■2つの顔を見せた一戦をオランダが制する
アフリカ勢で一番手の登場となったセネガル。グループAの本命と目されるオランダとのいきなりの一戦となる。
両チームとも攻めには手応えを感じる立ち上がりとなった。序盤に特に深くまで攻め込むことができたのはセネガルの方。中盤を中心にマンマーク色が強い守り方をしてくるオランダに対して、セネガルはSBにボールをつけることでオランダのWBを手前に引き出してくる。
特に右のWBであるダンフリースは遅れてでも前にプレスに出てくるので、オランダの守備の陣形にはズレが生じる。セネガルの狙いはこうした際にできるオランダのWB-CBのギャップ。素早くWGにボールをつけることで広いスペースでも勝負する状況を作っていく。もっとも、左WGのサールに関してはダンフリースを前に引き出すことができなくても1on1で優位に立てていたので問題なかったけども。
基本的にオランダの守備はコンパクトに守るということに無頓着。特に中盤は広いスペースを恒常的に管理することになっていることが多かった。そのため、セネガルのWGは奥を取るだけでなく、横ドリブルから逆サイドの深い位置まで展開することも可能。カバー役となったファン・ダイクは縦に横に大忙しである。
一方のセネガルもコンパクトに守れていたとは言い難い。保持におけるベースである4-3-3から4-4-2にシフトする形で非保持の陣形を組んでいたセネガルに対して、オランダは降りていくフレンキー・デ・ヨングで対応。セネガルはフレンキーを全くケアできなかったため、自由自在にボールを運ぶことができる。
「列に落ちることは後ろに重くなるからとにかく悪」という派閥をたまに見かけるけど、この日のフレンキーほどフリーで無限に運べるならば全く列落ちは問題ない。ボールを持つフレンキーはマリオカートのスター状態のように無敵状態で敵陣に進撃していった。セネガルはそもそも相手が3バックならバックラインに同数で4-3-3の方が守りやすいのでは?という疑念を感じた。少なくともわざわざ4-4-2にする意義はあまり感じなかった。
オランダの攻め手はフレンキーから大きく左に展開し、ベルフワインとブリントのコンビネーションでの打開する形と、トランジッションにおいて猪突猛進する右WBのダンフリース。しかしながら、アタッキングサードにおける仕上げの部分で存在感を発揮できる選手が不在で、中盤にスペースがある割には決定機に迫る場面を作れず。
もっとも、これはセネガルにも言えること。こちらは強引なシュートからオランダのDF陣にブロックに遭いまくるという現象の繰り返しとなった。
後半、プランに変化をつけたのはセネガル。守備を4-5-1に変更し、中盤のスペースを制限。前半のように慌ただしい局面を避けて、フレンキー無双を防ぐことから始まる立ち上がりとなった。
ボールをキャリーしていたフレンキーとダンフリースは前半は非常にふんだんにスペースを生かしまくっていたので、セネガルのスペースを消してくるプランに対してオランダは勢いを失うことになった。それでもファン・ダイクが延々と競り勝つことができるセットプレーでチャンスを作ることはできていた。
試合のテンポを落とすことに成功したセネガル。ただ、落ち着いてスペースがなくなる展開がセネガルが攻める局面において助かるわけではない。セネガルはショートパスからのビルドアップができるわけではないので、ロングカウンター一辺倒に。中盤でスペースができる状態が減った分、セネガルの攻めの選択肢もまた減ることになったという感じである。
後半に生まれたジリジリとした展開を一気に吹き飛ばしたのはオランダ。エリアの外からアーリー気味にクロスを上げたフレンキーのボールに合わせたのはガクポ。セネガルのDFラインの逆を取る一撃で、ついに先制点を手にすることに。
アタッカーを入れ替えたことでフレッシュになったオランダに比べて、セネガルは時間経過とともに苦しい状況に。リードを得たオランダは落ち着いて試合を支配すると、後半追加タイムにクラーセンが2点目をゲットし試合を決める。
前半は乱戦、後半は均衡という2つの顔を見せた試合を制したのはオランダ。地力の差を見せて苦戦しながらも白星スタートを飾ることに成功した。
試合結果
2022.11.21
FIFA World Cup QATAR 2022
Group A 第1節
セネガル 0-2 オランダ
アル・トゥマーマ・スタジアム
【得点者】
NED:84′ ガクポ, 90+9′ クラーセン
主審:ウィルトン・サンパイオ