■遜色なさで優位を取ったブライトンがエミレーツを征服
スタメンの入れ替えはアーセナルは10人、ブライトンは8人。国内カップ戦はターンオーバーというあるあるをきっちり踏襲した両チームの先発メンバーとなった。
より、先発を入れ替えた影響が見られたのはアーセナルの方だ。まず、真っ先に目についたのは高い位置からのプレッシング。ブライトンのゆったりとしたビルドアップに対して、高い位置からプレスにいくアーセナル。どこまで追いかけるか?という部分に関してはおそらく普段の先発メンバーと同じ。しかしながら、ボールを奪い切れるかどうか?という部分においては先発メンバーとのかなり大きな出来の差を感じる展開だった。
いわば、この日のアーセナルのプレスはハイラインではあるが、ハイインテンシティではない。高い位置から相手を捕まえる配置になっているが、ボールを奪い取れない。アーセナルの今季の強さはこの即時奪回力によるところが大きいが、この試合はそれが機能しなかった。もちろん、ブライトンのボール保持のスキルはこれまで戦ってきたチームよりも高いということもあるが、この日出たアーセナルのメンバーがその部分で物足りなかったというところはある。特に2列目の3人は出番を増やすための課題がとてもクリアになった試合だった。
前線からのプレッシングが機能しないため、負荷が増えるのはバックライン。サリバ以外のバックラインは即時奪回ができない分の負荷に苦しんでいた印象に思えた。中でもホールディングはハイラインに苦戦していた印象、だが先制点の起点となった守備には好印象を持った。ボールを運んだネルソンと決め切ったエンケティアも含めて、素晴らしいゴールと言えるだろう。
中盤で気がかりだったのはエルネニー。高い位置には出ていく守備はみせてはいたが、出て行くだけで相手を遅らせるアタックやボールを取り切るプレーがほとんど見られなかった。もちろん、長期離脱明けということでパフォーマンスは考慮すべき。しかしながらこの日のように非保持で悪い意味で目につくことはこれまで少ない選手だったので少々気になった。
失点シーンにおいても1失点目や3失点目ではエルネニーには挟んでボールホルダーを食い止めるチャンスがあるシーンがあった。失点に直結するミス!というには言い過ぎだが、少なくともここでボールを奪えないとスムーズな攻撃への移行は期待できない。ロコンガとの中盤コンビは食い止めて、反撃するという役割を十分にこなせたとは言えないだろう。
アラが目立ったアーセナルの選手たちに比べれば、ブライトンの先発メンバーは日ごろ出ている選手と比較しても胸を張れる出来だったと言えるだろう。特に良かったのはトップのエンシソ。前にリーグ戦で見た時は猪突猛進型のFWという印象だったが、この日は降りてボールを受けるというビルドアップの出口としての役割も十分。エルネニーが1失点目のPKのシーンで挟みきれなかったのは彼。起点を抑えられなかったアーセナルはハインの飛び出しが遅れたところでPK判定を受けてしまう。
相棒としてボールを受けて前にボールを運ぶ役割をしていたサルミエント、バックラインとしてプレスを受けた状態での正確なプレーとストッパーとしての役割を果たしたコルウィルも印象に残ったパフォーマンス。普段通りの水準に近かったのはブライトンの方だった。
追いつかれたアーセナルは攻撃に出て行くメンバーを増やしながら対抗。サリバが「俺がやらんとしゃーない!」という形で前に出て行く姿は印象的だった。しかしながら、アタッキングサードにおける攻略は連携ではなく単騎突破。それではプレミア水準の守備を崩すのは難しい。
それでも後半立ち上がりのアーセナルは前半よりは保持で可能性を感じた。ヴィエイラ→ロコンガと繋いでのフィニッシュはそれなりに惜しいところまで辿り着いたという印象がある。
しかしながら、ブライトンはメンバー交代で入ってきた三笘が週末に続き存在感を発揮。エンシソのキープ、サルミエントの運びを左サイドで三笘が引き取るという形からフィニッシュまで画がくっきり見えるようになった。
2失点目のシーンはホールディングがエンシソを捕まえきれなかったのが元凶。逆サイドに展開された時点ではもう状態はかなり悪く、この場面ではセドリックにはほとんどできることはない。アーセナルは三笘の十八番のフィニッシュをただただモロに食らってしまう。
3失点目は今度はセドリックが早めに三笘に合わせたポジションを取ったところ、裏に回ったランプティが結果を残したという流れである。2点目をフリに作ったブライトンは3点目で試合を決めてみせる。エストゥピニャンだけでなく、ランプティとも良好な関係性を作れる三笘はどんどん存在感を増している。
アーセナルはレギュラーメンバーを投入しての追撃を試みるが、単騎で襲いかかる攻撃のスタンスは変わらず。それでは厚みがでない。
中盤でブライトンに持っていかれた流れを最後まで取り返せなかったアーセナル。ホームで公式戦今季初黒星を喫することとなった。
ひとこと
■プレータイム確保のための課題が明確に
いい攻撃はいい守備からという言葉がよくわかる一戦だった。バックラインへの負荷を軽くするためにも、いい攻撃に繋げるためにもハイプレスの精度は大事。ボールを持って崩すというフェーズは選手の特性が大きく異なることもあり、大幅に入れ替わるとうまくいかなくなるのは仕方ないが、守備のプレスの部分でやりきれないとなると、レギュラーになかなか食い込めないのは当然。特に前線はプレータイムを増やすための課題が明確になった一戦だったと言えるだろう。
試合結果
2022.11.9
カラバオカップ 3回戦
アーセナル 1-3 ブライトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:20′ エンケティア
BHA:27′(PK) ウェルベック, 58′ 三笘, 71′ ランプティ
主審:ジャレット・ジレット