Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第25節
2022.10.12
川崎フロンターレ(2位/17勝6分8敗/勝ち点57/得点57/失点38)
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京都サンガF.C.(14位/8勝10分13敗/勝ち点34/得点29/失点35)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近10試合の対戦で川崎の7勝、京都の3勝。
川崎ホームでの戦績
直近10試合の対戦で川崎の7勝、京都の2勝、引き分けが1つ。
Head-to-head
灼熱の亀岡で行われた5月の試合は佐々木のオウンゴールで京都が勝利。川崎戦の連敗を3で止めた。
このカードの戦績の最大の特徴は引き分けが極端に少ないこと。最後の引き分けは2001年のスコアレスドロー。以降の17試合はどちらかの勝利で決着がつく。
ホームチームが割とはっきりと有利なのもこの試合の特徴で、特に等々力ではこの特徴が強まる。京都の等々力での近年の勝利は2008年のもの。後半に柳沢敦が決めた得点で川崎を下している。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・レアンドロ・ダミアンは右足関節外側じん帯損傷および右腓骨筋肉離れで10週間の離脱。
・車屋紳太郎は筋肉系のトラブル、ジェジエウは指の骨折による負傷で札幌戦を途中交代。チョン・ソンリョンも膝を痛めており全員前節欠場。
・チャナティップは右長内転筋肉離れで3週間の離脱。
・大島僚太は右ヒラメ筋の肉離れで6週間の離脱。
・ジョアン・シミッチは累積警告による出場停止。
・橘田健人は累積警告による出場停止から復帰。
・知念慶は前節負傷交代。
【京都サンガF.C.】
・アピアタウィア久と大前元紀はベンチ外が続いている。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
勝てば8月以来、2カ月ぶりの連勝となる川崎。戦績を見る限りだと好調になったというよりは得意のホームに戻ってこれたのが大きいように思う。不振とは言われるが、リーグで勝ち点を落としている試合は全てアウェイゲーム。ホームではリーグ7連勝中と横浜FMの次点といっていいレベルで勝ち点を稼いでいる。6試合で19得点と課題とされがちな得点力にも問題はない。
しかし、得意な等々力でもゲーム運びの拙さまでは直してはくれない。直近の12試合は全て先制しているにも関わらず、勝ちきれているのはその半分だけ。8試合では一度追いつかれており、そうなると先日の清水戦や横浜FM戦のような火事場のバカ力がでない限りは勝てていない。
小林悠の復調はチームとしては大きい。フィニッシュももちろんだが、崩しの中での存在感も十分だ。知念が負傷により出場が不透明な今節はより得点の期待が高まることだろう。負傷者絡みでいうと丹野の存在も大きい。リーグ戦でも問題なくクオリティを保証してくれる彼の存在がチームを優勝争いに踏みとどまらせてくれている。
【京都サンガF.C.】
直近の公式戦は6試合で1勝のみ。残留争いに向けて京都は正念場の一戦となる。
ただし、リーグ戦に限れば直近2試合は負けなし。仮に3試合負けなしになれば4月以来半年ぶりとなる。余談だが、今季の京都はここまでのリーグ戦において3連敗も3連勝もないチーム。大きな波がないチームとなっている。
気になるのは過密日程だ。間隔が詰まると勝率はかなり低くなる。直近8試合のリーグ戦は中3日以下のリーグ戦は未勝利である。しかし、最後のリーグ戦の中3日での勝利は5月の川崎戦。成功体験はある。
直近2試合の勝利の共通点はいずれも豊川雄太が得点を決めていること。エネルギッシュなこの男が点を獲ればチームは勢いに乗る。今節も勝利を導くゴールでチームの残留での後押しと曺貴裁史上初めての川崎相手のシーズンダブルをプレゼントしたいところだ。
予習
第30節 FC東京戦
第31節 鳥栖戦
第32節 名古屋戦
展望
■京都のスタイルの優先事項
現在の順位は14位。自動降格圏までの勝ち点差は2、そして入れ替え戦までの勝ち点差は1である。京都にとっての大目標である残留に対して、現在の状況は予断を許さないものになっているといえるだろう。わずかな優勝の望みをつないでいる川崎との試合は何かを賭けたもの同士の一戦となる。
京都に関するプレビューを書くのはこれで今季3回目だ。台風接近で中止になった前回も記事を書くところまではやっているのである。
この時の京都はコロナウイルスからの復帰のステップを踏んでいる選手が多いことでメンバーがかなり読みにくかった。このころから比べれば(何人か急に姿を消す選手はいるが)ある程度プランが再構築されたように思う。
最も大きな変化はピーター・ウタカがベンチという序列が明確になったことである。ボールを収めるところからゴール前の脅威まで攻撃のあらゆるところを担うことができるウタカを外しているのは、非保持における相手を捕まえる強度を担保したかったのだろうと推察できる。
今回予習した3試合は特に強度を重視した傾向が強かった。勝利した鳥栖戦は特に顕著。前半で絶対バテるでしょ!という片道切符感満載のプレッシングにおいて、見事相手のビルドアップをひっかけての豊川のゴールを守り抜き、勝ち点3を奪い取って見せた。非常に勇猛果敢なプランといえるだろう。確かにウタカはこうしたプランにはあまりコミットするイメージがない。
ウタカに前進を依存したスタイルから非保持のハイプレスからテンポをにぎる形に切り替えている。今の京都はそうした前半戦と異なる形に変化を見せている。
自陣からのボールつなぎを比較的丁寧に行っているのはこれまでと同じ。サイドからのクロスを狙っていくのも似ている部分ではある。しかしながら名古屋戦のようにウタカや山崎のようなターゲットマンがいない試合においては、ただのクロスでは攻撃がゴールまで届かない印象がある。
サイドからフリーでクロスを上げるだけではなく、抜け出しに合わせて奥行きを取り、マイナスのスペースを作るなどのトライは欲しいところではある。あるいはなるべく深い位置でライン間にボールを刺してからサイドに展開するなど、少し趣向を凝らしたトライを増やしても面白いかもしれない。
ただ、なかなか短期間でそうした仕込みは難しい。現実的にはボールを奪ってから素早くゴールまでつなげる形を増やすこと。非保持からのショートカウンターまでをよどみなく行うことで、ストライカー不在の得点力低下を補填していくのが現実的な策といえそうだ。
■4-3-3をやってきた理由
京都にとって気がかりなのは過密日程。いくらターンオーバーをしたといえど、天皇杯で120分プレーしたダメージはあるだろう。代表明けからの日程は川崎よりも明らかにキツイ。
川崎はここ数カ月間隔の詰まった日程でのパフォーマンス不良を連発してきたが、今節においてはそうした言い訳は通用しない。ホームでの連戦、複数タイトルという元々の計画、相手の方が厳しい日程、そして優勝が懸かっているという状況においてコンディション不良なんて言っていたらタイトルの方が逃げていってしまうだろう。
それだけにまずは京都の前からのプレスはいなしていきたい。名古屋戦を見る限り、プレスの強度はやや落ちているように思える。勤続疲労は確実にあるといえるだろう。アンカー起用の公算が強い橘田を軸にボール保持から相手のプレスをいなし、試合の主導権を握りたいところである。
とはいえ、中盤が捕まっている状況に対して簡単に蹴ってしまった札幌戦を思えば、川崎側も短期間での改善はあまり現実的ではないようにも思う。仮に今節も丹野が先発なのだとしたら、ソンリョン以上に無理な形でのバックパスの押しつけは避けなければいけない。そうなるくらいであれば、蹴っ飛ばして少ない人数で攻撃を完結させる方がはるかにいい。
非保持において最も気を付けたいのはハイプレスにおける背後のスペースである。清水戦では左サイドはマルシーニョ、登里、遠野のトライアングルが機能しなかったし、右サイドは山根と山村が連携できずに裏をケアできなかった。カバー役のシミッチが左右に走っていたが、かなりギリギリの対応が多く、外された際にはあっさりと失点まで持っていかれてしまった。
保持でボールが持てない、非保持でハイプレスがかからない、もしくはそのリスクをカバーできない。こうした問題点の解決となりうるのは4-2-3-1の採用である。先発が目される遠野をサポートストライカー的に起用し、3人のアタッカーと共に少人数で攻撃を完結させる。守備においてはWGの外切りのプレスをやめてワイドのケアに回り、2CHが最終ラインのフォローに回りやすい状況を作る。手当として4-2-3-1は有用であるように思う。
ちなみに4-3-3であろうとこの試合の遠野には期待している。京都のバックラインは裏抜け対応がうまいとは言えない。マルシーニョ以外にこうした動きをサイドで仕掛けられれば、川崎の攻撃の突破口になりうる。
今の川崎の課題の中には4-2-3-1で解決する部分もあるだろう。しかしながら、どうして4-3-3をやっているのか?というと押し込んでサイドを崩しながらエリアに迫り、即時奪回とハイプレスでボールを奪って次の攻撃につなげるためだろう。4-2-3-1は中盤がサイドの高い位置のフォローに行きにくいし、ハイプレスの枚数も減る構造になりやすいという点は留意しないといけない。
清水戦で一番いい時間だったのはハイプレスが効いていた先制点から前半終了までの時間である。ここからは好みの話ではあるが、個人的にはああいう時間を作ることを諦めてはいけないように思うのである。
ハイプレスを利かせて、サイドではホルダーに複数選択肢を作りながら押し込み支配的なスタイルを実現すること。そして、相手との力関係や流れを踏まえて、機能しない展開に陥った時は潔く手当を講じること。ここ数試合は残念に思うことも多いが、前者は選手のパフォーマンスに、後者は鬼木監督の手腕を信頼したい。