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「Catch up Premier League」~ウェストハム編~ 2021-22 season

 ウェストハム、21-22シーズンの歩み。

目次

第1節 ニューカッスル戦(A)

■ドリブル博覧会へようこそ
 
 あぁ、プレミアリーグが帰ってきたなと思う試合だった。両チームとも立ち上がりから細かいことよりも自分たちの持ち味を前面に押し出す展開だった。ウェストハムは昨年に続く強固なセットプレーでゴールに迫る。先にチャンスを作ったのは彼らの方だった。
 
 対するニューカッスルの方はなによりサン=マクシマン。一度ボールを持ったら離さない彼のドリブルは今季も健在。そのドリブルで先手を取ったニューカッスル。右サイドでボールを持つと、ライスを無限の切り返しで振り切りクロスから先制点をおぜん立て。いかにもサン=マクシマンらしいアシストでニューカッスルが一歩前に出る。
 
 その後は両チームとも落ち着かない展開に。ボーウェンが意味不明な突破をすれば、得点で勢いづくサン=マクシマンはさらにドリブルを仕掛ける。まるでドリブル博覧会かのようにボールがピッチを往復する展開になった。
 
 やや時間がかかった攻撃の時は両チームとも非常に前がかりに。ウェストハムはSBを両方上げて対応。右サイドから多角形を作り、逆サイドに展開するとクレスウェルのクロスから同点弾を叩きこむ。
 
 両SBを同時にあげるくらいのウェストハムの攻撃がかわいいくらい、バランスが無茶苦茶だったのはニューカッスルの攻撃だ。シェルビーが最終ラインに落ち、前線には常に3,4人が張り付く。ぽっかり空いた中盤にサン=マクシマンが君臨し、前線にドリブルの行く末を見守りながらドリブルをするというのが彼らの攻撃である。時には最終ラインの後ろから数えて2人目がサン=マクシマンになるほど、ドリブルのために自陣深くまで下がってボールを受けていた。
 
 そのサン=マクシマンのドリブルからサイドに展開し、リッチーのクロスで仕留めてニューカッスルは再びリードを奪うことに。
 
 しかし、ドリブルはうまくいけばいかない時もある。自陣深い位置でサン=マクシマンのドリブルをかっさらったライスが1失点目のリベンジを達成。今度はドリブルが得点ではなく、失点の起点になってしまったニューカッスルだった。
 
 ニューカッスルの守備で気になったのは5バックなのにやたら大外からクロスを上げられまくること。5バックの外から上がったクロスでひたすらピンチを迎え続けていたのは解せない。クラフトがファーへのクロスをギリギリでカットしていなかったらあと2点はウェストハムに入っていたはずだ。
 
 後半は守備の悪い部分が目立ったニューカッスルはPKの流れでひとたび逆転を許すと再び振り絞る力が残っておらず。プレミア開幕を知らせるド派手な撃ち合いはウェストハムの勝利で幕を閉じた。

試合結果
ニューカッスル 2-4 ウェストハム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:5′ ウィルソン, 40′ マーフィー
WHU:18′ クレスウェル, 53′ ベンラーマ, 63′ ソーチェク66′ アントニオ 
主審:マーティン・アトキンソン

第2節 レスター戦(H)

■時間とともにはっきりする明暗

 上位勢の牙城を崩す両チームの一戦だが、意外にも試合は対照的な内容だった。立ち上がりから苦しんでいのはレスターの方。バックス4枚とCH2枚で組み立てるのだが、相手につかまってしまいなかなかボールをうまく動かすことができない。

 徐々にCHが行動範囲を広げたり、トーマスが3バック化したりなど工夫を見せるのはレスターらしいが、立ち上がりから簡単に捕まってしまって苦しんでいるのは昨シーズンはあまり見ない姿だった。複数人で囲むウェストハムに対して前進に苦しんだ。

 ただ、気になったのはむしろ非保持の方。ウェストハムが縦に長いボールを入れるのが得意というのもあっただろうが、開幕戦に続いてどことなく間延びしている感じのレスターの陣形は非常に気になった。

 ウェストハムは配置的に浮きやすい大外を噛ませながら前進していく。広い間を使いながら受けることができる2列目と大外を使い分けながら、ウェストハムは機能的に前に進むことができていた。

 どこかピリッとしないレスターと楽に前進していくウェストハム。先制点はそんな流れを象徴するようなものだった。レスターのビルドアップミスから縦に鋭いカウンターを繰り出すと、フィニッシャーはフォルナルス。ホーム開幕戦でウェストハムが先手を取る。

 悪い流れは続くもの。アクシデンタルな形でレスターはペレスを一発退場で失うことに。さらにソユンクのミスから決定的な2失点目を喫する。こうなるとレスターは厳しい。ボール保持の時間を増やし、支配的に試合を進めるようになる。こういう流れになると今季のウェストハムは積極的。高い位置からのプレスも昨季よりも多い。ライスが攻守に積極的にサイドに出ていく姿は開幕戦も見たものである。

 そして終盤はアントニオ劇場。アクバティックさとフィジカルの強さを併せ持ったエースの躍動でウェストハムはレスターをさらに突き放す。レスターはヴァーディ、ダカ、イヘアナチョなどスピードを生かせるアタッカーたちがサイドに流れることでしか陣地回復の手段を見出すことができず。意地を見せたティーレマンスの一差しが精一杯。序盤の明暗は時間が過ぎるとともに拡大。一方的な試合でウェストハムが大勝でホーム開幕戦を飾った。

試合結果
2021.8.23
プレミアリーグ 第2節
ウェストハム 4-1 レスター
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:26′ フォルナルス, 56′ ベンラーマ, 80′ 84′ アントニオ
LEI:69′ ティーレマンス
主審:マイケル・オリバー

第3節 クリスタル・パレス戦(H)

■食い下がるパレスが連勝ストッパーに

 絶好調で2試合を終えて首位に立つウェストハム。今節は開幕3試合連続でロンドンダービーが続いているクリスタル・パレスとの対戦である。

 ウェストハムはクリスタルパレスのゴリゴリさに手を焼いている感じはあった。それでも連勝スタートした質の高さはさすが。押し込みながら、左右に相手を振り、クロス主体でチャンスを演出する。

 自陣に押し込まれる機会が増えたクリスタル・パレスはロングカウンターから反撃を狙う。しかしながら、ウェストハムは加速しそうになったタイミングで相手を潰すのが非常に上手い。しかも、ファウルで止めて警告をもらわない程度に収めるのが上手。したたかである。

 両チームとも悪くないけど、相手がブロックを組む前に加速ができずに、敵陣までたどり着いてもそのブロックを崩せないという展開が続いていく。先にその状況をクリアしたのはウェストハム。中盤からの見事な加速でクリスタル・パレスに人数が揃わない状況で守ることを強要すると、仕上げのアントニオは見事だった。相手を見た緩急で敵を自分に引きつけて、フォルナルスにラストパス。アントニオは氷のような冷静さで先制点を演出した。

 後半も試合は同じ展開。そんな中でクリスタル・パレスは自陣からの保持でやり返す。見事だったのは左で持ち上がったグエヒ。ウェストハムのプレス隊を切り裂き、左にパスし自らはエリア内に。混戦から最後に押し込んだのはギャラガー。今季のクリスタル・パレスの初得点をもたらすことに。

 ここからザハを軸にした攻撃で主導権を握るクリスタル・パレス。しかし、もう一度輝きを放ったのはアントニオ。長いボールをアクロバティックに収めて圧巻のゴールを叩き込む。

 だが、試合はこれでは終わらず。クリスタル・パレスは左サイドのトライアングルからエリア内にザハがクロスを上げると最後は再びギャラガー。アントニオとは異なる趣のスーパーゴールであっという間に同点に追いつく。

 ウェストハムが優勢に進める時間が長かった試合だが、最後の最後まで食いつくクリスタル・パレスを退けることができず。開幕からの連勝は2で止まった。

試合結果
2021.8.28
プレミアリーグ 第3節
ウェストハム 2-2 クリスタル・パレス
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:39′ フォルナルス, 68′ アントニオ
CRY:58′ 70′ ギャラガー
主審:スチュワート・アットウィル

第4節 サウサンプトン戦(A)

■エースと勝ち点を失う引き分け

 どちらかといえばサウサンプトンがオープンで、ウェストハムが手堅いチームというイメージのファンが多いのではないだろうか。異なる趣の両チームの対戦はまずは試合の展開がどう転がるかが見どころだった。

 試合は比較的切り替えが少ない立ち上がりとなった。そう聞くとばっちり守ってカウンターのウェストハムの戦い方が刺さったのかな?と思うかもしれないが、どちらかと言えばこの戦い方を選んだのはサウサンプトンといえそうだ。

 普段と異なる4-1-4-1のフォーメーションを選択したサウサンプトンは彼らの方からテンポを落とした展開に対応しているようだった。アンカーの配置によって、普段よりもポゼッションは安定していたので、トランジッションの機会が少なくてもサウサンプトンは順応はできていた。

 4-1-4-1の採用にはもう一つメリットがある。それは今季のサウサンプトンの攻めの軸であるSB-SHの関係性に+1を加えられること。エルユヌシとウォード=プラウズがサイドの攻めに加わることで線から三角形に関係性が変わったことも大きかった。

 一方でこの形を組むとエリア内の圧力が下がるのが難点。単純に人がいないのも痛いし、エリア内のプレー精度の点でいうとイングスの抜けた穴も大きい。あとはなんだかんだサイドをいい形で破ることができるのはリヴラメントにスペースを与えた時だったりするので、この形が超効いていたかは微妙。ただ、ゆっくりとしたテンポにアジャストするチャレンジとしては十分理解できるものではある。

 こういう展開ならウェストハムのロングカウンターが炸裂しそうなものだが、そこはサウサンプトンのバックスが頑張っていた。特に目についたのはサイス。序盤戦は頼りないパフォーマンスが続いていたのだが、この日はまず体を当ててウェストハムの攻撃を遅らせることができていたし、アントニオがサイドに流れた際もついていきつつ、体を寄せ切ることで2列目のアタッカーが飛び越すスペースにクロスを上げさせることを防ぐ。成長を感じられる出来だった。

 後半はライスがサイドの高い位置に積極的に出ていく(こちらも今季から強めに意識している部分)など攻撃成分を高めたウェストハムが徐々に押し込んでいく。攻め気が強かった後半戦立ち上がりはロングカウンターの応酬だったが、終盤戦はウェストハムペース。エリア内に迫りながら前半は上がらなかったクロスを上げる場面を段々と増やしていく。

 しかしながらゴールを奪うことはできなかったウェストハム。そればかりか終盤には2回目の警告を受けたアントニオが退場。勝ち点2とともに次節のエースの出場権を失うという唇を噛みたくなる結末となってしまった。

試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
サウサンプトン 0-0 ウェストハム
セント・メリーズ・スタジアム
主審:デビッド・クーテ

第5節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

■縁深い男が試合を決める

 絶対的なエースのアントニオ不在の状態で、首位のマンチェスター・ユナイテッドと対峙することになったウェストハム。ボーウェン、ベンラーマを中央に並べ、サイドには新加入のヴラシッチを起用して、首位叩きを狙う。

 ウェストハムの後方のビルドアップはゆったりしたもの。両CBが開き、GKも絡めながらの組み立てになる。ただ、前線にボールが入るとかなり展開はスピーディーに。止まってボールを組み立てられるアントニオがいないことで、あまりやり直しは効かなくなっている印象。ソーチェクが前線に顔を出す機会が減ったのは偶然ではないだろう。

 その分、ポジションチェンジを増やして相手に不確定要素を増やしていた印象。前線2人が裏を狙えるので、SHが低い位置まで保持のサポートに降りてきたり、クファルが逆に高い位置まで出て行ったりとポジションを変えながらマンチェスター・ユナイテッドに迫る。

 一方のマンチェスター・ユナイテッドも同じくCBが開き、GKも絡めてのビルドアップとなった。ただ、ウェストハムに比べると、マンチェスター・ユナイテッドのバックスはボールを運ぶのが上手。CHをスタートポジションとしていたウェストハムのプレス隊を引き出しながら、マグワイアを中心に敵陣にボールを指していく。

 そこから先の攻撃はややバランスを取るのが難しい印象。ロナウド、ポグバという大駒が2枚いるとさすがに難儀な部分は出てくる感じ。大外で高い位置までオーバーラップしていたショウのように汗をかける選手がいなければ、ストライカーのロナウドを生かすのは難しい。

 ロナウドもアタッカー陣との連携もまだ熟成段階なのだろう。抜け出しは成功したものの、グリーンウッドへの決定的なアシストの機会を逃してしまう場面もあった。だが、その直後にロナウドは自らの得点でやらかしを帳消ししてしまうのだから、恐ろしいものである。この試合もマンチェスター・ユナイテッドの1点目を決めたのはロナウドだった。

 ウェストハムの1点目を決めたのはベンラーマ。バイタルにぽっかり空いたところから放ったミドルが幸運な跳ね返りでデヘアの守るゴールマウスの中に転がっていった。

 後半になると、流動性を武器していたウェストハムはやや動きが減って辛くなってきた感じ。徐々にマンチェスター・ユナイテッドが攻める機会を増やしていく。交代選手が入っても火力が落ちないあたりはさすがは首位といったところだろうか。

 試合を決めたのは戦前に並々ならぬ思いを述べていたリンガード。CLで敗戦に直結する痛恨のミスを果たした彼が、昨季の後半戦でのブレイクによって多くのファンを熱狂させたロンドン・スタジアムでこの日はファンを黙らせる立場となった。

 試合最終盤、ショウのハンドで追いつくチャンスを得たウェストハムだったが『ピンチキッカー』のノーブルが放ったPKはデヘアにによってストップ。非常にプレミアらしい狂乱騒ぎとなった最終盤でマンチェスター・ユナイテッドが首位を堅持する勝ち点3を手にした。

試合結果
2021.9.19
プレミアリーグ 第5節
ウェストハム 1-2 マンチェスター・ユナイテッド
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:30′ ベンラーマ
Man Utd:35′ ロナウド, 89′ リンガード
主審:マーティン・アトキンソン

第6節 リーズ戦(A)

■要人を欠いたリーズに自力の差を見せつける

 オープンな展開が続く序盤戦、チャンスをより多く得たのはウェストハムの方だった。攻撃における早い展開が得意なウェストハムはリーズが仕掛けるハイテンポな流れにも順応。序盤から前線のアタッカーがリーズのゴールに迫っていった。

 前進に苦労したのはホームのリーズ。ややボールを持たされ気味な展開が続く上に、バックラインはいつものメンバーから何人か変わっている。前線にはアバウトなボールを収めることができるバンフォードもいないというわけで苦労する要素が満載だった。

 それでもリーズは徐々に大きな展開を交えながらタメを作り、周りのオーバーラップを促して自分たちのリズムを掴む。ウェストハムのオープンに攻めつつ、クローズに守るという方針の中で徐々に抵抗を始めていた。

 リーズが先制点を得ることができたのは、ウェストハムが自らのミスでクローズに守ることを放棄してしまったから。ソーチェクのバックパスミスから、与えられたカウンターの機会に一気に攻め込んだリーズ。クリヒの落としを最後はラフィーニャが決めて先制。ウェストハムのミスに付け込み先制点を得る。

 その後もリーズは自陣から出ていくのに苦労する。だが、出ていくときに成功したときはラフィーニャがフィニッシュまで持っていく力がある。今年、もう一皮剥けた感があるラフィーニャであった。

 ウェストハムは先制された後はクローズに守ることを実践できてはいたが、今度は攻撃機会に繋がるボール奪取に苦慮。オープンに攻める方がなかなかできなくなっていた。

 迎えた後半、セットプレーからチャンスを得たウェストハムが押し返すように。ただ、ここはファウルの判定とメリエの好セーブに救われてリーズ側としてはことなきを得る。だが、モモを気にするラフィーニャが下がってしまうとリーズは一気に攻め手を失ってしまう。前線の預けどころがない分、リーズは前半よりもウェストハムに押し込まれる展開が続くことに。

 60分くらいからリーズがトーンダウンしたことにより、試合はさらにウェストハムペースに。徹底守備で怪しいサイドのポジションから徐々にウェストハムは敵陣に押し込んだ際の攻略ができるようになってくる。同点ゴールはここから。フィルポの怪しいポジショニングから同サイドに侵入を許し同点にする。

 その後も地力の違いを見せ続けたウェストハム。リーズの最終ラインも踏ん張り続けてはいたが、最後の最後で決壊。カウンターに打って出たウェストハムに数的優位を許すと、華麗なコントロールでDFを手玉に取ったアントニオが決勝点。

 バンフォード、エイリング、ラフィーニャが不在となった終盤のリーズにとっては、ウェストハムを下すことはやや荷が重いミッションだったようだ。

試合結果
2021.9.25
プレミアリーグ 第6節
リーズ 1-2 ウェストハム
エランド・ロード
【得点者】
LEE:19′ ラフィーニャ
WHU:67′ フィルポ(OG), 90′ アントニオ
主審:ケビン・フレンド

第7節 ブレントフォード戦(H)

■またしても終盤の大仕事で決着したダークホース対決

 昨シーズンに続いていぶし銀枠として堅実な成績を残して一つ格が上のクラブになっている感のあるウェストハムと開幕からビッククラブ相手にダイナミックな試合で今年の台風の目枠であるブレントフォードの一戦。好調な両チーム同士の非常に楽しみな試合である。

 意外にも試合は非常にワンサイドな展開になった。序盤は一方的なブレントフォードペース。高い位置からのボール回収とPA内へのクロスの枚数の掛け方でウェストハムを圧倒する。

 ブレントフォードは非常に内側での楔を使った前進がスムーズになってきた。ポストと受け手の関係が整理されており、少ないタッチで素早い方向転換が可能に。ブレントフォードは開幕時のプレースタイルから徐々にできることを増やす方向にチャレンジしている感じが非常に好感が持てる。

 開幕した時は2トップへのロングボールの一辺倒からの前進が目立っていたけど、今はグラウンダーの楔を付けながらポストを生かして前進することができる。こういうチームは見ていて積み重ねがあるから楽しい。チームの核であるトニーはその代表例だろう。中央にどしっと構えるだけでなく、サイドに流れながらのアシストもお手の物。多くの役割をこなすことがバッチリ板についてきた。

 そんな流れの中でこちらもすでにプレミア級であることを証明しつつあるムベウモのゴールでブレントフォードが先制。そのペースのまま前半を飲み込んで押し切る。

 しかし、前半の途中から徐々に圧力を高めてきたウェストハム。中盤のプレスの強度を高めてショートカウンターを発動する回数が徐々に増えていく。ブレントフォードの中盤はこれに伴ってラインを下げたため、セカンドボールの主導権はウェストハムに移っていく。

 後半、左で作って右サイドの選手がPA内になだれ込む形でチャンスを作るウェストハム。手こずりはしたが80分にボーウェンがようやくこの形から同点弾を叩き込む。

 だが、試合はまだ終わらない。またしても終盤に試合を動かしたのはブレントフォード。そしてリバプール戦と同じく決めたのはウィサ。後半ラストプレーでロンドンスタジアムの観客を黙らせたブレントフォードがまたしても大仕事。土壇場で勝ち点3を獲得し、ダークホース対決を制した。

試合結果
2021.10.3
プレミアリーグ 第7節
ウェストハム 1-2 ブレントフォード
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:80‘ ボーウェン
BRE:20‘ ムベウモ, 90+4’ ウィサ
主審:ピーター・バンクス

第8節 エバートン戦(A)

■上位をにらむ一戦はセットプレーで決着

 戦績は上々、トップグループに隙を見つけて割って入りたい両チームの一戦である。布陣としては4-2-3-1ベース同士のフォーメーション。というわけでお互いにどこでズレを作るかという勝負に出る必要がある。そのアプローチは両チームで異なっていた。

 配置の局面でズレを作ろうしていたのはウェストハムの方。CHのライスが降りる動きを見せたり、そのライスが動いたことで空けたスペースに2列目が入り込んだり、あるいは逆に裏に抜けたりなどエバートンの陣形を動かすためのアプローチを駆使しながら前進を狙っていく。

 ウェストハムがこのやり方を選んだのにはエバートンの守備の指針も大きく関係しているように思う。エバートンの4-4-2は相手の動きについていきやすい側面が強く、中盤を中心に非常に穴が空きやすい。相手が動いてくれるからこそ動くという側面が強かった。

 仮に守備側がウェストハムだったら、この動き回っての前進はもっと通用しなかっただろう。したがってエバートンはよりデュエル色の濃いアプローチで臨むようになった。前線に構えるロンドンがそのターゲット。なんとか背負ってポストをすることで相手のDFラインを押し下げる。エリア内では物足りなさがあったが、陣地回復においては十分ロンドンは効く。

 前を向いてのチャンスメイクがより期待できるのは好調のグレイ。中央でのスタートとなったが、途中からイウォビと場所を入れ替えてサイドに出ていった。これならばサイドからの単騎での突破を狙える上に、ボールサイドに触ってナンボのイウォビを送り込みやすくなる。遅攻の整備が課題のエバートンだが、こちらのほうがゆっくり攻める際の攻め手にも困らないはずだ。

 しかし、ウェストハムは2列目の帰陣が早くソリッド。前半の終盤から徐々にエバートンが攻める時間を増やすが、なかなか決定機まではたどり着かない。終盤には徐々に規律がなくなりだし、カウンターの応酬の展開になってくる。

 勝負を分けたのはセットプレー。終盤のたたき合いで結果を出したのはCKを叩き込んだオグボンナだった。その後はソーチェクの負傷交代を機にウェストハムが3バックに移行。終盤は畳みかける攻撃でウェストハム陣内に攻め込み続けたエバートンだったが、最後までハンマーでたたき壊すことはできず。

 共にカウンターからは見せ場を作ることはできたが、勝負を分けたのはセットプレー。グディソンパークに帰還したモイーズ率いるウェストハムがしぶとく勝ち点3をモノにして見せた。

試合結果
2021.10.17
プレミアリーグ 第8節
エバートン 0-1 ウェストハム
グディソン・パーク
【得点者】
WHU:74′ オグボンナ
主審:スチュアート・アットウィル

第9節 トッテナム戦(H)

■崩しきれなかった籠城作戦

 上位対決となったロンドンダービー。CL出場権を狙いトップ4争いの主導権を握るために負けられない一戦である。

 試合は互いに深いDFラインから入る慎重な立ち上がりとなった。特に深いDFラインが顕著だったのはウェストハムの方。トッテナムのCBには持たせて良し、1stプレスラインは相手のCHと深めに設定する。そして相手のラインが前進するたびに素直にラインを下げる。

 トッテナムはCHがDFラインに入り、トップ下のエンドンベレが中盤に入ることで相手を引き出そうと試みるが、ウェストハムの守備陣はほぼその誘導には乗らない。その分、レギロンは高い位置を取るがそれでも相手のDFの裏を取るまではいかず。深い位置からボールを運ぶルーカスや、ソンとケインに早めに当てたりもしてみるが、結局はウェストハムがラインを下げる速度より早く、相手を下げさせる場面が見当たらない。

 一方のウェストハムの保持においては2列目が絞りながら中央からスムーズに進むルートを消す。六角形を使いながら相手を閉じ込める感じまではいかなかったけど、今季トッテナムが意識している中央を締める指針にそぐうやり方である。

 だけども、ウェストハムはトッテナムほどは困らない。裏への攻撃からゴールに迫ったり、大外からボールを進めることで動線を確保。ウェストハムはソーチェクがエリア内に突撃する時間を作れるか、スキップがハーフスペースを埋めるのをが間に合わなかったときの逆サイドの大外などからクロスでチャンスを作っていく。

 劣勢をスコアレスでしのいだトッテナムは後半徐々に盛り返していく。スキップ、エンドンベレあたりがエリア内に出ていけるようになり攻撃に厚みが出てくる。

 しかし、先制したのはウェストハム。いける!と思った矢先にレギロンのパスミスから得たCKで先制するウェストハムはしたたかである。

 ここからは彼らの得意な籠城作戦。トッテナムはエメルソンも含めてSBに高い位置を取らせることで反撃を試みる。SBがとる高い位置をベースに考えれば、レギロンに代えてブライアン・ヒルというのはファイアーでもなんでもなく、役割にあった選手交代といってもいいくらいだった。

 しかし、結局追いつくことはできなかったトッテナム。したたかなウェストハムにからめとられ、上位追撃のチャンスを逃すこととなった。

試合結果
2021.10.24
プレミアリーグ 第9節
ウェストハム 1-0 トッテナム
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:72′ アントニオ
主審:ポール・ティアニー

第10節 アストンビラ戦(A)

■保持が足を引っ張りシフトチェンジ失敗

 どちらかといえばトランジッション寄りの両チームだとは思うが、この日はかなり落ち着いて試合に入った印象だった。

 特にホームのアストンビラは保持の局面を非常に意識してはいったように思う。彼らが今季ずっと5-3-2に舵を切っていたのは、保持局面でグリーリッシュが作ることができたタメが彼抜きではできないからという理由だと思っている。この試合では2トップの一角を務めたイングスが欠場したタイミングでの保持主体の4-3-3へのトライということになった。

 しかしながら、正直この試合のアストンビラのポゼッションはうまくいっていたとは言い難い。ウェストハムの硬いブロックに対してどうやって前進するか?という部分で見えてこず。唯一の光明となりそうだったのが今季絶好調のマッギンのポスト。右の奥に入り込み、ラインを押し下げる動きで前進を助けてくれていた。

 前進がうまくいかない時の頼みの綱といえば3センターを軸としたプレス。だが、この日は中盤の要人であるドウグラス・ルイスが欠場。加えて、前半早々にラムジーが負傷交代し、ヤングが登場すると3センターはバラバラな部分が目立つように。むしろ、ウェストハムに間を通される狙い目になってしまう。先制点のシーンも見事に間を通されてしまった形。ライスのカットインから逆サイドのジョンソンまで見事に横断し、スーパーゴールを呼び込んだ。

 保持局面ではウェストハムの方が上だったといっていいだろう。アストンビラの同点弾は先に述べたマッギンからブエンディアの裏抜けを使った形で右サイドを見事に攻略して見せたが、彼らのクリーンな崩しは数える程。

 ウェストハムは中に高さがある分、大外からの連携でクロスで壊すやり方もできるのでその部分もアストンビラに比べてアドバンテージだった。ただ、2点目もきっかけは中央から。ライスのミドルによってまたしてもアストンビラの3センターが捕まえられないところから失点してしまった。

 ポゼッションができない流れが致命的になったのは後半。前半からCB起点の危険な形でのビルドアップロストが目立っていたアストンビラだったが、後半にはヤングとナカンバの連携ミスからカウンターを喰らう。コンサがなんとか止めたものの、状況はすでにファウルを与えたら退場のシチュエーション。後半まるまるを10人で戦うことになる。

 11人で満足に前進できないチームが10人で前進ができるわけがない。そこからは堅実なウェストハムにジリジリと内容面で差をつけられていく。終盤までは勝ち点の可能性を残してはいたものの、やはり最後の最後に決壊。保持での振る舞いがアキレス腱となり、痛恨の連敗となったアストンビラだった。

試合結果
2021.10.31
プレミアリーグ 第10節
アストンビラ 1-4 ウェストハム
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:34′ ワトキンス
WHU:7′ ジョンソン, 38′ ライス, 80′ フォルナルス, 84′ ボーウェン
主審:クリス・カバナフ

第11節 リバプール戦(H)

■フォルナルスの味変でトランジッション勝負を制する

 代表ウィーク前のトリを飾るのは上位対決となったウェストハム×リバプール。今節屈指の上位対決である。

 試合の内容を見てみても上位対決という看板に恥ずかしくないハイレベルな一戦となった。立ち上がりのウェストハムの4-5ブロックを見れば、リバプールにとってこの試合が簡単なものではないということはすぐに飲み込めたはずである。

 ウェストハムの4-5ブロックは大外を開けてでも中央をプロテクトすることを優先する。大外を明け渡す代わりに、ブロックの横方向へのスライドが少ないので自分達の決まった立ち位置で守れるのが強み。セットプレーから先制点をとったならばなおさら。固さに磨きがかかりリバプールは苦労する。

 ウェストハムは多少自陣に引いたとしてもカウンターという武器がある。SBの裏のスペースを軸にアントニオ×ファン・ダイクという怪獣大戦争のようなマッチアップからウェストハムはチャンスを見出そうとする。だが、そこは流石にリバプール。オープンな形でのCB+ファビーニョで守ることは非常に慣れているという感じで、最後のところで防ぐことができていた印象だ。

 ただ、先手を取られてしまったので攻め込まないといけないリバプール。ラインを上げ下げさせるようなサイドからのクロスやナローなスペースへの縦パスで何とか糸口を見出そうとしている。

 そんなアプローチが奏功したのは前半終了間際。狭いスペースへの縦パスからファウルを得ると、これを直接沈めたのがアレクサンダー=アーノルド。ハーフタイムまでに同点に追いつく。

 後半、リバプールはテンポアップしてトランジッションの強度を上げることで敵陣に侵入を試みる。しかしながら、ライスとソーチェクのセンターラインが非常に強固で、リバプールはここから跳ね返されてしまう。

 後半のウェストハムで際立っていたのがフォルナルス。早い展開の中でライン間でボールを引き取り、長いアントニオへのボールとは異なる切り口での前進でアクセントを加える。

 フォルナルスはショートカウンターから2点目を奪うと、3点目のきっかけとなるコーナーキックにつながるカウンターも起点になる。トランジッション増し増しで勝負をかけてきたリバプールを返り討ちにした主人公はフォルナルスであった。

 リバプールはこの試合においてセットプレーから2失点。上位対決においては当然これは致命傷になりうる。攻撃陣を逐次投入し、オリギがらしさを感じるアクロバティックな得点を決めるも3点目までは至らず。内容の伴う好ゲームを制したのはホームのウェストハム。直接対決で下したリバプールに代わり、3位浮上。CL出場権争いに本格名乗りを上げる勝利となった。

試合結果
2021.11.7
プレミアリーグ 第11節
ウェストハム 3-2 リバプール
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:4′ アリソン(OG), 67′ フォルナルス, 74′ ズマ
LIV:41′ アレクサンダー=アーノルド, 83′ オリギ
主審:クレイグ・ポーソン

第12節 ウォルバーハンプトン戦(A)

■トランジッションの優位がものをいう好勝負

 連敗スタートから見事に立て直しトップハーフまで舞い戻ってきたウルブス。リバプールをホームで破り、CL出場権争いに本格名乗りをあげたウェストハム。上々の勢いに乗る両チームの一戦は両チームの勢いを反映したレベルの高い試合となった。

 リトリートが素早く、陣形が整った状態で攻め合うことになった両チーム。互いにアタッカーがサイドに流れながら攻め込む形を狙うが、守備側の帰陣が早く攻め込むことができない。

 より、慎重な立ち上がりになったのはアウェイのウェストハム。普段であれば左のSHがベースポジションであろうフォルナルスを左のWB気味に起用し、5枚埋める形で重心をきっちり下げる。トップ下のベンラーマとトップのアントニオは中央付近に浮遊。フォルナルスが本来いる位置は空けたままにした。

 序盤は撤退守備に苦戦したウルブスだったが、徐々に手応えを掴み始める。ウェストハムが早めに撤退を行う分、中盤で自由を得たウルブス。ネベスとモウチーニョが段々と支配権を握りウェストハムを押し込んでいく。ウェストハムも1人がブロックから飛び出して行っては、そのスペースを埋めるカバーリングの動きがスムーズであり、ウルブスには穴を見せない。

 この日のウルブスが素晴らしかったのはウェストハムのロングカウンターをかなり綺麗に、かつ高い位置で止めることができた点である。バックラインの押上からのインターセプトが見事で素早い波状攻撃に移行することができた。

 加えて、5バック相手に奮闘したのはラウール・ヒメネス。パワーヘッダーのイメージが強いFWだが、この日はラインの駆け引きでウェストハムの守備陣を翻弄。5枚という数の論理を無駄にするラインブレイクでウェストハムにラインアップを許さない。

 後半、押し下げられたウェストハムは両サイドのプレスを強化し5-2-3気味で徐々に高い位置からのプレスに挑むように。しかし、この日のトランジッションはウルブスに軍配。特にバックラインでも押し上げての守備が効いていたのはウルブスの右サイド。セメドはこうした形での貢献が継続できれば文句なし。この試合ではその後の攻め上がりも含めてパーフェクト。ラウール・ヒメネスが決勝点のシュートを決めたシーンでもスペースメイクに尽力する。

 その後は撤退守備でウェストハムからがっちりゴールを守るウルブス。撤退からのトラオレの投入は普段、ウェストハムがリードしたときに相手チームに嫌がられるような籠城+ロングカウンターの策。ウェストハムは人にされて嫌なことを人にされている状態である。

2列目のアタッカー陣をフレッシュに入れ替えたり、ソーチェクを高い位置に押し上げるトライをしたウェストハムだったが、最後まで牙城は崩せず。レベルの高いダークホース対決はウルブスが見事に競り勝ってみせた。

試合結果
2021.11.20
プレミアリーグ 第12節
ウォルバーハンプトン 1-0 ウェストハム
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:58′ ヒメネス
主審:マイク・ディーン

第13節 マンチェスター・シティ戦(A)

■ウェストハムの対応力をねじ伏せる

 リバプール、ウルブスと難敵が続くウェストハム。続く一戦はマンチェスター・シティ。引き続き実力を試され続ける相手となっている。

 試合は保持するシティ、受けるウェストハムの構図で推移する。ウェストハムは4-5ブロックでシティの保持を受け止める。ウェストハムの守り方のキーになっているのはソーチェク。右のCHに入っているソーチェクは押し込まれた際には最終ラインに入ることで5人目のDFとして機能。

   ソーチェクが落ちる動きに合わせてSHのフォルナルスがCHの位置に絞りながら戻る形で自陣を埋める。まずはポケットを取りたいマンチェスター・シティ相手にしっかりスペースを埋めることでまずは攻撃を止める。

 ソーチェクがすごいのはただの最終ラインの穴埋め役に終始しないことである。シティ相手にただただ引くだけではもう守り切るのは難しい。もちろん、ラインを下げる時間は受け入れなければいけないが、高い位置に出ていく意欲を失ったらそれはそれでゲームオーバー。ソーチェクはシティが自陣側にボールがあるときはラインを上げて前にプレスのベクトルを向けることが出来る。だからウェストハムのCHは強靭なのである。

 シティはこれに対してソーチェクの移動とそれに伴うカバーリングのギャップをつくためにラインを下りてポストができるジェズスを中央に移動。真ん中を牽制しながらウェストハムの注意をポケット以外にも分散させる試みをする。

 ウェストハムはサイドに流れるアントニオで反撃。ラポルテにカードを出させるなどシティのCBとのマッチアップではある程度の主導権を握ることが出来た。

 試合は30分付近から雪が強まり段々とサッカーをするのが難しくなってくる。シティはカウンターの危険性を考えてかロングボールを増やし、カットされるとピンチになりうるサイドチェンジを減らしながら対応する。

   そんな中で平気な顔でプレーしていたいのはカンセロとロドリ。シティが前半に得た貴重な先制点はカンセロがまるで晴れたピッチでプレーしているかのようなサイドチェンジを正確に行うことが出来たから。蹴った勇気と届けられた技術に感服である。

 後半、雪かきの甲斐もあり、何とかまともにサッカーをできる状況は戻ってくる。シティは無理なつなぎを行わずに長いボールを織り交ぜながら引き続きハーフスペースアタックを狙っていく。ウェストハムは凌ぎ続けるものの徐々に前に出ていくパワーがそがれていくように。

 堅実さが第一だったこの試合のシティは仕上げとしてフェルナンジーニョを投入。そのフェルナンジーニョが試合を決定づける2点目をゲット。サイドに流れるソーチェクのカバーが間に合わなかったバイタルエリアからミドルを放ってネットを揺らすことに。

 最後の最後でランシーニが一矢報いたウェストハムだが、90分を見れば均衡した試合の中で少しずつシティが上回っていたのも確か。優位をきっちり勝利に結びつけたシティが難敵を退け、首位追走に成功した。

試合結果
2021.11.28
プレミアリーグ 第13節
マンチェスター・シティ 2-1 ウェストハム
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:33′ ギュンドアン, 90′ フェルナンジーニョ
WHU:90+4′ ランシーニ
主審:マイケル・オリバー

第14節 ブライトン戦(H)

■呪いを解いて勝ち点奪取

 前節、チャンスメイクは出来るもののシュートまでに至らないという昨シーズンの呪いが復活してしまったブライトン。その流れを払拭したいウェストハム戦なはずだったが、開始直後のチャンスをいきなりモペイが外してしまう。

 いきなり呪いの継続して体感してしまったブライトンにウェストハムがセットプレーで襲い掛かる。GK付近に放たれたCKをニアに入り込んだソーチェクがわずかにずらしてネットイン。先制点を早々にゲットする。

 リードをしたウェストハムは安全第一の撤退守備を敢行。アンカー気味に2トップ間に存在するビスマに対して、2トップが比較的狭く立つ必要があったため、ブライトンはウェストハムの1列目のプレス隊を越えることは比較的簡単にできた。だが、そこからの2列目の撤退がウェストハムは非常に迅速。一気にPA付近まで下がることで、自陣を固める。

 マンチェスターシティ戦で見せたソーチェクの同サイドのハーフスペースを埋める5バック変形に伴う撤退守備はとても強固。シティは大きな展開で壊し切ったが、ブライトンはなかなかこの守備網を壊せずに苦戦することになる。左の大外からタメが効くククレジャを軸にスペースにクロスを上げるが合わせきれない。

 しかも、めんどくさいことにウェストハムは撤退守備からもロングカウンターを平気で放てるスキルがある。ロングカウンターからあわや失点の憂き目にあう可能性もあったのが厄介であった。

 後半も試合の流れは大きく変わらず。後半早々にCKにてウェストハムが追加点と思いきや、これはファウルにより取り消し。ブライトンが首の皮一枚で終盤までチャンスをつないでいく。

 前半のうちに負傷で2枚の交代カードを切ったブライトンは最後の1枚としてランプティを投入。同じく途中交代のマーチとの縦関係のタッグを結成することで、左サイドだけでなく右サイドからもチャンスメイクを強化した。

 そして、その右サイドからブライトンは同点ゴールをゲット。右サイドからのクロスに合わせたのはモペイ。簡単なシュートを外しまくっていたここ数試合の姿が嘘のようなスーパーシュートで追いつく。最後の最後に呪いが解けたブライトン。苦戦しながらもウェストハム相手に勝ち点をもぎ取って見せた。

試合結果
2021.12.1
プレミアリーグ 第14節
ウェストハム 1-1 ブライトン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:5‘ ソーチェク
BRI:89’ モペイ
主審:クリス・カバナフ

第15節 チェルシー戦(H)

■修正から得た主導権が生んだ脈絡なき決勝点

 今、ロンドンで最も高い順位にいる2チーム同士の対戦。チェルシーの対戦相手になるのはアーセナルでもトッテナムでもなく、ウェストハムである。

 フォーメーション的にはチェルシーに噛み合わせた5-4-1に挑むことにしたウェストハム。しかしながら、マンマークに行くかと思いきや、プレッシングは控えめ。むしろ、遅れてプレスに行くケースが多い分、ジョルジーニョやロフタス=チークには縦にパスを入れる余裕が十分で、パスで前を進めるのは難しくなかった。

 サイド攻撃においてもハーフスペースから裏を取る形でウェストハムの最終ラインを動かしながらクロスを上げることができていたチェルシー。ウェストハムのプレスの遅れと、サイドの攻撃からラインを押し下げられたことでウェストハムを釘付けにする。セットプレーからチアゴ・シウバで先制したことも含めてチェルシーとしては理想的な展開だった。

 しかしながら、これで終わるようではウェストハムはこの順位にはいない。今年の記事でも繰り返しているように、隙あらばラインを上げられるのがウェストハムの強さである。プレッシングからジョルジーニョのバックパスを誘発すると、選択肢が消えたメンディが対応をミス。ボーウェンを倒してPKを与える。

 だが、前半終了間際にチェルシーはマウントのスーパーボレーで勝ち越し。ウェストハムはとりあえずラインを下げるという選択肢が呼んだ失点となってしまった。

 後半にウェストハムは5-3-2に変形。ロングカウンターの比率を高め、前半のような中途半端なチェイシングを減らし、メリハリのある追い方に変更する。

 実ったのはまたしても高い位置への押し上げから。アントニオへのロングボールの落としをコーファルが粘って繋ぎ、最後はボーウェンがダイナミックなゴールを叩き込む。股抜き、そしてあのスピードでなければメンディをあの位置から撃ち抜くのは難しかったはずだ。

 そこからはウェストハムがペースを握る。チェルシーはルカクが入ってから流動性が低下。PA内のパワーとスピードの上乗せができれば、収支は合うのだが、ウェストハムの守備陣がそれを許さない。

 ウェストハムはロングボールからのセカンドボール回収で主導権を握る。中盤のフィジカルで言えば、圧倒的にウェストハム。中盤の枚数を増やした分、ソーチェクが高い位置に出れるようになったのも聞いていた。

 さらに終盤、4-2-3-1に移行しクロスに飛び込む枚数を確保したウェストハムは攻勢を強める。だが、決勝点を決めたのはそんな脈絡の外側の話。ウェストハムは左の大外からメンディの虚をつくシュートでマスアクが技ありのシュートを決める。2失点目直後のアントニオもそうだけど、かなりエリアの外からシュートを狙う意識が高かったウェストハム。メンディはゴールマウスをあけた強気のポジショニングが多い!というスカウティングでもあったのだろうか。

 チェルシーは終盤にプリシッチとハドソン=オドイの左サイドからこじ開けにかかるも、これ以上は失点を許さなかったウェストハム。リバプールに続きまたしても大物食いを達成。ここ数試合の取りこぼしを吹き飛ばす会心の逆転勝利を決めてみせた。

試合結果
2021.12.4
プレミアリーグ 第15節
ウェストハム 3-2 チェルシー
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:40′(PK) ランシーニ, 56′ ボーウェン, 87′ マスアク
CHE:28′ チアゴ・シウバ, 44′ マウント
主審:アンドレ・マリナー

第16節 バーンリー戦(A)

■沼から抜け出しきれず

 ともにフィジカルに傾倒した両チームの対戦。似たような毛色のチームとの対戦はよく実力差がくっきり出やすいというのだけども、この試合は上位であるウェストハムペースというわけではなかったように思う。

 おそらくだが、体のぶつけ合いに関しては少しバーンリーの方が分があったのだろう。ロングボールとフィフティーのボールの競り合いの連続はバーンリーの得意なだらっとした展開。全体が間伸びしても気にせずに、この沼にハマっていくとバーンリーの思い通りに試合が進んでいるということになる。

 そんな中で互いにチャンスがあったのはセットプレー。バーンリーはグズムンドソンが、ウェストハムはアントニオが惜しいシーンを迎えるなど、立ち上がりからセットプレーだけはチャンスがあった試合だった。

 ウェストハムはゲームのリズムを掌握しようとライスのサリーからボール保持でテンポを引き戻そうとする。押し込みながら大外をSBに任せエリア内に4枚揃える形でのクロスから打開を狙う。だが、ここは高さのあるバーンリーのバックスの面々。なかなか簡単にはこじ開けさせない。

 30分を過ぎると、バーンリーがハイプレスを敢行して再び試合は落ち着かない展開に。落ち着こうとするウェストハムを再び沼に引き摺り込もうとする。

 後半になるとようやくウェストハムが試合の展開を握れた感じに。ドリブラーでなくても前を向いて対峙できればバーンリーのバックスを揺さぶれるということに気づいた様子。ここでも効いていたのはライス。ライン間に入り込む動きや後方からのボールの持ち運びでスルスルと前まで上がっていき、バーンリーを押し込んでいく。

 逆にバーンリーは正対での対人になると活路を見出せない。おそらく一番戦えるのはマクニールだろうが、それでもサイドでの1on1はほぼ完敗。後半は前半以上にチャンスの匂いがしない展開が続いていく。

 ただ、ウェストハムも押し込む形はそもそも得意ではない。彼らの最大の持ち味であるスピードに乗ったロングカウンターはこの試合ではほぼ見られることがなかった。逆に終盤にはオープンになったところをバーンリーに叩かれかけてあわやというシーンも。バーンリーのFWに決め手が欠けたことに救われた形である。

 結局は試合はスコアレスドローで決着。バーンリーの沼から脱出しきれなかったウェストハムはまたしても強豪相手の勝利の後の停滞を経験することになった。

試合結果
2021.12.11
プレミアリーグ 第16節
バーンリー 0-0 ウェストハム
ターフ・ムーア
主審:グラハム・スコット

第17節 アーセナル戦(A)

■4位争いに向けて前を向ける成功体験

 レビューはこちら。

 遡ること4節前。アーセナルはオールド・トラフォードで敗れ、かつての定位置だった4位浮上のチャンスをフイにしてしまった。そこから2週間、各チームの日程消化の影響もあり、アーセナルは再びミッドウィークに直接対決で勝てば4位浮上のチャンスの機会を得ることとなった。

 過去の戦績でいえば圧倒的にアーセナルが優位なウェストハムとの一戦はその相性が前面に出るような戦いとなった。アーセナルは早々に攻めのルートを見つけた様子。前節は中央にサイドにあらゆるところのマッチアップでサウサンプトン相手に前進を決めていたが、今節は中央でウーデゴールが降りることで8対6の数的優位を作り出しつつ、右サイドのサカに預けるやり方に偏重した。

 偏重というと聞こえは悪いかもしれないが、それだけアーセナルがサカとマスアクのマッチアップに自信をもっていたということだろう。ウェストハムはここに対してライスやランシーニを当てて1対2で対応していた。すると、自身のマークが空いて時間を得ることが出来た冨安がアタッキングサードの仕上げにトライする。

 冨安は前節のサウサンプトン戦のように逆サイドに振る大きな展開もありつつ、同サイド奥を使うスルーを見せる。切り返して左足も使えるバリエーションの豊富さはこれまでのアーセナルの右サイドバックにはなかったものである。

 サカと冨安で敵陣に押し下げることができた好影響は守備にも波及。全体が押し上げられているため高い位置からプレスに行けるアーセナルはウェストハム得意のロングカウンターをシャットアウト。アントニオや2列目のアタッカーに前を向かせる前に取り切ることで反撃を封じる。

 唯一足りなかった先制点もラカゼットとマルティネッリの連携で後半早々にこじ開けたアーセナル。追加点を得るチャンスだったPKを失敗した直後はやや消極的さが見られたため、無駄に勝ち点を落とすパターンを恐れたファンも多かったかもしれない。だが、それを払拭したのがスミス・ロウ。途中出場でワンチャンスを逃さない決定的な働きを見せて、自身のシーズンハイの得点数をまた一つ更新してみせた。

 追加点を呼んだのは直前の冨安の前向きな守備だろう。とかく消極的になりやすいリードしたアーセナルの悪癖を拭い去るような前にベクトルを向けた守備はこの試合だけでなく、今後の4位争いを見据えた貴重な成功体験になるはずだ。

試合結果
2021.12.15
プレミアリーグ 第16節
アーセナル 2-0 ウェストハム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:48′ マルティネッリ, 87′ スミス・ロウ
主審:アンソニー・テイラー

第19節 サウサンプトン戦(H)

■攻撃のバリエーションに幅を見せたセインツ

 普段は4-4-2が基調のサウサンプトンだが、前節のトッテナム相手には5-3-2の形で挑むなどの変化をつけている。今節の形は4-3-3気味の形。いつもならば、ロメウとフラットに並ぶ形の多いウォード=プラウズだが、この日は比較的前方の位置でボール保持に参加することが多かった。

 サウサンプトンが狙っていたのはウェストハムのライン間。エルユヌシとウォード=プラウズがハーフスペースのライン間を占領することによって、ライスとソーチェクは前にプレスに出ていきにくくなる。後方を牽制させることでライスとソーチェクへのプレス参加を制限したサウサンプトンはこれによって保持を安定させる。

 プレスもサウサンプトンは出足が好調。バックスも積極的に押し上げていくことで早い段階でボールを奪い、ペースを手中に収める。特にカイル・ウォーカー=ピータースのプレッシング参加が目についた。

 ウェストハムは長いボールを駆使しながらプレスを脱出したいところだが、純正CF不在の中央では長いボールがなかなか収まらず。WGに入ったヴラシッチが途中からポスト役を買って出ていたが、ボーウェンよりは彼がトップに入った方が役割としてはうまく行ったかもしれない。ウェストハムとしてはバッチリ収まるブロヤの存在が羨ましかったはずである。

 先制点は優勢だったサウサンプトンから。コンパクトに維持できなかったウェストハムに対して、ウォーカー=ピータースの攻撃参加で押し下げると最後はエルユヌシが打ち込んで早々に先制点をあげる。

 内容もスコアも先行されたウェストハムはハーフタイムにアントニオを投入。もちろん、それができるのならばそれが一番いいに決まっているのである。投入の効果は早々に。アントニオが同点ゴールを得るのにかかった時間はわずかに4分だった。

 後半は一転してウェストハムが押し込む局面が増える展開に。ライス、ランシーニが低い位置をとりながらマスアクやソーチェクなどのトリッキーな選手たちを前方に押し上げるやり方でこじ開けようとする。

 だが、ブロヤが収まるサウサンプトンにとってはロングカウンターでも問題なし。重戦車のようにゴリゴリ進むことができるブロヤを止めるにウェストハムは思わずエリア内でファウルを犯してしまう。

 PKを決めてリードしたサウサンプトンだが、すぐにウェストハムはカウンターからベンラーマが得点してやり返す。流動的な展開の中で最終的に試合を決めたのはセットプレー。ウォード=プラウズの美しい放物線に合わせたのはベドナレク。華麗なFKは乱戦を制する決定打に。遅攻よし、速攻よし、セットプレーよしで攻めの幅を見せることができたサウサンプトンが上位を狙うウェストハムを阻む一勝を手にした。

試合結果
2021.12.26
プレミアリーグ 第19節
ウェストハム 2-3 サウサンプトン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:49′ アントニオ, 64′ ベンラーマ
SOU:8′ エルユヌシ, 61′(PK) ウォード=プラウズ, 70′ ベドナレク
主審:ケビン・フレンド

第20節 ワトフォード戦(A)

■先手を取られるも即時対策

 幸先の良いスタートを切ったのはワトフォード。トップのデニスが左右に動きながらボールを引き出しながら縦に早い攻撃を狙う。守備はCHが運動量を生かしつつ、サイドに極端にスライドしながら囲い込んでボールを一気に奪っていくスタンスでウェストハムを苦しめる。

 先制点はこの流れで生まれたもの。運動量豊富な中盤のショートカウンターを起点に、デニスがスーパーゴールをゲット。相手のDFとの間合いを図りつつ、GKが届かない位置に撃ち抜くことができるという超絶技ありゴールでワトフォードが先手をとる。

 快調なスタートを切ったワトフォードだったが、徐々に戦い方はバレていく。ウェストハムは相手をサイドに集めつつ、逆サイドに展開するという横方向への揺さぶりを仕掛けることで、ワトフォードを苦しめるように。極端にスライドを仕掛けるワトフォードの戦い方ならば、ウェストハムはサイドを変えるだけで簡単に決定機を生み出すことができる。

 押し込まれるワトフォードは防戦一方になる。ならば陣地回復をしたいところなのだが、ウェストハムのプレスがそんなにキツくないにも関わらず、長いボールをとりあえず放り捨ててしまう。これではなかなか前進は難しい。ラニエリになってもなお、ビルドアップのメカニズムの整備は難しいということだろう。

 少ないタッチでのサイドチェンジや中央での選手のターンからチャンスを生み出すウェストハム。大外からはクファルのクロスも自由に挙げられる状況に。同点ゴールを決めたのはソーチェク。ウェストハムはランシーニのサイドに流れるフリーランが見事。ワトフォードの中央をこのフリーランで広げた。ワトフォード側からするとどうせボールサイド周辺を固めるならば、中央もセットで固めたいところ。このランシーニのフリーランで簡単にこじ開けられて欲しくなかったところである。

 直後にウェストハムは追加点。サイドに流れたアントニオから手薄になった中央をベンラーマが貫いて逆転。1点目と同じくサイドに集約された中で中央がガラ空きになってしまった。

 後半早々にトランジッションからウェストハムが3点目を決めて勝負あり!かと思いきや、これは直前のプレイがOFRにてファウル認定されてゴールが取り消しになる。OFRに救われたワトフォードだったが、直後に連携ミスからピンチに。GKのバッハマンとクツカのバックパスを掻っ攫われて慌てたところでバッハマンが相手を倒してしまう。先ほど救われたOFRに今後は3点目のきっかけとなるPK判定を下されることになった。

 ワトフォードは個人でターンができるジョアン・ペドロの投入で前進のバリエーションが出てくるように。ジョアン・ペドロを起用すれば前進はしやすくなるが、スライドのプレスはしにくくなる。人選によってどこを取るか!という感じのワトフォード。

 ジョアン・ペドロの投入から撃ち合いの様相を呈する両チーム。だが、得点を決めるのは相変わらずウェストハム。仕上げをしたのは結果が欲しかったヴラシッチだった。

 先手は取られたものの冷静に巻き返したウェストハムが逆転勝ち。格の違いを見せつけての4得点で2021年を締め括った。

試合結果
2021.12.28
プレミアリーグ 第20節
ワトフォード 1-4 ウェストハム
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:4′ デニス
WHU:27′ ソーチェク, 29′ ベンラーマ, 58′(PK) ノーブル, 90+2′ ヴラシッチ
主審:ダレン・イングランド

第21節 クリスタル・パレス戦(A)

■望外の3得点でギリギリの逃げ切り

 この試合、序盤からボールを握ったのはクリスタル・パレス。もはや今季おなじみの形となってきたと言っていい3-2-5の形でビルドアップを行い、ウェストハムに対して噛み合わせをずらすチャレンジを行っている。

 後方の数的優位と幅を取る役割がはっきりしている以上、パレスはボールの循環は問題なくできるのだけども、この試合のパレスはどこか物足りなかった。その要因はインサイドに攻撃のスイッチを入れられる選手が不在だったことだろう。

 パレスの3-2-5の不確定要素となるのはIHの一角に入るギャラガーである。最終ラインに降りてのボールの引き出しやハーフスペースの突撃、そしてフィニッシュまで攻撃のあらゆる局面に関わることができるギャラガーがいなければ、システムは硬直し、ボールは外を循環するだけになってしまう。時折、ヒューズが狭いスペースで受けて光るものを見せるが、頻度の部分ではギャラガーの穴は補いきれない。

 チームとしての機能がしなかった時に頼りになるザハもこの日は不在。パレスはベンテケが体を張りながらなんとかゴリゴリしながら好機を目指すことに。

 一方のウェストハムもチャンスにはなかなか恵まれず。アントニオこそ復帰したが、中央での起点から鋭く縦に進むことができず、ボールは外循環。陣形は異なるが、大外をグリグリやりながらきっかけを手探りで見つけなければチャンスにならない状況に。

 手探りのチャンスを先にものにしたのはウェストハム。サイドからのクロスにピンポイントで抜け出したアントニオが合わせて先制点をゲットする。

 先制点の流れのまま落ち着かない展開の中で強かに追加点をとったウェストハム。見事なカウンターから一気にパレスを突き放す。前半の追加タイムにはエリア内でクロス対応をミスったパレスがハンドでPKを献上。試合の展開からするとウェストハムは望外の3得点を手にしたと言っていいだろう。そこまでワンサイドな流れではなかった。

 後半はウェストハムが受けに回る機会が増える。アタッカー陣のゴリゴリの重戦車ドリブルで対応するパレスだったが、なかなか決め手をつかめず。流れが変わったのは大外の打開役としてオリーズを指名してから。マテタを前線に追加し、アタッカーを増員したPA内に大外からクロスをひたすら放り込む。

 オリーズはエドゥアールに合わせてアシストを決めると、直接FKを叩き込む1ゴール、1アシストの大暴れ。ジョーカーとしての役割は十分に果たしたように思う。

 パレスは終盤にマテタがチャンスを迎えるなど同点にするチャンスはあったものの、ウェストハムはなんとか逃げ切り成功。撤退守備で今季これまでのような堅牢さがあまり見られなかったのは気になるが、前半の優位を生かしたウェストハムが3ポイントを守り切った。

試合結果
2022.1.1
プレミアリーグ 第21節
クリスタル・パレス 2-3 ウェストハム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
CRY:83′ エドゥアール, 90′ オリーズ
WHU:22′ アントニオ, 25′ 45+5′ ランシーニ
主審:ダレン・イングランド

第18節 ノリッジ戦(H)

■際立つボーウェンの意欲

 立ち上がりから積極的な姿勢を見せたのはウェストハムの方だった。中でも序盤からゴールへの姿勢を強く打ち出していたのはボーウェン。アントニオに引っ張られた最終ラインに空いたスペースに入り込み、ゴール前の良いポジションからシュートを放つ。

 ウェストハムはライン間への縦パスの意識が強かった。ランシーニは攻撃時には1列前のポジションを取るので、ライン間に立って縦パスを引き出す選手は非常に多かった。背負えるアントニオやポジショニングが巧みなフォルナルスなどライン間の侵入の手段は豊富。

 逆にノリッジはこのライン間の侵入の縦パスをほぼ阻害できなかった。特に気になったのは前進のキーマンであるライスを簡単にフリーにさせていたこと。ここを開けてしまうから、縦パスも通されてしまうし、ウェストハムは攻撃時に左右に自在に振ることもできてしまう。

 ノリッジの攻撃はトップの選手の収まりに全てを託すやり方。時間をもらえてもロングキックしか蹴れないバックラインからではCFに貯金を作ることができない。というわけでロングボールや強引な縦パスでトップにボールを収めようと試みる。

 しかしながら、このやり方では前進できなかったノリッジ。縦パスを受けるFW陣のトラップが流れてしまい、相手にボールを奪われてしまう。ウェストハムと同じようなライン間侵入を見せることはできなかった。

 攻撃の質で違いを見せつつあるウェストハムは右サイドからボーウェンがクロス性のシュートで先制!と思いきやオフサイドでの取り消し。意外性あふれる得点は認められなかった。だが、その後ボーウェンは本当に先制点をゲット。クファルからのクロスに合わせるというボーウェンにしてはこちらも意外性のある形で先制点を奪う。

 後半も展開は変わらない試合に。選手を入れ替えてもボールが収まらないノリッジに対して、中央でボールを受けた選手がビシバシターンを決めて前を向くことができるウェストハム。そして、めちゃめちゃボーウェンは後半も得点への意欲がすごい。抜け出してゴール、そしてシュートまで持っていく形を量産し、試合を決めるゴールに迫る。

 その仕上げが決まったのは試合終盤。フォルナルスのサイドチェンジからマスアクのクロスを合わせて試合を決める追加点をゲット。2得点に加えてゴールの枠を叩くショットまで、多くの決定機に関わったボーウェンの活躍で、最下位のノリッジをウェストハムが一捻りしてみせた。 

試合結果
2022.1.12
プレミアリーグ 第18節
ウェストハム 2-0 ノリッジ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:42′ 83′ ボーウェン
主審:シモン・フーパー

第22節 リーズ戦(H)

■会心の出来とハットトリックで上位撃破

 ここ数ヶ月はかなり苦しい内容の試合が続いていたリーズだったが、この試合のリーズはなかなかに会心の出来だったようにように思う。立ち上がりから保持は非常に安定したし、テンポも良く正確にパスを繋ぎながら敵陣に攻め込んでいく。

 人へのマークが甘い立ち上がりのウェストハムは素晴らしい立ち上がりを見せたリーズにあっさり飲み込まれてしまったように思う。まず、シンプルにボールを取り返せない。リーズは序盤のペースのまま、押し切っての先制。エイリングからの大きな展開をラフィーニャまで繋ぎ、後方から攻め上がってきたクリヒに落とし、そこから一連の流れをハリソンが決めた。非常にリーズらしいダイナミックな崩しで先制する。

 だが、リーズにアクシデント。前半のうちに2人が負傷交代。控え選手はまだ経験が浅く、特にビルドアップのボールの引き出し方がうまいフィルポの不在はリーズに影を落とすこととなった。

 立ち上がりに身構えたことが裏目に出てしまった感のあるウェストハムだが、徐々に巻き返し。マンマーク要素が強いリーズに対しては、1トップが2人を監視するCBから運びマンマークをずらすことと1on1を制することができる前線の起点を作ることが王道。

 後方から持ち運ぶディオプや前線で体を張るアントニオなど、ウェストハムの攻撃はリーズ攻略を正当に踏襲していった感じ。ただ、ラストパスのところで粗さが目立ち、なかなかチャンスに結びつけることができない。

 ただ、リーズはセットプレーの守備に怪しさがあった。CKからフリーとなったドーソンのシュートは幸運にも外れたが、直後に同じく空いたボーウェンからウェストハムは同点に追いつく。だが、リーズもセットプレーからやりかえし。エイリングの折り返しを再びハリソンが押し込んで再びリードを奪う。

 後半は対人への寄せも強化したウェストハムがさらに主導権を引き寄せる。ペースを握り、ショートカウンターから攻撃の機会を増やす。トランジッションからフォルナルスの同点弾が生まれたのは52分のことだった。

 攻守の切り替えで劣勢に立たされたリーズだったが、勢いに乗るウェストハムをひっくり返すカウンターで再び勝ち越し。前半から効いていたディオプの持ち運びからの縦パスを引き取ったヴラシッチからボールを奪うとカウンターを発動。ゴールを決めたのは三度ハリソンだった。

 以降も攻撃的な姿勢を失わない両チーム。リーズは4点目を決めたかと思ったが、クリヒのシュートはラインを越える前にオフサイドポジションのロドリゴに当たっており取り消しとなった。

 救われたウェストハムはここから攻勢に。前半途中から攻め上がりが効いていたライスが前線に厚みをもたらす。点を取るためにアタッカーが投入されると、得点力は随一なのにマルチ性があるという理由だけで、アントニオがサイドに追いやられるというウェストハムのパワープレーあるあるはこの日も発動した。なんでなんだろうこれ。

 撃ち合いとなった試合だったが、なんとか逃げ切ったリーズ。負傷者は心配だが内容を伴う上位撃破で勢いに乗れそうな勝利を挙げることができた。

試合結果
2022.1.16
プレミアリーグ 第22節
ウェストハム 2-3 リーズ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:33′ ボーウェン, 52′ フォルナルス
LEE:10′ 37′ 60′ ハリソン
主審:マイク・ディーン

第23節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)

■交代の3兄弟が主役となった夢の劇場

 4-2-2-2というラングニックのイメージに近いフォーメーションを棚上げにしてから調子が上がりつつあるマンチェスター・ユナイテッド。オフザボールを主体とした爆発力重視の4-1-4-1ではなく、この試合ではバランス重視の4-2-3-1で欧州カップ戦出場権争いのライバルとの一戦に臨むこととなった。

 形の上では4-2-3-1であるがフレッジ、ブルーノ、ロナウドは全員フリーダムなポジションニングを取りがち。彼らは左サイドに落ちる動きを見せる機会が多かった。おそらく、これは4-4-2で守るウェストハムの間のスペースにアタックをかけるためだろう。ライン間に人を配置し、少しでも間に入り込める位置でパスを受けるのがマンチェスター・ユナイテッドの狙いだった。

 だが、相手はインサイドの守備の強度が高いウェストハム。特に序盤に目立っていたのは2列目の守備。中盤の横パスをカットしてカウンターに移行したボーウェンや、内側に絞ることでSBの手助けをしたランシーニなど、ライスやソーチェクの手助けをする選手たちのおかげでマンチェスター・ユナイテッドの侵攻を防ぐ。

 ならば、ということでマクトミネイをアンカーに据えてサイド攻撃に切り替えていくマンチェスター・ユナイテッド。だが、ウェストハムはサイド攻撃を危ないエリアに入れず、外に追いやるのが非常にうまくこれもうまく防ぐ。

 ユナイテッドはゆったりした保持で、ウェストハムは早めのロングカウンターで。それぞれの手段でPA付近までは迫る両チームだったが、そこからゴールに辿り着けるまでにはもう一工夫が必要。両チームとも非常に守備が固かった。たとえばズマを出し抜いて、PA内でフリーでヘディングしたロナウドのようにゴールに向かう決定的な技術が必要な印象だった。

 後半も構図は同じ。1人の動きに合わせて、他の選手が動くことで効果的な攻め手が出せているマンチェスター・ユナイテッドは後半も優勢。彼らの動き回れる前線の電池切れが先か、あるいは徐々に間延びしていくウェストハムの守備陣の崩壊が先か?試合はマッチレースの様相を徐々に呈していくようになる。

 後半のウェストハムは前進の手段が苦しく、前半以上にボーウェンのロングカウンターに依存する形になった。比較的、チャンスを作れていたマンチェスター・ユナイテッド。だが、決め手を欠いた終盤にラングニックは大勝負に。計算がしにくいマルシャル、ラッシュフォードを入れるという割と無謀目に見えたパワープレーに舵を切った。

 多くのプレミアファンが「流石に無理では?」とか「エランガ→ラッシュフォードでPA内の侵入が減った!」と嘆いていた交代だったが、この采配は最後の最後で実を結ぶ。

 後半追加タイムのラストワンプレーでマルシャルのタメから抜け出したカバーニがファーのラッシュフォードで決勝点をゲット。交代で入った3人がボールをつなぎ、ここまでで一番仕事をできていなかったラッシュフォードが沈める。予想もしない形で実を結んだ前線総動員計画はアウェイと同様にウェストハム戦に劇的な結末をもたらした。交代した3人によって作り上げられた夢の劇場。上位争いで一歩前に出る勝ち点3を手にしたのはマンチェスター・ユナイテッドだった。

試合結果
2022.1.22
プレミアリーグ 第23節
マンチェスター・ユナイテッド 1-0 ウェストハム
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:90+3′ ラッシュフォード
主審:ジョナサン・モス

第24節 ワトフォード戦(H)

■リターンは十分なSHの用兵

 前節は攻撃面での乏しさに気を取られてきつめの記事を書いてしまったが、言われてみれば超久しぶりにクリーンシートを達成したワトフォード。プレミアの舞台では1年以上ぶりの無失点を記録し、ホジソンは第一歩を踏み出した。

 ホジソンとしてはとりあえず立て直すのは守備からという発想なのだろう。非保持ではCBには無理にプレスに行かず迎え撃つやり方を選択する。やはりというか予想通りというかスタメンで出場したズマにはボールを持つたびにブーイングである。

 ワトフォードの撤退守備でこれまで問題になっていたのは守備ができるSHがいないということである。ホジソンがたどり着いた答えは守備のできるCHをSHにコンバートするというもの。前節RSHで先発したクツカの継続起用はもちろん、左サイドにはクレバリーを置き、今節は両サイドともSHには守備色の強い用兵となった。

 ウェストハムはライスをワトフォードの2トップの間におき、SBやソーチェクを2トップの脇に下ろしながら前進を狙う。ワトフォードの2トップは最低限の守備をしつつ、ライスをケアしながら素早いサイドチェンジを阻害する。

 ワトフォードのSHの用兵の効果は出ていたと言えるだろう。SHは自陣深くまで戻りSBと挟みながら、ウェストハムのアタッカー陣を封殺。元々CHコンビは運動量が豊富で中央守備に集中することができれば問題なく中央封鎖は可能である。ウェストハムは低い位置でプレッシングに屈することはなかったが、PAに迫ることができない。アントニオがサイドに流れている時はウェストハムが前進に苦しんでいる合図なのだが、この日は早い段階でそれが見られていた。

 ワトフォードは2トップの直線的なカウンターか、SBの上がりを待つパターンで前進が可能。限定的な手段ではあるが成功率はまずまず。押し上げではクレバリーやクツカに期待するのは難しいが、デニスがこの部分では絶大だった。ライスを苦にせず、ターンを駆使して前を向くことができるため、SBを上がる機会も作れていた。SHを守備的にして2トップに任せるやり方は守備面での効果を考えればリターンは十分だろう。

 後半は立ち上がりからプレス強度を増したりなど見せ場はあったワトフォード。ウェストハムは後半もアタッカーがタイトな寄せに苦しむことになった。しかしながら一瞬中央のライン間が空いたところを逃さなかったウェストハム。反転したボーウェンが放ったミドルは跳ね返り、フォスターの届かないところからゴールにすっぽり入ってしまった。

 交代したジョアン・ペドロも1人で起点になれたり、フォスターの好守で試合の興味がつながったりなど、終盤まで追い縋ったワトフォードだが、この日もネットを揺らすことはできず。守備での向上は見られたが、2トップへの依存度が高まった攻撃面の問題は解決しきることはできなかった。

試合結果
2022.2.8
プレミアリーグ 第24節
ウェストハム 1-0 ワトフォード
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:68′ ボーウェン
主審:マーティン・アトキンソン

第25節 レスター戦(A)

■すがすがしい気持ちで終われなかったレスター

 ファウルが多く、ぶつ切りになっている展開の中で先手を取ったのはアウェイのウェストハム。意外と少ないダイレクトな裏へのパスで10分に先制点をもたらしている。

 試合が落ち着いてからの展開もウェストハムの方が優勢。レスターは低い位置からのビルドアップで難を抱えている感じ。怪我人が多く、猫の目のように最終ラインの構成が変わるシーズンになっているので、ある程度仕方ない部分はあるかもしれないが、この試合でも連携にギャップがあるせいでの低い位置からのロストからピンチを迎える場面が多かった。

 相手がウェストハムというのもレスターにとっては不運だった。サイドにおいて追い込むような守備をするのがうまく、特にSHとSBの2人で挟み込むようにホルダーにチェックをかけてボールを奪い取れるチーム。レスターの最終ラインにはある程度ボールを持たせつつ、ミスや誘導でボールを刈り取った際には一気に攻め込む。それがウェストハムの流儀。生半可なポゼッションでは跳ね返されてカウンターの餌にされてしまう。

 リードもあることだしがっちり固めてロングカウンターからの反撃を視野に入れればOK。レスターはビルドアップからじっくりと攻め込もうとするが、ロストからの不要なファウルを連発し波状攻撃の流れを作り出すことができない。

 そんな流れはふとしたプレーで変わる。前半終了間際、CKからのクレスウェルのハンドである。このPKをティーレマンスが叩き込み、試合はハーフタイムを前にタイスコアに。

 後半も劣勢が続く苦しい展開のレスターだったが、勝ち越し点を手にしたのは彼らの方。後半、攻め手として頼みの綱になっていたバーンズが左サイドからボールを持つと、タイミングを外したようなクロスにフイを突かれたウェストハムの守備陣。

 出し抜いたクロスの先に待ち受けていたのはリカルド・ペレイラ。逆サイドのSBがクロスに飛び込む形で、2点目を呼びこむ。一瞬、ピタッと止まったかのようなウェストハムの守備陣のフリーズを見逃さなかったバーンズのファインプレー。クロスというアイデアを引き出したであろうペレイラのフリーランも見事だった。

 先制点の場面のように最終ラインの強度には難があるレスター。徐々にカウンターの機会を増やすウェストハムに対して、肝を冷やしながらもなんとか守り切る場面が増える。それならばと最後の最後に投入したのはヴェスターゴーア。CBを増員し、ウェストハムの総攻撃に備える。

 だが、この備えでは勝ち点を守り切れなかったレスター。後半追加タイムにセットプレーからドーソンのゴールでウェストハムが土壇場で追いつく。

 内容的には劣勢、でも後半にはリードもゲット。だが、終盤には追いつかれてしまう。レスターのファンには感情が忙しい週末となった。結果だけ見ればウェストハムにドローというのは悪くないが、守備固めをしてもなお実らなかった逃げ切りを考えるとすがすがしい結末とはいえないのは間違いない。

試合結果
2022.2.13
プレミアリーグ 第25節
レスター 2-2 ウェストハム
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:45‘(PK) ティーレマンス, 56’ ペレイラ
WHU:10‘ ボーウェン, 90+1’ ドーソン
主審:マイケル・オリバー

第26節 ニューカッスル戦(H)

■チームの流れを反映する内容に

 トップ4を2季連続で視野に入れるウェストハムはここにきてやや失速気味。取りこぼしが目立ち、勝ちきれない試合が続いており、勝ち点を思うように積むことができていない。

 ウェストハムと状況が真逆なのがニューカッスル。毎年お馴染みの残留争いに巻き込まれつつも冬の大型補強の追い風も手伝って3連勝。降格争いのライバルの心を徐々に折りつつある。上位で停滞するチームと下位で勢いに乗るチームという好対照の一戦が26節のオープニングマッチだ。

 立ち上がりからボールを握ったのはニューカッスル。CBが開き、GKとシェルビーが菱形を形成する。ウェストハムはこのビルドアップ隊に対して、アントニオとベンラーマの2枚で対応。人数を余らせてボールを持つのを許容する形となった。

 ビルドアップでのスムーズさは段々板についてきた感のあるニューカッスル。以前はサン=マクシマンなしでは前進すら難しかったのだけども、この試合ではシェルビーを起点にボールをスムーズに前に運んでみせた。

 一方のウェストハムは早い攻撃からチャンスを見出す。いつもは困った時にサイドに流れるアントニオだが、この日は序盤からサイドバックに突っ掛ける形でチャンスメイク。その甲斐あってか、クラフト相手にもぎ取ったファウルからのFKでウェストハムは先制する。

 アントニオが最終局面で輝いたウェストハムとは対照的にニューカッスルは撤退するウェストハムのブロックに対抗する術がなかなか見つからない。この部分はサン=マクシマンが欲しいところ。可能性を感じさせるのはぬるっとしたマーフィーのドリブルくらいだった。

 その可能性からニューカッスルは同点に漕ぎ着けられる。仕掛けようとするマーフィーを追い越す形でフォローしたフレイザーがウェストハムの最終ラインを置き去りにしてクロス。PA内の競り合いは混戦になったが、最終的には根性で触ったウィロックのシュートが得点になった。

 タイスコアで迎えた後半。試合はオープンになる。どちらかと言えば、スムーズに前進ができたのはニューカッスル。シェルビーを軸に間延びするウェストハムのDF-MF間に縦パスを通し、前を向く選手から縦に速い攻撃が刺さるようになる。

 一方のウェストハムはアントニオ頼みの前進から脱却できず。彼がサイドに流れることにより、確かにチャンスは生まれているし、彼自身のアシスト能力も確かに高い。それでもチームのナンバーワンゴールゲッターがPA内から遠ざかってしまう機会がやたら多いのは気掛かりである。

 オープンになった後半はどちらも決定的な得点を決めることができず。内容的には上昇気流に乗っているニューカッスルの方がやや上という感じか。ウェストハムはまたしても足踏み。消化試合数を考えればCL出場権争いのレースは徐々に厳しい様相になってきた。

試合結果
2022.2.19
プレミアリーグ 第26節
ウェストハム 1-1 ニューカッスル
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:23′ ドーソン
NEW:45’+1 ウィロック
主審:クリス・カバナフ

第27節 ウォルバーハンプトン戦(H)

■主力投入で覆せなかった劣勢

 欧州カップ戦出場権争いのライバル同士の直接対決となった一戦。特にウルブスにとってはここで負けるとだいぶ旗色が悪くなるだけに何としても踏みとどまりたい大事な試合である。

 立ち上がりから両チームは非常に慎重な展開だった。まずはウルブスが保持でゆったりと押し込んでいく。ウェストハムは無理にプレスをかけずに撤退。左のSHのフォルナルスは守備においては対面のフーフェル基準で撤退。まずは自陣での守備を固める。

    ウェストハムがボールをもてば、ウルブスも立ち上がりこそプレスに行ったものの、徐々に撤退にシフト。攻守の切り替えが少ない立ち上がりとなる。

 やや気になったのはローブロックにおけるウルブスの守備。5バックで人をかけてはいるが、ウェストハムの大外のクレスウェルに対してのチェックが甘く、DFラインの裏にかなり危険なクロスを放り込まれていた。ウェストハムはゆっくりとした攻めの中でクロスを放り込むところまでは持っていけていたし、クロスに飛び込む人間も人数をかけることが出来ていた。左サイドではボーウェンの抜け出しなど、ウルブスのラインを揺さぶるアプローチも出来てはいた。

 速い攻撃においてもアントニオの裏抜けなど左サイドを中心にウルブスの機動力が怪しい弱点を突く攻撃を披露。ジョゼ・サのリスクを負った飛び出しにウルブスのバックスが何度か救われたこともあった。

 ウルブスは攻撃においてもポデンス、ヒメネスのベンチスタートの影響は大きく、ボールがいつものように収まらない。ファビオ・シルバが抜け出しかける場面も何回かあったが、いずれもものにはできず。ウルブズは起点作りに苦労する。終盤にはネベス、トリンコンがそれぞれ1列落ちながら反転してからボールを運ぶ試みをするなど工夫がなかったことはないが、ウェストハムがペースを握っていたといっていいだろう。

 ターンオーバー気味のスタメンだったウルブズは交代選手に期待したいところ。前半のスコアレスがどこまで期待通りだったかはわからないが、交代で前線の主力が投入されてなお、5バック気味にシフトしたウェストハムの守備ブロックを攻略する糸口を見つけることができない。

 一方のウェストハムは再三狙っていた左サイドからの攻略でついに後半に先制。アントニオがサイドに流れる頻度を見る限り、もはや彼はストライカーというよりもチャンスメーカーだと捉えられているのだろうか。2列目のアタッカー陣の躍動をこの日も助けるアシスト役としての高いスキルを見せつける。

 終盤はプレスが弱まったウェストハム。ウルブスも抵抗を見せるが、結局最後までゴールを割ることは出来ず。欧州カップ戦争いの直接対決は上位のウェストハムがCL出場権に望みをつなぐ大きな勝利を手にした。

試合結果
2022.2.27
プレミアリーグ 第27節
ウェストハム 1-0 ウォルバーハンプトン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:59′ ソーチェク
主審:アンソニー・テイラー

第28節 リバプール戦(A)

■新たな武器をもたらすルイス・ディアス

 優勝を視野に入れてCLとの二足の草鞋という難しい期間を迎えているリバプール。今節は直後にCLのインテル戦という難しい日程の中で、難敵のウェストハムと対峙する。

 そのウェストハムも欧州カップ出場権争いに向けて一つも落とせない状況で迎えるこの大一番にライス不在で臨まなければいけないという苦境を迎える。それぞれのチームにそれぞれの厳しさがある状況での上位対決となった。

 立ち上がりから両チームはハイテンポ。互いにハイラインの強襲からチャンスメイクにトライするなど、非常に忙しい展開になった。早くチャンスを迎えたのはリバプール。立ち上がり直後のアレクサンダー=アーノルドの抜け出しからのチャンスは早々に先制点の香りがするものだったといえるだろう。

 その後はリバプールのボール保持の時間が徐々に長くなっていく展開に。バックラインからゆっくりとボールを回しを行い、なかなか出てこないウェストハムのバックスを揺さぶるようなボールを回しを行う。ここで勝負できる!というポイントを見つけられることが出来た縦パス1本でスイッチを入れて手早くフィニッシュまで向かう。

 アタッキングサードでは相手を飲み込むような猛攻がリバプールのトレードマークであるが、そうした中で異質なのが冬に新加入したルイス・ディアス。球離れ的にはワンテンポここで落ちるのだけど、別にそれで攻撃が詰まっている感じがしないのが不思議。むしろ、こうした持ち味はこれまでのリバプールにないものであり、プラスアルファをもたらしているという見方が正しいだろう。

 ポルトやコロンビア代表でも見せた横ドリブルは最大の武器。相手の足を止めつつ、空いているところを探り、抜け出しや合わせたラストパスやシュートを狙う。この試合で決定的な役割を果たしたのはサイドチェンジ。カットインで相手をひきつけつつ、浮いた逆サイドに展開し、アレクサンダー=アーノルドのアシストをおぜん立てして見せた。

 先制点を得たリバプールは後半もボールを持ちながら時計の針を進めていく。なかなかボールを奪い取れないウェストハムはカウンターからワンチャンスを生み出したいところだが、負傷交代をしたボーウェンの穴はやや感じられてしまう感はあった。

リバプールは左のハーフスペースから縦にパスを入れることで前進のスイッチは後半も確保。終盤まできっちり相手を押し込むことで主導権を手放さない。

 終盤はウェストハムにも同点のチャンスがあるなど勝ち点を取りこぼす可能性はありはしたが、終始支配的にふるまったボール保持で安定した試合運びを行い、新しい武器を上乗せして先制点を奪ったリバプールが接戦を順当に制したといっていいだろう。

試合結果
2022.3.5
プレミアリーグ 第28節
リバプール 1-0 ウェストハム
アンフィールド
【得点者】
LIV:27′ マネ
主審:ジョナサン・モス

第29節 アストンビラ戦(H)

■誰かが勇気づけられることを願う

 立ち上がりは両チームとも攻守の切り替えが少ない落ち着いた展開。4-4-2にブロックを組むウェストハムと、4-3ブロックで前後分業制のアストンビラといういつも見る光景でのマッチアップとなった。

 どちらかといえば攻撃がうまくいっていたのはウェストハムの方。ライスが降りてゲームメイクを行いつつ、ビラのマークが届きにくいため、低い位置で落ち着いてボールを持てるSBを活用しながら、左サイドを中心に波状攻撃を行う。

 サイドの受け方が脆弱なビラの弱みをついた仕組みもさることながら、個人的にはやはり前節不在だったライスの存在感の大きさを感じた。組み立ても安定するし、自身もボール運ぶことができる。彼がいなくてもウェストハムはチームが壊れる印象はないが、彼がいることでチームが一段上のレベルに引き上げられるように感じる。

 対するアストンビラは主に遅攻において苦戦。ウェストハムの撤退に対して効果的な手を打つことができず。自由に動き回るコウチーニョはコンパクトなウェストハムの4-4-2ブロックの中で呼吸することができず、いつものような攻撃における重要な役割を果たすことができない。

 ビラが光明を見出したのはファストブレイク。アタッカーが少ない手数でゴールに向かう動きはさすが。手早くゴールに向かうことでウェストハムに脅威を与えた。

 スコアレスで迎えた後半はウェストハムのアクシデントで始まる。アントニオの負傷は次節以降もウェストハムの大きな悩みの種になりそうだ。

 両チームともセットプレーからチャンスを迎える後半の頭。ビラはイングスが、ウェストハムはドーソンがそれぞれ決定機を迎えるが、ネットを揺らすことができない。後半にペースを握ったのもウェストハム。執拗にSB→SB のパス交換を使ってアストンビラを横に揺さぶることで撤退的にビラのスリーセンターにスライドを強要する。

 ウェストハムが優勢に試合を進める中で試合が動いたのは70分。左サイドからのベンラーマのカットインを収めて反転シュートを決めたのは途中交代で入ったヤルモレンコ。ピッチの中で最もゴールが必要だった選手によって、ウェストハムに先制点がもたらされる。

 だらっと間延びした展開が続く後半の流れを活かしウェストハムはさらに追加点。ライスのドリブル突破からロングカウンターを発動。またしてもベンラーマからヤルモレンコを囮にラストパスを受けたフォルナルスが2点目を決める。アストンビラは90分にラムジーの追撃弾が決まるものの、反撃もここまで。試合はウェストハムが勝利。

 だが、個人的にこの試合で最も印象に残ったのは結果よりも、得点を決めた後に涙を流し、喜びというだけでは表現できない複雑な表情を見せたヤルモレンコの顔。このゴールだけでは何も解決しないけども、このゴールが苦しい状況にある誰かを勇気づけるものであることを願わずにはいられない。

試合結果
2022.3.13
プレミアリーグ 第29節
ウェストハム 2-1 アストンビラ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:70′ ヤルモレンコ, 82′ フォルナルス
AVL:90′ ラムジー
主審:ジャレット・ジレット

第30節 トッテナム戦(A)

■間に合わなかったタイムリミット

 ウェストハムのフォーメーションは3-4-2-1。いつもの4-2-3-1とは趣を変えてきた形。おそらくこれはトッテナム対策だろう。5レーンを埋めてきちんとスペースを埋めながら迎撃するために、トッテナム戦においてそうした対策寄りのフォーメーション変更を敷いてくるチームは結構ある。ウェストハムもそのチームの1つということである。

 だが、ウェストハムにとっては想定外の事態が。それはトッテナムが積極的にラインを上げるプレッシングを行ってきたこと。とりあえず撤退を優先させることが多かった彼らが前からかみ合わせる形で追い回してきたのである。

ウェストハムは優秀なチームではあるが、ビルドアップの脱出のルートが多いチームではない。このプレッシングには相当に手を焼いていた。

 そして先制点もこのプレッシングからのショートカウンター。ズマのオウンゴールを誘発したトッテナムは10分も立たないうちに先制点を奪う。

 ウェストハムの守備は噛み合わせは良好ではあるが、後方のレーンを埋めることを優先しているため、マンマークで追いかけまわす形ではない。2列目がホルダーに交互にアタックする形で守備を行っていたが、タイミングが遅く後方に穴をあけてライン間にギャップを作るだけ。トッテナムが追加点を奪うという流れは必然の物だったといっていいだろう。この日効いていたトッテナムの裏を取る動きと降りる動きの組み合わせは得点シーンでも見られたものだった。

 2点リードを奪ったトッテナムは撤退にシフト。だが、セットプレーからウェストハムが追撃弾を奪うと、後半は反撃の姿勢を見せる。

 守備に修正を加えたウェストハム。2CHがライン間をケアすべく縦の関係を作ることで降りてくるケインに積極的にチェックをかける。横幅はシャドーが絞ることで対応。大外が多少空くことを許容する代わりに、2点目の起点になった降りる動きを規制する構えを見せた。

 攻撃面では左のWBに交代で入ったフォルナルスの存在がアクセントに。左サイドから攻め込む形でウェストハムが攻勢に出る。トッテナムはロングカウンターの武器は有しているのだけど、リードしているけどしんどい時に簡単に裏に蹴ってイチかバチかで最短でゴールを狙う選択を続けることが裏目になった時間帯であった。バレても効くかもしれない大技よりも、この時間に欲しかったのは落ち着いた保持での押し返しである。

 しかし、ELで120分を戦ったウェストハムにはいい時間のリミットがあった。徐々に攻め手が止まり、敵陣に迫れないようになると、そこから先はトッテナムの最短でゴールを狙う!という作戦の収支が合うように。ウェストハムの帰陣が遅くなったこともあり、好機を増やしたトッテナムは88分にソンのこの日2点目のゴールで試合を決めて見せた。

 フォルナルスが効いている時間に点を獲れなければ、この日のウェストハムの勝ち点獲得は厳しかっただろう。前半の負債を返し切る前にタイムリミットが来てしまったウェストハム。来季の欧州カップ戦出場権争いからは大きく後退する1敗を喫してしまった。

試合結果
2022.3.20
プレミアリーグ 第30節
トッテナム 3-1 ウェストハム
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:9′ ズマ(OG), 24′ 88′ ソン
WHU:35′ ベンラーマ
主審:アンソニー・テイラー

第31節 エバートン戦(H)

■台無しにした反撃の機運

 明らかにケツに火がついた状況で終盤戦を迎えてしまったエバートン。実は終盤戦に強豪との対決を多く控えており、結構やばい!今節は欧州カップ戦争いの真っ最中のウェストハムに挑む形となった。

 お互いに最終ラインに無理にプレッシャーをかけることはしない両チームだが、よってボール保持側のチームは余裕を持って試合を進めることができた。ショートパスから組み立てを行いたいのはエバートン。バックラインから縦にパスを入れることで前進を狙う。

アンカーにホイビュアが入ったのはファン・デ・ベークの直前のアクシデントによるもの。よって中盤の攻撃がどこまで準備されていたものかはわからないが、イウォビとドゥクレのIHの2人がライン間で受ける形が多かった。

 エバートンの保持がうまくいききらなかったのは、受け手をサポートする関係があまりいなかったから。エバートンは縦パスの受け手が自ら反転を試みて前を向こうとすることが多い。もちろん、スペースがあればそのトライは問題ないのだが、ウェストハムのようなコンパクトなチームが相手だとなかなかうまくいかないのは当然。ショートパスを志向する割にはホルダーのサポートをして、味方に前を向かせるためのパスワークが十分ではなかった。エバートンが良かった保持はイウォビが安定してターンできる位置まで降りて運びつつ、リシャルリソンにシュートにつながるシチュエーションを提供できるような場面を作れる時だった。

 エバートンの保持に対してウェストハムは、WGからスイッチを入れる形でラインを上げながらプレッシング。深い位置からのロングカウンターを組み合わせる形で、奪った後は縦に早く攻め込む形で攻勢に出る。

 ウェストハムはホルダーのサポートがしっかりしており、前を向く選手を作るのがうまい。効率的にカウンターを進めるウェストハムが先制したのは32分。自陣深い位置でたまらずファウルを犯したエバートンに対して、クレスウェルがFKで牙を剥き先制点を奪い取る。

 後半、エバートンは反撃。押し込みつつ、イウォビの縦パスからエリア内に迫り、シュートシーンを作っていく。増えてきたセットプレーから早い時間に同点に追いついたエバートン。緊急出場のホルゲイトが豪快なゴールを叩き込む。

 ここからいい流れで攻めていきたかったエバートン。だが、自らそのいい流れを断ち切ってしまう。まずはイウォビ。ボールのコントロールをミスって流れたボールがそのままウェストハムのカウンターの起点に。アントニオの抜け出しから最後はボーウェンが押し込み、折角の同点弾をフイにしてしまう。

 そしてキーン。文句なしの2枚目の警告を受けてしまい、エバートンは残り30分弱を10人で過ごすことに。リードと数的優位を得たウェストハムはエバートンにボールを持たせつつカウンターで落ち着いて時計の針を進めるように。

 抵抗は見せたエバートンだが、最後までゴールを脅かすことはできず。反撃のムードに自ら蓋をしてしまい、勝ち点を奪うチャンスを手放してしまったエバートンだった。

試合結果
2022.4.3
プレミアリーグ 第31節
ウェストハム 2-1 エバートン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:32′ クレスウェル, 58′ ボーウェン
EVE:53′ ホルゲート
主審:マイケル・オリバー

第32節 ブレントフォード戦(A)

■あべこべな振る舞いで大チャンスを逸する

 前日にマンチェスター・ユナイテッドとアーセナルが盛大にやらかしてしまったおかげで、欧州カップ出場権争いのチャンスが回ってきたウェストハム。曲者のブレントフォードの本拠地を制圧するミッションを達成できれば、まだまだ来季の欧州カップ出場の目はある。

 立ち上がりからの両チームの振る舞いは普段と比べるとあべこべな感じだった。中盤にマンマークを高い位置から仕掛けてボールを奪いに行くのはウェストハム。ハーフウェーラインまでトップのプレス位置を下げながらPA前の付近で我慢するブロック守備を敷いているのがブレントフォード。

 普段はどちらかといえばプレッシングの志向が強いのがブレントフォードで、ブロックで固めてのロングカウンターを見据えることが多いのがウェストハムなのだが、この試合では逆の振る舞いをしていた。

 そんな展開の中で前進に成功していたのがブレントフォード。中盤は確かに捕まっており、エリクセンはこれまでのような働きを見せることが出来なかったが、サイド攻撃は躍動。

 気になったのは、ブレントフォードのSBが高い位置まで持ち上がる動きに対してのウェストハムの防衛策がイマイチなこと。中央はプレスで相手を捕まえることは出来たが、サイドにおいては簡単にボールを逃がすことが多かった。

 撤退以降のウェストハムは中央の守備が危うく、ライン間でのパス交換もブレントフォードに許す場面も目につく。サイドから押し下げられる形に対して、中央のプロテクトが間に合わずに後手後手になるシーンが目立つように。その上、CBはズマが負傷し強度も低下。不調にトラブルが重なってしまい、ウェストハムらしくないルーズな守備の隊形になっていた。

 保持でもらしさが出ないウェストハム。ブレントフォードが撤退を優先していたことを差し引いたとしてもカウンターが鈍重すぎる。アントニオやボーウェンをはじめ、ボールを奪ってからスイッチを入れることが出来ずになかなか敵陣に出ていけない。大外からのクロスでひたすら叩くしかブレントフォード相手に有効打を打つことは出来なかった。

 そうしている中で先手をとったのはやはりブレントフォード。ズマに代わって入ったディオプ揺らいで出来たズレを見逃さなかった。細かい崩しでウェストハムを上回り先制点を奪う。

 続く追加点も左右に大きく振る展開から。ウェストハムのバックラインの脆弱さは目についたが、中盤より前の選手たちが彼らを助けられなかったのも気がかりである。

 攻守にエネルギーを感じなかったウェストハムはブレントフォードに完敗。アーセナルとユナイテッドに続き、勝ち点の積み上げに失敗し、唯一3ポイントを積み上げたトッテナムの1人勝ちの週末となった。

試合結果
2022.4.9
プレミアリーグ 第32節
ブレントフォード 2-0 ウェストハム
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:48′ ムベウモ, 64′ トニー
主審:マーティン・アトキンソン

第33節 バーンリー戦(H)

■互いに悔いが残る引き分け

 先週のプレミアで最も大きなニュースといえば、ショーン・ダイチの解任だろう。多くのファンは仮に降格したとしてもダイチとバーンリーの旅は続くと思っていただろうが、終わりは突然やってきてしまった。バーンリーはどこに向かうのかはわからないが、ひとまずはユースコーチを引き上げて今節に臨むことになった。

 対するはウェストハム。先週に引き続き、今週も4位争いのライバルの2チームが敗れた状態での対戦。土曜日にアーセナルとトッテナムが敗れ、ウェストハムには再びチャンスが転がってくることになった。

 立ち上がりからうまくいっていたのはバーンリーの方だろう。縦パスをベグホルストに付けて、ここから前を向く選手を作り、前進する。サイドにおいてもオーバーラップの積極活用で大外からクロスを狙ってエリアに迫る。

 ウェストハムのブロックは前節までの不調を明らかに引きずっていた。ライン間は空いてしまい、縦パスはやたら入れられてしまい、バーンリーの前進を阻害することが出来なかった。

 ウェストハムは保持でもなかなか苦しんでいた。今季はやたらサイドに流れがちだったアントニオは中央から置いたままでの前進となった。これがまぁスピードに乗れない。機動力のある2列目のアタッカーにボールが渡れば、少しはスピード感は出てくる。

 前で時間が稼げれば、クレスウェルが上がってクロスを打ち込むことができる。この日もクレスウェルは左サイドからの供給がキレキレ。いかに人数を揃えたPAに彼のクロスを打ち込めるかがポイントになっていた。

 そんな中でウェストウッドが大怪我に見舞われてしまう。一刻も早い回復を祈りたいところである。直後のセットプレーからのベグホルストの先制ゴールは彼の回復を祈るためのセレブレーションがささげられた。

 得点で流れを手にしたバーンリーはハイラインの裏をコルネがつく形で攻勢を強める。前半終了間際には飛び出したコルネがファビアンスキに倒されてPKを獲得。だが、これをコルネは決めることができない。

 後半もどちらかといえばペースはバーンリー。コルネの抜け出しとベグホルストのポストという明確な前進の手段をベースに主導権を握る。

 ただ、ウェストハムも徐々にエンジンがかかってきた様子。カウンターにも鋭さが出てきて、徐々にバーンリーのバックラインを脅かすことになる。

 同点ゴールの起点になったのはアントニオ。相手を置き去りにするような圧倒的なパワーとスピードは依然として鳴りを潜めているが、得点につながるFKを得たことは最低限といった形だろうか。FKに合わせたソーチェクが同点となるゴールをゲットする。

 終盤はウェストハムが押し込みバーンリーを追い込む展開に。しかし、立ちはだかったのはポープ。最後の砦になった守護神がゴールマウスを死守し、ウェストハムに勝ち点3を許さなかった。バーンリーは失敗したPKが、ウェストハムは終盤の猛攻が実らなかった悔いが残る引き分けになった。

試合結果
2022.4.17
プレミアリーグ 第33節
ウェストハム 1-1 バーンリー
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:74‘ ソーチェク
BUR:33’ ベグホルスト
主審:ポール・ティアニー

第34節 チェルシー戦(A)

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■プリシッチに救われたジョルジーニョ

 残りのリーグの目標はFA杯の制覇と3位確保。CLの蓄積ダメージはまだ残っている感のチェルシーがこちらもリーグとELの二足の草鞋でシーズン終盤を迎えたウェストハムと相対する。

 木曜日にEL準決勝を控えるウェストハムはメンバーがターンオーバー気味。アントニオとボーウェン、ライスをベンチにおくというのは、基本的にはメンバー固定を好むモイーズにしては思い切った入れ替えといってもいいだろう。ただし、最終ラインにやたらSBの名前があるのはターンオーバーではなく、CBの面々が負傷で不在なだけである。

 というわけで籠城戦に持ち込みたいウェストハム。トップのベンラーマの優先度も中央の動線の遮断であり、チェルシーのバックラインにプレスをかけることではない。おそらく、前がかりになれば背中に潜むマウントに簡単に刺されてしまうことは承知していたのだろう。慎重な立ち上がりだった。

 チェルシーはサイドで迂回させながら攻撃を行いたいところだが、常に同数以上で受けるウェストハムに苦戦。なんとかクロスを上げるスペースを捻出しながらエリア内勝負に持ち込むが、高さで競えるルカクは不在。チェルシーの前線の得意な形でエリアに迫ることができない。可能性を一番感じたのはドリブルで中央に切り込むカンテであった。

 ウェストハムは攻撃でもローテンポ。バックラインは横幅を使いながら相手のプレスをいなしゆっくり進むフェーズとカウンターで一気に縦に進むフェーズを使い分けていた。だが、アントニオとボーウェン抜きではさすがにカウンターの威力は据え置き。そこの部分もゆっくりと保持するパターンを選ぶ頻度の多さにつながっていたといえそうである。

 後半も相手のブロック攻略に挑むチェルシー。後半になると徐々に狙い目が見えてくる。対応が徐々に遅れてきたのはマスアクのサイド。切る方向や戻るタイミングにズレが見られるようになり、チェルシーはこちらのサイドから攻め手を見つける。

 チェルシーは仕上げとして3枚替えで4バックに移行。すると、ルカクが抜け出しからPKをゲット。唯一のCBであるドーソンの退場で10人になったウェストハムは絶体絶命に。しかし、ジョルジーニョがこのPKを失敗。

 絶好のチャンスを逃したチェルシーだったが、後半追加タイムにプリシッチがクロスに合わせる決勝弾。土壇場でジョルジーニョを救い出したプリシッチが勝ち点3を掬い取り、CL出場権の地位をさらに固めることに成功した。

試合結果
2022.4.24
プレミアリーグ 第34節
チェルシー 1-0 ウェストハム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:90′ プリシッチ
主審:マイケル・オリバー

第35節 アーセナル戦(H)

■ギリギリの防衛策

 レビューはこちら。

 チェルシー、ユナイテッドと上位勢を倒して結果は出ているが、どこか不安定な試合運びが目立っているアーセナル。特に気になるのはバックラインからの組み立てが非常に不安定であること。トーマス、ティアニーという2人の主力を欠いている影響は大きく、バックラインからのパスワークをやたら引っ掛けてしまうことが多い。

 この試合ではユナイテッド戦でふくらはぎを負傷していたホワイトが欠場という更なる窮地に。さらに主力を欠くことになったアーセナルは案の定、この試合でもビルドアップに難を抱えることになる。一番の要因は後方にやたら人数をかけすぎてしまうことだろう。サイドに流れるウーデゴール、最終ラインまで下がってしまうエルネニーなどボールを後ろから受けるルートを意識しすぎるあまり、前線に残る選手を作ることができなくなってしまう。

 そのため、ウェストハムの守備ブロックを攻略する人員が手薄になったアーセナル。ここ数試合と同じく、ウェストハムの守備ブロックはライン間の管理がルーズで隙があるものだったが、アーセナルにはその隙をつくことができず。数人をターンオーバーで入れ替えたウェストハムはカウンターからチャンスを作り出すことができており、アーセナルに対してやや優位に試合を運べていた。

 それだけにセットプレーからの先制点は大きかった。本職CBを2枚揃えることができなかったり、アントニオとソーチェクを温存した影響などで空中性は明らかにアーセナルが優位。ホールディングが空中戦での優位を生かして自身のプレミアリーグ初ゴールを決めて見せた。

 ウェストハムは前半のうちに反撃。左に流れてゲームメイクしたライスから逆サイドへの展開を使い、アーセナルのPA内の守備が緩くなったところをボーウェンが仕留める。

 後半、アーセナルは前プレを強化しつつ、ウェストハムの幅を使った攻撃に対応するため、マルティネッリの守備の負荷を引き上げることに。再び、セットプレーでガブリエウが勝ち越しゴールを早い時間に決めることができなかったら、アーセナルはなかなかハイプレスを止めることができず、マルティネッリの守備の負荷はエグいことになっていたはずである。

 以降のアーセナルは撤退守備に軸足をおきながら左サイドの裏に抜けるエンケティアを軸にカウンターから反撃に専念する。ウェストハムはアントニオ、ソーチェク、ヤルモレンコとサイド攻撃と最終局面に関われる人材を続々と投入する。

 アーセナルはなんとか対応していたが、サイド攻撃の防衛に奮闘していた冨安の負傷交代でさらに自陣の守りは危ういものに。いつもだったら守備固めで投入しているエルネニーやホールディングはすでにピッチに立っているため、守りを強固にする一手を打てずに不安になったアーセナルだったが、ウェストハムの攻撃をなんとか凌ぎ連勝をキープ。直前に勝利したトッテナムを再び交わして4位を取り戻した。

試合結果
2022.5.1
プレミアリーグ 第35節
ウェストハム 1-2 アーセナル
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:45′ ボーウェン
ARS:38′ ホールディング, 54′ ガブリエウ
主審:マイク・ディーン

第36節 ノリッジ戦(A)

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■ハンドの受難に苦しむ後半

 試合の主導権を握ったのはモチベーション的にも強力な動機があり、力関係的にも上に立っているウェストハムである。ピッチを広く使いながら大外から押し上げて、深い位置まで侵入する。攻撃は完結させられなくても外を使う頻度が多いため、ノリッジの陣形をきっちり押し下げられるのは強みである。

 ウェストハムの攻撃が決定的に刺さるかどうかのポイントはライン間への侵入ができるかどうか。ライスとランシーニが縦関係になって1列前で受けようとしたり、トップ下のフォルナルスなどの2列目の選手が動きながら受けられるスペースを探したりなどで縦パスを引き出せたときは惜しいシーンまで導くことが出来ていた。

 一方のノリッジは頻度的には劣るもののゴール付近まではボールを運べる展開。これはウェストハムのタイトさに欠ける守備ブロックが原因だろう。前からプレスにはいかない上に、ライン間を締めるのも怪しい。となるとノリッジにも前進のチャンスがあるのは当然である。

 しかし、やはり先手を奪ったのは精度的にも頻度的にも上だったウェストハム。フォルナルスとランシーニのライン間の侵入から逆サイドまで展開してベンラーマが決めて先制する。

 先手を奪っても特に展開は落ち着くことはなく、相変わらず前線のプレスからのソリッドがない守備が続くウェストハム。ノリッジはボールを持つチャンスを得るが、なかなかアタッキングサードに置ける武器を見つけることができない。普段であれば決まるはずのプッキの裏抜けもどうも冴えがない。

 そうこうしている間にウェストハムは得点を重ねていく。またしてもライン間侵入から前進を許すとバックラインとクルルの連携ミスからウェストハムに追加点。クルル、あそこまで出ていって触れないのはアウトである。

 前半のうちにウェストハムは3点目。ボーウェンとランシーニの右サイドから打開し、ベンラーマが再びゴールを決める。

 意地を見せたいノリッジはハーフタイムに2枚替えして反撃を図る。その甲斐あってネットを揺らすが、これはハンドで取り消し。ミスに漬け込まれたファビアンスキは救われた気持ちだっただろう。

 さらにノリッジにはハンドの受難は続く。今度は自陣のPA内。ソーレンセンがPK献上で今度はウェストハムに得点のチャンス。これを決めてとうとう4点差になる。

 こうなればさすがにウェストハムが支配的に。ボールを持ち、展開を落ち着かせ、非保持ではブロックをコンパクトに維持する。最後にはノーブルにプレ―タイムを与え、ライスをCBに回すというアクロバティックな交代を見せる余裕もありつつ、試合は終了。マンチェスター・ユナイテッドがもたつく中で背中を追うための勝ち点3をウェストハムががっちりと手にした。

試合結果
2022.5.8
プレミアリーグ 第36節
ノリッジ 0-4 ウェストハム
キャロウ・ロード
【得点者】
WHU:12′ 45+3′ ベンラーマ, 30′ アントニオ, 65′(PK) ランシーニ
主審:ロベルト・ジョーンズ

第37節 マンチェスター・シティ戦(H)

■リカバリーできなかったPKの失敗

 後ろにはリバプールがぴったり。1つも勝ち星を落とせないプレッシャーの中、シティが今節立ち向かうのは今季も昨季に引き続き堅調なシーズンを過ごしているウェストハムである。

 試合はウェストハム×シティという組み合わせから想定できる展開となった。ボールを持つのはもちろんシティ。ウェストハムの4-5-1ブロックを彼らが攻略するという流れである。

 動きが大きかったのは左サイド。低い位置まで降りてくるベルナルドはほとんど2CHとして振る舞っていたし、内側に絞ってでもプレーできるジンチェンコと位置を入れ替えながら、ウェストハムの守備陣に的を絞らせないように動き回る。左の大外にタメが効くグリーリッシュがいたのも、ベルナルドやジンチェンコが自由に動くことができる要因の一つだ。

 まず、手始めのアプローチはエリアの外からのミドル、そして大外からのピンポイントクロス。これでこじ開けることができればとても楽ではあるが、シティにとってはまずはジャブといった形になるだろうか。

 ウェストハムは自分たちが持った時はショートパスからの打開にも意欲的ではあったが、いかんせん相手はシティ。押し込まれた状態からでは簡単に前を向けない。そのため、左にアントニオを流しながら陣地回復を図るという黄金パターンから打開を狙う。しかし、これもなかなか起点にはなり切れず、終始試合はシティペースで進んだ。

 試合が動いたのは突然だった。シティにとってはそろそろジャブから第二段階に動き出そうとしていたところだっただろうか。だが、先制点を奪ったのはウェストハム。ボーウェンの抜け出しからこの日のファーストチャンスをゴールに結びつける。

 シティにとっては試行錯誤しているうちの失点。まさしく青天の霹靂という場面である。それ以降もウェストハムも反撃が徐々に目立つように。アントニオの背負いから2列目が前を向き、ボーウェンが裏に抜けるという形を共有し、だんだんとシティを脅かしていく。

 すると45分には再び同じ形でボーウェンが抜け出して追加点。シティは大事な試合でまさかの2点ビハインドを背負うことになってしまった。

 しかし、後半シティは反撃。一方的に保持から崩しの機会を作り続けると、反撃の狼煙を上げたのはグリーリッシュのミドル。今季はそこまで目立たなかったかもしれないが、彼もまた魔法を使える選手である。これで試合は1点差に。

 両サイドから勢いに乗って攻め立てるシティはその勢いのまま同点ゴールを奪う。失点のきっかけになってしまったのはコファルの対応ミス。勢いよく自陣のゴールネットを揺らすヘディングを決めてしまった。

 完全に勢いに乗ったシティはその流れでPKを獲得。PKを与えたのはドーソン。だが、このPKをマフレズが失敗。シティはこのシーンでリードを奪うことに失敗する。

 終盤は一方的に攻め立てるシティ。サイド攻撃にこだわりながら敵陣深くからクロスを上げ続けることはできていたが、いずれもマフレズのPK失敗をカバーできる決勝点にはつながらず。ウェストハムもノーブルを本拠地ラストプレー機会を確保しつつ、最後まで勝ちに行ったがこちらも勝利とはならなかった。

 リバプールに勝ち点差を縮めるチャンスを与えてしまったシティ。だが、現時点で最終節を首位で迎えることは確実。そういう意味では最低限の結果は確保できたとするべきだろうか。

試合結果
2022.5.15
プレミアリーグ 第37節
ウェストハム 2-2 マンチェスター・シティ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:24′ 45′ ボーウェン
Man City:49′ グリーリッシュ, 69′ コファル(OG)
主審:アンソニー・テイラー

第38節 ブライトン戦(A)

■明確に打ち出されたストロングポイント

 勝てばセルハースト・パークで試合をするマンチェスター・ユナイテッド次第でEL出場権が逆転で手に入るウェストハム。最終節の相手はシーズン後半にかけて調子を上げてきているブライトンである。

 立ち上がりから圧倒的にボールを持つことが出来たのはブライトン。ウェストハムは4-4-2スタイルで守備ブロックを組んで迎撃するという彼らの普段のスタイルに近いものだった。

 だけども、このウェストハムの守り方はブライトンにとっては非常に優しいものだった。なにせ、アンカーがろくに消されていないため、左右に裏にと展開が自由なのである。

 ビスマをフリーにしてしまえば当然そうなるだろう。ブライトンが支配的になるのも、そうしたウェストハムの守備における緩さによるものである。

 アンカーに限らず、この日のウェストハムは軒並みホルダーへのプレスの意識が薄く、傍から見るとどちらが欧州カップ戦を目指して戦っているクラブかがわからないくらいであった。

 そうしたウェストハムも徐々に試合のテンポを取り戻していく流れに。キーになったのは保持。ブライトンが無理にプレスをかけることなく、まずは撤退から時間を奪っていく。

 すると、そのまま先制したのはうウェストハム。アントニオが反転してからの強烈シュートをお見舞いし、劣勢をひっくり返す先制点を手にする。

 後半頭からは試合はブライトンペース。保持での押し込みから左サイドで攻勢を強める機会が増えたブライトン。実を結んだのもその左サイドの攻撃だ。保持での押し込み、と左サイドからの崩しのパスに逆サイドから飛び込むフェルトマンはこの試合でのブライトンの準備が認められたように思えた。そして、ブライトンは左サイドからのクロスで同点に追いつくことになる。

 反撃に打って出たいウェストハムだったが、ブライトンの左サイドほど明確なストロングポイントが出来ず、突破口を見つけられない。そうこうしているうちに、ブライトンは追加点をゲット。今度はグロスの反転シュートだった。

 やはり、ブライトンの魅力はボールを受ける準備が頻繁に行われていること。オフザボールをもさぼらないし、出す方もきっちりと使う。そうすることによって次のランのエネルギーがたまっていくのであろう。

 先制こそしたものの、最後までなかなか勝利にたどり着けなかったウェストハム。セルハースト・パークからのユナイテッド敗戦の吉報を活かすことが出来ず、来季のECL行きが決まった。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
ブライトン 3-1 ウェストハム
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRI:50′ フェルトマン, 80′ グロス, 90+2′ ウェルベック
WHU:40′ アントニオ
主審:ケビン・フレンド

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