MENU
カテゴリー

「合わないマンツーの収支」~2022.12.6 FIFA World Cup 2022 Round 16 ポルトガル×スイス マッチレビュー~

■ジョアン・フェリックスがマンマーク破りを主導

 2連勝でグループステージを突破した3チームのうちの1つであるポルトガル。対するはセルビアとの直接対決を制し、16強の最後の椅子に滑り込んだスイスである。

 まず、メンバーの並びで変化をつけてきたのはポルトガル。ロナウドのベンチスタートにより、トップに入ったゴンサロ・ラモスはこの試合における重要なキーマンとなる予感が試合の前からしていた人は多いだろう。

 スイスが名前を連ねるメンバーこそこれまでの流れに沿った面々だったが、目新しさを打ち出したのはキックオフ後の実際の並びである。左のWGのバルガスが自陣の深い位置までが下がりながら5バックを形成したのがスイスのこれまでの試合との相違点だ。

 おそらく、これは対面のダロトが高い位置をとったことによるものだろう。この日のスイスはグループステージに比べるとマンツー色が圧倒的に強かった。前からのプレスの意欲も高くこれまでとは違う振る舞いを見せていると言える。特に上述の通り、サイドはついていく意識が強く、バルガスは迷う事なく位置を下げていた。中央は自陣においてはラインを下げながらバックラインを余らせる形を作っており、サイドと比べると慎重な対応だったと言えるだろう。

 スイスのプランがマンツー色が強いとなると、ラモスには余計にプレッシャーがかかる。マンツーの最も素直な解決策は広いスペースを享受することができる前線が違いを作り出す事だからである。

 ラモスにとって幸運だったのはポルトガルには彼以外の前線のメンバーに移動しながらフリーで受けることを探れるメンバーがいるからである。左のシャドーのジョアン・フェリックスはフリーで受けることに関してはこの日の主役だった。スイスの陣形の中で最も間が空きやすいシャキリとフェルナンデスの間に落ちながら反転して前をむく。

 この動きに呼応したのがベルナルドとブルーノ。ベルナルドは同サイドの裏に流れる形でスイスの最終ラインを引っ張っていたし、ブルーノは左サイドに流れながらフェリックスのサポートをしていた。

 スイスのマンツーはフェリックスの後方での同数対応でポルトガルに優位を取られてしまっている時点で成り立たなくなっていた。こうしてラモスへのチャンスは無事に供給されることになる。とはいえ、ラモス自身も動き回りながら起点になる作業を怠る事はなくあらゆるところでボールを受けていた。

 先制点は注目が集まっていたゴンサロ・ラモス。左サイドの角度のないところから撃ち抜いて世界を驚かせて見せる。ニア天井一択を注文通り決めるスキルで一気に「やれんのか?」という疑問を払拭して見せる。

 スイスはポルトガルの前線の動きに対してだいぶ後手を踏んでしまった。シェアはもしかするとコンディションが悪かった可能性があるが、ポルトガルの前線に好き放題やられてしまい途中交代してしまった。交代が負傷かタクティカルなのかは判断がつきにくかった部分である。

 ボール保持もスイスは単調だった。エンボロの馬力一択に前進の手段が集約されており、ポルトガルからすると手を焼きながらも対応は十分に可能な範囲だったと言えるだろう。ボール保持の局面も相まって、徐々にスイスは前に出ていけなくなっていく。

 押し込む時間が続くポルトガルはセットプレーから追加点。ぺぺがアカンジに競り勝ちさらにリードを広げて前半を終える。

 後半も流れは変わらず。波に乗れないシェアを交代し、前に出ていくスイスだが、マンツーの収支が合わない状況は相変わらず。後半に代わって入ったキュマルトが警告を受けたことからもわかるように、スイスの苦しみは引き続き続いていた。立ち上がりのスイスのプレスをひっくり返してあっさりと前進するポルトガル。前線のフェリックスを軸にカウンターで自由を謳歌しまくっている状態である。

 そして後半早々の追加点でポルトガルはさらにリードを広げる。決めたのはまたしてもラモス。ニアに入り込み、ダロトの抜ききらないクロスに合わせて試合を決める3点目を手にする。

 スイスは4-4-2にシステムを変更し、縦に速い方向性をそのままに逆襲を図る。セットプレーから追撃弾を決めたのはアカンジ。ニアでフリックしたのはスイスの選手ではなくラモス。またしても点に絡むラモスであった。

 しかし、ハットトリックを決めたのだから誰もこの日のラモスに文句を言う人はいないだろう。心が折れてしまったスイスにトータルでポルトガルは6得点。均衡の予想もあった中でポルトガルが立ち上がりからスイスを圧倒。完勝でベスト8最後の椅子を手にした。

あとがき

 柔軟な攻撃陣の最後を担えるか?がポルトガルのCFの役割。ロナウドも十分この役割を果たせるのでは?と個人的には思うのだけども、この日のゴメスならば優先されるのは理解できる。あとはこのパフォーマンスが継続できるかどうかである。

 攻撃陣はフェリックスをはじめとして好調を維持。ゲレーロのゴールの際のカウンターのような直線的な攻撃と撹乱系の攻撃を両方出せるのがポルトガルの強みであるので、縦に速い攻撃でジョーカーになりうるレオンが調子をあげることができればさらに充実のスカッドになる。バックラインの層には他の優勝候補と比べると薄いのは気がかりだ。

 スイスはマンツーの収支が合わなかったのが全て。プレスに関してはそうした戦法もわからなくはないが、前進に関してはもう少しスマートに持ち直すことをやってもよかったはず。ポルトガルはそこまで前プレの意識は強くなかったので、自分たちのターンをもう少し大事にすることはできたはず。ここまで絶好調だった2列目の存在感が皆無だったのは、グループステージのスイスの姿を知るものとしては少し寂しいものである。日本と同じくまたしても悲願のベスト8には届かなかったスイス。スイスにもベスト8の壁って言葉はあるんだろうか。

試合結果
2022.12.6
FIFA World Cup QATAR 2022
Round 16
ポルトガル 6-1 スイス
ルサイル・スタジアム
【得点者】
POR:17′ 51′ 67′ ラモス, 33′ ペペ, 55′ ゲレーロ, 90+2′ レオン
SWI:58′ アカンジ
主審:セサル・ラモス

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次