レオンにまつわる吉報と不在の色濃い影響
欧州を舞台としたミラノ・ダービー。近年のCLの舞台ではなかなかスポットが当たらなかったミラノの街で決勝の枠をかけた大一番が行われる。
ミランのファンにとってはこの試合の前にいい知らせと悪い知らせがあった。前者はラファエル・レオンの契約延長が間近であること、そして後者はそのレオンのこの試合への出場が危ぶまれていることである。事前の情報通り、レオンはベンチ外。左サイドにはサレマーカーズが入る。
お互いにバックラインには時間が与えてもらえるスタート。バックラインからの組み立てが問われる立ち上がりになった。両チームともボールの動かし方は比較的似ていたと言えるだろう。バックラインが広く幅をとりながら、FWにボールを差し込む形で一気に前進を狙う。
序盤がこの形がうまくいくかいかないかのコントラストがはっきりしていた。うまくいったのはインテル。3バックという数的優位を使い、アウトサイドからフリーの選手を作っていく。フリーになればグラウンダーと空中戦の両方のボールを駆使しながら前進を狙っていく。
一方のミランも似たように2CBが開きながらボールを前に進めようとするが、インテルはIHが素早く高い位置まで出ていくことでこのボール運びを早い段階で撃退。ミランとインテルはどちらも使っているフォーメーションはほぼ固定だし、仕組みを試合ごとに変えるチームでもない。よって、ビルドアップへの対策は打ちやすいと思うのだが、この部分できっちり準備してきた感があったのがインテルということだろう。
狭いパスコースに誘導されてビルドアップ隊が苦しむミランに対して、インテルはジェコへのポストプレーを安定して活用。前進の機会を掴んだインテルはセットプレーから先制する。ゴール方向に体を向かせないままシュートを決めるジェコはスーパーだが、ミランとしては相手のエースに足を振らせてしまったことが悔やまれる場面となった。
インテルはトランジッションから立て続けにゴールを奪う。ディ・マルコから折り返し、ラウタロを囮として中盤から上がったムヒタリアンがトナーリを振り切った形でゴールに流し込む。WBでサイドの深さをとり、中盤の攻め上がりの出足の良さでミランの中盤を打ち破るという形はこのシーンに限らず、インテルのチャンスに多くつながっていた。
ミランは外循環からボールを前に動かしていくが、SBより先のところでポゼッションの出口が見つからずに捕まった状態になる。この状況が改善したのは20分くらいから。ミランの仕組みによる工夫というよりはインテルが2点のリードを手にしたことでラインを下げたことが大きな要因として挙げられるだろう。
敵陣でもファウルに取れるようになってきたミラン。序盤は低い位置でしかプレーできなかったSBも徐々に高い位置をとることができるようになる。
しかし、インテルもロングカウンターからチャンスを虎視眈々と狙っている状況。スローインのミスからバタついたケアーが自陣のPA内でラウタロを倒してPKを献上したかに思えたが、これはOFRで取り消し。接触はあったが軽いというOFRで覆すかどうかは非常に微妙な領域での判定となったが、ここはミランが救われる形で決着する。
後半は前半に比べるとオープンな展開。中盤でのデュエルは控えめで両チームともゴール前のシーンが増える形となる。
ミランは立ち上がりからボールを持つと、右サイドからのディアスのカットインやジルーのポストを受けたトナーリがゴールに迫っていく。
しかしながら、インテルもボール保持から反撃。バストーニのカットインからジェコが決定機を迎える。機会で言えば均等かややミランが多かったかもしれないが、このバストーニのカットインからのチャンスメイクのようにDFラインの背後を取れるようなクリティカルな決定機までに至ったのはインテルの方だった。
そして、試合のバランスを変えたのはルカク。サイドに流れながら陣地回復役を一手に引き受けることで、インテルの方が手軽に前進ができるようになった。この交代からゴールに迫ることができなかったミラン。ドリブルで敵陣までボールを運ぶことができるレオンの不在が際立つ。
終盤はミランをゴールから遠ざけることに成功したインテル。2-0のリードをきっちりキープしたまま2ndレグを迎えることに成功した。
ひとこと
初手から相手をきっちり見ていたのはインテルの方だったという印象。ミランはレオンの不在により攻撃の核を失ってしまい、自分たちの形を維持するのに苦労していた。それだけに相手をゴールから遠ざけることに注力したい1st legだったが。
試合結果
2023.5.10
UEFAチャンピオンズリーグ
Semi-final 1st leg
ミラン 0-2 インテル
サン・シーロ
【得点者】
INT:8′ ジェコ, 11′ ムヒタリアン
主審:デル・セーロ・グランデ