貴重なアウェイゴールがもたらす意義
2019年の決勝以来、2022年のACLのファイナルのカードは3年ぶりに浦和×ヒラルの顔合わせとなった。初戦の舞台はサウジアラビア。浦和はアウェイで1st legを迎えることになる。
序盤から一方的な保持の局面をキープしていたのはヒラルの方だった。2CHの一角であるモハメド・カンノは最終ラインに落ちることが常態化し、相方のアル=ファラジュが1枚残る中盤は実質空洞化と言っていいだろう。
いわば3-1-6のような形になったヒラルの保持。大外のレーンはSBとSHが縦に重なるように並び2人の選手が縦に配置されている状態だった。浦和のプレスは基本的には4-4-2でミドルゾーンを組む形。ヒラルの布陣に意味を見出すのであれば、浦和の守備に対して横にコンパクトに守らせない意識を持っていることだろうか。
しかしながら、こうしたインサイドとアウトサイドを巡る駆け引きに発展する様子はなし。試合はヒラルが一方的にボールを持ちながらも全くチャンスができないこう着した展開になっていた。
それだけにヒラルの先制点は多少意外なものだった。右サイドから仕掛けたミシャエウが明本と岩尾を振り切って上げたクロスは逆サイドのアッ=ドーサリーの元に。ファーで待ち受けていたアッ=ドーサリーが落ち着いて流し込みヒラルが先制する。
浦和としてはミシャエウに突破された段階ではまだ危機はそこまで重大なものだったとは言えないだろう。ショルツ、ホイブラーデン、西川にはボールをニアサイドで堰き止めるチャンスが残されていたが、これを逃してしまったことにより、両サイドに手厚く選手を置くヒラルのプランを意義のあるものにしてしまった。
取り返したい浦和は苦戦が続く。カウンター一発の陣地回復では興梠があっさりと潰されてしまう。逆に保持では小泉のパスミスからピンチを迎えるなど、あまりフィーリングは良くはない。
30分を超えたところで徐々に非保持からチャンスを作るようになる浦和。プレッシングで同サイドに誘導しながらヒラルの最終ラインから時間を奪い、焦った縦パスからインターセプト。ミドルカウンターから反撃を狙う。この時間帯はどちらのチームもトランジッション局面からのほうが得点が有望な時間帯だった。ただ、浦和は少ない保持の機会ながらもヒラルのハイプレスはいなすことができる手応えは見せており、ボールさえ奪えれば反撃の兆しは十分に見えそうな予感もあった。
ヒラルのリードで迎えた後半、試合は前半の終盤と似た構図。落ち着いた保持から時計を進めるヒラルとボールを奪い返すアクションから試合を活性化させたい浦和の関係性で試合が進んでいく。
正直、ヒラルの思い通りに時間が過ぎていったかな?という感じだったので、浦和のゴールは青天の霹靂だろう。大久保が捨て身で投げ打ったスルーパスがヒラルのバックラインのバタバタとした対応を招き、ゴールポストから跳ね返ったボールを興梠が押し込む機会を生み出すことに成功した。
浦和からすれば思いがけない同点ゴール。ここからリズムを掴んでいきたい時間帯である。だが交代で入ったカンテと安居は少し前任者のエネルギーを引き継げなかったように見えた。強度の高い試合では水準の運動量みたいなものがあると思うのだが、特にカンテはこの観点で言えば不満が残る結果に。非保持から入りたい浦和の4-4-2を押し上げる働きは難しかったように思えた。
対するヒラルも右サイドからマレガが抜け出しから決定機を作るなど、少しずつ活性化させるアクションをとるが、アッ=ドーサリーの退場などいまいち要所で流れに乗り切れず。圧倒的な保持の時間を圧倒的なチャンスの量に変換できる様子は最後までなかった。
試合は1-1のタイスコアでタイムアップ。浦和は1つのアウェイゴールを埼玉に持ち帰ることに成功した。
ひとこと
結果としては上々だろう。浦和の非保持は失点シーンを除けばそこまで悪いものではなかったし、互いにチャンスを生み出すことに苦労する組み合わせにおいて、アウェイゴールのアドバンテージがあるのも助けになる。満員の観衆が後押しする埼玉スタジアムでリベンジを果たす下準備は整ったと言えるだろう。
試合結果
2023.4.39
AFC Champions League
Final 1st leg
アル・ヒラル 1-1 浦和レッズ
キング・ファハド国際スタジアム
【得点者】
アル・ヒラル:12′ アッ=ドーサリー
浦和:53′ 興梠慎三
主審:アーメド・アル・カフ