き出しつつパスコースを作る。
中央のプレイヤーがボールサイドに流れれば数的優位の確保は簡単。特に右サイドはクリヒ、ダラス、ラフィーニャがポジションを入れ替えながらエバートンを揺さぶっていく。しかし、ここからエリアに入るまでの攻撃がやや単調。クロスがエバートンに跳ね返されて、ゴールまで辿り着かない。
リーズのこの仕組みで気になるのはネガトラ時に中盤中央がスカスカになりやすく、被カウンター時のダメージが大きいこと。しかし、エバートンのポジトラに素早さがなく、反撃の機会をあまり得ることができなかった。
それでもエバートンの前線の個人の能力の高さはさすが。リーズのマンマーク主体の前提である1人が1人を止めるという原則を壊したのはキャルバート=ルーウィン。思い切り体を掴まなければリーズのDFは彼を止めることができず、PA内のコンタクトでエバートンにPKを与えられる。
いい流れに乗りたいエバートンだったが、前節にひきつづきDFラインにミスが出る。バンフォードのお膳立てを経て、クリヒはあっさりとGKとの1対1の状況を作ることができた。
同点に追いついたリーズだが、後半はややエバートンの個の力に押され気味。とりわけ、この日輝きを放っていたグレイが技ありのシュートを決めて再びエバートンが前に出る。地味ながら、ドゥクレの攻め上がりのダイナミックさも効いていた。自陣からのいいつなぎのゴールだった。
しかし、個で殴り返したのはリーズ。ラフィーニャの得意の角度からのミドルでなんとか劣勢の中で追いつく。
試合はそのまま終了。リーズの3−3−3−1は特に後半はこれまで程の効き目はなかったが、なんとか追いついて負けは回避。対4−4−2専用機の面目を保つことに成功した。
試合結果
2021.8.21
プレミアリーグ 第2節
リーズ 2-2 エバートン
エランド・ロード
【得点者】
LEE:41′ クリヒ, 72′ ラフィーニャ
EVE:30′(PK) キャルバート=ルーウィン
主審:ダレン・イングランド
第3節 ブライトン戦(A)
■足りない支配力をハンマーで破壊
連勝スタートと最高の開幕を決めたブライトン。迎える第2節の相手はこちらも無敗で開幕2戦を乗り切ったエバートンである。
ボールを握ったのはブライトンの方だった。前節と同じく3バックで臨んだ今節もポゼッションは安定。2トップ脇からボールを運んで、敵陣に進む。相手を自陣に引き込んでからの擬似カウンターもお手の物で、相変わらずのポゼッションの精度を見せていた。
エバートンはネガトラや相手に引き込まれる状況を作られると、中盤が空洞化。ドゥクレというルンバに丸投げする形になる。だが、この日のブライトンはアタッキングサードで迷いを感じた。これ!というエリア内へのアシストのパスが決まらず、積年の課題である決定力不足の一歩手前の段階でつまづく場面が見られた。
逆にエバートンは相手陣に踏み込めさえすれば迫力十分。2トップに加えて、両SHのグレイとタウンゼントも攻撃に加わり厚みのあるトランジッションを展開していた。ドゥクレの存在感も抜群。守備の掃除だけでなく、攻撃にまで打って出れなければプレミアリーグのルンバは務まらない。
30分を過ぎたあたりから、徐々にブライトンの手からポゼッションが離れ始め、展開が一人歩きするとパワーの差が出てくる。持っているハンマーの破壊力はエバートンの方が上である。
保持でもややマークが緩めなサイドから前進。エバートンが押し込む時間が終盤に向けて増えてくる。そうなるとそのままエバートンが先制。グレイが対面のウェブスターを出し抜き、技ありのシュート。トランジッションが増えた展開の中でハンマーの威力を見せつける。
後半、ブライトンは左サイドにフェルトマンを投入。しかし、彼の出来はブライトンにとって誤算だった。攻撃では、流れを止めてカウンターの温床になると、アラン→コールマンのパスで裏を取られて慌てたところでPKを献上する。
完全にしてやられたブライトン。その後もチャンスの糸口はなかなか見られず。いつもよりも支配する時間も支配している間の力強さも感じなかったブライトンをエバートンがハードなパンチで破壊。チームの地力の差を感じる試合だった。
試合結果
2021.8.28
プレミアリーグ 第3節
ブライトン 0-2 エバートン
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
EVE:41′ グレイ, 58′ キャルバート=ルーウィン
主審:ジョナサン・モス
第4節 バーンリー戦(H)
■6分で一気に仕留める
この試合のエバートンはいつもと異なる3-4-3を採用。今シーズン初めての3バックでのスタートとなった。おそらく、狙いはバーンリーの4-4-2と噛み合わせをズラして時間を作ろうというところだろう。
しかしながら、このやり方はあまり効かなかった。というのも、バーンリーがそういう配置的な要素と関係なく、高い位置からプレッシングに来たからである。噛み合わせとか気にせずに人に向かってプレスにくるバーンリーにエバートンは苦戦。脱出することができずに前に進めない時間が続いてしまう。
むしろ、この両チームの噛み合わせのズレをうまく使っていたのはバーンリーの方。エバートンが噛み合わせのズレからプレスをうまくかけられないのを利用し、バーンリーは長い展開から安定した保持を見せていた。相変わらずフラフラするのが上手いマクニールは、同サイドのテイラーのオーバーラップの手助けを借りながら中盤からエリア内にクロスを上げてチャンスを創出していた。
非保持では相手を捕まえられず、保持では相手に捕まり苦戦するエバートン。それでもなんとかCFに入ったリシャルリソンのポストプレーや裏抜けでズレを作るなど抵抗の姿勢は見せていく。
前半終了間際には少々エバートンにペースは流れたものの、もっさりした展開は依然としてバーンリーが得意とするところ。後半早々にセットプレーのセカンドチャンスを生かし、ベン・ミーが先制点をゲットする。これでバーンリーはCFよりもCBの得点の方が多いチームになった。
なんとなく展開に飲まれやすい印象があるエバートン。この悪い流れを変えられないかなと思ったが、バーンリー同様にセットプレーから追いついてみせる。得点を決めたのは同じくCBのキーン。開幕戦から失点につながるミスを重ねているCBが得点面で嬉しい貢献を果たした。
ここから一気にエバートンは畳み掛けていく。中盤の競り合いから転がったゴールをタウンゼントがミドルで撃ち抜くと、その直後には中央をぱっくり割ったグレイの裏抜けから一気に追加点まで。同点弾から3点目までわずか6分間の出来事だった。3得点目はガバガバ。それでも中央のパスコースを見つけたドゥクレは褒めたいところである。
最後はゴメスやイウォビの投入で保持にて落ち着かせるポイントを作り逃げ切ったエバートン。これで今季すでに逆転勝ちは2回目。もっさりとしたバーンリーのペースに巻き込まれずに、なんとか得点でペースを壊すことに成功した。
試合結果
2021.9.13
プレミアリーグ 第4節
エバートン 3-1 バーンリー
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:60′ キーン, 65′ タウンゼント, 66′ グレイ
BUR:53′ ミー
主審:アンドレ・マリナー
第5節 アストンビラ戦(A)
■パスコースの先を作り起爆剤に
序盤戦は両チームとも非常に様子見の様相が強かった。互いにロングボールに終始する安全第一のプラン。特にエバートンはキャルバート=ルーウィンに加えて、前節出場選手からリシャルリソンやコールマン、ピックフォードが不在など負傷者が止まらない状態。まずは慎重にゲームに入る必要があったのかもしれない。
したがって、試合の中盤までは互いのチャンスはセットプレーくらい。特に、ミングスのヘッドはアストンビラにとっては特大決定機。ピックフォードの代役を務めたベゴビッチはよく防いだ。ただ、展開はなかなかに重く、アストンビラもエバートンも流れの中からのチャンスを作るのには苦労をしていた。
その中で徐々に流れをつかみ出したのはアストンビラ。前節はチェルシーに完敗したものの、内容は上々。その質の高さを担保した3センターは今節も好調。行動範囲も広く、フリーランの質も高い彼ら3人の動きで左のハーフスペースを中心に、チラホラとゴールに迫るシーンが増えてくる。
しかし、アストンビラにここで緊急事態。CHの軸であるマッギンが負傷交代。これにより、フリーランの質が低下したアストンビラ。エバートンのCHであるアランとドゥクレが徐々に横のスライドに対応し、ハーフスペースを防ぐ動きに慣れてきたこともあり、再び試合は膠着する。
後半、どちらかといえばペースを掴んだのはエバートン。仕掛けからファウルでセットプレーの機会を得ると、アストンビラの攻撃を中盤のフィルターで素早く引っ掛けて遮断。アストンビラはなかなか前に行けなくなる。
しかし、先制したのはアストンビラ。早い展開の中で、やや受け手が詰まりそうなパスワークが続く中、裏抜けで最前線にパスコースを作ったのはキャッシュ。ドウグラス・ルイスの攻撃参加の先の道筋を作ったキャッシュが豪快にシュートを振り抜き、アストンビラが先手をとる。
ここから試合は一気に着火。直後にセットプレーからディーニュのオウンゴールでビラが追加点を取ると、仕上げとなったのは交代出場したベイリー。大きな展開を受けて、縦に鋭く進むとパンチのある左足のシュートで勝ちを確実なものに。マッギンに続き、彼も負傷交代したのは気がかりだが、短い時間で結果を出せたのはポジティブだろう。
逆転勝ちが多いエバートンも負傷者多数に3-0ではなす術なし。終盤に着火したアストンビラを止めることができなかった。
試合結果
2021.9.18
プレミアリーグ 第5節
アストンビラ 3-0 エバートン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:66′ キャッシュ, 69′ ディーニュ(OG), 75′ ベイリー
主審:クレイグ・ポーソン
第6節 ノリッジ戦(H)
■ポジティブ要素もあるけれど…
開幕から5連敗。唯一の全敗で苦しんでいる昇格組のノリッジ。失点はリーグで最も多く、得点は最も少ないのだから最下位も全敗も必然と言えば必然だろう。
ノリッジはこの試合において5-3-2を採用。バックスの枚数を増やしてまずは自陣の守備の部分から改善しようという腹づもりなのだろう。
エバートンは初めこそ、アランがサイドに流れてディーニュを押し出すなど、相手が4-2-3-1で来ることを想定していそうな変形を行なっていた。だが、それも早々に終了。可変をせずとも、重心の低いノリッジ相手には前に進めることができるということだろう。
実際、サイドにプレスをかけられずズルズル自陣深くまで下がっていってしまうことでノリッジは守備機会が増加。堅い守備を武器にロングカウンター主体で戦うチームでいいのならばそれでもいいのだろうが、ノリッジはその前提となる堅い守備があるチームではない。案の定、攻撃参加を増やしてくるエバートンに対してノリッジはPKを献上してしまう。守備力向上のため補強したカバクがPKを与えたというのも切ない。
保持の局面ではノリッジの5-3-2はある程度の効果があったとは思う。エバートンのプレスがそこまで整っていなかったというのもあるが、WBにボールを持たせることで今まで前線にボールの預けどころがなかった部分は改善。以前よりは落ち着いてボールを持つことはできていた。しかしながら、そこからゴールに向かう動きができているかは別だけども。
エバートンは後半にプレスを修正。タウンゼントに代えて、ゴードンを入れたタイミングで大外と中央の人数を合わせやすい5-3-2気味に守備を変形する。すると、これがプレスがハマるきっかけに。マクリーンからボールを囲んで一気にショートカウンターに移行すると、最後はドゥクレ。ダイナミズムの象徴と言える存在が決めた追加点で試合は決着する。
得点は取れず、失点は積み重なる。メンバーを多少入れ替えたエバートン相手にも歯が立たず、ノリッジの苦悩はまだまだ続くことになりそうだ。
試合結果
2021.9.25
プレミアリーグ 第6節
エバートン 2-0 ノリッジ
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:29′(PK) タウンゼント, 77′ ドゥクレ
主審:デビッド・クーテ
第7節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)
■斜め成分を活かせるうちは・・・
互いに4-2-3-1のフォーメーションでスタートした両チーム。序盤からボール保持で主導権を握ったのはマンチェスター・ユナイテッドだった。そこまで可変は激しくなく、CBとCHの4枚で低い位置からビルドアップ。サイドに大きなボールを送り、そこから人数をかけた崩しでエリアを狙うことが主なやり方である。
サイドの崩しはひし形が基本。ブルーノ・フェルナンデスはボールサイドに絡む代わりに1トップはビルドアップ関与は免除されることが多い。この棲み分けはトップがカバーニだからこそ。クリスティアーノ・ロナウドはこの約束事の外側の人間である。
ユナイテッドがこの試合よかったことはサイドからのクロス以外に斜めに入り込む成分を左右で用意していたこと。例えば、ルーク・ショウのフリーランとか。大外を取られたらクロスに備えればいい!と相手に割り切らせない点はいい感じ。
この斜め成分の動きはエバートンに効く。なぜならエバートンは守備におけるCHの行動範囲が非常に広く、中央にスペースを空けてしまうことが多いから。出て来たドゥクレやアランの脇を差されるような動きは苦手なのである。
そして実際この斜め成分に対応できずに先制点を献上する。右サイドの斜め成分担当のグリーンウッドがドゥクレの脇からすり抜けるように中央に入り込むと、ブルーノ・フェルナンデスを経由して逆サイドのマルシャルまでボールがつながる。DFラインを下げながら受けることに成功したマルシャルが先制点を叩き込む。
しかし、ユナイテッドが盤石にし試合を運べたかというとそういうわけではない。この試合のユナイテッドはどこか対人が緩い。中盤のトランジッションの局面もドゥクレやグレイに力負けするシーンもあったし、エリア内では人数が揃っていてもマークに対する警戒が甘い時もあった。
オープンな状況におけるエバートンの強さに脅かされ続けると、迎えた後半についに同点に。グレイのドリブルからラインを押し下げると最後はタウンゼント。完璧に打ち抜かれたミドルに対してデヘアは一歩も動くことすらできなかった。
その後、エバートンはデイビスを投入し、4-5-1に布陣を修正。中盤の人を増やし、ユナイテッドの横スライドに対して脇を差される危険性を減らす。すると、ユナイテッドはこれまでほどはチャンスを作れなくなり試合は落ち着いた展開に。
ロナウド、ポグバと大駒を続々と投入したユナイテッドだったが、足元へのパスが増える分、攻撃はむしろ停滞。ポグバのファウルの荒さを見ると、だいぶフラストレーションを溜めていた様子。
勝ちきれなかったユナイテッドは2節連続で勝ちを逃すことに。他の優勝候補に比べて日程が楽なはずの序盤戦だったが、優勝に向けて弾みのついた滑り出しとは言えなくなってしまった。
試合結果
2021.10.2
プレミアリーグ 第7節
マンチェスター・ユナイテッド 1-1 エバートン
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:43‘ マルシャル
EVE:65’ タウンゼント
主審:マイケル・オリバー
第8節 ウェストハム戦(H)
■上位をにらむ一戦はセットプレーで決着
戦績は上々、トップグループに隙を見つけて割って入りたい両チームの一戦である。布陣としては4-2-3-1ベース同士のフォーメーション。というわけでお互いにどこでズレを作るかという勝負に出る必要がある。そのアプローチは両チームで異なっていた。
配置の局面でズレを作ろうしていたのはウェストハムの方。CHのライスが降りる動きを見せたり、そのライスが動いたことで空けたスペースに2列目が入り込んだり、あるいは逆に裏に抜けたりなどエバートンの陣形を動かすためのアプローチを駆使しながら前進を狙っていく。
ウェストハムがこのやり方を選んだのにはエバートンの守備の指針も大きく関係しているように思う。エバートンの4-4-2は相手の動きについていきやすい側面が強く、中盤を中心に非常に穴が空きやすい。相手が動いてくれるからこそ動くという側面が強かった。
仮に守備側がウェストハムだったら、この動き回っての前進はもっと通用しなかっただろう。したがってエバートンはよりデュエル色の濃いアプローチで臨むようになった。前線に構えるロンドンがそのターゲット。なんとか背負ってポストをすることで相手のDFラインを押し下げる。エリア内では物足りなさがあったが、陣地回復においては十分ロンドンは効く。
前を向いてのチャンスメイクがより期待できるのは好調のグレイ。中央でのスタートとなったが、途中からイウォビと場所を入れ替えてサイドに出ていった。これならばサイドからの単騎での突破を狙える上に、ボールサイドに触ってナンボのイウォビを送り込みやすくなる。遅攻の整備が課題のエバートンだが、こちらのほうがゆっくり攻める際の攻め手にも困らないはずだ。
しかし、ウェストハムは2列目の帰陣が早くソリッド。前半の終盤から徐々にエバートンが攻める時間を増やすが、なかなか決定機まではたどり着かない。終盤には徐々に規律がなくなりだし、カウンターの応酬の展開になってくる。
勝負を分けたのはセットプレー。終盤のたたき合いで結果を出したのはCKを叩き込んだオグボンナだった。その後はソーチェクの負傷交代を機にウェストハムが3バックに移行。終盤は畳みかける攻撃でウェストハム陣内に攻め込み続けたエバートンだったが、最後までハンマーでたたき壊すことはできず。
共にカウンターからは見せ場を作ることはできたが、勝負を分けたのはセットプレー。グディソンパークに帰還したモイーズ率いるウェストハムがしぶとく勝ち点3をモノにして見せた。
試合結果
2021.10.17
プレミアリーグ 第8節
エバートン 0-1 ウェストハム
グディソン・パーク
【得点者】
WHU:74′ オグボンナ
主審:スチュアート・アットウィル
第9節 ワトフォード戦(H)
■まったりムードを吹き飛ばす雪だるま式の悪循環
前節はリバプール相手に5失点と就任早々大クラッシュを引き起こしてしまったラニエリのワトフォード。今節は同じマージーサイドに本拠地を構えるエバートンとの対戦である。
ワトフォードはメンバーこそ多少入れ替えたものの、前節の課題を覆い隠せていたとは言い難い。WGの守備位置が高い割には後続がついてこず、WG-SB間にぽっかり空くスペースを使いながら、エバートンに前進を許す。もともとエバートンもオープンな撃ち合いの方が得意なチーム。序盤から殴り合いとなった一戦は早々にホームのエバートンが先制点を奪う。
決めたのはゴードンのカウンターからのデイビス。手薄なサイドからボールを押し下げたエバートンがCHの攻撃参加で圧力を上乗せし、一気にワトフォードのゴールを打ち破って見せた。
前に出ていけば間延びし、後ろに構えれば長いボールを飛ばされるしでなかなかきっかけを掴めないワトフォード。しかし、同点弾は突然に。セットプレーから前半の内に追いついてみせる。見事なセットプレーではあったが、エバートンの守備陣はほぼ動くことができなかったのは気になった。
それでも試合はエバートンが優勢だった。前後分断で生まれるギャップをついてエバートンは前進できていたし、カウンターの好機をワトフォードが活かせる感じもしなかった。メンバーが代わっても展開は同じ。リシャルリソンの久しぶりのゴールでリードを奪った70分台はこのまままったり試合が終わるものと思えた。
しかし、流れを変えたのはミスの連鎖。イウォビ、デイビスの2人のクリアミスで再度ワトフォードにコーナーを与えると、これをクツカが押し込み同点に。
ここからは流れは一気にワトフォードに。もともとドゥクレがいてなんとか成り立っていたCHの守備範囲に丸投げするやり方はこの日も健在。ただし、ドゥクレがいないので純粋に機能性は落ちる。CHがカバーできない範囲はCBがカバーに出てくる。エバートンの守備は前から取る試みを積極的に行う分、後ろへの皺寄せが雪だるま式で積み重なっていく守り方である。
同点にされた直後、展開がもたらす焦りからか、ワトフォードのカウンターに対してゴドフレイが前に出ていきあっさり交わされてしまう。CBがリスクを先送りにすれば当然その先にはGKしかツケを払う存在はおらず、そこを破ったワトフォードにあっさり逆転を許す。
そこから先はエバートンの守備陣の拙いPA内での対応が目立つばかり。今季ここまでの鬱憤を晴らすかのようにゴールを積み重ねるワトフォードを前に、何もできなかったエバートン。ミスの連鎖とセットプレーの拙さで明け渡した主導権の代償は高くつくことになってしまった。
試合結果
2021.10.23
プレミアリーグ 第9節
エバートン 2-5 ワトフォード
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:3′ デイビス, 63′ リシャルリソン
WAT:13′ 80′ 86′ キング, 78′ クツカ, 90+1′ デニス
主審:グラハム・スコット
第10節 ウォルバーハンプトン戦(A)
■この負けより、これからが気になる
ワトフォードに終盤の猛攻を受けて5失点という大敗を喫したエバートン。今節はリカバリーが必要。結果を求められる試合となった。
彼らのこの試合での選択はウルブスにボールを渡して、4-4-2でブロックを組み守るというものだった。ウルブスは保持に強みがあるタイプではないし、エバートンはカウンターから刺せるアタッカー陣も揃っているので、選択としては合理的ではある。
だけども、エバートンにとって現実は非常に厳しいものだったと言わざるを得ない。単純にウルブスの3-4-3とエバートンの4-4-2の噛み合わせのズレによって動かされてしまう。例えばWBにSBが釣り出されたり、後方のビルドアップにアランやグバミンが引っ張り出されてしまうことで、そもそも4-4-2できっちり構えられる場面が非常に少なかった。
なのでウルブスからすると、停滞した局面でゆっくりボールを動かしても中央を破れるという状況に。オフサイドで得点が取り消された場面とかはエバートンからすると4-4-2で構えるという選択肢自体を見直さなければいけないくらいの中央の壊され方だった。
エバートンが気になるのは保持の局面でも。単純に深い位置まで押し込まれてしまうというのもあるのかもしれないけども、ボールを奪って前につけるという流れにスムーズに移行できず。グレイ、タウンゼントのようなスピード豊かなアタッカーにボールを預けるためにもたついてしまい、結果的に撤退したウルブスの守備ブロック相手に停滞するようになってしまう。
後半はウルブスが撤退志向を強めたこともあり、だいぶエバートンがボールを持てる場面が出てきたのだが、やはりどうしても元気のなさが気になる。精神論みたいになってしまうのだけど、多少アバウトでも強引に自分たちの流れに引き寄せられるのがエバートンの良さだと思う。
なので、この試合に負けたことというよりも、ドゥクレが負傷離脱して以降はちょっとこの勢いだと良さがなくなってしまっていることとどう向き合うか?みたいなことを考えないといけないフェーズのように思えた。
セットプレーからキルマンがタウンゼントを上回り、先制した1点目。そして、2点目のようなプレス起因でのショートカウンターなど順調に得点を重ねるウルブス。後半は1点を返されたものの、カウンターやサイドの崩しなど後半も十分に持ち味を出せていた。調子の上がらないエバートンを尻目にホームで完勝を収めたといっていいだろう。
試合結果
2021.11.1
プレミアリーグ 第10節
ウォルバーハンプトン 2-1 エバートン
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:28′ キルマン, 32′ ヒメネス
EVE:66′ イウォビ
主審:マーティン・アトキンソン
第11節 トッテナム戦(H)
■続く試行錯誤の苦労
コンテを迎えて初めてのリーグ戦となったトッテナム。ミッドウィークのカンファレンスリーグでは就任後の初陣を勝利したが、リーグ戦でも同じように結果を残せるか。
エバートンは中盤の間伸びが目立っていることで失点が嵩んでいるチーム。この試合では4-3-3を採用しつつ、間伸びの主要因になりやすいIHの飛び出しを抑制しつつ戦っている。必死に手綱を握りしめながら間伸びしないように慎重に慎重に戦っているように見えた。
そんな試行錯誤中のエバートンを相手に回して、3バックのトッテナムは保持に時間をかけるとどうしても前進が難しい。特に中盤と前線のライン間での選択肢が非常に気になった。トッテナムが保持、エバートンが非保持の局面においてはうまく試合を落ち着かせていたと言っていい部分である。
早い攻撃においてもトッテナムはなかなか光を見いだせない。特にケインはちょっと周りを使う余裕がなくなっていたように見える。前線がタメながら、周りを使う!みたいなシーンはチーム全体で少なく、カウンターから得た時間の貯蓄を浪費しながらゴールに向かい、使い切ってしまったらどん詰まりというのがトッテナムの攻撃の主なパターン。トッテナムはエバートンをずらしながら前進していく、時間の貯蓄を作り出していくようなポゼッションはまだできていない。
トランジッション局面においても、ファウルによって止めるシーンが目立つトッテナム。ただ、エバートンも遅攻になると解決策が見いだせない。リトリート時は5-4-1になるトッテナムの守備陣に対してサイドを回してのクロスしか選択肢がなく、簡単に跳ね返されるシーンもしばしば。カットインできるグレイが唯一試合を動かせる可能性がある選手だった。
トッテナムの攻撃で効いていたのは両WBがオーバーラップする場面。時間のタメを両WBに送り込むことができたシーンはチャンスになっている。オーバーラップに関してはレギロンは比較的脅威になっていたが、エメルソンはまだ上がるタイミングが遅く、高い位置を取る前に時間の貯金を使い切ってしまう場面が多かった。それプラスチームとしてWBに時間を送り込める場面が少なかったという問題も乗ってくる形。
後半になっても両チームはゴールに迫る場面を作れず。トッテナムはアタッカーを下げる慎重な判断になった分、前への推進力が削がれてしまい前半以上にゴールに迫れるシーンは減った。終盤のポストにミドルが直撃したシーンくらいだろうか。
エバートンはアランをアンカーに据える交代が功を奏し、裏へのパスからあわやPKという場面を作り出すが、これはOFRでの判定変更でノーファウルに。その後はこちらも比較的守備的な交代カードに終始し、その上交代で入ったホルゲイトが一発退場というあまりいい終盤を過ごすことはできなかった。
監督交代の有無によらず試行錯誤中の両チーム。その苦悩を感じることができるスコアレスドローだった。
試合結果
2021.11.7
プレミアリーグ 第11節
エバートン 0-0 トッテナム
グディソン・パーク
主審:クリス・カバナフ
第12節 マンチェスター・シティ戦(A)
■攻勢に出た故の無限ポゼッション
マンチェスター・ダービーを制し、首位のチェルシーを追撃するシティ。今節は徐々に危険水域に入りつつあるエバートンとの一戦である。
予想通り、立ち上がりからシティの保持を軸に試合は進んでいく。しかしながら、エバートンはなんとか策を講じてこれに対抗した。キーマンとなったのはトップ下のタウンゼント。4-4-2のような布陣が基本だが、ラインを下げる際には彼がIHに入る形で中盤の枚数を5枚にする。
これにより中盤で幅広く守れるエバートン。CHがボールサイドにスライドしても陣形に穴が開きにくい形になっている。シティは大外のトライアングルとロドリの素早いサイドチェンジから打開を図るが、エバートンは押し込まれながらも最後の一差しを許さない。
とは言え、流石に陣地回復は行わないといけないエバートン。シティが狙ったのはまさにここのフェーズ。1人でボールを運べるグレイが負傷でいなくなってからはひとまず中盤に預けなければ前に進めなくなってしまったエバートン。ロングカウンターの起点となる中央へのパスをシティに狙い撃ちされ、シティのショートカウンターを食らうことになる。
中央からの打開はほとんどこのパターン。PKが取り消されたスターリングが倒れ込む流れのシーンも、このショートカウンター気味の展開からである。
ダイブでPKを取り消されたスターリングだが、抜け出しからのワンタッチゴールで面目を保った格好。この日はRWG起用。途中までは大外に張る機会が多かったが、徐々に中央に絞ってのプレーが増えた矢先のことだった。
シティの追加点は先に挙げたエバートンのロングカウンターの発動を防がれる流れから。今度は空いたバイタルからロドリがスーパーなミドルを叩き込んで見せた。
2点に差が広がり、なんとか前に出なければいけないエバートン。4-4-2にシフトし攻撃に転じる構えに出る。しかし、これは絵に描いた餅に。プレスにおいては鈍重な2トップを併用する形ではそもそもシティから全くボールを奪い返せない。
無限にシティがポゼッションを続けるフェーズをただただエティハドのお客さんはのんびり見守るばかり。仕上げのベルナルドのシュートが決まる前にシティの勝利を確信していた人も多かったことだろう。
試合結果
2021.11.21
プレミアリーグ 第12節
マンチェスター・シティ 3-0 エバートン
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:44′ スターリング, 55′ ロドリ, 86′ ベルナルド
主審:スチュアート・アットウィル
第13節 ブレントフォード戦(A)
■攻撃陣の活かし方は手探り
苦境が続くアウェイのエバートン。負けが込み始めたタイミングと離脱の起点が一致するドゥクレを復帰後即スタメン起用するのもうなづけるくらいチームの戦績は落ち込み気味である。
この日の相手であるブレントフォードはエバートンのスタイルでいえば戦いやすいチームだと思う。局地戦でのデュエルの優位があらゆる前提に必要なブレントフォードの攻守は、対人能力に長けた選手が多いエバートン相手に効き目は薄い。相変わらず正確なフィードが持ち味のラヤも欠場しているため、後方のフィードの質でも勝負できない。とりあえず放り込みながらの前進という方策がとれずにブレントフォードは苦しんでいた。
だが、この状況をなかなか生かせないエバートン。ブレーキがかかったのはトップ下のイウォビと1トップのロンドンのところである。彼ら個人のパフォーマンスが悪いというよりはこの2人の食べ合わせが悪いという感じ。イウォビはよく言えばタメが効く、悪く言えば球離れが悪いという選手。サイドよりもズレを作りにくいトップ下だと、迷っているうちに自陣のスペースをブレントフォードに埋められてしまい、チャンスをふいにしてしまう場面がしばしば。
トップのロンドンも細かい動き直しでイウォビのパスコースを導出する選手ではない。どちらかといえば四の五の言わずに放り込んで来い!という選手である。というわけで待てど暮らせどイウォビには縦に進むパスコースが見えてこない。
したがって中央の縦関係は不発。アクセントになるのはゴードンの持ち上がりと、PAに飛び込むことが出来るドゥクレの存在。動きの少ない前線に対して動きを促せるアクションでチームを牽引する。
しかし、先制点を得たのはブレントフォード。攻めることが出来ていたわけではないが、やや不用意な形でタウンゼントのPKを誘い、これをトニーが沈めて見せる。
ビハインドで困ったエバートンはゴードンが前半から躍動していた左サイドから徹底的に攻めるように。サイドからのシンプルなクロスでロンドンの良さを生かす方向にシフトする。今季好調のグレイも左サイドに投入しながらPA内に迫っていく。
だが、現状ではこの形での攻撃の圧力増加しか見せることができないエバートン。リシャルリソンもキャルバート=ルーウィンもいない布陣ではロンドンの放り込みをどう生かすかが精いっぱい。最後まで戸惑い気味だったイウォビもフィニッシュにうまく絡むことができないまま試合は終了。跳ね返して耐えきったブレントフォードにまんまと逃げ切りを許してしまった。
試合結果
2021.11.27
プレミアリーグ 第13節
ブレントフォード 1-0 エバートン
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:24′(PK) トニー
主審:ダレン・イングランド
第14節 リバプール戦(H)
■ダービーの魔力の出番はなし
ダービーの怖いところといえば、これまでの両チームの流れとは関係なく試合が推移すること。例えば、ダービーをきっかけに一気に上り調子になるチームも入れば、これをきっかけに一気にコンディションを落とすチームもいる。流れを変えるきっかけ、それがダービーである。
しかしながら、今回のマージーサイドダービーはそのダービーの恐ろしさとは無縁。すなわち、両チームのここまでの流れをきっちりと反映した内容になったと言えるだろう。
エバートンにとってはそもそもどう戦うかということ自体がかなり悩ましかったはず。彼らが得点を取るということに立脚した場合、じっくりとビルドアップから点が取れるケースは少なく、あまりここに取り組みたくはない。前節のブレントフォード戦などでは攻めあぐねた結果、スコアレスに終わっている。得点を取るならば速い展開の方がベターである。
しかし、そのアップテンポな展開は今回の対戦相手のリバプールの真骨頂である。彼らはエバートンよりも速く、その上正確にプレーすることができる。というわけでエバートンは点を取るならば速い展開がいいが、そこは相手の得意分野という苦しみの輪廻に立ち向かうことになった。
立ち上がりから試合はダービーらしいアップテンポな展開に。結局はやってみることにしたエバートン。しかし、激しい中でもファビーニョのサイドチェンジなど、エバートンのCHの守備範囲の広さに依存した守備を壊すような手段を有しているリバプールは確実にクオリティの差を見せつける。サイドから揺さぶりつつ最後はヘンダーソンが仕留めると、『速くてうまい』の究極体の存在のようなサラーがカウンター独走から厳しい角度で技ありの追加点を決める。
20分でグディソン・パークの席をたつエバートンの観客はあまりにも諦めがよく見えるかもしれないが、今のエバートンでは敵わない相手に2点差という手が出ないシチュエーションに追い込まれたのは明らか。20分で力関係と厳しいスコアが突きつけられたのだから帰るのも無理はない。
勢いのあったエバートンのプレッシングが相手のビルドアップを引っ掛けることがあったり、今季の希望の光であるグレイのゴールで1点を返したりなどはしたものの、90分間力関係は基本的には変わることなくリバプールの優位で推移する。
後半もサラー、ジョッタが『速くてうまい』を体現するようなダイナミックさと技術を備えたシュートで隣人を突き放し、スコアの上でも4-1と完勝。
ダービーという転換点になりうるシチュエーションを得意分野で一蹴したリバプール。好調の彼らにとってはダービーという魔法がかかりうる舞台装置も関係がないようだ。
試合結果
2021.12.1
プレミアリーグ 第14節
エバートン 1-4 リバプール
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:38′ グレイ
LIV:9′ ヘンダーソン, 19′ 64′ サラー, 79′ ジョッタ
主審:ポール・ティアニー
第15節 アーセナル戦(H)
■自業自得でドラマティックな逆転劇
レビューはこちら。
8試合勝利がないエバートン。今節の相手はユナイテッドに敗れて再起を図るアーセナル。過去の戦績でみればアーセナルが優勢だが、直近2試合はエバートンが連勝中の一戦である。
ボールを握ったのはアーセナルの方。だが、復帰したジャカのプレースタイルやボールを受けられないウーデゴールの関係で全体の重心が下がりに下がる。ビルドアップに人数を割きすぎてしまい、前進がままならない状態に。
結局、出すところに迷っては蹴っ飛ばすの連続でアーセナルは満足に前進ができず。元々できていたことができなくなるというアルテタ政権になってからのアーセナルでよく見られる『リセット』現象が起きてしまったかのようだった。
エバートンも特段復調した感じは受けないのだが、後ろ向きな人数の掛け方をするアーセナルのスタイルのおかげで、前がかりになりすぎて後方がスカスカになりやすいという欠点が炙り出されなかったことが大きかったように思う。前進が許してもマイナス方向のプレー選択があまりにも多いアーセナルに対してならば、プレスが無理でものんびりと4-4-2を組むリトリートを選択してしまえば間に合ってしまう。
攻撃においても、最終ラインの枚数調整や前線のボールの収まり方はエバートンの方が上。リシャルリソンの収まりの良さを利用した連携はアーセナルを苦しめた。単独で運べるグレイや意外なオフザボールの巧みさを見せたタウンゼントとのコンビネーションでアーセナルのゴールを脅かす。
前半終了間際に決まったウーデゴールの得点はむしろ試合の流れに逆らうゴールといえる。リードをしたことでさらに消極性を増すアーセナルに対して、エバートンは4-3-3にシフト変更してプレスの噛み合わせ+強度をアップ。加えてダイナモであるドゥクレが攻撃に絡む機会が増えたことで攻め上がりの迫力も増すことになった。
ショートカウンターからの雪崩こみでゴールを脅かすことができるようになってきたエバートン。そもそも、この日は前線からの守備がピリッとせず、何度もリシャルリソンにネットを揺らされている(オフサイドだったけど)アーセナルにとってはこの状況を打開できる策はない。
結局、3回目の正直でゴールが認められたリシャルリソンの同点弾と終盤に魔法の一振りを見せたグレイの得点で終盤にエバートンは逆転。9試合ぶりの勝利と後半追加タイムの決勝点はエバートンファンから見れば劇的だろうが、当事者以外からすればクオリティの低さと後ろ向きな姿勢のアーセナルが自ら呼び込んだ自業自得のストーリーにしか見えなかった。
試合結果
2021.12.6
プレミアリーグ 第15節
エバートン 2-1 アーセナル
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:80′ リシャルリソン, 90+2′ グレイ
ARS:45+2′ ウーデゴール
主審:マイク・ディーン
第16節 クリスタル・パレス戦(A)
■優勢に進めて仕上げはギャラガー
ホームのパレスは久しぶりに保持にのんびりした形で臨むことが出来た。3-2-5を基調にした変形はもうお馴染みのもの。前線から+1としてあらゆる場所に顔を出すことができるギャラガーが保持を落ち着ける役割をこなすことで、相手のプレスに屈することなく前進をすることが出来る展開に。
エバートンは高い位置からプレッシングに行くものの、ピッチを広く使ったパレスのビルドアップに肩透かしを食らう。特にアランに代わってCHでドゥクレとパートナーを組んだデルフはあまりに広い守備範囲を丸投げされるというエバートンのCHが日常的に陥っているワーカーホリック気味の状態にやや戸惑っているかのよう。
プレスをかけ切れないとみるとエバートンは4-1-4-1気味に構える形に変更する。パレスは敵陣に押し込んだ後は右のギャラガーを中心としたハーフスペースの裏抜けでPAに入り込もうとするも、やや一本調子の感が否めず停滞気味になる。だが、この日のエバートンは方向も強さもやたらクリアが甘く、パレスにセカンドチャンスを不用意に与えることが多かった。
パレスが得た先制点はエバートンのクリアが中途半端になったところを強襲したもの。セカンドチャンスから攻め込んだパレスが一歩前に出ることに。
後半もパレスは保持で落ち着いて試合を進める。プレス強度を上げたドゥクレの裏から無理なく前進することが出来ていた。62分に決めたセットプレーでの追加点でエバートンを追い詰める。
追加点と若干時間は前後するが、カウンターからの光が見いだせなかったエバートンはリシャルリソンを諦めてロンドンとゴードンを投入する。
こうなると前半よりはややマシになったエバートン。ただ、パレスも押し込まれる機会こそ増えたものの、体のぶつけ合いでわかりやすい後手を踏むまでには至らず。反撃としてのカウンターの策もザハがいれば用意できるし、問題なく対応していく。
70分、エバートンが1点差に迫る追い上げを見せるが、試合終盤に再びパレスが突き放す。格の違いを見せつけたのはギャラガー。この冬にもカムバックしてほしいとチェルシーファンが願ってもおかしくない活躍を続けるギャラガーのダイナミックなゴールで試合は完全決着。
エバートンは反撃の兆しを見せたものの、試合全体を通してみれば勝利にふさわしいのはパレスの方だった。
試合結果
2021.12.11
プレミアリーグ 第16節
クリスタル・パレス 3-1 エバートン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:41′ 90+3′ ギャラガー, 62′ トムキンス
EVE:70′ ロンドン
主審:アンディ・マドレー
第17節 チェルシー戦(A)
■ハードなスカッドで粘りのドロー
ほぼシーズン全休となっているキャルバート=ルーウィンに加えてロンドン、リシャルリソン、グレイ、タウンゼントなど前線の選手が軒並み不在。この日のエバートンのアタッカー陣の編成は非常に苦しいものだった。
選んだ5-4-1というフォーメーションもチームカラーとしては本意ではないだろう。本来ならばガンガン前に出ながら撃ち合うスタイルが持ち味のチーム。相手がチェルシーということを差し引いても、とりあえずバックスを並べるという形は彼ららしくはない。
実際、エバートンは5-4-1の特性として顕れやすい堅さを見せることができなかった。2列目が早い段階でホルダーを捕まえにいくため、最終ラインと中盤のギャップができてしまうことがしばしば。したがって、チェルシーはエバートンの1トップであるシムズの周りからCBがボールを運ぶことで簡単に2列目を引き寄せることができた。
ツィエク、プリシッチ、マウントなど上下左右に動ける前線の機動力を活かしながらチェルシーはエバートンの5バックの裏をかき乱しながら前進する。トランジッション局面でオフザボールが効いていたのはジェームズ。ライン間でボールを受けるのもOK、裏へのボールの引き出しもうまい。一歩先に進むきっかけを作る動き出しでチェルシーの攻撃を前に進めていた。
だが、フィニッシュワークがボヤけやすいのが最近のチェルシーの悩み。マウントは得点を重ねてはいるものの、他の選手はなかなかフィニッシュワークにうまく絡んで来れない感じは少ししている。
エバートンはシムズへ長いボールを当てて背負わせる形以外は前進の形は見出せず。試合のペースとしてはチェルシーが握っているのは明らか。だが、決め手にかけてしまいゴールに迫ることができない。
後半もペースは変わらずチェルシーのもの。前半からジェームズが躍動していたチェルシーの右サイドがさらに活性化。ロフタス=チークがライン間の右のハーフスペースで起点になることで、チャンスを作ることができていた。
ようやくこじ開けた先制点はチェルシーの強みだった右サイドのオフザボールがベースになっていた。ドゥクレの攻め上がりを潰したところから、カウンターを発動させると最後はマウントが撃ち抜いて先制する。
やっと先制点が入ったことで胸を撫で下ろしたチェルシーだったが、直後にセットプレーからエバートンが同点に追いつく。ブランスウェイトのマークを外してしまったのは今季波に乗れていないサウールだった。
決勝弾を得るためにもう一度襲いかかるところまではいくことができなかったチェルシー。もぎ取った1点を守ることができない詰めの甘さを見せてしまい、エバートンに勝ち点奪取を許してしまった。
試合結果
2021.12.16
プレミアリーグ 第17節
チェルシー 1-1 エバートン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:70′ マウント
EVE:74′ ブランスウェイト
主審:マイケル・オリバー
第21節 ブライトン戦(H)
■ブロック守備のアキレス腱が邪魔をする
低迷するエバートンは序盤から明らかに苦しんでいた。3分にブライトンが得た先制点はエバートンの苦しさが如実に現れたものと言っていいだろう。5-4-1という後ろに重心が偏りやすいフォーメーションを採用したにも関わらず、ホルダーにチェックに行けずクロスをフリーであげさせる。人数は揃っているにも関わらず、クロスには競ることができない。縦方向のギャップを使われて面ごと壊される。
ボール保持に自信のあるブライトン相手にプレスがハマらないと撤退で勝負するのはアリだろう。グレイがいれば少なくとも敵陣までボールを運ぶことはできるし、ロングカウンターの発動はできる。だけども、撤退した時にこのような5バックでやっては行けないことの詰め合わせのような守備をしているようでは非常に厳しい。
あれよあれよという間にセットプレーからブライトンに追加点を奪われ、あっという間に2点差である。2失点目の直後にPKを得たエバートンだったが、これはキャルバート=ルーウィンがポストに当ててミス。苦しい展開が続く。
エバートンにとって救いだったのはこの日のブライトンのブロック守備はあまり精度が高くなかったこと。立ち上がりのプレッシングこそうまくいってはいたが、撤退時の連携がいまいち。1人が動いたのに合わせて他の選手が動くという部分ができておらず、特に両SBの周辺のスペース管理には怪しさがあった。特にククレジャだけはマンマーク色が強く、相手について行きすぎてしまい、周りとギャップができていたように思う。
後半に押し込むチャンスからゴードンのシュートが幸運な跳ね返りでネットイン。ようやくエバートンは反撃に出る。WGのゴードン、グレイを中心に左右から相手の陣形に穴を開ける場面が増えていく。
だが、次に得点を挙げたのはブライトン。エバートンが盛り返そうと押し込まれた時の5-4-1のブロックの穴が消えたわけではない。3点目を決めたのは1点目とほぼ同じ形。敵陣を押し下げて最終ラインを動かしたところで、マック=アリスターが中央でフリーになって叩き込む。最終ラインを縦に動かされた時の弱みがこの試合を分ける決定的なものになってしまった。
ゴードンが2点目を挙げて、ロンドンを投入したパワープレーに向かい、最後まで抵抗の構えを見せたエバートンだったが、反撃はそこまで。撤退守備時のアキレス腱が決定打になり、ホームでの連勝を飾ることはできなかった。
試合結果
2022.1.2
プレミアリーグ 第21節
エバートン 2-3 ブライトン
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:53′ 76′ ゴードン
BRI:3′ 71′ マック=アリスター, 21′ バーン
主審:ジョン・ブルックス
第22節 ノリッジ戦(A)
■前線の奮闘が通用し、最下位脱出
6試合連続で勝ち点なしどころか得点もないノリッジ。そんなノリッジと今節対戦するのは直近12試合でわずかに1勝の15位と同じく苦しんでいるエバートンである。苦悩の両チームにとっては何かきっかけをつかみたい一戦となった。
スミス監督就任後のノリッジは積極的に保持に対してここまで取り組んでいるものの、なかなか実になっていない。ノリッジのポゼッションが苦しいのはバックラインでやり直しをしている最中に、プレスをかけられると苦し紛れに前線に蹴るから。そして前線がそのボールを収められないからである。
だけども、この日は少し様子が違った。プレスをかけられて苦し紛れに前線に蹴らされるところまでは同じ。しかし、そこから前線の選手が体を張ることで相手を背負いながらキープすることができた。エバートンは正直組織的な守備は出来ないチームではあるが、対人ではどちらかといえば強みがあるチームだと思っていたので個人的には結構想定外の展開。
新加入のマイコレンコあたりがなかなか対応に苦慮するのは理解できるが、アンドレ・ゴメスやコールマンあたりがあっさり当たり負けするのは切ない。ちなみにマイコレンコのところも彼自身のパフォーマンスには理解を示せても、ここにいるはずのディーニュがいないということには理解を示せないサポーターも多いはずである。
いつもと比べて前進が容易だったノリッジ。ディーニュがいるはずだったエバートンの左サイドから2対2をあっさり制して、オウンゴールを誘発し7試合ぶりの得点を挙げる。
すると直後に追加点。右サイドのゴードンとコールマンの連携ミスを利用して、カウンターを発動すると最後はアイダのゴールで2点目。1点目でオウンゴールに関与したキーンは2失点目ではプッキに気を取られて通されてはいけないファーのパスコースを空けてしまうという踏んだり蹴ったりな出来だった。
攻撃でもエバートンは不振。コールマンを上げる3バック風味で前進を狙うが、どこをどう経由して前進をしたいのかが全く見えてこない。唯一の糸口となっているグレイがボールを引き取ってドリブルを仕掛けてファウルをもらいFKからロンドンとキャルバート=ルーウィンめがけて放り込む!という戦い方になってしまう。
むしろ、この攻撃を迎え撃ってアーロンズを軸に右サイドから反撃するノリッジの方が2点リードも落ち着いて試合を運んでいると形容できたくらいである。
後半も流れは大きく変わらず。リードしつつもプレスラインを下げないノリッジの奮闘が光る。アグレッシブな姿勢で後半もチャンスを引き寄せていた。前線ではサージェントが体を張りターゲットマンとして躍動していた。
アーロンズが負傷交代で下がるとさすがに押し返すことは難しくなったが、エバートンの反撃をリシャルリソンのオーバーヘッド1点にとどめたノリッジ。久しぶりの勝利で最下位からの脱出に成功。一方のエバートンはこの敗戦を受けてベニテスを解任。迷走するクラブ運営にファンが心配を募らせている。もしかしたらもしかするかもという悪い予感は早く拭い去りたいが・・・。
試合結果
2022.1.15
プレミアリーグ 第22節
ノリッジ 2-1 エバートン
キャロウ・ロード
【得点者】
NOR:16′ キーン(OG), 18′ アイダ
EVE:60′ リシャルリソン
主審:アンディ・マドレー
第23節 アストンビラ戦(H)
■崩せるシチュエーションの幅が決め手
降格圏の足音が迫ってきたことで、ベニテスの解任に踏み切ったエバートン。ダンカン・ファーガソンの2回目のリリーフの初陣はエバートンがベニテスの少し前に追い出したディーニュの新天地であるアストンビラとの一戦となった。
立ち上がりからエバートンは4-4-2で積極的なプレッシングを見せる。相変わらずコンパクトで組織的ではないが、中盤の出足は好調。アストンビラのバックスから時間を奪いつつ、ショートカウンターのチャンスを伺うことができていた。
だが、奪ってからの攻め切るところで言うとエバートンの出来には不満が残る。アタッカー陣のコンビネーションのところがうまくいかず、シュートチャンスまでは辿り着くことができない。ロングカウンターのところからドゥクレのラストパスが決まらなかったシーンはその典型と言っていいだろう。アストンビラのバックスはやや軽率なパスミスが多いため、エバートンのプレスの餌食になるケースは散見されたが、うまく生かし切ることができなかった。
一方のアストンビラはいつものお馴染みのIHが前に出ていくプレッシング。彼らが過負荷を請け負うことで、WGの前残りが可能になっている。ブエンディアとコウチーニョという中央でプレーできる2人がナローに前残りできることで、近い距離でのプレーでのコンビネーションを披露。ワトキンスがサイドに流れる動きを見せて、エバートンのオーバーラップしたSBの裏を取るようにしてサイドで起点を作る動きと組み合わせながら早い攻撃を仕上げる。
両チームとも中盤の動きが活発なぶん、サイドチェンジを成功させることができればかなり敵陣にスムーズに侵入できていた。この部分がよりスマートだったのはアストンビラの方。前半の終盤はサイドを変えながら、SBがオーバーラップで厚みを出したサイド攻撃からクロスでボックス内に襲い掛かるという彼ららしい攻撃を披露できるように。
押し込む機会が増えたアストンビラは前半終了間際に先制。ディーニュのクロスをブエンディアがアクロバティックなヘディングで決める。好プレーを見せていたこの日のピックフォードもこれにはお手上げだった。
後半のエバートンは前半以上の積極的なプレスで反撃を狙う。だが、エバートンはハイプレスをアストンビラにかわされてむしろピンチが増えるようになってしまう。
それならばとゴメスに代えてアランを入れることで中盤の運動量強化に動いたエバートン。さらにはサイドにゴードンを入れたことで右サイドの突破も強化。負傷交代したドゥクレに代わり、オニャンゴが入りクロスに合わせる高さを注入する。
積極的な交代選手で流れを掴んだエバートンだったが、集中するアストンビラの最終ラインと中盤は大崩れせず。最後までなんとか無失点で逃げ切ったアストンビラ。監督交代したエバートンの悩みはさらに深まるばかりである。
試合結果
2022.1.22
プレミアリーグ 第23節
エバートン 0-1 アストンビラ
グディソン・パーク
【得点者】
AVL:45+3′ ブエンディア
主審:クレイグ・ポーソン
第24節 ニューカッスル戦(A)
■再スタートに成功したのは?
FA杯でのランパードの初陣はまだチェックをしていないのだが、どうやら保持で違いを見せる展開だったよう。確かにこの試合でもエバートンは自陣深い位置からショートパスでじっくりと繋いでいくスタンスを見せてはいた。
だが、この日のニューカッスルは高いプレッシングの意欲でエバートンのショートパス攻勢を潰していく。特に3トップである程度進む方向を制限しつつ、IHの運動量で取り切るという仕組み。エバートンはボールを持つ機会こそ多かったが、中盤より前に進む機会は少なくニューカッスルのプレス網を脱出することができなかった。
それでもなんとか前進した機会を活かしてエバートンはセットプレーで先制。跳ね返りを押し込もうとするホルゲイトのシュートをラッセルズが防ぎきれずオウンゴールを許してしまう。しかし、1分後には全く逆の現象が。ニューカッスルのCKからラッセルズがシュート、そしてオウンゴールを許すのがホルゲイトという構図で同点に追いつく。たまにこういうことはあるんですよね。不思議。。
同点というスコアだが、苦しいのはエバートン。ボールを持つ意識は高いが、1人の選手が他の選手のために時間を作るような連携構築まで進んでいないため、前を向くには独力でなんとかしなければいけない場面が多い。かつ、一番その役割がこのチームでできるグレイが負傷交代。最終ラインではミナも負傷交代し、2枚の枠を前半で使ってしまったこともランパードにとっては痛かった。
前半の終了間際にはエバートンは落ち着いてボールを持てるようにはなってはいたが、後半は再びニューカッスルがプレスで勢いを取り戻す。プレスの餌食になったのはグレイと交代で入ったデレ・アリ。ニューカッスルは奪取から素早く逆サイドに展開して、サン=マクシマンが仕上げてファーのフレイザーが押し込む。
逆転を許したエバートン。前線ではリシャルリソンやアリが奮闘するも、やはり連携不足は否めず。パスの意図がズレたりするなど、即席ユニットの弱みを感じる。ファン・デ・ベークも適正ポジションの一列後ろでの起用で持ち味は出にくく、展開的にはむしろ広範囲をカバーできるドゥクレの不在を嘆くような内容だった。
サン=マクシマンが存在感を増して、勢いが出てきたニューカッスルは80分にトリッピアーが追加点をゲット。試合を決定づける。あとは撤退してブロックを組んでロングカウンターでワンチャンスを狙う形でOK。攻めあぐねるエバートンよりも多くのチャンスを生み出して見せた。
冬に多くの補強を行い、降格圏から少しでも離れたい両チームの対戦だったが、プレスから主導権を握る新境地を見せたニューカッスルとは対照的に苦しい内容に終始したエバートン。追ってくる後続の影を1日も早く断ち切りたいところだが。
試合結果
2022.2.8
プレミアリーグ 第24節
ニューカッスル 3-1 エバートン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:37′ ホルゲイト(OG), 56′ フレイザー, 80′ トリッピアー
EVE:36′ ラッセルズ(OG)
主審:アンソニー・テイラー
第25節 リーズ戦(H)
■土俵に上がってきた相手を叩きのめす
前節はニューカッスル相手に苦戦。ボール保持に舵をきったランパードのエバートンはニューカッスルのプレスの前に解決策を見出せずに難しい内容に終始してしまうことになってしまった。
彼らの問題はショートパスを大事にするというスタンスを取りながらも局面では前を向くことを個人のスキルに委ねていることである。配置によって周りの選手で協力しながら前を向かせるという連携の構築にはまだ至っておらず、対人スキルが通用しなかったり囲まれて狙い撃ちされたとしたら詰んでしまうという難点がある。
そういう意味ではリーズは今のエバートンにとって有難い相手だったように思う。マンマーク色の強い彼らのスタイルに対する解決策はまさしく『個人で個人を剥がすこと』。今のエバートンが選手たちに委任している要素である。
個人個人の強度で言えばエバートンはリーズよりも上。リーズが局地戦に持ち込んでくれたことはエバートンにとって非常に助かったはず。加えて、この試合のリーズは守備の対応が軽かった。ハードに人にマークにいくという部分はもちろん普段からリーズが行っているのだけども、そこからボールホルダーに安易に飛び込んでしまったせいで剥がされてしまうというシーンが目についた。
こうなればエバートンはだいぶ楽である。先制点のコールマンの場面においてもそう。押し込んだ場面でサイドから安易にボールホルダーに飛び込んでかわされてしまったせいで、エバートンはだいぶ余裕を持ってエリア内でパスを繋ぐことができていた。
もっとも、リーズの安直な飛び込みがなくてもエバートンはカットイン等のドリブルでのマークマンを剥がしてのチャンス創出を連発していたので、飛び込まなければ優勢が覆っていたかというと微妙なところであるけども。
セットプレーで追加点を得たエバートンに対して、リーズは後半頭から3-3-3-1にフォーメーション変更。エバートンの4-4-2に対して人と人の間や外側に配置できる形で優位をとり押し込む機会が増える。
だが、この日のエバートンの守備陣は非常に集中していた。いつもならどこかバラバラな印象のあるクロス対応も冷静に対処。リーズの押し込んでからの攻撃をどっしり跳ね返していた。かつ、ロングカウンターからのチャンスメイクも十分。リシャルリソンが3点目をとって試合を決定的なものにする。
相手が得意な土俵に上がってくれたとはいえ、まずはエバートンにとって一番欲しかった勝利という結果が出たのは大事。それも攻守が噛み合った完勝である。迫り来る降格圏から少し離れることでできてまずは一安心だ。
試合結果
2022.2.12
プレミアリーグ 第25節
エバートン 3-0 リーズ
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:10′ コールマン, 23′ キーン, 78′ ゴードン
主審:グラハム・スコット
第26節 サウサンプトン戦(A)
■終始優勢だった4-4-2の激突
ブライトン×リーズと同じく、4-4-2同士の激突。同じフォーメーション。それもプレミアらしい攻撃色が強いスタンスを好む両チーム。というわけで立ち上がりからきつめの殴り合いでの開幕となった。
先に襲い掛かったのはアウェイのエバートン。セカンドボールを拾ったところから、左サイドのゴードンにボールを渡し、そこからエリア内に進んでいく形。後方からの前進のパターンを作るというよりはとりあえず前にボールを放り込むスタンスである。
一方のサウサンプトンも縦に早い展開からチャンスを見出す。カウンターの旗手になったのはウォーカー=ピータース。対面の相手を1枚剥がすことがしながらスルスル進むことができていた。
互いにチャンスを掴んだ序盤の両チームではあったが、徐々にクオリティの差が見えるように。苦しんだのはアウェイのエバートン。後方からボールを持ちながらの前進には苦労。右のSHのイウォビが左に流れてきたりなど、数を揃えてのアプローチを行ってはいたが、なかなか出口を見つけることができていなかった。
後方からどこからボールを出そうか?と考えている様子のファン・デ・ベークは持ち味がなかなか出てこない。ボールサイドへの絶え間ないオーバーロードが印象的だったアヤックス時代とは全く違う使われ方をしており、本人も適応には苦労している様子。被カウンター時のフィルター役という柄でもないので、できれば保持で存在感を見出したいところだが。
保持に関しては連携がサウサンプトンの方が成熟。オフザボールの動きが多く、裏抜けで攻撃の出口を作れていたし、ブロヤは背負ってよし裏に抜けと相変わらず万能な起点作りができていた。
相手に対する戻りもエバートンは遅くなってしまっていたので、素早いカウンターは刺さる。40分のロメウの魂こもったプレスバックを見ると、この分野でもサウサンプトンの方が一段上だったと言えるだろう。
後半、ギアを一段上げてもう一度トランジッションの仕掛け合いに挑んだエバートン。だが、優劣の形勢はひっくり返らず。52分にゴメスのところをプレスで引っ掛けると、アームストロングが先制点を決める。このゴールで、後半頭にエバートンから売られたケンカに勝ったサウサンプトン。後半も優勢に試合を運び、エバートンに反撃の隙を与えない。仕上げとなったのはいぶし銀のシェーン・ロング。右のリヴラメントのオーバーラップから試合を完全に決める追加点を押し込んだ。
90分を通して主導権をエバートンに渡さなかったサウサンプトン。順位表通りの完勝で4-4-2同士の正面衝突対決を制した。
試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
サウサンプトン 2-0 エバートン
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:52′ S.アームストロング, 84′ ロング
主審:アンディ・マドレー
第27節 マンチェスター・シティ戦(H)
■ハンドを嘆ける会心の出来
降格圏が後ろに迫った状態で悪戦苦闘するエバートン。ランパートが就任以降は内容に兆しを感じないことはないが、成績が明確に改善することはなく苦戦は続いていると言っていいだろう。
そういう意味ではこの試合の彼らの出来は会心だった。相手と噛み合うように3センターでスタートしたこの日のエバートン。噛み合わせている状態を外すために動き出すのはシティでいえばベルナルド。この日はトップに入った彼が降りる動きからズレを作ろうとする。
これに対してエバートンはとてもスマートに対応。WGのゴードンがストーンズにある程度ボールを誘導する形で中を絞ることで、ベルナルドが受けるスペースを消すことを優先したのが非常に効いていたように思う。
この日のエバートンが良かったのは人基準の守備の割には深追いしすぎずにマークの受け渡しをしたこと。そして、相手との距離を詰めた後に無理に飛び込んで交わされるシーンがほとんどなかったこと。自分で奪うのではなく、チームでボールを奪えればOK。今季なかなか具現化できなかったコンパクトさと相手へのタイトさを併せ持つやり方をようやく実現できていた。
これによりシティは苦戦。特に高い位置で起点を作ることができず、サイドでのトライアングルでの旋回から相手を押し込むようなシーンが見られなかった。一方のエバートンは単一ではあるが、ボールを奪った後にルートがあった。ゴードン、リシャルリソンなど多少強引でもゴールに向かってボールを運ぶ意志があった選手が多く、彼らの推進力に助けられた格好だ。シティはサイドで1つしかパスコースがない!という感じだったけど、エバートンは1つあれば大丈夫!みたいな心強さを感じたというか。
エバートンが前線にそうしたボールを繋ぐことができたのは、ビルドアップにおけるプレス回避がうまくいっていたから。バックラインからの対角のパスや、シティのプレスの連動の悪さ(実は攻撃以上に気になった部分である)の切れ目を狙っての縦パスから前進。より機能的に前進したのはエバートンの方と言っていいだろう。
後半はだいぶシティが改善。流石に中盤より前のプレスの機能性が落ちたエバートン。アタッカーの推進力が奪われてしまったことにより、カウンターの頻度も低下する。ゴードン→グレイの投入は推進力の回復を狙ってのものだろう。
後半は押し込んで支配的に時間を進めたシティ。サイドへの旋回と素早いサイドチェンジを駆使した幅を使った攻撃で徐々にエバートンを苦しめると、80分すぎにPA内でこぼれたボールをフォーデンが押し込んで先制する。
奮闘していただけにこの失点は残念。この試合では今季のうさを晴らすような出来だっただけにエバートンファンにとっては手ぶらで持ち帰るのはさぞ悔しかったことだろう。終盤のロドリのハンドが取られていれば!と嘆くことができるくらいに、この日のエバートンはシティ相手に勇敢に立ち向かって見せた。
試合結果
2022.2.26
プレミアリーグ 第27節
エバートン 0-1 マンチェスター・シティ
グディソン・パーク
【得点者】
Man City:82′ フォーデン
主審:ケビン・フレンド
第28節 トッテナム戦(A)
■シティ戦からの明確な退化
両チームとも相手のバックラインにプレッシャーをかけずにボールを持たせる立ち上がり。したがって、試合のテンポは過度に上がらなかった。トッテナムはこれまでの試合の通りに、シャドーを下げた位置に置くコンパクトな5-4-1でエバートンを迎え撃つ。
対するエバートンはコールマンをバックラインに加えた3バックへの可変で後方からの前進を狙う。しかしながら、アランを抑えられたこともあり、エバートンはバックラインから効果的なパスを供給することができない。エバートンのプレスの脱出口はキャルバート=ルーウィンへのロングボールに集中。そのほかの前進の手段として言えば、偶発的に1人でボールを運ぶことができるゴードンの前にボールが転がったときくらいのものだろう。
守備においてのエバートンは後方から繋ごうとするトッテナムに対しては無理にプレスはかけなかったが、ボールロスト後は即時奪回の気配を見せる。だが、トッテナムは横に揺さぶることであっさりこれを回避する。
ゲーゲンプレス!といえばエバートンの守り方は聞こえがいいかもしれないが、ボールに近づくだけでホルダーを捕まえるのが遅くなってしまっている。これではトッテナムに大きな展開で脱出されるのは当然。そもそもコンテ就任以降のトッテナムはWBを共に攻撃に参加させることで横幅を駆使するスタイルがベースである。
加えて、エバートンはプレスに対して遅れて飛び込むという悪い癖がある。1失点目のゴードンのプレスもそうだし、2失点目のバックラインは軒並みそう。SBの遅れたプレスを起点にCBも出ていってさらに傷口を広げるという悪の循環がずーっと繰り返されていた。
シティ戦では相手の選択肢を消しながら、無理に飛び込まないようなプレスで勝ち点まであと一歩のところまで迫ることはできてはいたが、この試合では勝ち点の可能性をわずかにも感じることができなかったのは残念である。
ホルダーを捕まえるのが遅れれば、トッテナムに一気に押し下げられるのは当然だし、間に合わないのに後から無理にプレスに出ていけば、そのスペースに走られるのは当たり前。トッテナムの前線の面々にとってはそんなことは朝飯前である。
ワイドに裏にとうまく使えたトッテナムは見事ではある。でも、この試合ではそれ以上にエバートンの拙さが目立った。シティ戦からは規律の面で明確に後退。監督が代わっても、だらっと人を捕まえにいってしまうという悪癖が邪魔をするというのはエバートンのいつものパターン。アンチェロッティにベニテスという経験豊富な指揮官でも克服できなかったこの悪癖をなんとかできなければ、シーズン終了間際には想像し得なかったまさかの結末が起きることは否定できないだろう。
試合結果
2022.3.7
プレミアリーグ 第28節
トッテナム 5-0 エバートン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:14′ キーン(OG),17′ ソン,37′ 55′ ケイン, 46′ レギロン
主審:スチュアート・アットウェル
第29節 ウォルバーハンプトン戦(H)
■内容は悪くないが結果が上向かない
ランパード就任以降も成績が一向に上がらないエバートン。降格圏の足音はいよいよはっきりと聞こえてきており、降格回避という命題に本腰を入れて取り組まなければいけない状況にまで来ている。
対するウルブスも直近の成績で欧州カップ戦争いからはやや足が遠のいてしまっている状況。パフォーマンスもなだらかに下降気味でそろそろ歯止めをかけたいところではある。
立ち上がりから主導権を握ったのはホームのエバートン。裏抜けのリシャルリソンをはじめ、エバートンの前線が果敢にウルブスの最終ラインにスピードを勝負を挑む。
ウルブスはミドルゾーンで構える形でコンパクトな陣形を作っていたが、ホルダーにチェックがかかっていないこともあり、縦横自由に展開を許してしまう。機動力に難ありのウルブスのバックラインは特に前線の裏抜け対応に苦慮。序盤はエバートンがゴールに迫る機会を増やしていく。
エバートンはプレッシングが効いている立ちあがり。ハイプレスでウルブスのぎこちないバックラインのパス回しを阻害すると、そのままの勢いでゴールに迫る。加えて、ウルブスはヒチャンが負傷交代と悪い流れが止まらない。試合は完全にエバートンペースで幕を開けた形だ。
徐々にブロックに対して攻めあぐねるU字ポゼッションのような形が増えてきたエバートンだが、この日は大外でのスピード勝負でも優位。外回りでもサイドからの裏抜けで押し込む機会は十分に確保する。
ウルブスも前半終盤から前進のルートを発見。CHがファン・デ・ベーク、SHがマイコレンコというエバートン左サイドの守備の軽さに気づいたウルブスはこちらのサイドを重点的に狙いながら前進を行っていく。
スコアレスで迎えた後半。早々にウルブスが先制。セットプレーの流れで右サイドからネヴェスがクロスに合わせたのはコーディ。前半は苦しんだウルブスが先手を取る。
対するエバートンもスピード感あるカウンターから反撃に。交代で入ったデレ・アリもダイナミズムを見せるなど、反撃の目は残されているように見えた。
だが、ここで痛恨だったのがケニーの退場である。軽率なタックルで10人になったエバートンは攻撃の機会がなかなかつかめないように。11人のウルブス相手に攻め手を見つけられるそのまま試合は終了。
悪くない内容だっただけに石にかじりついてでも勝ち点が欲しかったエバートン。強敵ぞろいの残りの日程がいよいよ現実的なプレッシャーとなってきた。
試合結果
2022.3.12
プレミアリーグ 第29節
エバートン 0-1 ウォルバーハンプトン
グディソン・パーク
【得点者】
WOL:49′ コーディ
主審:マイケル・オリバー
第20節 ニューカッスル戦(H)
■課題据え置きも一番欲しいものは手中に
ランパードの就任も雰囲気は上向かずに苦しい残留争いの道のりが続いているエバートン。今節の相手はそんな彼らとちょうど入れ替わるように降格圏から脱出しつつあるニューカッスルである。
立ち上がりから展開は両チームの勢いをそのまま反映したかのようだった。4-1-4-1のベースからジョエリントンがプレス隊に加わる4-4-2に変形しつつ、エバートンにプレッシャーをかけてリシャルリソンにボールを蹴らせて回収する。
保持においては、エバートンのプレスの食いつきの良さを利用し、間延びした中央のスペースを使いながらスムーズに前進。エバートンのプレッシングは勢いはあったけども、結局どこに誘導したいかが不明で狭く守ることが出来ていない。そのため、後方の負荷は大きい。
常に最終ラインは後退させられながらエリア内でクリアするというギリギリの状態での跳ね返しに終始していた。だが、その最終ラインも落ち着いて守れるはずのブロック守備には不安がある。横スライドが甘くハーフスペースを空けるケースを頻発。仮にニューカッスルが攻撃をスピードダウンさせたとして、エバートンはうまく守れているわけではない。この4-4-2のもっさり感は程度の差はあれどベニテスでもアンチェロッティでも直らなかったものである。
反撃に出たいエバートンの頼みの綱はグレイ。左サイドから一気に裏を抜ける形での前進はこの試合のエバートンの数少ない前進のパターンだった。だが、これ一つだけではさすがにゴールに迫る頻度を確保することが出来ず。苦しい守備の対応から一本槍のカウンターという厳しい流れの前半となった。
後半のエバートンは腹をくくったのか組織的に守るというよりもニューカッスルを乱戦に引きずり込もうと覚悟したかのようだった。リスクを脇においておいて、アランとドゥクレが中盤で大暴れし、攻守の切り替えが早く中盤が間延びしたような組織力は度外視の形。個人の質は十分なエバートンはむしろそちらの方が勝算があると踏んだのだろう。
このプランは比較的効いたように思う。ニューカッスルの中盤はアスリート能力が高いわけではないので、こうした間延びしたダラっとした展開が得意ではない。接触からの乱闘、小競り合いも増えて、試合の流れも止まりやすくなったため、エバートンペースとはいえないまでも、少なくとも五分に試合のペースを戻すことはできていた。
そんな展開になれば怖いのは当然退場者。この試合でババを引いたのはエバートンのアランだった。一発退場で数的不利に陥ったエバートンは再びニューカッスルに押し込まれる展開となる。
だが、終盤にそんな苦境をなんとかしたのがイウォビ。押し込まれる展開の中でキャルバート=ルーウィンとの連携でワンチャンスをモノにし、後半追加タイムに勝ち点3をもたらす決勝点を手にする。
正直、エバートンの問題点は何一つ解決されている感はない。だが、彼らに一番必要なのはとりあえず勝ち点。石にかじりついても降格は避けなければいけない中で、とりあえず今一番欲しいものを乱戦の中で手にすることに成功した形だ。
試合結果
2022.3.17
プレミアリーグ 第20節
エバートン 1-0 ニューカッスル
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:90+11′ イウォビ
主審:クレイグ・ポーソン
第31節 ウェストハム戦(A)
■台無しにした反撃の機運
明らかにケツに火がついた状況で終盤戦を迎えてしまったエバートン。実は終盤戦に強豪との対決を多く控えており、結構やばい!今節は欧州カップ戦争いの真っ最中のウェストハムに挑む形となった。
お互いに最終ラインに無理にプレッシャーをかけることはしない両チームだが、よってボール保持側のチームは余裕を持って試合を進めることができた。ショートパスから組み立てを行いたいのはエバートン。バックラインから縦にパスを入れることで前進を狙う。
アンカーにホイビュアが入ったのはファン・デ・ベークの直前のアクシデントによるもの。よって中盤の攻撃がどこまで準備されていたものかはわからないが、イウォビとドゥクレのIHの2人がライン間で受ける形が多かった。
エバートンの保持がうまくいききらなかったのは、受け手をサポートする関係があまりいなかったから。エバートンは縦パスの受け手が自ら反転を試みて前を向こうとすることが多い。もちろん、スペースがあればそのトライは問題ないのだが、ウェストハムのようなコンパクトなチームが相手だとなかなかうまくいかないのは当然。ショートパスを志向する割にはホルダーのサポートをして、味方に前を向かせるためのパスワークが十分ではなかった。エバートンが良かった保持はイウォビが安定してターンできる位置まで降りて運びつつ、リシャルリソンにシュートにつながるシチュエーションを提供できるような場面を作れる時だった。
エバートンの保持に対してウェストハムは、WGからスイッチを入れる形でラインを上げながらプレッシング。深い位置からのロングカウンターを組み合わせる形で、奪った後は縦に早く攻め込む形で攻勢に出る。
ウェストハムはホルダーのサポートがしっかりしており、前を向く選手を作るのがうまい。効率的にカウンターを進めるウェストハムが先制したのは32分。自陣深い位置でたまらずファウルを犯したエバートンに対して、クレスウェルがFKで牙を剥き先制点を奪い取る。
後半、エバートンは反撃。押し込みつつ、イウォビの縦パスからエリア内に迫り、シュートシーンを作っていく。増えてきたセットプレーから早い時間に同点に追いついたエバートン。緊急出場のホルゲイトが豪快なゴールを叩き込む。
ここからいい流れで攻めていきたかったエバートン。だが、自らそのいい流れを断ち切ってしまう。まずはイウォビ。ボールのコントロールをミスって流れたボールがそのままウェストハムのカウンターの起点に。アントニオの抜け出しから最後はボーウェンが押し込み、折角の同点弾をフイにしてしまう。
そしてキーン。文句なしの2枚目の警告を受けてしまい、エバートンは残り30分弱を10人で過ごすことに。リードと数的優位を得たウェストハムはエバートンにボールを持たせつつカウンターで落ち着いて時計の針を進めるように。
抵抗は見せたエバートンだが、最後までゴールを脅かすことはできず。反撃のムードに自ら蓋をしてしまい、勝ち点を奪うチャンスを手放してしまったエバートンだった。
試合結果
2022.4.3
プレミアリーグ 第31節
ウェストハム 2-1 エバートン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:32′ クレスウェル, 58′ ボーウェン
EVE:53′ ホルゲート
主審:マイケル・オリバー
第19節 バーンリー戦(A)
■雨のターフムーアで逆転残留に望みをつなぐ
立ち上がりは比較的バーンリーが丁寧にポゼッションをしているのが印象的だった。最終ラインにCHが落ちて3枚の形を作るなど、普段はあまり見ないポゼッションのスタイル。エバートンのプレッシングの強度が甘いと感じていたのか、ショートパスで繋げるならばとりあえずやってみよう!という感じで普段よりも蹴り合いになることを避けていた。
そんな流れで押し込む状況を作っていたバーンリーはセットプレーから先制。コリンズが頭で合わせて早々に点をとる。しかし、エバートンもすぐさまやり返す。パス交換で抜け出したゴードンがウェストウッドに倒されてPKを献上。ウェストウッドは早々に警告を受けるわ、PKを与えるわなどと散々な立ち上がりのパフォーマンスとなってしまった。
ここからはもはや配置云々とかはどうでも良くなったガチンコ勝負に試合は一変する。奪って攻撃に出てファウルを受けて、リスタートして縦に急いで奪われて・・・・みたいな流れの繰り返し。残留争いをかけたプレミアらしいガチンコ勝負の様相で両チームがぶつかり合う見応えのある展開になった。
バーンリーが狙い目にしたのは対角のパスを受けたレノンがマイコレンコと1on1をする場面。常に危うさがあるマイコレンコにはイウォビが徹底してお守りをすることでなんとかカバーをする。
だが撃ち合いに関して言えば流石にエバートンの方が優勢。中でもリシャルリソンは別格で、ドリブルでのボール運びからのチャンスメイクに加え、リア内に自ら迫る動きでバーンリーのゴールを脅かす。
エバートンやや優勢の中で入った2点目は意外な形。押し込まれていたマイコレンコが今度は逆に攻撃でレノンを押し込んでのPK獲得というものだった。これを再びリシャルリソンが決めてリードを奪う。
後半も引き続きキックアンドラッシュが続く両チーム。勝たなければいけないバーンリーはもちろん、より得点の匂いがするエバートンもこの展開は望むところだろう。リシャルリソンを軸に追加点まであとわずかというところまで迫っていく。
だが、得点を決めたのはバーンリー。あまり見たことのないテイラーの大外からの突破からサイドを抉ると最後はロドリゲスのゴールで追いつく。突破を許したケニーは直前のプレーであわやゴールの場面を演出していただけに天国から地獄にといった感じだろうか。
より勝たなきゃ意味のないバーンリーは攻撃の手を緩めない。するとピックフォードのミスキックにより与えたスローインから、ゴドフリーのクリアミスを見逃さなかったバーンリー。最後はコルネが劇的な決勝ゴールを叩き込むことに成功する。
雨のターフ・ムーアで最後の最後に歓喜の声を上げたのはバーンリー。逆転残留に向けてライバルを沼に引き摺り込む勝ち点3を手にして見せた。
試合結果
2022.4.6
プレミアリーグ 第19節
バーンリー 3-2 エバートン
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:12′ コリンズ, 57′ ロドリゲス, 85′ コルネ
EVE:18′(PK) 41′(PK) リシャルリソン
主審:マイク・ディーン
第32節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)
■リシャルリソンの余裕を奪えなかったユナイテッド
ミッドウィークのバーンリー戦で劇的な敗戦を喫していよいよあとがなくなってきたエバートン。立ちはだかるのは来季のCL出場に向けてこちらも後がなくなったマンチェスター・ユナイテッドである。
序盤からポゼッションに余裕があったのはエバートン。ユナイテッドのトップがプレスに行けないロナウドであることを利用し、CBが積極的にボールを持ち運びを行いながらボールを前に進める。トップのキャルバート=ルーウィンもターゲットになり、いざとなれば放り込めばOKなので多少の持ち運びのリスクは許容できるといったところだろう。
一方のマンチェスター・ユナイテッドは持ち運びに苦心。正三角形の中盤がエバートンの逆三角形の中盤につかまってしまい、ボールの預けどころがない状態に。
困ったユナイテッドはサリーでズレを作ることで解決策を見出す。マティッチが最終ラインに下がり、SBを押し出していく。これで保持が落ち着いたユナイテッドは左サイドからチャンスメイク。テレスのオーバーラップや、ブルーノ・フェルナンデスとラッシュフォードのポジション交換などからチャンスを生み出していく。
右サイドもサンチョにワン=ビサカのオーバーラップの活用でエバートンを押し込む。マイコレンコがイウォビのお守りつきで左サイドを守っている様子はもはやエバートンの日常になっている。
一方のエバートンの保持で活路になったのはイウォビ。同サイドのCHであるマティッチは動き回るイウォビとの相性が悪く捕まえきれない。これにより持ち運びが安定するエバートン。すると、27分。左サイドからリシャルリソンがイウォビに横パスを出し、ポストで落としを受けたゴードンがミドルでデ・ヘアを打ち抜いて先制点をゲット。前半のうちにリードを奪う。
ビハインドになったユナイテッド。攻勢に出たいところだが、前線のオフザボールの少なさが懸念。裏を取る動きがないので奥行きを作ることができない。加えて、チームの中でオフザボールの動き周りが期待できるフレッジが負傷交代。代わりにポグバが入ったことでややアバウトな放り込みに舵を切ることとなり、攻撃の機能性は低下した。
後半もこの力関係は変わらず。押し込むことができるユナイテッドであるが、サイドでフリーの選手を作ったとてそこからできるのはせいぜい単調なハイクロスくらいなもの。
そのユナイテッドの攻撃を見てか、リシャルリソンがプレーに遊び心を入れる余裕を出し始めたのはユナイテッドファンにとっては屈辱といえるだろう。しかしながら、最後までユナイテッドはリシャルリソンからその余裕を取り上げることが出来ず。
最後は守護神のピックフォードの活躍もあり、逃げ切ったエバートン。前節のシックスポインター敗戦を和らげる勝利を手にすることに成功した。
試合結果
2022.4.9
プレミアリーグ 第32節
エバートン 1-0 マンチェスター・ユナイテッド
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:27’ ゴードン
主審:ジョナサン・モス
第18節 レスター戦(H)
■意地のリシャルリソンが勝ち点1を持ち帰る
シーズン終盤、毎試合が正念場となっているエバートン。今節の対戦相手は残留争いにも欧州カップ戦争いにも関与していないが、残りのリーグ戦の数が多く、ここから忙しくなってくるレスターである。
両チームとも4-3-3ベースのフォーメーションだったが、その質には差が出た。保持でクオリティを見せつけたのはレスター。アンカーのメンディが前を向くところから左右にボールを大きく振りながらのサイド攻撃までの流れが非常にスムーズだった。
非保持側のエバートンにスポットを当てると、アンカーのケアを誰がやるかが曖昧だったのがいただけない。誰かがマークにつくのか、トップが消すのかがどっちつかず。おかげでメンディは誰の助けを借りずとも簡単に前を向くことができた。
保持で中央から大きな展開をして、サイドで崩してチャンスを作る。5分に生まれたレスターの先制点はゆったりとしたポゼッションからの崩しとしてはお手本のようなものだった。WGのマークを外れた位置で受けたリカルド・ペレイラからサイドで三角形を作っての崩し。これにより、エバートンはアンカーのデルフがサイドに釣り出されている。空いた中央に入り込んだバーンズが先手を奪った。
一方のエバートンの保持はだいぶ相手に捕まってしまった感。ショートパスからの組み立てを志向してはいるのだが、エバートンは味方に前を向かせる意識が低いという難点がある。この試合は受け手が常にレスターのマークマンに捕まってしまっており、そこから脱出することができなかった。
唯一の希望の光となっていたのは背負ってもキープできる懐の深さのあるイウォビ。リシャルリソンにむやみにロングボールを蹴るよりは、彼にとりあえず預ける方がまだ可能性があった。それでも相手を外しながら運べていたレスターに比べればチャンスメイクの数は少ない。エバートンは切替を早くしつつなるべく乱戦に持ち込むことで純粋なアタッカーのクオリティ勝負という戦える土俵に持ち込もうとしていた。
前半の途中からやや相手のペースに釣られた感のあったレスター。後半は、再びゆったりとしたポゼッションから押し込みペースを取り戻す。70−80分付近はレスターの決定機のオンパレード。特にセットプレーからカスターニュ→ルックマンと繋いだものは非常に惜しかった。
これを凌いだエバートンは試合終了間際にセットプレーを主体として相手のゴールに襲いかかる。それが実ったのが後半追加タイム。意地を見せてボールをゴールに押し込んだのはリシャルリソン。手ぶらでは終われない思いが呼んだ同点弾はエバートンに貴重な勝ち点1をもたらした。
試合結果
2022.4.20
プレミアリーグ 第18節
エバートン 1-1 レスター
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:90+2′ リシャルリソン
LEI:5′ バーンズ
主審:デビッド・クーテ
第34節 リバプール戦(A)
■視線は隣人より目標に
意地と意地がぶつかり合うダービーというよりも、優勝と残留という互いに異なる目標を目指すために淡々と目の前の相手に向かい合う。個人的には今回のマージ―サイドダービーにはそんな印象を持った。
立ち上がりからボールを持つのはリバプール。エバートンは相手にボールを渡すことは許容しつつ、持ちこたえる形で迎え撃つこととなった。
エバートンのこの試合の振る舞いは悪くなかったように思う。ローラインながらコンパクトさを維持できてはいたし、サイドへのフォローも十分で、リバプールの多角形に対して十分渡り合うことが出来ていた。このあたりはIHのイウォビとドゥクレに助けられた部分である。ボールサイドには寄っていって、逆サイドの時は中央を埋める。豊富な運動量で横スライドを根性でやっていた。
攻撃はロングボール一辺倒ではあるが、リシャルリソンの競り合いは五分五分といったところ。敵陣での即時奪回に色気を見せつつ、撤退時は相手より素早くという部分も徹底出来ていた。したがって、限定的ではあるが、攻撃の機会もあったし、守備のソリッドさは保つことが出来ていた。
リバプールは左でチアゴが降りて対角のサラーに大きな展開が保持の軸。いつもの光景ではあるが、ややワンパターンなのと、少し足元への要求が多いせいで攻撃が停滞している感じは否めない。リバプールの保持の時間は長かったが、エリア内でエバートンに跳ね返されてしまい、枠内シュートまでたどり着くことも前半はなかなかできなかった。
膠着した前半。どちらもチャンスがなかったということは1ポイントでも手にしておきたいエバートン側の思惑通りといっていいだろう。前半終了間際の大乱闘とは裏腹にダービーらしくないチャンスの少ない展開だった。
後半も同じく攻勢に出たのはリバプールの方。しかしながら、後半にむしろチャンスが広がった感があるのはエバートン。SB裏のゴードンを使った速攻で前半以上にクリティカルに敵陣に迫ることが出来ていた。
攻め切れないリバプールはオリギとディアスを投入し、4-2-3-1にシフトチェンジ。すると、これがいきなり結果につながる。サラーとオリギの右サイドのパス交換から、エバートンを手前サイド側に寄せると、逆サイドへのサイドチェンジ。これに詰めていたロバートソンが先手を奪う。
これでエバートンの反撃を完全に鎮火したリバプール。勢いに乗ったまま、オリギが追加点を決めて試合を決着させる。前半は苦しんだリバプールだが、エバートンの思惑通りに試合が進んだのは60分まで。残る30分で押し切れる強さは1ポイントでも欲しかった隣人にとっては非常に冷酷に映ったはずだ。
試合結果
2022.4.24
プレミアリーグ 第34節
リバプール 2-0 エバートン
アンフィールド
【得点者】
LIV:62′ ロバートソン, 85′ オリギ
主審:スチュアート・アットウィル
第35節 チェルシー戦(H)
■後押しされたハイプレスと全てを防いだピックフォード
バーンリーの土壇場の巻き返しを受けて残留争いで厳しい立場に追いやられているエバートン。消化試合数の差があるとはいえ、マージーサイドダービーに敗れたチームはついに降格圏に足を突っ込むことになってしまった。
今節の対戦相手はチェルシー。十中八九安泰であろうCL出場権ではあるが、CL敗退からの燃え尽き症候群なのか直近のリーグ戦はピリッとしないところが目立っている。
ともに好調とはいえない両チーム。試合前の予想通り、ボールを持つ意識が高いのはチェルシー。エバートンはプレッシングで前からこれを阻害する。どこまで準備していたプレスかはわからないが、この日のグディソン・パークの雰囲気を考えるともうエバートンには前に出ていかない選択肢はないように思えた。『走らない選手は許さない』という圧力が選手にかかっていたと言っていいだろう。
エバートンは4-3-3ではなく、5-4-1でチェルシーを迎え撃つ。一番のこの日の特徴は左のWBのアロンソをイウォビが徹底監視していたこと。同サイドのワイドCBだったコールマンはヴェルナーを監視。マンマーク志向が強かった。
一方で逆サイドの面々はレーンを入れ替えながら動き回るマウント、ハフェルツを相手に回すことが多かったので、比較的流動的に対応することが多かった。
プレスをかけてミドルゾーンに留まることはエバートンのチームとしての狙いだったが、CBに無理にプレスに行くよりはライン間から縦パスを受けようとするマウントやハフェルツをDF-MFラインで挟みながら窒息させることがより優先事項。保持においては4-3-3気味に変形し、両サイドから攻めようとしていたチェルシーだったが、エバートンはサイドにボールが出たときも2人以上で挟むことでチェルシーの前進を阻害していた。
エバートンの守備がタイトだったのもあるが、チェルシーの前線は少し重たかったように思う。いつもであればエバートンの中盤をタスクオーバーに追い込むことができてもおかしくはなかったように思うのだが、どこか気迫に飲まれていた印象。小競り合いを起こす場面も多く、集中力もやや散漫だったように見えた。
そんなチェルシーの希望だったのはロフタス=チーク。相手の中盤を剥がしてのドリブルがこの試合のチェルシーの最も得点を感じさせる動きであった。
試合が動いたのは後半早々。チェルシーにプレスをかけたリシャルリソンがハイプレスを成功させてシュートチャンスをゲット。値千金の先制点を奪い取る。アスピリクエタは右にボールを逃がそうとしたが、ジェームズがボールを受ける準備ができていなかったのが誤算。それにしてもエバートンのプレスの巻き直しは見事。HTから入ったコバチッチは投入直後は完全に試合について行けていなかった。
以降は後ろに重心を傾けてカウンターというスタイルに徐々に移行していくエバートン。ローラインの時間帯が増えたエバートンで頼りになったのがピックフォード。ファインセーブを連発し、チェルシーのゴールチャンスをことごとくシャットアウトする。
後半はチャンスが増えたチェルシーだが、単調なクロスをルカクなしで行うのはスカッドの相性からするとイマイチ。カウンターで襲い掛かられる危険性も含めて得点も失点も可能性がある状況が続く。
しかしながら、ピックフォードが守るゴールマウスは鉄壁。絶体絶命の窮地からチームを救うのがよく似合う守護神の活躍でバーンリーに食らいつくための勝ち点3をなんとか死守した。
試合結果
2022.5.1
プレミアリーグ 第35節
エバートン 1-0 チェルシー
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:46′ リシャルリソン
主審:ケビン・フレンド
第36節 レスター戦(A)
■ピックフォード劇場、再演
プレミアらしいエンタメ性豊かな立ち上がりとなった。いきなり、先制パンチを食らわせたのはレスター。ゴールこそならなかったが早々に裏を狙う動きでエバートンのゴールを強襲する先制攻撃をお見舞いする。エバートンは5バックというチェルシー戦勝利の流れを引きずったフォーメーションではあるが、ラインの設定自体は低くないため、レスターには裏を取るチャンスがあった。
しかし、攻撃を急所にきちんと入れたのはエバートンの方だった。右サイドのイウォビからふわりと上がったクロスをマイコレンコがスーパーボレー。前節の決定機逸の鬱憤を晴らす美しいゴールでエバートンが先手を奪う。
このゴールをきれいに守ることができればエバートンは残留争いになんて巻き込まれることはない。レスターはすぐさま追いつく。きっかけはエバートンのミスに漬け込む形。難が出たのはDF間のコミュニケーション。CB陣がアバウトな裏へのボール処理を誤ってしまったせいで、レスターはダカが抜け出して独走。そのままピックフォードを破り同点に追いつく。
基本的には形は違えどどちらも前線のスピードを生かす形でゴールを狙っていくのが両チームのスタンス。エバートンはバックラインにプレスをかけなかったため、レスターがボールを持つ時間が比較的長い試合となったが、ホルダーがフリーになるため、レスターは積極的に裏へのスペースを狙っていく。
定点攻撃では右のハーフスペースに入り込むティーレマンスからのスルーパスが効いていた。いずれにしてもキーは前線の抜け出しである。
一方のエバートンはそのレスターの攻撃を止めてから反撃。こちらも2列目のアタッカーがスピードを生かす。右はゴードン、左のグレイは低調なチームの中では高い水準でコンディションを維持しており、こちらもスピード不足のレスターのバックラインを脅かすには十分。シュマイケルに冷や汗をかかせるシーンも見られた。
均衡の中でセットプレーから勝ち越し点を奪ったのはエバートン。根性でホルゲイトが押し込み、前半のうちに一歩前に出る。
そして後半はチェルシー戦でもお馴染みだったピックフォード劇場である。レスターが一方的に攻め込み、エバートンはひたすら耐え凌ぐという展開だったが、きわどいシュートは全てピックフォードが防ぐ。残留がかかった状況において神がかりにすぎではないだろうか。バーンズ、メンディとかなりきわどいミドルを放ったレスター。最後はヴァーディまで投入したがゴールを割ることは出来ず。
キング・パワー・スタジアムでも再演を果たしたピックフォード劇場。このまましぶとく勝ちきる試合を重ね、残留を勝ち取ることができるだろうか。
試合結果
2022.5.8
プレミアリーグ 第36節
レスター 1-2 エバートン
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:11′ ダカ
EVE:6′ マイコレンコ, 30′ ホルゲート
主審:クレイグ・ポーソン
第30節 ワトフォード戦(A)
■縛られた成功体験
立ち上がりにボールを持ったのはワトフォード。こうなったのにはエバートンのスタンスが大きく関係してくるといえるだろう。
エバートンはチェルシー戦の成功を引っ張る形で引き続き5-4-1を採用。『チェルシーだろうとワトフォードだろうとまずはスペースを消すことから、ボールを持たせてよし』という判断なのだろう。
というわけでボールを持つ序盤になったワトフォード。降格が決まったからなのか、メンバーは割と新鮮。特に雰囲気が変わったのはWG。セマとカルのWGはデニスやサールといった今季ワトフォードでレギュラーを張っていたメンバーに比べると内側に入ってボールを受けたがる感じが強い。
ただ、ブロック守備を崩すという前提に立てば、やはりサイドから溶かすやり方の方が難易度が低いだろう。よって、ワトフォードにとってこの日のエバートンの非保持のスタンスはあまりありがたくはなかったように思える。
エバートンの攻撃は持ったら急いで攻めるわけではない。ロングボール一発ではリシャルリソン1枚では完全に収めることはできないからである。かつ、ワトフォードの前線はプレスがきつくない。よってゆっくり攻めることもあった。
もちろん、彼らの自慢のサイドアタッカーがスピードを生かせる状況を作ることができれば話は別。サイドから一気に攻めあがる形を使う。ゆっくりでも早くても気にしないというスタンスである。10分を過ぎるとボールを握るエバートン。それでもボールを失った後は無理に深追いをしすぎず、ある程度まで回されてしまったらリトリート優先。まずは安全第一というのがこの日のエバートンだった。
スコアレスで折り返したこともあり、後半は少しプレスに強く出ていったエバートン。これにより、ワトフォードはラインの裏を取れる機会を得ることになった。
ただ、ワトフォードはメンバーを代えた分、長いボールでは一気に前進は出来ない。そのため、こちらもプレッシングを活性化。じりじりとしていた前半に比べると、後半はややオープンな展開が続くことになる。
決定機に迫る機会が多かったのはエバートンの方。リシャルリソンは決定的なチャンスを迎えるが、ここはフォースターがファインセーブ。先手を奪うことを許さない。
87分にワトフォードはキャスカートを入れて5バックに変更。撤退型に切り替えて確実に守り切る方向にシフトする。正直、こうなってからのエバートンはノーチャンス。こじ開ける術を有さないエバートンは決め手を欠いてしまうスコアレスドローに。
振り返ってみればエバートンにとっては前半の慎重策が裏目に出た格好か。スタンフォード・ブリッジでの成功体験に縛られてしまい、動き出すのが遅くなってしまったように感じたこの日のエバートンであった。
試合結果
2022.5.11
プレミアリーグ 第30節
ワトフォード 0-0 エバートン
ヴィカレッジ・ロード
主審:マイク・ディーン
第37節 ブレントフォード戦(H)
■リーチからの特大足踏み
残留にリーチを賭けたエバートン。ホームでブレントフォードを下せば自力での残留が確定することとなる。立ち上がりからゴール前の展開が多かった両チーム。エバートンはゴードンの抜け出しからリシャルリソンにつなぐなど、いきなりの決定機を見せてブレントフォードのゴールを脅かす。
そのままの勢いで先手を奪ったのはエバートン。10分に先制点を決めたのはキャルバート=ルーウィン。今季苦しんだエースがチームに貴重な先制点をもたらす。ブレントフォードの守備陣はやたら淡白なエリア内の対応になってしまった。
しかし、そんな先手を取った勢いを台無しにしがちなのが近頃のエバートンである。18分、ブランスウェイトが文句なしの決定機阻止で一発退場。70分以上の残り時間を10人で過ごすことが確定してしまう。
数的優位を得たブレントフォードは立ち上がりの打ちあいの展開から徐々にぼーるを持ちながら支配していく形を模索していく。対角のパスを使いながらのクロスで敵陣に迫っていく機会を徐々に増やしていく。
そして結局ブレントフォードが追いつくことが出来たのは37分。サイドに振った後の角度のないところからのウィサのシュートがコールマンのオウンゴールを呼びこみ、試合をタイスコアに戻す。
しかしながら、数的優位を得ているブレントフォードが安定して試合を運べていたかというとそういうわけでもない。浮ついたパフォーマンスに終始している選手もおり、リシャルリソンはそこに抜け目なく漬け込んでいった。
前半終了間際、エバートンにPKを与えてしまったのはこの日不安定だったセーレンセン。2枚目の警告だけは許してもらったのはブレントフォードにとっては幸運。これをリシャルリソンがバッチリ決めてエバートンが10人でリードを奪う。
後半、不安定だったセーレンセンを外した5-3-2で勝負するブレントフォード。左の大外に配置されたジャネルトが持ち上がる形から安定して押し込む機会を得るように。大外をうまく使えた時は数的優位感があるブレントフォード。クロス攻勢で逆転を狙う。
対するエバートンもカウンターから十分にチャンスはある展開。何とかトランジッションでは優位を確保した状態で追加点の灯は消さないでおきたいところである。
しかし、得点を決めたのは11人のブレントフォード。セットプレーにニアで合わせたウィサがピックフォードにとってはノーチャンスのシュートを叩き込む。するとその直後にさらに得点を重ねる。右サイドから大外のヘンリーに合わせる形のブレントフォード十八番のファークロスから得点を決めてエバートンを突き放す。
何とかしたいエバートンだが、から回ってしまったロンドンが危険なタックルをお見舞いしてしまい一発退場。9人になるとさすがに数的不利が色濃くなったエバートン。退場で次節2人を失った状態でパレス戦での残留決定に再チャレンジすることとなった。
試合結果
2022.5.15
プレミアリーグ 第37節
エバートン 2-3 ブレントフォード
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:10‘ キャルバート=ルーウィン, 45+1’(PK) リシャルリソン
BRE:37‘ コールマン(OG), 62’ ウィサ, 64‘ ヘンリー
主審:マイケル・オリバー
第33節 クリスタル・パレス戦(H)
■史上初のどんでん返しで決めた残留
勝てば残留が決まるホームゲーム。チェルシー相手にアップセットを起こしたあの日以上にグディソン・パークには緊張感の溢れる雰囲気が漂っていた。次節はアーセナルとのアウェイゲームということを考えれば、是が非でもこの日に残留を決めておきたいところである。
その雰囲気にほだされてか、立ち上がりから両軍はテンションの高い展開に。ハードなタックルに小競り合い、ちょっとしたことでひと悶着がある状況は紛れもなくエバトニアンが作り出した舞台装置による影響である。
比較的プレスが緩かったエバートンに対して、パレスが縦に長いボールを選択することが多かった。そのため、試合は立ち上がりからボールが行き来する展開になる。
キャルバート=ルーウィンに向けたやや単調な放り込みを繰り返すエバートンに比べると、ザハのポストを活用したパレスの前進は機能的だった。ポストに落としを付ける選手をセットで組み込み、前を向く選手からさらに奥にパスを狙う。この形でパレスは積極的に敵陣に進むことができていた。
ザハのポストに対しては対面のイウォビが苦しい上に、大外をミッチェルが回ってくるおまけつき。パレスは左サイドに活路を見出して、一気に攻略を狙っていく。
その勢いの中で先制点を得たパレス。セットプレーからマテタが合わせて先制。エバートンとしては直前のリシャルリソンのFKを活かせなかっただけに悔しい失点となった。
起点を見いだせたり、あるいは同数でもサイドを壊せそうなパレスの攻勢は止まらず。前半のうちに追加点をゲット。コールマンのパスミス起点の波状攻撃を最後はアイェウに押し込まれてしまった。GKのピックフォードも含めて、エバートンは軒並みPA内での対応がうまくいかなかったといえるだろう。
2点のビハインドを背負ったエバートンはリスクを賭して4バック移行。これによってザハのマッチアップ相手はイウォビからコールマンになった。
SBを積極的に上げて後半は一気に攻撃に出るエバートン。セットプレーから早々にキーンのゴールで1点をお返しする。パレスはセットプレーの拙さで流れを悪くする悪癖がまたしても顔をのぞかせた格好である。
4バックにしたことで当然カウンターの怖さはアップしたエバートンではあったが、もう勝つしかないのでそんなことは言っていられない。パレスがヒューズ→ミリボイェビッチというやや守備的なメッセージにつながる交代に踏み切ったこともあり、後半はエバートンがボールを持つ時間が増える。
そんな中で粘りを見せて同点ゴールを押し込んだのはリシャルリソン。うまさと泥臭さのハイブリットのようなゴールでグディソン・パークを煽る。
そしてその時はやってくる。グレイのFKに合わせたのはキャルバート=ルーウィン。1年間負傷に苦しんだエースが最後の最後で残留を決める一撃をお見舞いする。
エバートンにとって、0-2のビハインドからの逆転劇はプレミア史上初めてのこと。史上初のどんでん返しでクリスタル・パレスを返り討ちにしたエバートン。苦しんだシーズンだったが、1試合を残してホームのサポーターと残留の喜びを分かち合うことに成功した。
試合結果
2022.5.19
プレミアリーグ 第33節
エバートン 3-2 クリスタル・パレス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:54‘ キーン, 75’ リシャルリソン, 85‘ キャルバート=ルーウィン
CRY:21’ マテタ, 36‘ アイェウ
主審:アンソニー・テイラー
第38節 アーセナル戦(A)
■早い段階でお祭りムードに
レビューはこちら。
ニューカッスルに完敗を喫し、4位をおとなりさんに譲ることになったアーセナル。ノリッジがトッテナムに勝たない限りはCL復帰の夢は断たれることになる。
一方のエバートンは最終節を前に完全にやり切った感である。グディソン・パークで劇的な逆転勝利で残留を飾り、最終節はボーナスステージにほかならない。
エバートンは残留争い真っ只中に使っていた5-4-1でアーセナルを迎え撃つ。これによりボールを持つことが出来たアーセナル。ここ数試合、高い位置から相手にとがめられることでビルドアップの不安定さを露呈していたアーセナルにとっては、このエバートンのスタンスは助かるものだった。
問題なく高い位置までボールを運べるアーセナルは左サイドのマルティネッリとタバレスのところから、PA内に迫っていく。対峙するイウォビにとってはマルティネッリとの1on1はやや重荷だったように思う。
そのイウォビがシュートに対してハンドを犯てしまいPKを献上。アーセナルはマルティネッリがこれを決めて先制する。
ここからアーセナルはゴールショーが開幕。そのマルティネッリがニアに入り込んで、スラしたことでファーに入ったエンケティアが追加点を叩き込む。
前半終了間際に1点を返されたのはご愛敬。しかしながら、クロス対応の緩さは要改善。特に出場停止から復帰したホールディングにとっては、この部分は妥協できない要素なはず。PA内での対応の厳しさではだれにも負けないくらいの気持ちは欲しいところである。
後半もアーセナルはセットプレーを中心に加点していく。セドリックがバイタル付近からミドルでベゴビッチを打ち抜くと、4点目はガブリエウがストライカー顔負けの抜け出しから左足で豪快にフィニッシュ。
締めとなったのはウーデゴール。今季、アーセナルを力強いリーダーシップで引っ張っていった8番が今季のアーセナルの最後のゴールを飾ることとなった。
裏のカードが結果を祈らなくてはいけないような展開にならず、早々にCL出場権については諦めがついたのだろう。エミレーツ・スタジアムは1つ1つのゴールに沸く平和な雰囲気だった。
対するエバートンも5失点したものの陽気そのもの。自身の残留が決まったのはもちろん、隣人がタイトルを逸することが濃厚になったのだから笑いが止まらない。この試合で彼らが一番盛り上がったのは間違いなくエティハドからギュンドアンの3点目のゴールが入った速報が入った時に違いない。
というわけで速い段階でお祭りムードになったエミレーツ。平和な形で最終節の幕は閉じられた。
試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
アーセナル 5-1 エバートン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:27′(PK) マルティネッリ, 31′ エンケティア, 56′ セドリック, 59′ マガリャンイス, 82′ ウーデゴール
EVE:45+3’ ファン・デ・ベーク
主審:アンドレ・マリナー