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「レビューは腸を潰すイメージで書くといい」〜川崎フロンターレ 個人レビュー2022-FW編

これまではこんな感じ!

目次

9 レアンドロ・ダミアン

■プライオリティが来季にあるのならば…

 前年度の得点王にとっては非常に厳しいシーズンとなった。決定機を生かせない場面が目立ち、終わってみればリーグ戦は5ゴール。MVPは昨年ほどのインパクトを残せなかったという点に関しては疑いの余地はない。

 擁護をするならば、川崎の今季のシーズンを線で見た時に前半戦は崩して前線にチャンスを届ける機会自体が少なかった。ようやく、サイドからの崩しの精度が高まってきたタイミングの福岡戦で負傷離脱というのは巡り合わせが悪い。クロスに合わせるのが上手いダミアンが終盤戦にエリア内にいれば、苦手だったアウェイでももう少しゴールは重ねられたはず。

 後ろから運べない試合も多い中で川崎のCFは陣地回復とゴール前での精度という2つの仕事を両立する必要がある。この両面を考えれば現状の川崎のエースは彼ということになるだろう。蔚山相手に得点をとっているようにACLを見据えれば彼の力が必要になる公算は強い。マルシーニョがスコアを重ねるためのエスコート役として存在感を示したのも見逃せない。

 来季のFW陣は今の段階ですでにかなり多くのメンバーを抱えているというスカッド事情だったり、インテルナシオナルからの移籍の噂が絶えなかったりなど去就が不確定な部分は大きい。それでも仮に川崎が「2023年でのACLでの躍進」にプライオリティを置くならば、ダミアンの残留が最短ルートではあるはずだ。

11 小林悠

■舞台が整った時に結果を出せる準備を

 ダミアンが健在だった前半戦は例年以上に出番が限られた状況に。少ないプレータイムの中で、ジョーカーとしての存在感を示すことができず、なかなかチームの助けになるプレーができない時期が続いてしまった。

 長時間出た試合においてもなかなかボールが収まらなかったり、守備面でも動けなかったり、あるいは決定機を決め切れなかったりなど中盤戦までは苦戦続き。シーズンを通してみれば、サポーターの槍玉に最も挙がった選手とも言えるかもしれない。

 情状酌量の余地があるとすれば、ダミアンと同じくこちらも前半戦はエリア内にいい形でボールが入ってこなかったという部分。そうなってくると、ダミアンと違って陣地回復の手段を持たない小林は押し込めない展開では使いにくい!という結論になってしまうのだけども。

 それでも終盤戦にコンディションが上がったのは朗報。試合を決める得点や札幌相手に義務ゴールを重ねるなどフィニッシュの局面はもちろんのこと、つなぎにおけるポストプレーの精度も向上。ジャンプして競り合いになるようなボールを収めるのは厳しくとも、グラウンダーで足元につけたボールはきっちりと収めるところまで終盤になって戻してきたなという印象である。

 後半戦に伸びた成績を鑑みても、やはり押し込める状況を作ることが小林を生かす最善策なのだろうなと思う。今の川崎を見ると来季以降にそういう状況を作れるかはわからないが、彼が活躍する舞台が整った時にきっちり成果を出す準備をしてほしい。後半戦の彼であれば結果はついてくるはずだ。

19 遠野大弥

■ゲームチェンジャーとしての資質を開花させるために

 シーズン序盤から中盤にかけては実質レギュラーに準ずる扱い。チャナティップと左のIHで出番を分け合う形でプレータイムをシェアしていた。

 プレーエリアは中央を主戦場としながらも、サイドに流れる連携がスムーズできていたのはとても良かった。三笘のように1枚剥がせないからといって大外にたたなくていいというわけではないし、剥がせなくても大外に立つことに意味はある!ということは外に開くことをサボらなかった前半戦の遠野をみればよくわかる。MF編でも触れた浦和戦の塚川の活躍も遠野のサポートがなければ難しかったはずだ。

 しかしながら、シーズン中盤以降は先発の機会が減少。ベンチ→ベンチ外と序列が下がった小塚と同じように、シミッチのアンカーコンバートで遠野はベンチスタートの機会が増えるように。

 それでも遠野に関しては途中交代からゲームチェンジャーとしてチームにエネルギーをもたらせるキャラクター。だが、その持ち味を活かすことが現状ではできていない印象。最も気になるのはカウンターにおける判断。どちらにドリブルに行くか、どこにパスを出すか、いつどのプレイを選択するかのジャッジに改善の余地があり、この部分がゲームチェンジャーとして資質に蓋をしてしまっている印象だ。

 サボることのない守備もどこまで追いかけるか?やノーファウルで奪い取れるか?のリスクと背中合わせ。状況に応じたプレーの判断においては追い求めていきたいところだ。

 中盤から得点力を活かせることやサポートストライカーとしての才覚は確かで、現スカッドにはない個性であり貴重な存在であることに疑いの余地はない。だが、多様なキャラクターが競争に絡んでくる可能性がある来季の前線はよりプレータイム確保が厳しい展開になる可能性もある。まずはゲームチェンジャーとしての役割を確立し、信頼を勝ち取りたいところだ。

20 知念慶

■川崎のCFとして立場を確立するために

 良くも悪くも知念らしいシーズンだったと言えるだろう。動きながらボールを収める能力に関してはチームとしては一番。ダミアンが歯が立たなかった国内最強クラスの広島のDF陣に対しても、フィジカルにボールコントロールを掛け合わせた形で起点になり続けた。

 知念が頼りになる局面は大きく分けて3つ。ハイプレス志向のチーム相手などチームがショートパスで時間を前に送れない時の前進の手段が1つ。2つ目はゲームクローズ。前線でボールを収めて時間を稼ぐ能力は家長と双璧。そして3つ目はPK。これも家長と双璧だ。

 反対に物足りないのはボックス内での精度。特にオープンプレーにおけるフィニッシャーとしてはもう一声欲しいところ。対策が打たれてしまうと、その試合内における修正は難しく、この辺りはダミアンや小林に劣る部分でもある。

 稼働期間も物足りない。「知念が絶対的なレギュラーであり彼がいないとどうしようもない!」という期間は毎年訪れるものの、その長さは大体シーズンの1/3〜1/4くらい。今年も頼りになったが、絶対的な1stチョイスとして君臨できた期間は短かったと言わざるを得ない。チームが苦しい時期におけるスポット起用としては信頼度を確立しているが、チームが波に乗った時に自身が乗り切れない節があるというシーズンが加入初年度から続いている。

 序列を上げるにはエリア内の存在感の向上一択だろう。クロスに合わせる能力や、PA内での駆け引きなど得点において脅威になる存在にならなければ川崎の9番として立場を確立するのは難しい。立ち位置も課題もはっきりしているストライカーは来季こそ殻を破れるシーズンを過ごすことはできるだろうか。

23 マルシーニョ

■身についた得点感覚で不動の存在に

 2021年の夏にシーズン加入以降、裏抜けに特化した陣地回復で三笘の穴を部分的に埋めることに成功。無所属のブランクを感じさせないフィットぶりで昨季の優勝に貢献した。

 最終局面にどれだけ関われるか?という部分が2年目の課題として挙げられていたが、その部分は無事クリアしたといっていいだろう。ボールスキルをフィニッシュから逆算する形で使えているし、ロングスプリントからのシュートにガス欠感がないのも大きなセールスポイント。

 福岡戦ではハットトリックも達成。1on1からGKと駆け引きをしてコースを作るスキルを身につければ今季の数字的には得点王も狙える立ち位置ではある。

 持ち前のロングスプリントは2年目も健在。シンプルに速い動きを繰り返せるので、わかっていても対処しようがないというのが守る側からしての心境だろう。ハイプレスの効果は限定的だが、低い位置でのプレスバックの守備は効いている場面が多く、献身性はチームを助けている。ボールコントロールが箸にも棒にもかからない日以外は非常に頼りになる存在。チームの前進における第一手段となっている。

 ダミアンと同じく移籍も取り沙汰されているが、裏抜けの頻度とスピードを担保しつつ得点力もあるWGはなかなか目処が立ちにくく、代役の確保はダミアン以上の難易度になるのではないか。ただ、封じられている移籍金は高額で魅力的。川崎にとってはビジネス面も含めると難しい立ち回りの冬になりそうだ。

24 宮城天

■「いないデメリット」を超える何かが欲しい

 台風の目として頭角を現した昨シーズンと比べると、残念ながら伸び悩む一年だったと言えるだろう。宮城にどこを期待するか?と言われれば、個人的には得点力。カットインからのシュートはもちろん、逆サイドからのクロスに飛び込むのも結構上手く、アウェイのG大阪戦のようなゴールから得点を伸ばしてくれるのを期待していた。

 起用された試合においては大体1回はチャンスが来るイメージであり、活かせるかどうかは置いておいてゴールに向かう意識は持てているのかな?と思う。守備での意識も昨季よりはプレスバックができるようになっており、清水戦では守備固め的なWGとして投入されたりもした。

 ただ、特にスタメンでの起用においては物足りなさが残るのは事実だろう。チーム全体の問題でもあるが、今のチームはあまりにも「マルシーニョがいないデメリット」が大きすぎる。彼がいないと前進ができない。

 そうした前提を取っ払うとしても流れの中で「宮城がいることでのメリット」を見出すのは難しい。大外からのカットイン、周りとの連携、そして陣地回復。意外性からの得点を除いた部分でなかなか貢献ができない。

 終盤戦ではメンバー外となる試合も増えており、立場は厳しくなった。パリ五輪を見据えるのならば、来季は出場時間の増加は至上命題。意外性以外の側面の向上で、計算できる戦力としての存在価値を高めていきたいところだ。

28 五十嵐太陽

■ルヴァンのGSから出番を伺いたい

 「川崎の新しい太陽」としての1年目は試運転といったところだろう。出場はユース組だった北京FC戦1試合のみ。この試合においては右サイドでキレのあるプレーを見せていた。

 永長同様、まずは国内でのプレー機会を得ることが重要。来季はルヴァンカップのグループステージからメンバー争いに参加するきっかけを掴みたい。

32 山田新

■自己紹介を済ませたメリットで前線の争いに殴り込み

 来季新規加入内定選手なのだが、コロナショックに見舞われる中でルヴァンカップのC大阪戦でスタメン起用という大抜擢をされることに。

 持ち味は動きだしと聞いていたのだが、そのルヴァンカップでは背負うプレーも披露。4-4-2のミラーフォーメーション同士の一戦で時間を作る役割を立派に果たしてみせた。アカデミーでの後輩の宮城からのクロスを決めていれば100点のデビュー戦になったはず。

 というわけで来季から本格的に競争に参加である。宮代のレンタルバックも含め、川崎の前線はかなりメンバーが多様。だが、C大阪戦ですでに自己紹介が済んでいるのは心強い。来年は自分の持ち味でプレー機会を得る1年にしたい。

 おしまい!!

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