①ボーンマス【13位】×レスター【19位】
■仕掛けたサイドが相手に攻める隙を与えることに
より、相手に強めにプレスに行く入りをしたのは前節最下位を脱出したレスターの方だった。しかし、そのプレッシングがどこまで有効だったかは疑問が残るところでもある。
プレスに出て行くタイミングはワンテンポ遅れ気味であり、ボーンマスを苦しめていたかは微妙なところ。ボーンマスは穴があればつなげるチームなのだが、この試合では今季一番きれいに自陣からボールをつなぎながら敵陣まで運べていた。
ビリングやソランケへのロングボールがなくとも、SBが相手のSHの裏に立つところからレスターの守備に1つ1つ穴を空けながら前進。ショートパスでつなぎきって前進することが出来ていた。
一方のレスターも前進にはそこまで苦労しなかった。ボーンマスの4-4-2ブロックはレスターのボールホルダーに対してほとんど規制をかけることが出来ず、後方になればなるほどどのルートでボールが進むかの予測を立てられない状況に苦戦。レスターのチャレンジングな中央へのパスも咎められる機会は稀で、チームはズルズル押し下げられることになる。
ボールを持たれると終わる!という両チーム。前半の内に先制点を奪ったのはレスター。右サイドからクロスで一気に押し込むと、ボーンマスのクリアが不十分なところを左サイドからさらに追撃。最後はダカが仕留めることで先手を奪う。
格上のレスターが先行することで試合が落ち着くかと思われたが、なかなかリズムをつかみきれない。左サイドにデューズバリー=ホールが流れてバーンズ、ジャスティンと3人がサイドに登場し、数的優位を作る!というプラン自体は悪くなかったように思う。しかしながら、あまりにもパスミスが多く、判断が遅い。
ボーンマスのブロックに対してストロングポイントにしようとした左サイドはうまくなり立たない状況が続いてしまう。それどころか、レスターは徐々にボーンマスにこのサイドを狙われるようになる。
すると、後半のボーンマスはこのサイドから反撃。前がかりになるレスターのサイドアタッカー陣の背後を1人でカバーするというタスクはファエスにはやや荷が重すぎたよう。彼がバタバタと落ち着かない状況が続いていたのは今思えば嫌な前兆だった。スローインでのリスタートから始まったボーンマスの攻撃に対し、ファエスは相手に振り切られてしまいビリングに同点にされるきっかけを与えてしまった。
ヴァーディの投入で反撃を試みたいレスターだが、、交代選手が力を発揮する前にまたしても左サイドから崩壊。同サイドから突破を許すと何回かあるクリアのチャンスを全てフイにしてしまい、クリアしきれなかったことをクリスティに押し込まれてしまった。レスターのバックラインはどいつもこいつもクリアができなさすぎである。
反撃に出たいレスターはバーンズ、ペレスのWBなど攻撃的な奇策を披露する。しかし、この強引な策が得点につながることは最後までなし。むしろ、カウンターからあわやボーンマスに3点目を奪われたかと冷や汗をかくシーンすらあった。
ようやく脱出したテーブルの一番下の席にはわずか1節で逆戻り。粘り勝ちで勝ち点を積み重ね続けるボーンマスに守備ブロックの粗を突かれて今節もあっさり逆転負けを喫した。
試合結果
2022.10.8
プレミアリーグ 第10節
ボーンマス 2-1 レスター
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:68‘ ビリング, 71’ クリスティ
LEI:10‘ ダカ
主審:マイケル・サリスベリー
②チェルシー【5位】×ウォルバーハンプトン【18位】
■アラを炙り出してチャンスを量産
コリンズの一発退場によって、3試合のCB不足をなんとかしないといけない!と言う状態になっているウルブス。1試合目でCBに選ばれたネベスを累積警告で失ってしまったため、今節はゴメスを登用することとなった。
チェルシーは今節は4-2-3-1を採用。前節と同じく、立ち上がりは右サイドを軸に攻撃を展開する形を狙っていく。右に流れることが多いハフェルツに加えて、右のハーフスペースに突撃ができるロフタス=チークやギャラガーを起用。右サイドアタックに厚みをもたらしていた。
ウルブスの右サイドは不安定。ジョニー、ゴメスというバックラインの左サイドはそもそもここで起用されておらず不慣れ。連携面でも怪しく、ボールを奪った後の脱出ができておらず、チェルシーの即時奪回に屈してしまう場面が多かった。
またウルブスはファーサイドのクロス対応も怪しい。チェルシーはファーへのクロスからの折り返しという形でチャンスの山を作っていく。だが、この日のチェルシーは決めることができない。アスピリクエタ、プリシッチなどゴールが決まったと思えるようなシーンでも決定機を逃していく。
エリア内においてはハフェルツが息が合わないシーンが散見される。背負う部分、抜け出しのタイミングなどCFとしてチームを牽引するパフォーマンスを見せられず苦労する。
ウルブスも保持に回れば攻め手がなかったわけではない。チェルシーの中盤はヌネスのドリブルを素通りさせるなどフィルタリング能力に欠けるところがある。トラオレにボールを渡すことができれば陣地回復も可能。ダイナミックなドリブルに対面のククレジャも苦しんでいるようだった。
チェルシーはエリア内においても怪しさを見せる。人がいる割にフリーな選手が多く、動き直しに対応できていない選手が多い。ここに入り込んで行ったのがこちらもヌネス。フリーのヘッドであわやというシーンを作り出していく。
ウルブズも手応えはあるものの、保持で相手を動かす手段が多いチェルシーが圧倒的に有利。前半追加タイムにファーで待ち構えたハフェルツがゴールを奪うことで前に出る。ウルブスはサイドで同数で受けたにもかかわらず、受け渡しが杜撰。あっさりとフリーの選手にクロスを上げさせてしまったのが痛恨だった。
ビハインドになったウルブスはホッジを入れて4-3-3に変更。ボールを奪ったら右のトラオレに預けて打開を頼むという状況を作ることで反撃に出る。
エリア内の守備は危うさがあるチェルシーにはトラオレ大作戦は一定の効果は見込める。しかし、ボールを奪ってしまえば当然チェルシーにもチャンスはある。よって後半もチェルシーよりのペースは大きく変わることはなかった。
左サイドのプリシッチの追加点で試合は実質決着と言っていいだろう。ウルブスはこのシーンでは右サイドの連携の拙さを見せて、シンプルなワンツーであっさりと抜け出しを許してしまった。この2点目で試合は沈静化。仕上げの3点目をブロヤが決めるまでは静かな展開に。
手薄なバックラインの連携の悪さをついたチェルシーが完勝。大きく動かして相手のアラを炙り出すというポッターのプランを見事に実践してみせた。
試合結果
2022.10.8
プレミアリーグ 第10節
チェルシー 3-0 ウォルバーハンプトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:45+3′ ハフェルツ, 54′ プリシッチ, 89′ ブロヤ
主審:シモン・フーパー
③マンチェスター・シティ【2位】×サウサンプトン【16位】
■悪癖すら顔を出さない完璧な90分
首位のアーセナルを無敗で追い続けるシティ。今節の相手はやや停滞感が出てきてしまっているサウサンプトンである。
シティは中盤の配置は正三角形型。デ・ブライネはトップ下、ベルナルドはCHという形で明確に前後に縦関係になっている形になった。今季のシティのポイントはロドリのそばに誰をどれだけ立たせるか?というもの。両SBを立たせたり、カンセロだけ解放したりなどいろんなバリエーションを試している。
この試合においてはシティの配置は非常に素直。SBはSBのロールをこなし、ロドリのパートナーはベルナルドが務める形である。SBはアカンジ、カンセロと左右にキャラクターの差がはっきりしているコンビ。カンセロは左のWGロールをこなしているのに対して、右はマフレズを後方から支えるアカンジという形で役割に差をつけていた。
サウサンプトンは立ち上がりから積極的なプレスをかけていくが、シティはこれをほとんど問題にしない。相手の中盤のラインをパスで越えるとここから一気に加速。ゴールまでスピーディにボールを運んでいく。
得点パターンとして確立していたのは大外の突破である。大外から裏抜けやドリブルで突破しながら、そのままエリア内に迫っていく。サウサンプトンのバックラインはラインを下げながら鋭く飛んでくるラストパスに対応しなければいけないという非常にハードな状況。シティのダイナミックな攻撃に非常に手を焼いていた。
先制点を奪ったのはカンセロ。早い展開の中で少し抜け感のある足技から左サイドを突破すると、ここからミドルを決めて先制する。
サウサンプトンは反撃に打って出たいところではあるが、なかなかボールを前進させることができない。前に強引につけても跳ね返されるし、繋ごうとすればシティのプレスの網に引っかかる始末。前半のうちにプレスからのショートカウンターでシティは追加点を奪う。
迎えた後半もシティペース一色だ。カンセロが左サイドから奥行きを作ると、マイナスで受けたロドリから対角に抜け出す形のラストパス。マフレズがこれを沈めて後半頭にサウサンプトンの出鼻をくじく。
ノリに乗っているカンセロは4点目にも関与。ハーランドへのラストパスを決めて今季15点目をお膳立てする。
実は昨シーズン、サウサンプトンはシティ相手に負けなし。ホームもアウェイも引き分けている。しかし、今日に限ってはサウサンプトンにとっては最後まで糸口すら掴めずに吹き飛ばされた試合だった。
今季のシティはリードすると終盤緩める悪癖があるのだが、この試合ではそうした様子も皆無。選手をうまく入れ替えながらハイプレスと高いボール保持率をキープし、試合を最後までコントロール。テッペンから爪先まで全てが整った完璧な90分だったといえるだろう。
試合結果
2022.10.8
プレミアリーグ 第10節
マンチェスター・シティ 4-0 サウサンプトン
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:20’ カンセロ, 32‘ フォーデン, 48’ マフレズ, 65‘ ハーランド
主審:アンディ・マドレー
④ニューカッスル【7位】×ブレントフォード【10位】
■着火と鎮火、2つの大仕事をこなしたギマランイス
前節は退場者が出る前の時点からフラムをボコボコにしての完勝。負けないけど勝てないという苦境に陥っていたニューカッスルがいよいよ勝利を収めた一戦だった。ブレントフォードは苦手なアウェイゲーム、セント・ジェームズ・パークで敵地の克服を目指したい。
今節のブレントフォードは3-5-2を採用。中央を厚くするフォーメーションを使いながら、中盤より前でボールを奪ってのショートカウンターに移行したいスタンスが見えた戦い方だった。
しかしながら、このブレントフォードのプランは絵に描いた餅になってしまった。まず、構造上手薄になるサイドを止めることができない。総大将であるサン=マクシマンこそ不在のニューカッスルだが、両翼は絶好調。アルミロンは大外で持つとカットインでブレントフォードのDF陣を一掃するドリブルを見せることが出来ていたし、マーフィーのぬるぬるとした突破もブレントフォードのDF陣は歯が立たなかった。
攻撃においてもニューカッスルの堅く守った中央ブロックの攻略に苦戦。2トップがボールを受ける位置も外に追いやられてしまう形になっており、前線に起点を作れない。バックラインではラヤのフィードが不安定で精度にかけたのもこの日のブレントフォードがうまくいかなかった一因である。
ニューカッスルは優勢をいかしたまま先制点までたどり着く。セットプレーの流れからファーに完全に余ったギマランイスがフリーでゴールをゲット。リードを奪うと、今度はハイプレスから追加点をゲット。ラヤのパスミスをウィルソンが誘い、最後はマーフィーが沈めて差を2点に広げる。
苦しくなったブレントフォードは前からプレスに行くが、これがさらなる中盤の間延びを呼ぶという悪循環。ほとんど一方的にペースを握られてしまう45分になった。
迎えた後半、ブレントフォードはショートパスをつなぎながらリズムを取り戻す。保持がうまく回れば、ハイプレスへの移行も無理なくできるように。高い位置からのプレスも含めてリズムは良好になる。ラヤのフィードが刺さればいうことないのだが、そこは後半も苦しんでいた部分だった。
リズムの良い時間帯に攻め込んだブレントフォードはバーンのハンドでPKをゲット。これをトニーが決めて反撃の機運を高める。
しかしながらそれを即座に封じたのは先制点を奪ったギマランイス。カウンターからミドルを刺しこみ、ブレントフォードの攻勢を一気に鎮火させる。
以降はニューカッスルのワンサイドゲーム。左サイドからのカットインでガンガンゴールに迫ってくるニューカッスルにブレントフォードは屈するばかり。前半に引き続き最終ラインの連携ミスからも失点してしまい踏んだり蹴ったりとなった。
前節に続き大量得点で勝利を飾ったニューカッスル。欧州カップ出場権を射程圏内に見据えられる位置に浮上し、ここから反撃を狙っていく。
試合結果
2022.10.8
プレミアリーグ 第10節
ニューカッスル 5-1 ブレントフォード
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:21‘ 56’ ギマランイス, 28‘ マーフィー, 82’ アルミロン, 90‘ ピノック(OG)
BRE:54’(PK) トニー
主審:ジョン・ブルックス
⑤ブライトン【4位】×トッテナム【3位】
■積極策が目立つトッテナムが停滞に終止符
前節はアンフィールドで堂々たるパフォーマンスを披露。デ・ゼルビのボーンマスの船出は非常に順調なものだった。今節はホームにトッテナムを迎える一戦。強豪との連戦が続くことになる。
前節に比べると、この日のブライトンは精度を見せることができなかった。ビルドアップはバタバタしており、やたらとミスが目立つ。特にいつもは冷静で堅実なボール回しを行うカイセドがロストを連発していたのが目についた。
本来であれば、縦へのパスを出し入れしながら前進を狙っていきたいブライトン。だが、この日は縦パスをプラス方向に2つ繋ぐなど強引なプレーが目立つ。
逆に言えばトッテナムがそれだけきちんとブライトンにプレスをかけていたということでもある。リバプールが後半にプレスに行った結果、ブライトンがバランスを崩していたのをよくスカウティングしていたのだろう。
この日のトッテナムはボール保持でも積極策が目立つ。ワイドのCBが積極的にボール保持に参加し、ポゼッションを安定させる。ミドルゾーンで奪ってのカウンターと、バックラインからのビルドアップで敵陣に向かっていくという二面性を使い分けていた。
ただし、自陣に押し込まれるとトッテナムもピンチになる。右にいるマーチは特に定点攻撃で頼りにされており、ブライトンはここまでボールを運ぶことができればチャンスになる。だが、その過程でミスが出てしまうのがこの日の苦しいところでもある。
先制したのは優勢に試合を進めていたトッテナム。セットプレーから右サイドのソンのシュート性のボールをケインが押し込んで先手を奪う。
ビハインドになったブライトンは後半頭から攻勢をかける。トッテナムと同じく、ワイドのウェブスターとフェルトマンにビルドアップの参加をさせることで相手を押し込むことができていた。
だが、当然その分反撃は飛んできやすい。ソン、ケインを軸にしたロングカウンターは前半よりも刺さりやすく、セセニョンも3枚目として積極的に前線に顔を出していた。全然連携面で物足りなさはあったけども。正直、ここで試合を仕留める2点目を早い段階で取りたかったところだろう。ハイプレスやポゼッションなどロングカウンター以外のアプローチを後半も捨てなかったのはとてもいいことのように思う。
押し込むブライトンは三笘を投入。左サイドで起点となれる選手を投入し、エリア内に切り込む動きを増やしていく。交代でフレッシュな状態とはいえ、3人くらい一気にトッテナムのDFをぶち抜いたのはプレミアファンを驚かせたことだろう。
終盤は三笘とマーチを結託させて左サイドに置くなど試行錯誤を続けていたデ・ゼルビ。だが、この日のブライトンはやや仕上げが中央の狭いスペースに偏ってしまっていたのが懸念。ロスト時のカウンターも怖いし、何よりシュートがやたらとブロックにかかってしまっている。マック=アリスターやカイセドなど中央にパスを刺す選手の精度が足りていなかったのも苦しい部分だった。
トッテナムはなんとか逃げ切りに成功。ノースロンドンダービーやCLなど結果が出なかった近々の停滞に終止符を打ってみせた。
試合結果
2022.10.8
プレミアリーグ 第10節
ブライトン 0−1 トッテナム
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
TOT:22′ ケイン
主審:トニー・ハリントン
⑥クリスタル・パレス【17位】×リーズ【12位】
■修正パッチを当てたプレス回避で形勢は一変
互いに激しい中盤のしばき合いから試合はスタート。中盤で組み合ってボールを奪い合うのはもちろんのこと、敵陣深くまで追いかけまわしながらボールを取りに行く両チームのアグレッシブな姿勢がよく見える序盤だった。
序盤のプレス合戦はややリーズが優勢で決着。より深くまで追い回していた前線がボールサイドを限定することでリーズの中盤は素早くスライド。ピッチの中央付近の高さから中盤で防波堤を築きながらパレスの保持者に積極的にプレスをかけていく。
この高い位置からのプレスが奏功したのが先制点である。サイドに限定したところからアダムスのプレスからアーロンソンの進撃で一気に反撃を完結。最後は逆サイドから上がっていたストライクがゴールにボールを押し込んで見せた。
前節でも述べたが、クリスタル・パレスはやはりゆっくりつなぎすぎだろう。前がかりにプレスに来ている相手は後方にスペースがあるし、パレスには前線に刺すことができるアタッカーもいる。もう少し早い展開を織り交ぜてもよさそう。
パレスがポゼッションにご執心の間にリーズは中盤から跳ね返してのカウンターを連発。パレスのプレッシングもリーズはIHに壁パスを付けて、サイドに展開してもらう形で十分にいなすことが出来ていた。
敵陣深くの支配、そして自陣からのボールの動かし方を用いての敵陣侵入。前半のリーズの立ち上がりは非常に順調ではあった。しかし、クーパーのミスからパレスにFKのチャンスを与えて同点に追いつかれると、ここから流れは一気に変わっていく。
まず、パレスはリーズの守備にだいぶ慣れた。2列目を1人引っ張り出すまで粘り強く保持をすること。リーズの中盤が出てきたらそのスペースにパレスの前線の選手が降りてきて縦パスを引き取ること。この2つでほとんどリーズのプレスを無効化する。
前半15分までの押せ押せペースはあっという間に終了。ここからはパレスが圧倒的に試合を支配することになる。
サイドを使ってきっちり押し込むパレスはリーズに陣地回復の糸口すら掴むことを許さない。右サイドのオリーズ、アイェウのレーンの入れ替えは新しい武器になりつつあるし、左サイドのユニットも健在。決勝点を決めたのは左サイドのザハとエゼの強力タッグであった。
15分までの奮闘が嘘のように後半は沈黙したリーズ。チャンスどころかシュートすらまともに受けず、後半アタッカー増員で投入されたゲルハルトが力のない反転シュートを打つのが精いっぱいだった。
プレスの解析を試合中に改良させて、修正パッチを当てることでペースを完全に引き戻したパレス。ポゼッションにこだわりすぎでは?と前節と今節の前半を見ていて感じたところだが、この試合の後半はそのこだわりが奏功したように見える。見事な試合運びで久しぶりに勝利を手にすることに成功した。
試合結果
2022.10.9
プレミアリーグ 第10節
クリスタル・パレス 2-1 リーズ
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:24’ エドゥアール, 76‘ エゼ
LEE:10’ ストライク
主審:ポール・ティアニー
⑦ウェストハム【15位】×フラム【8位】
■二者択一だった主人公
前節はエバートンに力負けし、なかなか不振を脱出できないウェストハム。今節の相手は開幕からの快進撃が少しトーンダウンしつつあるフラムである。
試合の立ち上がりは今季ここまでの両チームの勢いを反映しているかのようだった。序盤こそウェストハムはボビー・リードがSBを務めるフラムの右サイドを狙ってはいたものの、徐々にフラムが反撃に出るように。密集に突っ込むウェストハムをロングカウンターで跳ね返してチャンスメイクする。
その先鋒となったのがアンドレアス・ペレイラ。この日はカウンター時の運び屋となっていたケバノからボールを引き取ると、角度のないところから一気に撃ち抜いて見せた。
このスーパーゴール以外にもフラムのロングカウンターは冴えていた。ウェストハムの攻め終わりをポジトラで突くと、一気に敵陣深くまで侵攻。チャンスを作り出していた。
フラムはビルドアップでもウェストハム相手に攻め手を十分に見つけることができる。バックラインからの持ち運びやSBのオーバーラップなど、消極的でプレスをしてこないウェストハムの前線を押し込み続けることができていた。
ウェストハムはライン間で前を向くパケタや左に流れるライスからチャンスを作ってはいたが、劣勢の状況は否めない。チャンスにおいてもスカマッカがヘディングシュートを決めることができず、ウェストハムは停滞感が漂う。
その流れを変えたのが1つのPK判定だ。ドーソンを掴み、主審から注意を受けて明らかに目をつけられていたペレイラがそのままドーソンを引き倒しPK判定。そりゃそうだろ。これをボーウェンが決めて同点に追いつく。
いいムードでボールを保持できていたフラムだが、このプレーで一気に試合は意気消沈。ウェストハムに対して急に有効打を打てなくなってしまった。
後半もペレイラショックのチグハグ感から脱出できないフラム。徐々にライン間で存在感を発揮するパケタを中心にウェストハムが攻め込む機会を増やしていく。しかし、スカマッカがなかなか試合を決める決定機を沈めることができない。
こうなると、ペレイラとスカマッカのどちらかが試合を決めるのがプレミアリーグが描きそうな台本である。二者択一の主人公候補から選ばれたのはスカマッカ。ゴールを決めた瞬間の本人の喜びのなさとその後のOFRを込みで「絶対ハンド」と見ている全員が確信したのだが判定はゴール。正直者には女神が微笑むということなのだろうか。これでウェストハムがリードを奪う。
攻め込みたくて前がかりになるフラムに対してモイーズが送り込んだのはアントニオ。左サイドから裏を取る形で無限に陣地回復を続けるアントニオにフラムは非常に手を焼いていた。
後半追加タイムには抜け出したアントニオがダメ押しゴールで試合は完全決着。いい試合の入りを台無しにしたPK献上で流れを失ったフラムは痛い連敗を喫することになった。
試合結果
2022.10.9
プレミアリーグ 第10節
ウェストハム 3-1 フラム
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:29′(PK) ボーウェン, 62′ スカマッカ, 90+1′ アントニオ
FUL:5′ ペレイラ
主審:クリス・カバナフ
⑧アーセナル【1位】×リバプール【9位】
■大人なクローズで見せた力の差
レビューはこちら。
まさしく電光石火の立ち上がりだった。ゴールが入ったのは試合が始まった1分も経たないうちのこと。左サイドから抜け出したマルティネッリがいきなりリバプールのゴールネットを揺らし、アーセナルが先制する。
序盤ということで落ち着かないうちの得点とも捉えられるが、アーセナルが決めた先制点の形はこの試合において彼らが狙える形でもある。高い位置を取ったツィミカスとファン・ダイクの間にサカが入り、そこから逆サイドまで展開しアレクサンダー=アーノルドを前後で挟み撃ち。身動きを取れなくする。相手のバックラインをスライドさせてから裏を狙うというビジョンは見事。理想を早々に実現したアーセナルがあっという間にリードを奪う。
一方のリバプールは前の4人の抜け出しを最大限に使うやり方を採用。バックラインのパス回しでアーセナルの中盤を引き出しつつ、右は外にサラーを固定。アーセナルの横幅を引っ張りつつ、カバーする中盤を前に引き出す形で前線が抜け出せるスペースを確保できている状態だった。
そういう意味では同点ゴールは狙い通りだといえるだろう。ポジションを入れ替えるように右サイドに抜け出したディアスからラストパスをヌニェスに送り同点。アーセナルはガブリエウが足を延ばして処理したボールを敵に渡してしまうことになった。
アーセナルはリバプールの縦に早い形に付き合わされていく。リバプールの守備にツッコミどころがある分、アーセナルが縦に急ぎたくなる理由もわかる。ボールを持ちながら攻められるアーセナルが急いでしまったことで試合は落ち着かない展開に。お互いにチャンス自体は作れてはいたが、この展開自体はリバプールが望んだ土俵といえるだろう。それだけに前半終了間際に得たサカのゴールは非常に大きい意味を持った。
後半はアーセナルが急ぐ攻撃の精度を上げた分、追加点の匂いがするようになってきた。左サイドのマルティネッリの抜け出しに狙いを定め、確実に勝てるマッチアップを見極めてきた形である。
しかし、次の得点を決めたのはリバプール。ジョッタ→フィルミーノのコンビネーションから始まった2点目は圧巻のクオリティ。アーセナルとしてはサリバの動きがややカットインに備えるのはやや早かった分、ジョッタ→フィルミーノのパスコースはより空くことになってしまった。
ここまで一進一退かややアーセナルの方が決定機は多かった。しかしながら、終盤になると近々の地力の差が出てくるように。ボール保持した後に落ち着いて人数を賭けながら落ち着けることができるアーセナルの長所が徐々に直線的なリバプールを遮る。
敵陣を押し込んでからのクオリティもアーセナルは十分。大外から次々と選手が出てきて、リバプールのバックラインにギリギリの苦しい対応を強いていた。チアゴのPK献上も押し込まれるケースにおいて確率が高まるアクシデンタルなコンタクトだった。
リードを奪ったアーセナルはボールを持ちながら敵陣に押し込むアプローチで確実に時計の針を進める。リバプールが次々に裏を攻めれるアタッカーを下げてしまったこともあり、ホールディングを入れてバックラインを厚くする必要はないと考えたのだろう。
決勝点でリードを奪うと、保持とプレスによる大人の対応でゲームをコントロールしたアーセナル。確かな力の差を見せつけて首位キープに成功した。
試合結果
2022.10.2
プレミアリーグ 第10節
アーセナル 3-2 リバプール
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:1′ マルティネッリ, 45+5‘ 76’(PK) サカ
LIV:34‘ ヌニェス, 53’ フィルミーノ
主審:マイケル・オリバー
⑨エバートン【11位】×マンチェスター・ユナイテッド【6位】
■ポジトラ博覧会を制しダービーの敗戦払拭
シーズン開幕の連敗スタートから調子を上げてきているという点で両チームのこれまでの旅路は似通っているといえるだろう。ロースコアでのドロー沼を脱出し、勝利を重ねるフェーズになったエバートンと強豪相手に対する勝利による復調気配がダービーで一段落した感のあるマンチェスター・ユナイテッドとの一戦である。
この試合のユナイテッドはキプロスから金曜の朝に戻ってくるという非常に過酷な日程でグディソン・パークにやってきた。そうした日程での不利を突くという意味では立ち上がりのエバートンの強度マシマシのアプローチは入りとしては悪くないものである。
それでも、試合が落ち着けばエバートンはいつものコンパクトな4-5-1に移行。プレッシングはタイミングを図ったものに限定する形である程度はユナイテッドにボールをもたせていく。
そのタイミングを図ったプレスが効いたのが先制点の場面だった。オナナのプレッシングがカゼミーロを強襲。発動したショートカウンターをイウォビがスーパーなミドルで沈めて先制する。いや、イウォビそんなことできるの?しらなかったんだが?と言いたくなるアーセナルファンも多数いるであろうイウォビのスーパープレーでエバートンが前に出る。
しかし、ユナイテッドもトランジッションで反撃。中盤でボールを奪うとアントニーが難しいシュートを決めて同点に。ドリブルジャンキーのイメージがあったアントニーだが、ここまでのプレミアではスコアリング能力の高さが際立っている。
失点に絡んでしまったゲイェは前節からコントロールミスが非常に目立っており、この失点シーン以外もボールを奪われるシーンがちらほら。ユナイテッドの格好の餌食になってしまった。
同点となった後もユナイテッドがエバートンのブロックにチャレンジする展開が続く。サイドから斜めに刺しこむようなパスからのチャンスメイクを行ったユナイテッドだったが、押し込んでからのチャンスメイクの質に関してはもう一声という感じ。コンパクトなエバートンの守備ブロックを広げたり、壊したりするアプローチはうまく出来てはいなかった。
それならば1点目と同じくカウンターで勝負できるユナイテッド。今度はイウォビのロストをかっさらうと、最後は左サイドからのロナウド。おなじみのグラウンダーを隅に突き刺すゴールでユナイテッドが逆転に成功する。
ビハインドのエバートンは後半にかなり勢いを持って入った。ユナイテッドはボールを持ちながら展開を落ち着かせてのゲームメイクは出来ず、打ち合いに付き合う形で迎え撃つ。ボールが行き来する展開はユナイテッドがわずかに優位な状況で推移していく。
とどめを刺せそうで刺せないユナイテッド。なかなか活路を見いだせないエバートンはリスク覚悟でキャルバート=ルーウィン、ロンドンを投入してパワープレーを開始。正直、だいぶ前から手詰まり感はあったし、控えに人材はいるのでもっと早めに舵を切っても良かったように思う。それだけ得点の可能性はあったし、だからこそもったいなさも感じてしまう一戦となった。
結果的にはカウンターからの好機をどちらかが沈められるかというポジトラ博覧会のようになった試合。差し合いを制したユナイテッドがダービーの敗戦払拭に成功した。
試合結果
2022.10.9
プレミアリーグ 第10節
エバートン 1-2 マンチェスター・ユナイテッド
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:5‘ イウォビ
Man Utd:15’ アントニー, 44‘ ロナウド
主審:デビッド・クーテ
⑩ノッティンガム・フォレスト【20位】×アストンビラ【14位】
■押し込んでも押し込めなくても決め手がない
前節、レスターとの逆天王山に敗れ最下位に転落してしまったノッティンガム・フォレスト。しかしながら、クラブはスティーブ・クーパー監督と2025年まで契約延長を発表。最下位でも信頼感を示してこのスカッドを託す形となった。今節の対戦相手は中盤での守備で防波堤を気づくことで徐々に波に乗ってきたアストンビラである。
4-3-3で組み合った両チームの一戦は非常に慎重なものになった。トップのプレス位置はアンカー。かなり低い位置でブロックを敷くことになった。
というわけでボールを持つことを許された両チームのバックライン。フォレストはCBがGKを挟む形でポジションをとり、低い位置からのパス交換を志向する。IHが降りる動きを見せることもあり、短いパスからの組み立てを行う。
ビラのプレスを徐々に手前に引き出すと、フォレストの前線は裏を狙う。ジョンソン、デニスは共に右サイドから裏を狙い、ビラの陣形を縦に引き伸ばしていく。先制点はデニスの裏抜けで得たFKからである。決めたのもデニス自身。今季ここまで途中交代で振るわないパフォーマンスが続いていたが、ようやくここでゴールを決めて貢献することができた。
だが、ボールを持つ局面がより多かったのはビラである。フォレストはSHの意識が後ろに入るなど、ビラよりもさらにプレスの重心が低い状態に。ビラは左サイドを軸にコンビネーションから崩しを狙っていく。
ビラが両サイドから押し込んだことでフォレストはエリア内などの低い位置で受ける時間が長くなってくる。同点ゴールを決めたのはヤング。自然な流れでバイタルに入ってきたヤングがヘンダーソンも反応することができないミドルを打ち込んで同点に追いつく。
以降も試合はトランジッションが少ない我慢比べのような展開に。どちらかといえば優勢なのはビラ。フォレストはライン間のギブス=ホワイトに縦パスを受けてターンして前を向くことができればチャンスにはなるが、サイドの崩しがSBとWGの2人の形になりやすく、ビラのサイドはそこまで守ることに苦労しなかった。
それに比べればIHがうまく攻撃に絡んできたビラは3人目の動き出しから奥行きを作ることができる。ボールを持つ時間は長く、後半の深い時間になるとビラが押し込む一方的な展開になる。
イングスの投入でFWを実質2枚体制にしたり、4-2-3-1に変更して前がかりになる人数を増やすなど人員で工夫を見せるビラ。だが、最後までアタッキングサードの破壊力が高まることはなかった。
押し込んでも決め手がないビラとそもそも押し込めないフォレスト。どちらもチャンスらしいチャンスがないまま後半は経過し、互いに勝ち点を分け合うドローとなった。フォレストはこのドローで最下位脱出に成功している。
試合結果
2022.10.10
プレミアリーグ 第10節
ノッティンガム・フォレスト 1-1 アストンビラ
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:15’ デニス
AVL:22‘ ヤング
主審:アンソニー・テイラー