Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第33節
2022.11.29
川崎フロンターレ(2位/18勝6分8敗/勝ち点60/得点60/失点39)
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ヴィッセル神戸(10位/11勝7分14敗/勝ち点40/得点33/失点36)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の試合において川崎の7勝、神戸の2勝、引き分けが1つ。
川崎ホームでの戦績
直近10試合で川崎が5勝、神戸の3勝、引き分けが2つ。
Head-to-head
直近の相性で言えば強いのは川崎。接戦が多いものの、ここ数年は神戸に対して勝ち越す年が続いている。
特に等々力開催においては川崎の得点力がものを言うパターンが多い。直近5年のうち4試合で3得点以上挙げている試合を経験している。だが、唯一3得点を奪えなかった2019年は神戸が勝利しているのは見逃せない。
33節での対戦は2008年以来2回目。チョン・テセ、ジュニーニョ、レナチーニョが揃い踏みして4-0で川崎が快勝している試合以来、14年ぶりの激突となる。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・長期離脱していたレアンドロ・ダミアンは練習復帰。
・チョン・ソンリョン、大島僚太、ジェジエウ、知念慶は全体練習に復帰。
・ジョアン・シミッチは累積警告による出場停止から復帰。
【ヴィッセル神戸】
・アンドレス・イニエスタ、セルジ・サンペール、マテウス・トゥーレルは全体練習に復帰。
・飯野七聖は右腓腹筋肉離れにより離脱中。
・飯倉大樹も別メニュー調整中。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
終盤はかなり苦しんだ川崎だったが、いずれも勝ち点を落としているのはアウェイゲーム。この7試合で22得点と大量得点を挙げている。
ホーム、アウェイに関わらず、先制点は取ることができている川崎。しかし、今年はそのリードをなかなか守ることができていない。追いつかれる試合が多いと言うのは大きな懸念である。
リーグのホーム最終節は直近6年間で4勝。勝てなかった年は2016年のG大阪戦と、2019年の横浜FM戦。いずれも優勝できなかった年となっている。
直近のリーグ戦のゴールは6得点バラバラの選手が決めているが、期待がかかるのは小林悠。神戸戦との相性がいい11番。シーズン最後に果たさなければいけない大仕事が待っている。
【ヴィッセル神戸】
リーグ戦は現在5連勝中。後半戦だけで言えばリーグで最も多くの勝ち点を稼いでいるチームとなっている。好調を支えているのはソリッドな守備である。リーグ戦はここ3試合無失点で300分以上シャットアウトを続けている。
気になるのは上位とのアウェイゲームの弱さである。ここまで上位8チームと対戦したアウェイゲームの勝ち点は7試合で3のみ。なかなか勝ち切ることができていない。
攻撃面で原動力となっているのは大迫。10試合で6ゴールというとやや数字上のインパクトは薄いかもしれないが、この10試合のうち先発出場は5試合だけ。プレータイム的にはかなり短い中で決定的な仕事を果たしている。吉田監督が驚異的なペースで積み重ねている勝ち点の多くは彼によってもたらされているものだ。
予習
第31節 福岡戦
第32節 広島戦
第27節 湘南戦
展望
■純正日本人チームとして驚異的な巻き返し
前半戦は最下位に沈んでいた神戸だが、ここにきてリーグ戦は5連勝。残留争いから脱出するどころか、一気にトップハーフを狙うことができる10位までジャンプアップするところまでやってきた。
神戸のここ数試合のフォーメーションを見渡して真っ先に目につくのは外国籍選手が一切いない純正日本人が並べられたチームということである。一時期は「登録枠、大丈夫なの?」と言いたくなるくらい外国籍選手を抱えている状態だった。
が、今はベンチ入りメンバーを含めて日本人がびっしりと名を連ねるJ1では稀有なチームと言えるだろう。よりによって神戸がそうしたチームになって、しかも立ち直ってくるとは正直意外である。
戦績で言うと直近3試合の無失点という数字が際立っている。守備においては4-4-2のオーソドックスな形である。トップの大迫と小林祐希の2人はアンカーを受け渡しながら守っている。
基本線となるのは撤退しながら迎え撃つ形だ。3試合前の福岡戦などは互いにトランジッションの機会が少なく、これは従来の神戸のイメージと近いスタイルである。
しかしながら、広島戦や湘南戦では高い位置から積極的な迎撃でプレスを行う場面もしばしば。この辺りは機動力に欠ける外国籍選手を外した分、柔軟になっている印象を受ける。時間帯としては限定的ではあるが、ショートカウンターを仕掛けるためのハイプレスを狙う機会は明らかに前回対戦と比べても増えていると言えるだろう。
バックラインはデュエルに自信がある。特にSBの酒井と山川は1on1では簡単に対面の選手にやらせる相手ではない。CBの菊池と小林友希もいいリズムで守れており、中断期間にある程度トゥーレルがコンディションを戻してきたとしても、このコンビは解消しないかもしれない。イニエスタやサンぺールも含めて外国籍選手のフィットがどこまで進んでいるか、そしてどこまで監督が彼らを組み込むのかが気になるところである。
保持においてはバックラインが距離をとりながらポゼッションを行う。後ろのポジションはショートパスで繋いでいくのに適したスタイルではあるが、プレスをかけられると割と簡単に蹴り出すのが特徴だ。
「簡単に蹴り出す」と書くとプレス耐性がないなどネガティブな印象を受けるかもしれないが、神戸に関してはそうするだけの能動的な理由がある。当然、絶好調の大迫勇也だ。理屈抜きにJでは段違いの存在である。まず間違いなく収まって起点になることができるので、周りも彼を信じてボールを拾いにいくことができる。
2列目では汰木の進境が著しい。神戸は近年は単独で相手に渡り合えるサイドアタッカーの不在に悩まされている印象があるが、汰木の活躍次第ではこの課題はあっさりと解決してしまうかもしれない。
夏に加入した小林祐希もここにきて充実感を増している。フリーマン的な立ち回りが目立つが、大迫がサイドに流れた際にはエリア内に入っていくバランスの取り方ができている。得点感覚もあり、ここ数試合ではスコアラーとしての存在感も高まっていると言えそうだ。
チーム全体としては左サイドから攻める傾向が強い。山口、大迫、小林祐希など中央の立ち位置の選手も左サイドに流れながら片側サイドに選手を集めてクロスを上げる。
エリア内には基本的には2枚飛び込む人数を確保する。武藤が多くの場合、エリアに入ることが確定している。大迫がエリアにいる形がベストだが、サイドに流れていたりすれば他の選手がエリアに入ることもやぶさかではない。
逆サイドに1人で打開することができる飯野がいれば、サイドチェンジも視野に入るだろうが離脱中。基本的には左サイドで崩し切る意識が強いのが今の神戸である。
■後方に負荷を与えるために引き出す動きをつける
川崎としてはまずは3試合連続無失点中の神戸のDFにどのように風穴を開けるかを考えなければいけない。一番狙いたい形は神戸の中盤の稼働範囲を広げることである。神戸は山口が前傾になると、後方に大崎だけが残る形になる。大崎は優れた守備者ではあるが、広い範囲をカバーする機動力を兼ね備えているわけではない。彼のタスクを広げるように川崎としてはボールを動かして行きたいところだ。
よって、川崎としては大崎の周辺のスペースを活用すること、そしてそのために山口を手前に引っ張り出すことを試みたい。まずは大迫と小林祐希の脇に1人選手を置き、神戸の2列目から人を引っ張り出したいところである。できれば慎重に1つずつ。
絶対避けなければいけないのはショートカウンターを食らってしまうこと。そうなるくらいならば、多少後ろに人数をかけて重たくなる方がマシである。ピッチを広く使いたいので、家長の出張は避けたいが、IHの降りてくる動きで枚数を調整していきたいところである。ここは相手のプレスの強度と枚数次第ではあるけども。
神戸の中盤の稼働領域を広げたいのはCBの稼働領域を広げたいからでもある。PA内を守ることに専念させると特に菊池はめんどくさい存在である。それならばできるだけ手前のスペースに引っ張り出すことをサボらずにやって行きたいところである。
ここまで想定してきた神戸の守り方は彼らのプレスが比較的前がかりになっているというのが前提になっている。神戸がある程度強度的に負荷がかかる展開に乗ってこなければ、ブロックからのロングカウンターというやり方を選ぶことも十分にあり得る。
そうさせないために必要なのはリードである。川崎は先制点を奪われると一気に苦しくなってしまう。無失点の状態をキープするために川崎が気をつけなければいけないのは当然大迫。ここはフルトレーニングに復帰したジェジエウがどれくらいの状態なのか、何分使えるのかというところが大きい。現状、大迫に対抗できるCBは川崎には彼1人だけ。谷口とのコンビは正直多少リスクがあっても継続したい局面ではある。ようやくまとまった休みをとることができた山根が汰木とどこまで対峙できるかも大きなポイントだ。
ジェジエウが問題ないと仮定すれば、残りのスタメン選びのキーポイントはLSBとCF。ビルドアップが重要な試合となる予感がするので前者は登里、神戸のバックラインは体の強さよりも駆け引きで勝負したいので後者は小林をスタメンに推す。
泣いても笑ってもあと2つ。5連勝というJで最も勢いのあるチームとの対戦だが、終盤戦は好調だったホームゲームで逆転優勝への望みをなんとか繋ぎたい。「ハンパない」逆転優勝のためには神戸戦の勝利は必要不可欠だ。