Fixture
プレミアリーグ 第10節
2022.10.9
アーセナル(1位/7勝0分1敗/勝ち点21/得点20 失点8)
×
リバプール(9位/2勝4分1敗/勝ち点10/得点18 失点9)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
過去の対戦成績
過去10回の対戦でアーセナルの1勝、リバプールの5勝、引き分け(PK戦も含む)が4つ。
エミレーツ・スタジアムでの対戦成績
過去10戦でアーセナルの2勝、リバプールの4勝、引き分けが4つ。
Head-to-head from BBC sport
スカッド情報
【Arsenal】
・エミール・スミス・ロウ、モハメド・エルネニーが唯一の欠場者。
【Liverpool】
・レンジャーズ戦と同じスカッドになる見込みだが、カーティス・ジョーンズはトレーニングに復帰。
・アルトゥール・メロは筋肉の負傷でアンディ・ロバートソン、アレックス・オックスレイド=チェンバレン、ナビ・ケイタと共に欠場見込み。
Match facts from BBC sport
【Arsenal】
【Liverpool】
予想スタメン
展望
■リバプール不振の3つの要因
仮に今がシーズン前だとする。「第10節に行われるアーセナル×リバプールのカードは首位と9位の対戦になる」というお告げを聞いたとしよう。あなたがアーセナルファンであるならば多くの人は「今季もまた開幕から苦しんでいるのか」と思うだろうし、リバプールファンであるならば多くの人は「シティを抑えて首位に立っているのか」と胸をなでおろすはずだ。
しかし、実際の順位はその逆である。首位に立つアーセナルが9位と苦しんでいるリバプールを迎え撃つというあまり予想できなかった構図の一戦となった。
リバプールが不振になっている理由はどこにあるだろうか。せっかくの機会なので考えてみたい。今季のリバプールを見て、真っ先に気になったのは攻撃ルートの偏りである。
バックラインから対角パスを飛ばし、右サイドのサラーとアレクサンダー=アーノルドのコンビネーションでPAに入っていく。左サイドは右から飛んでくるクロスに飛び込んでくる役割だ。
一見特に問題がないように見える。この右のユニットは強力。サラーはカットインで敵陣に侵入することができるし、アレクサンダー=アーノルドはクロスから遠距離で敵のブロックを狙撃できるスナイパーだ。破壊力と精度を兼ね備えたお馴染みのコンビを活かすのは別に普通のことである。
ただ、あまりにも偏りが過ぎている。ヌニェスのように中央にいるCFが「どんなボールでも放り込んでこいや!」みたいなタイプなら右からガンガン放り込めばいいだろう。しかし、フィルミーノはそういうタイプではないし、ディアスはクロスを飛び込むためだけにリバプールにきたのではない。
仮にフィルミーノやディアスのコンディションが箸にも棒にも掛からないということならば、右サイドに偏重するこのスタイルにこだわるのは理解できる。しかし、むしろ彼らは不振にあえぐチームの中では好調な選手たち。上記の右サイド偏重ルートではそんな好調な彼らの持ち味を生かせていない感がある。
彼らが活きるかどうかは左右にバランスのいい配球ができるチアゴがいるかどうかで決まってくる。右サイド偏重をどこからでも攻撃ができるチームに矯正できる操縦士がいなければ、リバプールは左サイドのユニットを生かすことができない。
もう1つはプレッシングである。高い位置からのプレッシングは頻度こそ減ったものの昨シーズンから要所では見られたクロップの代名詞だ。そのプレスが今季は見る影もない。
未勝利対決となったマンチェスター・ユナイテッド戦やマージ―サイドダービーなど燃える舞台装置の試合はここまでいくつかあったにも関わらず、こうした試合ではいずれもプレスの強度で不満がある。唯一、今季のリバプールにそうした爆発的なエネルギーを感じたのは9点を奪ったボーンマス戦だ、
高い位置からのプレスでペースをつかみきれない要因として挙げられるのはヘンダーソンの存在。プレスのメインキャストは前線(この部分でマネの不在はもちろん大きい)だけど、中盤から後方にプレスに行く合図を出すのはヘンダーソンであることが多い。彼がCBにプレスに行くことでチーム全体にスイッチが入る。
カルバーリョやエリオットなど進境著しい若手は攻撃面では十分に働けてはいるが、プレスの旗振り役としては現状ではやや荷が重たいように思える。旗を振れるヘンダーソンが試合にあまり出ることが出来ずに苦しんでいるのも要因の1つといえるだろう。
ここまでの懸念は最後のお題目である右サイドの守備ブロックの脆さと無関係ではない。アレクサンダー=アーノルドやゴメスなど個人レベルでデュエルに負けてしまう選手たちもいるのは確か。だが、ハイプレスの機能不全により後方の守備の負荷が増えてしまっていることと、右サイドの攻撃時の比重が高まることにより、そもそも右サイドが攻撃で出払っていることも無関係ではない。チーム全体のバランスがバックラインにかかった結果、脆い場所から亀裂が入っているイメージである。
そうした歪みを帳消しにできるファン・ダイクは今季が不振。ファビーニョやアリソンは相変わらず強力ではあるがファン・ダイクの不振の影響は大きく、失点に歯止めがかかりにくい状況になっている。攻撃ルートの偏り、プレスの機能不全、そして右サイドの守備の脆さ。今季のリバプールの苦戦の要因はこういったものが挙げられる。
■今季の密かな目標
守備を考えた時にアーセナルからするとまず気にしなければいけないのはリバプールのメンバー。具体的にはチアゴとマティプがいるかどうかである。チアゴが組み立ての最重要人物として疑いの余地がない。リバプールが手詰まりになった時はまずはチアゴが1列降りていく動きから始まる。
アーセナルからすると、後方から選手を動員してチアゴを捕まえに行くか、そもそもついていかずにトップの選手にプレスを任せるかのどちらかを選ぶ必要がある。スタイルとしては前者の方が近いイメージではあるが、その場合は後方のプロテクトもセットで考えないといけない。チアゴは自ら作ったスペースへの縦パスも刺すことができる。
もう1人のビルドアップ要人はマティプ。運ぶドリブルで相手の2列目を引き出すことができる。2列目を動かすことができるチアゴとマティプをどうするかがポイントになる。
アタッキングサードにおいてはやはりサラーとアレクサンダー=アーノルドのコンビが怖い。これにIHが絡んでくるとさらに崩しの精度が上がる。大外+ハーフスペース突撃のコンビネーションは十分に怖い。どんなに守備は怖くてもアレクサンダー=アーノルドはひとたび攻撃に転じることができればクオリティを見せられる。特に浅い位置からのクロスや裏へのパスは警戒が必要だ。
保持においてアーセナルが絶対トライしたいのはハイプレス回避からのロングカウンター。押し込むことができれば、崩しの兆しはかなり高い確率で見えてくる。反撃の危険性から考えてもショートカウンターの方が怖い。
プレスを跳ね返してCBとファビーニョのン守備範囲を縦にも横にも広げていくことで負荷をかけていきたい。ハイプレスをばらす気概はすでに今季ここまでの試合で見せている。スキルで回避したいところ。IHに出て行くかどうかを躊躇させて擬似カウンター的に攻撃を加速させたい。
大外ワイドのマッチアップはアーセナルからするとのぞむところ。前回対戦でもマルティネッリが唯一の光になったように、今回もこのマッチアップは生かしていきたい。CBやファビーニョにPA内に専念させないためにもここの優位は確実にモノにしておきたい。
ただし、トッテナム戦のようにWGのマッチアップをフリに使うのもあり。マークをサイドに集めて、手薄になった中央に刺していくのもありだ。サイドを替える動きでリバプールの横移動を増やすのはマストである。
直近を見れば優勢なのはアーセナルだろう。しかし、リバプールにはここ数年全くといっていいほど歯が立っていない。行ける!と思っていけなかったのはすでにユナイテッド戦で見た光景でもある。リバプールが不調かどうかは関係なく、自分たちにできることをきっちりやること。アーセナルができることは増えているのだからそれで問題ない。
あまり言ってはこなかったが、今季のひそかな自分の目標はリバプールとシティにリーグ戦で勝利することである。この成功体験をなくしてチームは大きくなれないんじゃないかと思っている。首位だが、あくまで胸を借りるチャレンジャーとして丁寧にこれまでやったことをピッチで披露したい。