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「Catch up Premier League」~Match week 14~ 2022.10.29-10.30

目次

①レスター【17位】×マンチェスター・シティ【2位】

■クローズは理不尽ではなく省エネで

 この試合のポイントはなんと言ってもハーランド不在のシティがどのように攻めのルートを確立するかである。トップにアルバレスを置く形でとりあえずそのままリプレイスした形だが、悪い流れの時間がありながらもデ・ブライネ-ハーランドのホットラインでねじ伏せてきたシティ。このラインが使えなくなった今節のアプローチは注目される。

 レスターのスタンスは明確だ。5-4-1のブロックをびっしりしいて完全なるローラインでの迎撃体制。自陣に引きこもりながらもロングカウンターで一発を狙う形である。

 よって、シティは問題なくボールを持つことができた。初めのうちはロドリの隣にSBであるストーンズを置く機会もあったが、特にレスターがプレスはかけてこないので、徐々にサイドからシンプルにSBタスクをこなすようになった。

 シティは右の大外にベルナルド、左の大外にカンセロを使う形で攻撃に出る。彼らによってロドリが高い位置を取ることができれば、シティの攻撃には厚みが出る。クロスをあげる際の狙いとしては基本的にはファーのクロス。このクロスをさらに折り返す形が決まれば万々歳!という感じなのだが、折り返しにはレスターのバックラインが投げ出してなんとか対応という感じ。

 大外だけでは難しいと判断したシティは前線が左右のハーフスペースから抜け出す形でさらにチャンスメイクを行う。アルバレスを筆頭として前線がレスターのバックラインと駆け引きする形で裏を狙っていくが、なかなかこちらも得点にはつながらない。

 一方のレスターはロングカウンターの発動に苦労。サイドを手厚めに前進を狙うが、シティのハイプレスの網に引っかかってしまい、自陣から脱出すらできなかった。

 それでもファエスのキャリーなどからティーレマンスがフリーになるケースが試合が進むにつれ徐々に出てくるように。そこから先はほぼバーンズ一辺倒。レスターのアタッキングサードは彼がPAへの仕掛けからフィニッシュまで一手に引き受ける形になっていた。ぶっちゃけ、すんごい大変そうだった。

 それでもクロスの跳ね返しに徐々に慣れてきたレスターはスコアレスをハーフタイムまでキープ。なんとか凌ぎ切って後半を迎える。

 その後半は早々にシティが沈黙を破る。立ち上がりから即座にボール奪取でレスターに襲い掛かり、後半も主導権を握る。交代で入ったメンディはやや面食らった様子だった。すると、シティはファウルで得たFKをデ・ブライネが叩き込んで先制。ようやくリードを奪い取る。

 以降はシティの無限ポゼッション。レスターは時折、トリックCKからティーレマンスのミドル強襲など一発を感じさせるプレーはあったが、そうしたプレーを能動的に発動させるためにボールを奪い返す機会が限定的だった。

 埒が明かないと悟ったレスターはダカとイヘアナチョを入れて4バックに移行する。この変更は効果があったと言っていいだろう。シティがフォーデンを入れて縦に早い攻撃を意識したこともあり、レスターは徐々にボールを持った攻撃ができるように。

 右サイドでターゲットになったイヘアナチョからチャンスメイクをするレスター。シュート10本という数字は前半のレスターからすれば大きな進歩と言えるだろう。しかしながら、最後までエデルソンに冷や汗をかかせることはできず。後半は省エネモードだったシティが逃げ切りに成功した。

試合結果
2022.10.29
プレミアリーグ 第14節
レスター 0-1 マンチェスター・シティ
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
Man City:49′ デ・ブライネ
主審:ロベルト・ジョーンズ

②ボーンマス【14位】×トッテナム【3位】

■押し込む機会を得たパスからセットプレーでの逆転劇

 パーカー解任以降継続していた「ビック6には敗れるけど、それ以外には負けない」という神話が崩壊しつつあるボーンマス。一方のトッテナムもリーグ戦はマンチェスター・ユナイテッド、ニューカッスルに連敗。上位2チームとは少し差を広げられている。苦しい台所事情ではあるものの、絶対に負けられない局面である。

 積極的な立ち上がりを見せたのはボーンマス。4-4-2でとりあえず相手に持たせるというやり方が彼らの普段着であるが、この日は前線を3トップ気味にして、積極的に相手を追いかけ回すアクションを見せていた。

 トッテナムのバックラインはボールを動かしながら対応していたが、前進するのに苦労。基本的にはCFのソンかケインにボールを当てて、落としを広いながら前進するというスタンス。右のハーフスペースからエリアに入り込むスキップなどいい動きがなかったわけではなかったけども、なかなかこの動きをチャンスに結びつけられていたわけではない。

 同じ、とりあえずボールを動かすプランにおいて優位だったのはボーンマスの方。バックラインのボール回しの安定感もさることながら、特に際立っていたのはトッテナムのバックラインとのマッチアップである。ビリング、ムーア、ソランケの横移動が多いボーンマスのDF陣にダイアーとロメロが不在のトッテナムはかなり苦戦。

 特にエースのソランケにはかなり手を焼いていた様子。サイドや裏に流れてフリーになる動きはもちろん、相手を背負っての起点作りでラングレを圧倒する。先制点もこのマッチアップの優位から。ソランケのポストからWBのタヴァニアが抜け出し、サイドを駆け上がってからラストパスを受けたフリーのムーアが決め切った。前進が安定しているボーンマスは展開に沿った先制点を挙げたと言えるだろう。

 リードを得たボーンマスは後半のプレスはやや慎重に。それでもリズムを掴むことができないトッテナム。ボールを取り返されてしまうと、守備で後手に回るという状況は前半から変わっていない。苦戦する彼らを尻目にボーンマスは右サイドをソランケを軸に攻略し追加点。ファーサイドでクロスに飛び込んだのはまたしてもムーアである。

 2点を奪われ苦しくなったトッテナム。そんな流れを変えたのは一本のパス。ホイビュアから斜めに走り込むセセニョンに通したスルーパスでトッテナムは追撃弾を奪う。

 これ以降はトッテナムがボーンマスを押し込み続けるワンサイドゲームに変貌。ボーンマスは右のWBを守備的なフレデリックスに代えたり、ソランケに代えてスティーヴンスを投入したりなど、これ以降攻撃的な手当てをすることはほとんどなかった。

 長時間、攻め立て続けることができていたトッテナム。決め手になったのはセットプレーだ。73分にデイビスのゴールで追いつくと、終盤追加タイムにはベンタンクールが勝負を決める一撃をお見舞い。2点をひっくり返す劇的な逆転劇でトッテナムは連敗阻止に成功した。

試合結果
2022.10.29
プレミアリーグ 第14節
ボーンマス 2−3 トッテナム
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:22′ 49′ ムーア
TOT:57′ セセニョン, 73′ デイビス, 90+2′ ベンタンクール
主審:アンソニー・テイラー

③ブレントフォード【11位】×ウォルバーハンプトン【19位】

■存在感があればいいというものではない

 大きな展開を受けたヘンリーがセメドに倒されてイエローカード。立ち上がりはブレントフォードの勢いのいい攻撃で開幕した試合である。

 この試合のウルブスは珍しく積極的なプレスを行う姿勢が目立っていた。立ち上がりは面食らった感があったブレントフォードは引っ掛けてショートカウンターを受ける場面もあった。

 しかし、基本的には大きな展開とサイド攻撃という意味ではブレントフォードの方が優勢だったと言っていいだろう。先に挙げた立ち上がりの場面のように左サイドはヘンリー、ダシルバ、ウィサのトライアングルがポジションを交換しながら攻撃。特にヘンリーが上がる時間を稼げた時は厚みのある攻撃を行うことができる。

 右サイドは対照的に単独のデュエルで切り拓く。ムベウモへのロングボールからグリグリと押し下げる形でブエノとのタイマンを制して押し下げるというシンプルな形できっかけを作る。

 きっかけを作ることができると徐々にウルブスのプレスの意欲は減退。それに対して、アイエルがキャリーしたりなどよりバリエーションをつけながらの前進ができるようになる。

 ウルブスの前進はアダマ・トラオレに渡すロングカウンターが軸。右サイドから馬力があるWGに打開してもらいながら前進する形である。しかしながら、アタッキングサードにおける決め手にはならず、この形は有効打とまではいかなかった感がある。トラオレ自身のパフォーマンスは少しいつもよりも精彩を欠いていたように映った。

 WGの裏に送り込んだSBにボールを送るなど、1つずつ着実な形で前進する方が好ましいように見えたウルブスだったが、ブレントフォードのプレスバックが早く、相手がサイド重心を下げていたことからなかなかズレを生み出すことができない。加えて、リトリートが完了したブレントフォードに対してはウルブスはPA内にボールを送れる形を見出すことができずに苦戦。トランジッションでも要所でファウルを犯して、警告を受けるなど後手を踏む。アタッキングサードにおいて攻略の兆しが見えたのはウルブスよりはブレントフォードと言えるだろう。

 後半もポゼッションから安定して敵陣に運び続けたのはブレントフォード。そんな彼らはセットプレーから先制。CKからベン・ミーのゴールで優勢をリードに結びつけることに成功する。

 しかしながら、ウルブスはすぐに反撃。2分後にはネベスのミドルで追いつく。右サイドから時間を作り、マイナス方向でボールを受けたネベスが決めるという、前半にはなかなか作れなかった理想的な攻撃の形だった。

 この同点劇で少し慌てたブレントフォード。ミーが軽率なロストをしてしまうなどウルブスが優位に試合を進めていく。ブレントフォードが保持で持ち直すのに少し時間がかかった。

 終了間際にはトニーに決定機があったが、この場面でエースは存在感を見せることができず。それでも終了間際にVARで退場という形で存在感を見せた敵軍のエースよりはマシ。ジエゴ・コスタは乱戦気味になった後半の最終盤で蛮行に。一発退場になってしまった。

 ボールの前進はブレントフォードの方がやや安定していたように思えたが、決定機の創出という意味ではなかなか決め手が生まれなかった両チーム。妥当と言えるドローで試合は幕を閉じた。

試合結果
2022.10.29
プレミアリーグ 第14節
ブレントフォード 1-1 ウォルバーハンプトン
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:50′ ミー
WOL:52′ ネベス
主審:ロベルト・マドレー

④ブライトン【9位】×チェルシー【5位】

■ベタな脚本を演じ上げての初勝利

 立ち上がりから攻め込んだのはブライトン。チェルシーのプレッシングの圧力を跳ね返すと、いきなりゴールを強襲するシーンを作り続ける。体を張り続けて決定的なゴールを2つ防いだチアゴ・シウバは神々しかったが、そのゴールチャンスを生み出すきっかけになったビルドアップミスに彼が絡んでいたのも事実である。

 ビルドアップによって引っ掛ける形を繰り返し、序盤から立て続けに窮地に陥るチェルシー。仏の顔は二度まで。3回目のビルドアップのミスからショートカウンターを発動したブライトン。左サイドからわずかな隙間を見つけた三笘がトロサールにラストパスを出し、これを決めて先制する。

 チェルシーはビルドアップのバタバタがなかなかやまない。失点してもなお、枚数の余ったバックラインは捕まった中盤の選手に強引にパスをつけることでロストを誘発。押し込まれる展開が続く。するとブライトンはセットプレーから追加点をゲット。CKからロフタス=チークのオウンゴールを招き、早い時間にチェルシーを引き離す。

 早くも2点リードされたチェルシーはここから強気のプレスでリカバリーを図る。狭い場所に閉じ込めることができた場合はハイプレスは割と成功。ショートカウンターからチェルシーがゴールに迫る機会もあった。ブライトンはドリブラーへの中盤の対応がやや軽いところがあったので、チェルシーは中央に切り込んでくるようなドリブルからチャンスメイクができていた印象だ。

 それでもバックラインが横に揺さぶることができればブライトンはあっさりとチェルシーのプレスを脱出する。右サイドはマーチ、左サイドはエストゥピニャンが大外から裏をとる動きを繰り返しており、きっちりとチェルシーを押し返す。

 特に、左サイドの動きは秀逸。インサイドに絞る三笘とトロサールを軸としたパス交換を行って時間を作ったところでチャロバーの背後をとるように斜めに走るエストゥピニャンにラストパス(出し手はカイセドが多かった)を送ることで再現性のある揺さぶりをチェルシーにかけていた。3点目のオウンゴールを誘発した形はまさにこの再現性がある動きが呼んだものと言えるだろう。

 後半、チェルシーは4-3-3にフォーメーションを変更。同数でサイドを受けているところから1人フリーの選手を作り、早い時間でハフェルツが追撃弾をあげることに成功する。

 ブライトンは失点を受けて撤退頻度を増やし、試合を落ち着けながらコントロールするように。それでもコバチッチの運びなどは効いていたが、それ以降の仕上げの部分では設計図が不明瞭で戸惑っている感じがした。攻撃的な選手は入ってはいるが、チーム全体としてトップギアを入れられている時間は限定的なものだった。

 むしろ、終盤もカウンターに切り替えたブライトンの方が得点のチャンスはあったかもしれない。交代までは三笘が、以降はエンシソを軸に馬力のあるカウンターからゴールに迫っていく。

 決定的だったブライトンの4点目は要であるコバチッチのパスミスから。またしてもプレスを引っ掛かっての失点だが、後方ユニットで最も信頼がおける選手にそうしたミスが出てしまうのはなかなか重たい。

 デ・ゼルビ政権の初勝利は前任者を引き抜いたチェルシー相手。プレミアリーグが書く脚本としてはベタな部類に入るストーリーだが、ブライトンは前後半をきっちりやり遂げて作品を仕上げてみせた。

試合結果
2022.10.29
プレミアリーグ 第14節
ブライトン 4-1 チェルシー
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:5′ トロサール, 14′ ロフタス=チーク(OG), 42′ チャロバー(OG), 90+2‘ グロス
CHE:48′ ハフェルツ
主審:アンディ・マドレー

⑤クリスタル・パレス【13位】×サウサンプトン【16位】

■足りなかった最後の一押し

 立ち上がり、いきなりチャンスを得たのはサウサンプトン。セットプレーから際どいシーンを迎える。一方のクリスタル・パレスもトランジッションからFKのチャンスを得るなどセットプレーでプレーが止まることが多い序盤戦となった。

 試合は中盤で激しい応酬が繰り広げられており、なかなか落ち着かない展開。どちらのものでもない状況でプレーが進んでいく。そうした中でより優位に試合を運んだのはホームのパレスの方だ。プレスの脱出になるロングボールと即時奪回がセットになっており、ボールを失ってからプレスまでの繋ぎ目が非常にシームレスだった。

 局地戦ではエゼ、シュラップなどが非常に頼りになることを見せる。相手を背負いながらの反転なども難なくこなす強さを示していた。

 一方のサウサンプトンはパレスの積極的な前がかりのプレスに対して苦し紛れに前線にボールを蹴っ飛ばすことが多かった。こちらもプレスの姿勢自体は積極的ではあるものの、交わされてしまうせいでよりピンチが広がってしまうシーンもしばしば。クリスタル・パレスに比べると、前線の起点作りに苦労している感も否めない。

 左ハーフスペースから積極的にミドルを狙って行ったエゼを中心にイケイケなパレスのアタッカー陣はサウサンプトンのゴールに迫っていく。バックラインのフィードから一気に前進してエドゥアールのゴールで先制点か!と思われた場面はオリーズがわずかにオフサイドで取り消しに。

 だが、直後にパレスはザハのプレスからショートカウンターを発動。ミッチェルのオーバーラップまでボールを繋ぐと、折り返しに今度こそエドゥアールが正真正銘のゴールをゲット。パレスが先制する。

 リードされたサウサンプトンは後半に悪くない立ち上がり。セットプレーからあわやという場面も作り出しており、前半よりもペースはフラットになったと言えるだろう。パレスはグアイタが太ももを気にするシーンがあるなど、展開以外にも気がかりな部分が多い状況だった。

 後半の序盤は機能していたパレスの高い位置からのプレッシングも時間の経過とともに徐々に機能不全に。逆に、前半はプレスからチャンスを作るのに苦しんでいたサウサンプトンの方がハイプレスを機能させる場面も。ミッチェルをエルユヌシが引っ掛けた場面は得点に繋がっていてもおかしくなかった。

 試合が終わりに差し掛かると、サウサンプトンが攻勢、パレスが守勢という状況を両チームが受け入れた采配が見られるように。パレスは中盤を増やして、後ろのフィルターを厳重にしていたし、サウサンプトンはSBやアタッカーをより攻撃的な仕様に強化する。

 なんとか追いつきたかったサウサンプトンだが、最後の一押しの効果は限定的。後半追加タイムもパレスを追い詰めたと言えるほど押し込むシーンが作れたとはいえず。終盤は粘る展開も強いられたパレスだったが、なんとか逃げ切りに成功した。

試合結果
2022.10.29
プレミアリーグ 第14節
クリスタル・パレス 1-0 サウサンプトン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:38′ エドゥアール
主審:マイケル・サリスバリー

⑥ニューカッスル【4位】×アストンビラ【15位】

■2点目を皮切りに一気に畳み掛けてゴールショーに

 立ち上がり、ボールを持つことができたのはニューカッスル。アストンビラがトップのプレスをイングス1枚にしていたため、余っているバックラインからニューカッスルはボールを運ぶことができた。大きな展開でビラの中盤を突破し、安定した前進した披露。ニューカッスルのCBの展開力はこの日も健在だ。

 敵陣にボールを運んだ後、ロストしてしまった流れで見せる即時奪回もなかなかの迫力。特に、すっかりレギュラーに定着したロングスタッフはボール奪取から右サイドに展開してのショートカウンターで威力を発揮していた。ニューカッスルの右サイドはこの日もイケイケ。アルミロン、トリッピアーのコンビは凶悪で、アタッキングサードでの攻撃の大半を担っていた。

 ニューカッスルはアストンビラより積極的なプレスを敢行。WGの外切りプレスやSBの高い位置のプレッシングからなるべく敵陣に近いところでボールを奪う狙いを見せていた。

 これに対してアストンビラはイングスにロングボールをぶち当てての前進を狙っていく。2列目はロングボールを追いかけるようにプッシュアップ。セカンドボールを拾いに出ていく。サイド攻撃で狙い目にしたのは左側。ベイリーが大外を回すように裏を取る形からPA内に入っていく。

 どちらのチームも前進の手段は持っていたが、安定してボールを持つことができたのはニューカッスル。アストンビラは時間の経過とともに、中盤を超えることができず、一方的にニューカッスルに押し込まれる展開になっていく。

 すると、前半終了間際に押し込んでいたニューカッスルにご褒美。ヤングが遠目で見ても明らかなハンドを犯し、ニューカッスルにPKが与えられる。これをウィルソンが決めて先制する。

 後半もニューカッスルの勢いが止まらない。立ち上がりからアストンビラがポゼッションから主導権を握り返すトライを行ったが、ニューカッスルがすぐに反撃。セットプレーからウィルソンが2得点目を決める。

 さらに畳み掛けるようにロングカウンターを仕掛けるニューカッスル。英スク覚悟で前に出てきたアストンビラをひっくり返すようにギマランイス、ウィロック、ウィルソン、ジョエリントンと繋いで3点目をゲット。

 仕上げとなったのは今日も絶好調が止まらないアルミロン。前節に引き続き芸術的なゴールを決めてゴールショーのトリを飾って見せる。

 4点を奪われてしまったアストンビラ。途中で中盤のフィルターを強化する変更などをテストしたものの、なかなか主導権を取り戻すことができずに苦戦。最後までニューカッスルの壁にぶち当たったアストンビラにとっては苦い完敗となってしまった。

試合結果
2022.10.29
プレミアリーグ 第14節
ニューカッスル 4-0 アストンビラ
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:45+6′(PK) 56′ ウィルソン, 59′ ジョエリントン, 67′ アルミロン
主審:ポール・ティアニー

⑦フラム【7位】×エバートン【12位】

■チャンスはあるが決定機未満

 立ち上がりからどちらのチームもボールを大事にしていた。特に横幅を使いながらのビルドアップを重視していたのはフラム。前節のエバートンはイウォビとキャルバート=ルーウィンは同サイドに制限するプレスをすることで、ショートカウンターから得点を挙げていたので、まずは慎重にその形でのロストを回避することを意識していた。

 フラムの前進のルートは左サイドの2列目。ウィリアンとケバノがサイドを変えながら顔を出してやや降りたところに顔を出すことが多かった。ここからエリア内に迫っていく形。精度も含め悪くはないのだが、なかなかゴールを奪いにいく決め手のある崩しをすることができない。

 より苦しかったのはエバートンの方。中盤のプレスを外すことができず、前線のキャルバート=ルーウィンに放り込むことを強いられている印象。なかなか前に出ていくことができない。ゲイェのロストで波に乗れないのもここ数試合のおなじみの光景となっている。

 それでも時間が経つにつれてエバートンは徐々に巻き返していく。ミドルプレスでフラムを脅かしたり、長いボールに合わせて上がっていくマイコレンコからクロスを上げたりなど、敵陣でのプレータイムがだんだんと増えていくように。

 フラムも悪い崩しではなかったものの、序盤ほどの優勢を維持できず。それでも、ミトロビッチのファウルが退場にならなかったりとなんとか運は残っている様子。押し込まれての迎撃にもなんとか耐え抜き、前半をスコアレスで折り返すことに成功する。

 後半は立ち上がりこそ勢いよく入った両チームだったが、エバートンが保持で相手を落ち着けるとそこからは再び渋い展開に。前半の終盤は相手に主導権を渡した格好になったフラムが後半は巻き返したのは前半とは異なるポイント。左サイドのウィリアンに前半以上に集中してボールを渡していく。ここからファーを中心にクロスを上げていくが、これがなかなかチャンスにつながらない。

 エバートンも後半の序盤はマイコレンコの早い出足からクロスを狙っていくが、こちらも相手ゴールを脅かすほどの決定的なものにはなっていない。イウォビ、ウィリアン、マイコレンコ、ロビンソンなど個人で見れば報われて欲しい選手はいたが、好機以上の決定機を作るチャンスが限定的だったことを踏まえればスコアレスドローは妥当。どちらもブレイクスルーを見つけることに苦心した90分と言えるだろう。

試合結果
2022.10.29
プレミアリーグ 第14節
フラム 0-0 エバートン
クレイヴン・コテージ
主審:ジョン・ブルックス

⑧リバプール【8位】×リーズ【18位】

■大抜擢された若手が要塞陥落の大仕事

 けものプレミアの配信はいつも配信者たちが映像を速くしたり遅くしたりしながら時間を合わせている。この試合の立ち上がりは時間合わせが終わり、通常速度にしたにもかかわらず「あれ?これ1倍速?」と疑いたくなるような立ち上がりの強度だった。つまりは両チームがそれだけ高い強度で入ったということである。

 そのテンポを牽引していたのはアウェイのリーズである。ハイライン、ハイプレスの急戦でリバプールにテンポを上げて決闘に応じるよう促すかのような振る舞いで、激しくプレスをかけ続ける。ボールを奪ったら素早く縦にというムーブを続けて攻守の切り替えを繰り返す。

 リバプールにとってもこのリーズのスタンスは悪くないものだった。今季のリバプールはエンジンのかかりが遅く、なかなか強度が高いパフォーマンスを維持できない。そういう意味ではリーズがケツを叩くかのように振る舞ってくれたことはありがたい部分もある。強制的に高いテンションに着火せざるを得ないからだ。これでなかなかエンジンがかからないという今季の懸念の1つは消えたことになる。

 しかし、この高いテンションにほだされてしまったのもリバプール側。右サイド奥深くで受けたプレスに対して、繋ごうとしたゴメスがロドリゴにプレゼントパス。アリソンがいない無人のゴールに沈めるだけという今季最も簡単なシュートのお膳立てをしてしまう。リーズも直前でDFとGKがあわや!連携ミスをしていただけに明暗が別れる格好になった。

 リーズは得点後も強気のプレスをしてきており、特にマイナスのパスに対しては二度追いを繰り返す。それでもリバプールの布陣上、中央に刺すパスをやらないわけにはいかない。涼しい顔で縦パスを刺していたチアゴは流石である。

 リバプールは3人のFWのうち、サラーは右サイドに寄りながらアレクサンダー=アーノルドと連携して大外の崩しに参加。フィルミーノは中央の幅広い範囲に顔を出すなどかなりポジションは自由だった。

 同点弾はサラーが流れた右サイドから。サラーとアレクサンダー=アーノルドのコンビからファーにクロスを届けると、ロバートソンの再びの折り返しをエリア内に入り直したサラーが押し込んで同点にする。

 同点ゴールを決めてようやく徐々に落ち着いてポゼッションの機会を増やすリバプール。後半の頭にかけてリバプールはゆったりとした時間を過ごす。しかし、リーズは前節と同じように試合の起爆剤としてバンフォードを投入。プレス隊長を入れることで試合は再び前半のような激しいプレスの応酬に引き摺り込む。

 乱戦の様相となった後半。際立っていたのはメリエである。リバプールの決定機を次々と阻止。決して彼らにリードを許さない。アンフィールドの観客からのプレッシャーさえ味方につけるかのようなパフォーマンスでタイスコアを継続する。

 そのメリエに応えたのがアタッカー陣だ。ジョーカーになったのはなんと今季初出場になったニョント。イタリア代表に選ばれた俊英は交代で入るとすぐさま前線でアクセントに。すると89分、左サイドで2枚のディフェンスを剥がすと、中央のバンフォードになんとかボールを届ける。その落としを拾ったサマーフィルが決勝点をゲット。

 チャンスが多かったのはリバプールだが、このゲームのテンポを管理していたのはリーズ。ニョント、サマーフィルという若手の活躍で、リバプールの最後の砦だったアンフィールドは陥落。リーズにとって2ヶ月ぶりのリーグ戦勝利は思いもよらない特大インパクトでもたらされることになった。

試合結果
2022.10.29
プレミアリーグ 第14節
リバプール 1-2 リーズ
アンフィールド
【得点者】
LIV:14′ サラー
LEE:4′ ロドリゴ, 89′ サマーフィル
主審:マイケル・オリバー

⑨アーセナル【1位】×ノッティンガム・フォレスト【20位】

■後半の内容改善とネルソンの台頭が収穫に

 レビューはこちら。

 序盤から試合はアーセナルがボールを持ち、フォレストがボールを持たれて迎え撃つというプランでスタートする。プレッシャーのないアーセナルはボールを持ちながら自由にサイドに展開。起点となるトーマスがフリーになっていたのはアーセナルは気持ちよく好きなところから攻めることができていた。

 ボールを引き受けたサイドプレイヤーは積極的なサイドチェンジを活用しながら、フォレストのバックラインを横に揺さぶっていく。それが早々に結果に結びついたのが先制点である。マルティネッリ→サカへのサイドチェンジで、アーセナルはフォレストのバックラインが整っていない状態のうちに攻撃を仕上げることに成功。サカのクロスに合わせたのは斜めのランに入り込んだマルティネッリ。即時奪回に成功した冨安とオーバーラップでサカを助けたホワイトという2人のSBの貢献も多い先制点。

 先制点を得てさらにリズムに乗るアーセナル。そんな彼らに歯止めをかけたのは、サカの負傷交代。右サイドでウーデゴールとホワイトの好連携を見せていた上、単独でも突破力があるサカの交代はアーセナルにとっては痛手である。

 交代以降、アーセナルは大きな展開がへり、近め近めのプレー選択が増える。これにより、アーセナルはフォレストのプレスにかなり捕まる頻度が高くなってしまった。

 ショートカウンターの頻度が高まったフォレスト。アウォニィへのロングボールやリンガードの抜け出しに加えて、中盤のトランジッションが加わったフォレストは、前半の終盤にアーセナルを攻め立てる。何回かあったバックラインのパスミスからゴールを決めることができれば、フォレストは反撃のきっかけを掴むことができたはずだ。

 前半の終盤の苦闘を防いだアーセナルは後半に再びピッチを広く使う攻撃を復活。ジャカのアウトサイドからの抜け出しからジェズスを経由してサイドチェンジを行うと、これを決めたのは交代で入ったネルソン。前半はやや感触を確かめるようなパフォーマンスだが、このゴールで一気に勢いを増す。

 3分後には更なる追加点をゲット。ジェズス、ウーデゴールの右サイドのお膳立てから技ありのシュートを決めてみせる。4点目はマイナスのトーマスにアシストを供給するなど、ネルソンのパフォーマンスはチームと共に尻上がりだった印象だ。

 ゴールラッシュはウーデゴールが完結。大量5ゴールで中断前最後のホームのリーグ戦を飾ったアーセナル。課題となった後半の内容改善と、サカと交代して入ったネルソンの活躍はアーセナルにとって大きな収穫と言えるだろう。

試合結果
2022.10.30
プレミアリーグ 第14節
アーセナル 5-0 ノッティンガム・フォレスト
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:5′ マルティネッリ,49′ 52′ ネルソン, 57′ トーマス, 78′ ウーデゴール
主審:シモン・フーパー

⑩マンチェスター・ユナイテッド【6位】×ウェストハム【10位】

■鉄壁のCB陣と「ラスボス」がゴールに鍵をかける

 ウェストハムはエリクセンのロストからベンラーマがチャンスを迎え、マンチェスター・ユナイテッドはダロトのクロスに入り込んだラッシュフォードに得点機。両チームの名前だけ見るとやや堅い入りになるかなと思ったが、立ち上がりから互いに決定機を迎える慌ただしい展開になった。

 マンチェスター・ユナイテッドは負傷者の影響とサンチョの温存でいつもと異なりWGが大外で仕掛ける形がほぼなかった。インサイドでストライカータスクを背負うラッシュフォードと斜めのランで相手のDFラインと駆け引きをするエランガの2人はアントニーとサンチョとは異なったタスクを背負っていたと言っていいだろう。

 その分、幅を取るのはSB。特に右のダロトの機を見たオーバーラップは効果的で、マンチェスター・ユナイテッドの攻撃のアクセントになっていた。

 一方のウェストハムはそのダロトの裏を狙うベンラーマがカウンターの急先鋒だ。加速力のあるドリブルで一気に陣地回復をする。ただし、周りがオーバーラップについてこれていなかったという部分もあるけども、球離れがいつもより悪いのは少し気になった。

 ウェストハムは保持においてもスカマッカのポストからの前進も。マンチェスター・ユナイテッドはいつもに比べると明らかにプレスの強度は抑えめ。大勝負となる木曜のソシエダ戦にある程度戦力とエネルギーを温存しているように見える節もあった。

 それでも30分を過ぎれば主導権を握ったのはマンチェスター・ユナイテッド。前半を通して攻めの機会は明らかにマンチェスター・ユナイテッドペースだったが、前半の終盤はさらに攻勢を強めた印象だ。

 そして、先制点もこの時間帯。右サイドからブルーノ・フェルナンデスとのパス交換から一瞬の隙を作り出したエリクセンがクロスを上げる。これをラッシュフォードが決めて均衡を破る。この試合ではなかなかチャンスを決められなかったラッシュフォードだったが、ようやく結果を出した形だ。

 後半は両チームとも得点までやや物足りない印象だった。マンチェスター・ユナイテッドは大きな展開から敵陣に迫っていくが、スモールスペースの攻略で詰まってしまう分、決定機まで向かうこともできない。ウェストハムもなかなかカウンターをゴール付近まで届けることができずに苦戦する。

 流れを変えたのは交代選手。アントニオの投入から攻勢を強めたウェストハムは終盤の主導権を握る。しかし、立ちはだかったのはマンチェスター・ユナイテッドの最終ライン。リサンドロ・マルティネスはほぼエリア内で相手を完封し続けたし、スタメン発表時は不安要素だったマグワイアも安定した守備で相手の壁になり続けた。

 そして、なんと言ってもデ・ヘアである。至近距離からの素晴らしいコースのシュートをことごとくファインセーブ。持ち味である超反応を生かしてウェストハムに立ちはだかるその姿はさしづめオールド・トラフォードのラスボスといったところだろうか。

 バックラインの奮闘でリードを守り切ったマンチェスター・ユナイテッド。上位追走のために貴重な勝ち点3を手にすることに成功した。

試合結果
2022.10.30
プレミアリーグ 第14節
マンチェスター・ユナイテッド 1-0 ウェストハム
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:38′ ラッシュフォード
主審:クリス・カバナフ

今節のベストイレブン

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